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第78回 髙木超さん

第79回 髙木 超(たかぎ こすも)さん

現在の所属:慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任助教

インターン先:国際連合(国連)日本政府代表部 経済部

インターンの期間と場所:2017年11月~2018年7月

■ はじめに ■

大学卒業後、NPOや民間企業を経て、日本国内の自治体で地方公務員として5年半ほど働いていましたが、事業(プログラム)の成果を明らかにし、改善に導く手段である評価(Monitoring and Evaluation)と持続可能な開発目標(以下、SDGs)を活用することが、先進国や開発途上国を問わず、自治体(地方政府)に必要であると強く感じていました。そのような折、米国クレアモント大学院大学が、SDGsの理念や背景を理解した上で、評価のアプローチを活用して課題解決を図る人材を育成する機関をニューヨークに設立するとの情報に接し、2017年9月に自治体を退職して大学院(博士後期課程)に進学、同年10月から1年間、クレアモント評価センター・ニューヨークの研究生として在外研究をする機会を得ました。

  • インターンシップ応募から採用まで ■

渡米後、加盟国政府の立場から見たSDGsを理解したいと希望していたところ、知人の紹介により、日本の国連外交を遂行する国連日本政府代表部の中で、SDGsを所管する経済部に伺う機会を得ました。後に上司となる方からSDGsの達成に向けて国連日本政府代表部が負っている責任や業務内容についてご丁寧にご説明頂き、職員の方の業務に対する情熱と今後のビジョンに深い感銘を受けました。この出会いをきっかけにインターンシップへの応募に至り、応募からおよそ1カ月後には採用のご連絡を頂きました。

2017年秋の時点では、応募にあたり、推薦状(1通以上)や履歴書、大学(院)の成績表等が必要でした。大学の夏季休暇期間など成績表発行に数週間を要する場合もあるかと思いますので、前もってこういった必要書類を準備しておかれることをお薦めします。また、ご自身のビザの種類によっては、ビザのスポンサーからインターンシップに際して、許可レターを取得し、原本を提出する必要があります。応募に際しては、必要書類や要件について、国連日本政府代表部のウェブサイト(http://www.un.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html)をご確認ください。

  • インターンシップの内容 ■

インターンシップ期間中は、自分が専門としているSDGsについて、実務を通じて幅広く学ぶ機会を頂きました。主な業務の内容としては、次の3点が挙げられます。

1.国連での会議等でのシャドーイング(同席)と参考メモの作成

国連本部では日夜多くの会議が開催されます。その中で、難民および移民に関するグローバル・コンパクトや開発資金に関する交渉など、経済部が担当する様々な会議に同席する機会を頂きました。会議の雰囲気を感じるだけでなく、どの加盟国等からどういった発言がされたのかメモ取りをすることで、議論の背景や流れ、そして方向性を理解することができました。また、作成した参考メモに対して、当該会議における重要なポイントはどういったものであったか、またどういった背景で各加盟国がそうした発言をしていたのか、といった上司からのフィードバックを頂けたことで、更に理解が深まりました。こうしたメモ取りについても、できる限り議論されるトピックについて、概要だけでなく頻繁に用いられる専門用語等を事前に調べておくことで、スムーズに内容を把握することができます。国連で扱われるトピックは幅広いため、事前準備の必要性を痛感することが多くありました。

2.資料翻訳、及びイベント運営の補助

資料やステートメントの翻訳に関わらせて頂いたことは、国際会議における英語表現や言い回しについて理解を深めるきっかけとなり、非常に勉強になりました。当然、ネイティブのスピーチライターによる校正、上司によるチェックを経ますので、自分が翻訳した表現は最終的にはほとんど残っていないのですが、当初の原稿と修正後の原稿を比較することで、どういう表現が国連外交に適しているのか学ぶことができます。また、会議当日も、資料の配布、資料に用いる写真の撮影といった業務に関わらせて頂けたことで、会議の全体像を捉えることができました。自分が翻訳に関わった公式のステートメントが国連日本政府代表部の公式ウェブサイト上で公開されたり、撮影した写真が公式ツイッターで公開されたりと目に見える形で成果が表れ、やりがいを感じながら業務に取り組むことができました。

3.分析、及びレポートの作成

自治体におけるSDGsの活用といった特定のテーマについて、地方自治体での職務経験や、評価を学ぶ者としての視点から分析したレポートを提出し、フィードバックを頂く機会もありました。その際には、レポートの読み手が立体的に内容を把握できるよう気を配ることや、文書作成における注意点など、国家公務員としての経験に裏打ちされた資料作成のいろはをご教授頂き、実務的な能力を向上させることができたと感じています。

また、インターンシップ期間中には、星野俊也大使が共同ファシリテーターを務められた、SDGsと科学技術との関係を討議するSTIフォーラムや、SDGsの進捗を確認するために毎年7月に開催されるハイレベル政治フォーラムなどが開催され、加盟国や関係機関等を招集する、国連のコンビーニングパワーを目の当たりにした9カ月間でした。その間、星野大使がご担当されている会議等に関連した業務をさせて頂く機会が多くありましたが、インターンシップに取り組む学生ひとりひとりに対して、非常に丁寧に接してくださったことが印象に残っています。

国連本部での会議前に星野俊也国連大使と

ハイレベル政治フォーラムにおけるアントニオ・グテーレス国連事務総長のスピーチの様子

  • 資金確保、生活等 ■

[資金について]

国連日本政府代表部でのインターンシップは、多くの国際機関と同様に無給です。そのため、インターンシップ期間中の生活費については、文部科学省や民間企業による官民協働の海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(以下、トビタテ)」からの支援を受けました。トビタテは、インターンシップやフィールドワークといった実践的な活動も対象となる、他に類を見ない奨学金制度です。私が米国滞在に際して取得していた交流訪問者ビザ(J-1)は、就労に制限があったため、トビタテの支援がなければ私の在外研究、及びインターンシップは実現しなかったと言えます。物価の高いニューヨークにおいては、同奨学金に加えて、公務員時代の貯金を切り崩しての生活となりましたが、国連前に出店している安価な屋台を利用するなどして乗り切ることができました。

[生活について]

物価が高いということを除けば、ニューヨークと東京での生活に大きな違いはないと感じます。しかしながら、マンハッタン内で幾度かテロ事件が発生するなど、身の危険を感じる機会はありましたので、最低限の注意を払うことは求められます。また、冬には摂氏-17度の寒さと吹雪で交通機関が機能しないことも度々ありましたので、領事館からの安全対策情報を活用して幅広く情報収集に努めるなど、常に周囲の状況の変化を捉えるアンテナを張っておくことを薦めます。

■ その後と将来の展望 ■

国連日本政府代表部でインターンシップとして国際的な職務経験を積んだこと等も評価され、2018年7月からジューネーブに本拠を置く国際基金(The Global Fund)の評価部門でインターンシップを開始しています。今後はこうした機会も含め、SDGsや評価、そして自治体に係る経験を更に積んだ上で、何らかの立場から、開発途上国も含めた自治体(地方政府)ガバナンスの支援に携わりたいと思います。

また、国連等で目の当たりにした各国の若者の発言力に刺激を受け、ミレニアル世代(1980年代以降生まれ)を中心にSDGs達成に向けた活動を推進する「SDGs-SWY」という団体を設立しました。同団体では、ヘレン・クラーク前UNDP総裁をはじめとして、SDGsの達成に向けて第一線で取り組む方々にご協力を頂き、ウェブサイト上でSDGsに関するインタビュー記事を公開するなどしています。

■ その他、所感・アドバイス等 ■

送別会を開催してくれた国連フォーラム・ニューヨーク勉強会班の仲間と

[その他、所感等]

インターンシップのポスト獲得に留まらず、慣れないアメリカでの生活を支えてくれたのは、国連フォーラムで知り合った友人や諸先輩方でした。休日はカフェで一緒に勉強をしたり、意見交換したりすることで、新たな視点から自分の研究や、今後のキャリアを捉えることができました。国連フォーラムの友人が国連職員として職務に取り組んでいる姿を目にする機会がありましたが、普段接している温和な友人としての姿ではなく、開発課題に覚悟を持って取り組んでいる一人の国連職員としての姿を見ることができたことは大きな刺激になりました。また、国連フォーラム・ニューヨーク勉強会班では、微力ながら幹事も務めさせて頂き、多くの勉強会の開催に関わる機会を得て、自分が目指すべき将来像を明確化することができた留学生活となりました。

[アドバイス]

インターンシップに応募するか躊躇される理由のひとつに、資金面での不安が挙げられると思います。昨今では、既にご紹介したトビタテのような、国際機関等におけるインターンシップなどの多様な活動も支給対象となる返済不要の奨学金があります。ぜひこうした機会を捉えて、挑戦してみてはいかがでしょうか。

  • おわりに ■

国連日本政府代表部でのインターンシップ期間中は、上司にランチに誘って頂いたり、同年代の専門調査員の方からは日常生活から業務内容まで幅広くアドバイスをもらったりと、インターンシップを始めたことをきっかけに、充実したニューヨーク生活となりました。また、所属する経済部に限らず、国際機関人事センターをはじめ他部署の方々にも大変お世話になりました。インターンシップの業務を通じて得た知識や感覚を意識して整理することで、漠然としていた国連の仕組みや機能、役割を立体的かつ鮮明にイメージすることができ、まさに「百聞は一見に如かず」であると感じました。

最後に、この投稿が国連等でインターンをすることを検討している方々の参考になり、今後に向けた一歩を踏み出すきっかけとなれば嬉しく思います。