第2回:「2019年 第14回SDGs勉強会 『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来〜人間の安全保障と私たちの役割〜』」
ただ学ぶだけで終わらない、行動に移そうと思えるような勉強会に_________
本シリーズでは、国連フォーラム関西支部(以下、関西支部)が過去に実施してきた勉強会企画をその担当者への取材をもとに、「関西支部の勉強会とはどのようなもので、どのような想いや努力を経て作られているのか?」を紹介していきます!
本記事では第2回として、2019年に、TICAD7記念のシリーズ第二回として開催した第14回SDGs勉強会 『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来〜人間の安全保障と私たちの役割〜』。リーダーとして担当された岡崎慎治さんに取材しました。
関西支部が目指す ”具体的な行動を起こすきっかけとなる場” とはどういったものなのか?私たちがつくる勉強会すべてに通ずるものが慎治さんの言葉に凝縮されています。是非、ご一読ください。
Q:はじめに、企画の概要について教えてください。 アフリカ地域社会での人間の安全保障および紛争後平和構築に向けた取組みについて、アクセプト・インターナショナルの秋葉光恵氏と神戸大学大学院法学研究科の栗栖薫子氏をお招きして勉強会を企画しました。 企画は、以下の目的と流れで実施しました。 1.秋葉氏による講演 目的:「平和と安定の強化」に関するTICADの議論を背景に、アフリカの紛争後社会に対する具体的な支援活動と、現地の人々の「安全」とは何かを知る。 2.栗栖氏による講演 目的:人間の安全保障の多面的な概念を整理し、アフリカ地域社会と自身との関わり方を考える上で、重要となる観点は何かを考える。 3.グループディスカッション 目的:アフリカ地域社会と参加者自身との関わり方を再考し、行動に結びつける。 ※詳しくは開催報告をご覧ください。 ▶「第14回SDGs勉強会 『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来〜人間の安全保障と私たちの役割〜』企画の開催報告はコチラ |
岡崎慎治さん
【専門】開発経済学、政治経済学 【関心】大学で、第二外国語としてアラビア語を履修、中東地域に関心が深まる。学部3年次にイスラエルのテルアビブ大学に交換留学:イスラエル・パレスチナで1年間生活(中東現代史や紛争、イスラエル経済などを幅広く勉強。アラビア語パレスチナ方言の学習)留学修了後、日本・イスラエル・パレスチナ学生会議(JIPSC)の運営として会議に参加。 【関心あるSDGs】
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Q:企画を作った理由についてお聞かせください。
TICAD企画1(*1) の開催前から、TICAD7(*2)前後で二部企画にしよう、という話が出ていたので、TICAD企画として、複数のテーマ候補を考えました。元々、紛争には関心がありましたが、アフリカのことはあまり知りませんでした。勉強したいという想いから、アフリカ地域社会の紛争を扱うことを積極的に推しました。
敢えて若者をテーマに扱ったのは、若い世代が今後の社会の中心になっていくにも拘わらず、若者世代や女性、身体的不自由を抱えた人々の地域社会における政治的意思決定の参画には課題があるとレポートで読んだことからです。これは日本でも課題であるので、勉強会で扱うことで問題意識を持ち、自分とアフリカ地域との関わりだけでなく、自分自身の所属する社会やコミュニティでの在り方を見直すきっかけになってほしいとも考えていました。
*1)TICAD企画1:関西支部では、2019年に横浜で開催されたTICAD7を記念に、シリーズ企画を実施しました。TICAD企画1の詳細は第13回SDGs勉強会 TICAD記念イベントVol.1 アフリカ×私の国際協力~国・地域の固有性から考える~」の開催報告書をご覧ください。
*2)TICAD7:「TICADとは、Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略であり、アフリカの開発をテーマとする国際会議です。」(外務省HP, https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/index.html)
Q:元々、紛争に関心を寄せていたのですね。何かきっかけはあったのでしょうか?
イスラエル・パレスチナに一年ほど留学していた際、長く続く占領の現実の一端を垣間見た、という事が自分にとって大きな経験であり、きっかけでした。
滞在中、抑圧されている生活がどういうものか実感しました。差別を経験してきた友人、様々な政治経済的な制約のもとで希望を失わず生活向上に取り組む内外の人々、政府や軍による非人道的な活動を報道しようとするジャーナリストといった人々との出会いに加え、現地での授業や日常生活、デモやイベントの参加といった経験を通して、もう見て見ぬふりができないなと感じたのが原点です。
普通に留学生活を送っていたら、見えなかったこともあったと思います。足を運び目を凝らしたからこそ目の当たりにすることが出来た、構造的な差別や社会的な課題もあったと感じます。そして、そのような問題を現地人々と共に解決・改善する方向に、力を注いでいけたら、納得のいく人生だろうなと考えるようになりました。
Q:確かに普通に留学するだけでは得られない、目を見張るような経験ですね。岡崎さん自身の行動力も感じました。そんな中で、なぜ関西支部に入って勉強会企画に携わろうと考えられたのですか?
留学した経験からモチベーションを持ち、もっと社会の中で行動を起こしていけると考えていました。関西支部に入ったのは「どのように行動を起こすか」ということを学びたいと考えていたからです。
社会課題に関心がある人は結構いると思います。ただ、慌ただしく生活する中で、短期間で関心が薄れてしまったり、個人の問題として完結してしまい、社会の中で持続的な取り組みに結びついていないことが多くあると感じています。個人で行動を起こしたり声を上げたりしづらいことも、様々な人と繋がり協力することで、より社会的影響のあるアクションになるのではと考え、「人を巻き込む」という側面をもっと理解したいと考えました。
関西圏で何か企画運営などに携われないかと感じていた時に、国連フォーラム関西支部のシリア紛争の勉強会に参加しました。その際に、勉強会の質が高そうだと感じたとともに、丁度活動参加の募集をしており、5年生からでも参加できるということから、応募しました。
Q:なるほど、「人を巻き込む」という事を関西支部の勉強会で実践しようとしたのですね。では、この勉強会を通して、岡崎さんは参加者にどのようなことを伝えようとしたのですか?
運営側の関西支部が何か具体的なことを伝えるのではなく、参加者がとにかく主体的に考えて、意見交換をしてもらえるような場を目指し、以下、3つのことを考えてもらおうと企画していました。
- 紛争後アフリカ地域社会の人々は、どのような脅威にさらされているのか?
- 人間の安全保障の考え方は、どのように役立つのか?
- 私たちは、アフリカの紛争後地域社会の人々の安全保障の実現に、どのように関わっていくことができるのか?
主体性を重視したのは、単に紛争という課題について学んでも、「そんなことがあるんだ」という感想を抱くだけで、それ以上考えたり調べたりせず、学びが限定的になってしまうことを避けたかったからです。
また、基調講演の直後に、取り上げられる事例と自身の関心のある問題との共通点や相違に気付き、今まで考えたことのないような角度から私たちができることを話し合い、考え直せるような機会ももっとあればいいのにな、とも感じていました。
その為、参加者自身が関心のある、紛争や気候変動などの解決の困難な社会的課題に対して、主体的に、創造的に自身の役割を考えてほしいという思いが、勉強会を通して暗に伝えたかったことだったと思います。
Q: 副題の「私たちの役割」は、しんじさんの問題意識に繫がっていたのですね。それでは、私たちの役割を考える上でキーワードとなった「人間の安全保障」概念を扱った理由を教えてください。
人間の安全保障は少し古いテーマではありましたが、少し勉強した中で、その概念は国際協力を考える上で常に忘れてはならない本質的なものの一つだと感じました。
人々を中心に問題を捉える人間の安全保障の概念は、国家レベルだけでなく、私たちの目線でも重要な観点だと思います。顔の見えない人々も、私たちと同じように周囲の人々とのストーリーがあり、アイデンティティの危機やハラスメント、環境危機による被害などがないような、広い意味で安全の保障された生活を望んでいるはずです。
ですので、そのような意味で、地域の人々の安全が脅かされるような協力の形は避けられるべきだし、私たちの取る行動も、他の国の人々と繋がっていて、ある地域の人々の安全が脅かされているようなら、知らないふりをしてその事実に目を瞑るのではなく、改善していく必要があると考えています。
そのような考えから、人間の安全保障の概念を整理して、その考えを実際に私たちの行動に落とし込んでいく方法を考える意義があると感じていたので、取り上げました。
Q: 勉強会づくりをしていて、楽しかったことや嬉しかったことはありますか?それはなんですか?
初めての勉強会リーダーで分からないところも多く、企画準備は大変で、トラブルもありました。しかし、基本的に毎ミーティング学びがありつつ、楽しみながら、準備していました。
また、メンバーに提案をしたときに挑戦してくれたり、グループディスカッションなどで、自分では出来ないような工夫のなされたものを準備してもらったりしたときは嬉しかったです。
企画当日までプレッシャーを感じていましたが、勉強会の参加者とネットワーキングタイムで話した際、(企画について)良かったと言ってもらえたことは本当に嬉しいと感じました。
Q:「紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来~人間の安全保障と私たちの役割~」を企画を実施してみての感想をお聞かせください。
思い描いた企画に近いものが実現しました。講演の内容について意見を交換したり、参加者自身の関心のある課題との関わり方について考え直す良い機会となり、参加者の方には、何らかの良い影響を与えられたのではないかと感じています。
Q:今後関西支部が実施する勉強会に参加する人に向けてひとことお願いします!
関西支部の勉強会は、講演を聞くだけでなく、参加者同士で積極的に意見を交換できるような環境を目指しています。
普段友達同士では議論しづらいようなテーマも、自分の意見や感想を共有して、自分自身の考えを見直すきっかけになると思います。また、関心の近い人と繋がるネットワーキングの場でもあり、共により深く考え、行動に結びつけていけるような仲間も見つけることができるかもしれません。
関心のある方はぜひ参加して、他の参加者や友人知人を上手く巻き込みながら成長する機会にしていきましょう!
国連フォーラム関西支部では、11月7日(土)に、オンラインにて、『難民支援におけるテクノロジーの活用 ~難民が直面する課題と私たちが考える支援の可能性~』の開催を予定しております。皆様のご参加、心よりお待ちしております。
関連リンク |
◆第15回SDGs勉強会 オンライン企画『難民支援におけるテクノロジーの活用 ~難民が直面する課題と私たちが考える支援の可能性~』イベントページ |
◆オンライン企画開催記念記事トップページ |
◆「第14回SDGs勉強会 『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来〜人間の安全保障と私たちの役割〜』開催報告書 |
掲載日2020年8月14日
取材・記録・執筆担当:黒﨑 野絵海