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世界人道デー企画:自然災害に伴う人道危機の現在

世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」~脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは~

2019年 8月11日  実施

世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」
脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは

開催報告

8月11日(日)に、関西学院大学大阪梅田キャンパスにて、『世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」〜脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは〜』を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】

《企画概要》
日時 2019年8月11日(日)13:00~17:00
場所 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1004教室
共催 国連人道問題調整事務所神戸事務所、独立行政法人国際協力機構関西センター、国連フォーラム関西支部
ゲスト

・吉田明子 氏
2007年 国際連合人道問題調整事務所(OCHA)入職。2018年11月 OCHA神戸事務所 所長就任。アジア太平洋地域事務所、ニューヨーク本部、 フィリピン事務所、組織変革実施チーム、機関間常設委員会(IASC)事務局、各国での人道支援を経た後、現職に就任。

・金塚匠 氏
2017年4月 JICA地球環境部 環境管理グループ 配属 2017年8-10月 JICAタイ事務所 OJT 2019年5月 JICA関西 業務第一課 異動 学生時代は土木工学、特に都市洪水に関する研究し、洪水解析モデルの最適化問題に取り組む。 JICA地球環境部ではタイ・カンボジア・スリランカの環境問題(気候変動・廃棄物・下水道)に関する技術協力事業を担当。 JICA関西センターでは農業・都市交通・交通安全・災害復旧等に関する研修事業を実施中。

内容 1.オープニング
2.イントロダクション
3.講演
4.質疑応答
5.個人ワーク
6.グループディスカッション
7.意見の共有
8.クロージング
9.ネットワーキングタイム
《企画背景》

 人道に関する問題が大規模化・長期化・複雑化していることから、人道支援ニーズが国際社会で急速に高まっています。紛争及び自然災害が原因で、2018年には148の国と地域で新たに約2,800万人が被害を受け、世界で人道支援を必要とする者が1億3000万人以上存在しています(2019年4月現在 OCHA)。さらに、2018年に新たに発生した自然災害による国内避難民は、紛争を起因とする避難民よりも多い約1,700万人であることから(IDMC 2019)、自然災害も今日における人道危機を生み出す大きな原因の1つであると言えます。

 第49回世界経済フォーラムでグテーレス国連事務総長が、「人類が現在直面する最も重要な課題は気候変動である」と強調したように、気候変動や自然災害がグローバルイシューとして国際社会で活発な議論が近年交わされています。特に地球温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定が本格的に始動する前年である2019年は、パリ協定加盟各国を集めて地球温暖化対策を議論する気候サミットが開催されるなど、非常に重要な年です。

 そこで、本企画では特に「自然災害」に着目し、自然災害に伴う人道危機の課題に関して、国連及び政府開発援助の実施機関の活動を発信することで自然災害と人道問題について参加者の関心を高めることを目的としています。

 

《目的と到達目標》
  1. 「人道への課題 Agenda for Humanity」、中でも「人道支援のニーズを減らす」こと、さらには支援ニーズを減らすために、人道危機の影響を受けやすく、かつ見落とされやすい女性や子ども、難民・避難民のような脆弱者に目を向けることが不可欠であるため、今回のテーマである自然災害に伴う人道危機に脆弱である人たちへの理解を深める。
  2. 人道危機・支援の事例に基づく議論を通して、人道支援の包括的なアプローチについて理解し、参加者が自身の関心や専門と照らしながら、自分にできる関わり方を考える。
  3. 現在の日本においても自然災害が脅威となっている現実から、将来の持続可能な社会の実現のために、世界で深刻化する自然災害と人道危機を「自分事」のように捉え、当問題解決に向けて自分なりの考えを発信できるようにする。

 

【開催報告】

 オープニング
  • 久木田氏より開会のご挨拶
  • 共催団体紹介(OCHA神戸、JICA関西、国連フォーラム/国連フォーラム関西)
    • OCHA神戸
       国際連合人道問題調整事務所(OCHA)は、自然災害や紛争によって人道危機に晒された人々の生命と尊厳を守るため、国際的な人道支援活動を調整しています。支援を必要とする国ごとに様々な人道ニーズや優先順位を把握し、包括的かつ戦略的な対応計画を取りまとめる作業を担当するのがOCHAの役割です。すべての人が、すべての人のために、効果的で、人道支援の基本原則に則った活動を行うことを推進しています。

       OCHA神戸事務所は2002年に設立され、日本政府や国内外の人道支援団体と連携を強化することで、主に海外での緊急人道支援活動やそのための備えをサポートしています。また、OCHAの、日本におけるスポークスパーソンとしての役割も担っています。
    • JICA関西
       国際協力機構(JICA)は、「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、開発途上国への国際協力を行う日本のODA(政府開発援助)実施機関です。技術協力や、有償資金協力、無償資金協力、民間連携や市民参加協力、国際緊急援助など様々なメニューでODAを実施し、開発途上国が抱える課題に取り組んでいます。

       JICA関西は、「途上国と関西を信頼でつなぎ、ともに『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成に貢献します」をミッション・ステートメントとし、防災をはじめとする関西圏の多彩なリソースを生かした研修事業や民間企業の途上国への海外展開支援、市民参加協力事業など、地域と途上国を元気にする国際協力を推進しています。

 

  • ゲスト紹介

▲ 司会は国連フォーラム関西支部の黒崎が務めました。

 本企画では、ゲストとしてOCHA神戸より吉田明子氏、JICA関西センターより金塚匠氏をお迎えしました。
 吉田氏は、2007年に国際連合人道問題調整事務所(OCHA)入職され、2018年11月から現在においてOCHA神戸事務所 神戸事務所長に就任されました。
 金塚氏は、2017年4月 JICA地球環境部 環境管理グループに配属され、2019年5月から現在までJICA関西 業務第一課 国際防災研修センターに所属されています。

 

  • イントロダクション(企画背景や自然災害と人道危機の関係性について)

 冒頭のイントロダクションでは、国連フォーラム関西支部の森田が「自然災害と人道危機」の関係性やその概要について地球温暖化の問題を交えながら、説明を行いました。

▲ イントロダクションでの紹介は、国連フォーラム関西支部の森田が務めました。

 世界人道デーは、2005年8月19日を「人道支援を必要とする人々や、支援に携わる人々について考える日」として国連総会にて定められています。①進行する地球温暖化に伴う自然災害の暴力化、②世界で強制移住(displacement)を生み出すなど、自然災害が深刻な人道問題にまで発展していること、③近年日本においても自然災害が猛威を振るう事態が挙げられることより、今回の世界人道デー企画では「気候変動と人道支援」に焦点を充てて開催することとなりました。

 IPCC第5次報告書では、産業革命期と比較して、世界の平均気温が既に約1℃上昇しており、最も地球温暖化が進行した場合、2100年までに最悪で約5℃度上昇すると発表しています[1]。また、国連は気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする目標を掲げていますが[2]、2018年IPCC特別報告書は、2030年に1.5℃の上昇を達成する可能性があると指摘しています[3]。さらに地球温暖化によって海水温が上昇し、最大風速54m/s以上の強い台風の発生率も高くなる[4]と予想されています。

 様々なリスクが進行する地球温暖化によって表面化してきます。平均気温1℃の上昇が熱波や洪水などの異常気象による被害を増加させるとも言われており、実際に、世界の自然災害の発生数も1980年から2018年までに右肩上がりの状態である[5]など、気候現象や風水災害の気象に関連する自然災害は増加しています。また、2018年に新たに発生した国内避難民の要因は、紛争/暴力よりも、自然災害が原因で避難する人が多いと報告されています[6]。このように自然災害は、今日における人道危機を生み出す大きな原因であると言えます。

 昨年を象徴する漢字に「災」が採用されたように、日本も2018年は災害の脅威を目の当たりにする年となりました。西日本豪雨や台風21号などが原因で、2018年の自然災害による農業被害額は、東日本大震災があった2011年に次ぎ、過去10年で2番目の5,679億円でした[7]。今後も自然災害が増加することで、強制移住、ジェンダーによる暴力行為、家族の離散、雇用問題[8]など複数のリスクが国内外で多発することも考えられます。自然災害による人道危機の悪化を最小限にとどめるためにも、人道への課題(Agenda for Humanity)4「届ける支援から人道ニーズ解消に向けた取り組みへ」が重要となってきます。


[1] IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会[http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_ presentation.pdf]
[2] 2015年パリ協定第2条1項(a)
[3] IPCC 1.5℃特別報告書 詳しくは環境省HPを参照。[https://www.env.go.jp/press/106052-print.html]
[4] 当銘寿夫(2019)「当たり前になっていく『異常気象』地球温暖化は誰が止めるのか」『Yahoo!ニュース 特集』ヤフー[https://news.yahoo.co.jp/feature/1337]
[5] Munich Re, Loss event worldwide 1980-2018. As at August 2019.
[6] Internal Displacement Monitoring Center (IDMC). 2019. DRID 2019 Global Report on Internal Displacement. p.1.
[7] 平成30年農業白書より。
[8] 自然災害時における人々の保護に関するIASC 活動ガイドラインより一部抜粋。[https://www/brrokings.ed/wp-content/uploads/2016/07/0106_operational_guidelines_nd_japanese.pdf]

 

 講演

講演では、各機関のレジリエンスの強化や開発援助など、自然災害に伴う人道ニーズ解消に向けた取り組みについて話して頂きました。

「自然災害による人道危機 ~早期緊急対応に向けて~」 吉田明子氏

 国連機関の中で、人道問題で大きな役割を担う国連人道問題調整事務所(OCHA)の吉田明子氏によるご講演を頂きました。

▲ OCHA神戸 吉田明子氏による講演の様子。

 はじめに、OCHAの組織について、そして人道支援資金の最近の試みについてお話を頂きました。OCHAは、国連総会決議46/182のもとに設立された国連機関です。国連による緊急人道支援の調整機能の強化を目指しており、支援の調整、アドボカシー、情報管理、資源の動員、政策支援の5つを主軸に活動されています。

 緊急支援のための資金である中央緊急対応基金(CERF)は、大規模な自然災害や紛争が発生した際に、ドナー等からの資金が届くまでの空白期間を埋めるため、緊急人道支援の初期財源として補填することで、被害の発生や拡大を最小限に抑えることを主な目的にしています。各国ドナー等から拠出金を集め、被災者のニーズに応じて、国際機関や援助機関の実施する人道支援プロジェクトに配分しています。

 自然災害の対応には年間15億ドルの人道支援資金が必要と言われますが、必要な資金と予算には大きな開きが存在しており、年々そのギャップは拡大しています。そこで、CERFの資金規模を拡大することによって、このギャップを埋め、さらに、予測される危機に対して早期に対応を行う資金を提供できないか、という案が持ち上がっています。

 干ばつによる食糧危機などが、今日においてモバイルデータの通信量、土壌の状態、栄養失調率などの統計的手法によって、発生の予測可能性が高まっていることから、あらかじめ事前投資することで、危機的状況を回避、あるいは自然災害が発生した際の被害を最小限に留められることも期待できます。また、グテーレス国連事務総長が世界の人道ニーズに応じるために、CERFへの拠出を10億ドルにまで拡大させることを提案しました。これに対して国連加盟国を含め幅広い支持や賛同の声が表明されるなど、CERFの意義は大きいことが分かります。

 実際に2017年のナイジェリア、南スーダン、ソマリアにおける飢餓や2018年サヘル地域おける干ばつに対して、CERFによる早期対応が実施され、その効果も認められています。しかしながら、吉田氏はCERF自体の課題も複数挙げられました。課題には、国連総会の総意、アーリーアクションの定義が曖昧なため、資金提供の決め手が見つかっていないなどが挙げられます。CERFの運営は他団体のコンセンサスが必要であるため、優先順位や金額などの合意の難しさを述べられておられました。

 

「気候変動と自然災害分野におけるJICAの協力」 金塚匠氏

一国の政府組織として、そして日本として行う人道支援について、国際協力機構(JICA)関西センターの金塚匠氏によるご講演を頂きました。

▲ JICA関西 金塚匠氏による講演の様子。

 はじめに、金塚氏の所属するJICAについてのご紹介を頂きました。「JICAは、ただ良いことをするばかりでなく、外交上の手段の一環として、途上国にも日本にもいい影響をもたらすことを目指して事業を行っています」と述べ、2015年に閣議決定された開発協力大綱や独立行政法人国際協力機構法などの基盤となる政府の決定や法律ほか、SDGsなど様々な国際社会の流れを組んで活動を行っている、という国際協力を実施する国の組織としての特徴を紹介していただきました。

 金塚氏は、気候変動は経済活動が大きい先進国のみならず、途上国を含むすべての国が取り組まなければならない問題として認識され、パリ協定という国際枠組みが定められたことや、IPCCの1.5℃特別報告書によると、産業革命以前と比べて気温が上昇しており、2030年から2052年の間には1.5℃上昇することが確からしいと議論されていることを紹介してくださいました。

 このような深刻な気候変動問題に、どう取り組むのか。金塚氏は、2つの方法があると指摘します。第一に、温室効果ガスの排出を減らす緩和策です。再生可能エネルギーの利用や運輸交通、廃棄物管理や農業・畜産業における工夫、森林管理や植林などによりCO2の排出を削減する方法があると述べます。第二に、気候変動の負の影響に備える適応策です。気候変動による自然災害に備えた防災の実施や品種改良など農業分野における工夫、生態系保全や水資源開発、感染症対策等が挙げられます。適応策については、特に途上国が関心を寄せており、JICAも気候変動対策の支援に貢献していると述べられました。例として、バンコク都に対して日本(特に横浜市)の知見を共有し技術移転を行ったり、インドの鉄道建設による公共交通機関への転換で渋滞・車両の減少を通じたCO2削減、また、ベトナムへの資金協力および制度構築の支援や、ラオスに対する気象システム設置の支援を通じた防災協力などをご紹介いただきました。

 自然災害に伴う経済的損失が近年増加しており、その一因は気候変動にあると金塚氏は紹介します。また、それらの影響を受けやすい人は貧困層の人々であり、これらの人は、自然災害に脆弱な場所に住まなければならず、被災しやすく、貧困によりさらなる二次被害を受けやすい状況にあると言います。

 「日本は、支援国の中でも特に自然災害に関する知見があるため、防災分野に関しては日本がリードしています。とりわけ過去20年の二国間協力ではトップドナーとなっています。」JICAでは、様々な事業に防災の知見を取入れ開発協力を行っていると金塚氏は述べます。例えば、タイでの地下鉄建設の際に入口の高さを上げることで、2011年の大洪水の影響を受けることなく地下鉄の運用に成功し、フィリピンでの病院建設の際に沖縄の構造物の特徴を取り入れた設計することで、台風に強い病院運営ができるようになった事例、また、ミャンマーの小学校の建設の際に、1階部分ではなく2階に教室を設置することでシェルターと学校の両方の機能を兼ね備えることができるなどの様々な成功事例を紹介してくださいました。また、JICAでは、脆弱な立場にある女性に対する避難ワークショップの実施や、障がい者を巻き込んだ防災計画の立案、研修の実施を行っていると言います。さらに、緊急時にすぐに資金協力ができる備えを行っており、保険の仕組みの提供や、植林や自然環境保護のための支援も行っていると述べます。JICAでは日本での経験を踏まえて、海外の人道問題、特に災害に関する分野での協力を行っていることが、金塚氏の紹介で学ぶことができました。

 

質疑応答

 質疑応答では、被災地における性暴力の防止やサバイバーへの支援について質問が挙がりました。吉田氏は、被災地の不安定な状況下では様々な事件が発生しやすい傾向にあることを言及したうえで、これに対して、専門領域の国連機関は、早期に対応できるよう開発の分野で、制度の構築やサバイバーへの支援などに取り組んでいることをご紹介いただきました。

 具体的にどのような日本の知見を海外に伝えているのか、そして国内の災害支援や対策に貢献していることはあるのか、という質問に対して、金塚氏は、JICAでは、被災者の心のケアに関する知見や、インフラへの事前投資によって災害のリスクを軽減することができた経験を共有している、と紹介されました。また、日本への貢献については、世界の被災者同士を繋ぎ、似たような経験をした方々で思いを共有することで、心のケアなどに繋げた例をご紹介いただきました。また、吉田氏は、人道支援が必要な緊急事態のもとでは、支援を受ける側の負担も多くなることに言及し、その際に、OCHAは国際社会に伝わるように情報を整理、発信していることを紹介されました。また、「支援の受け入れ側の負担を減らすような話し合いも現在進められています」と述べました。

 様々な分野を含めたプロジェクト実施が必要であると認識されつつある議論を踏まえ、JICAではどのように取り組んでいるのかという質問に対して、金塚氏からは「たとえば気候変動対策室を設け、他分野のプロジェクトであっても、計画策定時には同室に協議を行うことによって、全てのプロジェクトに対して気候変動対策の視点を盛り込めるよう取り組んでいます」とお答えいただきました。

 最後に、人道支援に対する取組みについて、報告書などを通して様々な日本人にもわかるように日本語で発信してほしいという意見が出され、国連機関や国際支援機関のみならず、市民である私たちによる協力の必要性を確認しました。

 

 個人ワーク・グループディスカッション・意見の共有

▲ グループディスカッションの様子。

 個人ワーク及びグループディスカッションでは、サイクロン、地震、干ばつの3つの自然災害の事例が載った情報シートをもとに話し合いました。個人ワークの時間では情報シートを読み込み、配布されたワークシートに記入を進めることで、自身の考えをまとめました。次に、6人程度のグループに分かれ、それぞれが考えたアイデアを共有し、①「どのような人道支援が求められるか」そしてそれらは「誰にとって必要か」、②「人道支援のニーズが解消された理想の状態はどのようなものか」、③「どのアクターが」「どのような取組みをする必要があるか」を議論しました。

 

サイクロン班

 1班では、人口の半分以上が被害を受けたという状況に着目し、「どのように国を再建することができるか」が重要だという意見に至りました。産業を成長させることと貧困率を下げることにより、被災前より良い状況をつくるための支援について話し合いました。具体的には、被災経験を活かし、予測した事態の対応ができるよう、マニュアルを作成し共有する必要があるとの意見が出されました。また、エネルギーの供給源を地域によって分散させ、それぞれの地域がエネルギーを生産できるようにする必要性も挙げられました。

 4班では、食糧不足や水・衛生問題の深刻化に着目し、リスク分散のための新たな食料生産や、安定的な食料や水の確保、感染症や衛生面への対応や、長期滞在支援者に対する宿泊先の確保やエネルギーの供給、物資供給の為の輸送手段の確保などが必要である、と様々な意見が出されました。被支援国としては、災害に強いまちづくり・復興対策が必要であり、支援国としては人材の派遣や技術支援や知識の伝達が、現地市民としては共助の意識が、そして私たちは情報収集をする力や情報を伝える力が必要であるという意見に至りました。

地震班

▲ グループディスカッションの様子。

 2班では、病院が被災し医薬品が不足している状況に着目し、ディスカッションが進行しました。足が途絶えてしまった山間部への救助チームの派遣や、病院が崩れてしまったために自宅で治療をしている患者をキャンプへ移動させ、電力や医薬品の供給、医療人財の派遣をすることが必要であるという意見が出されました。また、地域自立型のインフラや、災害時マニュアルの必要性についても話し合われました。

 5班では、首都に医療施設が集中している点や、石造りで破壊されてしまった建築物が多く、衛生的な水が不足している点、また短期的・長期的の双方で食糧不足が深刻な点に着目をして議論が進行しました。72時間以内の医療提供や、医療人財の育成や地域での医療の確保が重要であるという意見が挙がりました。また、Googleマップでの支援情報の共有や、市民参加による支援の輪の拡大が重要であるという意見も出ました。

干ばつ班

 3班では、干ばつによって不安が増加し治安の悪化によるコミュニティ関係の悪化に着目し、生活における不安がない状況が理想であると考えました。また、被害を受けた国が主体となることが人道支援の在り方ではないかという点で議論が盛り上がりました。そのうえで、現地の行政やNGOが動きやすいような財政づくりや支援体制が必要であると意見が一致しました。干ばつなどは、人に伝える「見せ方」が難しい問題である事に対して、私たちが感度を高く情報を収集し、発信していくことが重要であることを確認しました。

 6班では、水や食糧の分配に着目し、自然災害の支援者・被支援者の経験をもとに議論が進みました。特に、物資の共有時に妊婦さんや子どもに多く配分されることが理想であると考え、人的ネットワークと情報ネットワークが必要であると意見がまとまりました。災害時の情報格差を防ぐために、日ごろから情報を共有できるネットワークを作成すると良いという案や、風化させないための市民教育も必要であることが話し合われました。また、事前に予測し情報を提供することで、災害発生時の混乱が防げる点や、被災者の状況を支援側が理解するとスムーズな支援につながるのではないか、という意見も挙がりました。

 

 講評

最後に、グループワークやその意見共有を踏まえ、ゲストの吉田氏と金塚氏から講評を頂きました。

 吉田氏は、「緊急支援と開発の両方が重要と皆さんが考え、共有したことは、実際の現場でも長らく議論されていることです。ただ、それを実際に実現するのはとても難しく、最近ようやく『The New Way of Working』として、人道支援と開発の共同の成果をハイレベルで協力して実施していこうという段階にあります。しかし、今後より一層アイデアを取り入れて人道支援に活用していきたいと思っています。」と述べられました。また、「被災国が主体的に彼らが必要なことを進められることが大事で、現地の人々をエンパワーする「Localization」として世界人道サミットの課題として議論されています。」と最近の議論の潮流を紹介してくださり、自然災害の被災者や支援者の経験を防災や人道支援に役立てていく必要性を述べられました。

 また、金塚氏は、「グループワークの共有で指摘された『より良い復興』は、日本としても力を入れており『Build Back Better』という言葉で、仙台防災枠組にも取り入れられています。」と述べ、「Google Earth Engineなどプラットフォームを活かした防災協力も一つの形として想定されるので、ぜひ調べてみてください」と、実際の取組み可能性について示唆してくださいました。また、「トイレの問題や支援する側の課題、情報ネットワークの必要性など細かな点に目が回らなければならない点は、人道支援において重要な視点です」と述べられ、干ばつの発信の難しさや、情報の伝達から支援に繋げることの難しさにも言及されました。「SNSが普及しているという意味で、我々全員が問題意識についての情報を発信することができ、人々の意識向上に繋がります。そして、それが最終的な支援に繋げることができ、人道問題の解消や、OCHAやJICAなど支援側の活動の効果を向上することができると思います。」

参加者一人ひとりの意見に真摯に向き合い、共に考えてくださった吉田様、金塚様に心より感謝申し上げます。

 

【参加者の声】

本勉強会にお越し下さった皆様からは、多くのご満足いただいた意見を頂きました。本報告で、一部をご紹介させていただきます。

  • 様々な立場の方と意見を共有することができ、刺激を受けました。
  • ディスカッションを通じて、勉強するのみならず、知ること・考えることに繋げることができ、良いきっかけとなりました。
  • グループディスカッションを行う上で、異なる見解が合った点が面白かった。
  • ネットワーキングタイムでは、自分の関心分野に関する情報を得ることができました。

『世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」〜脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは〜』にお越しくださり、誠にありがとうございました。

▲ 記念撮影の様子。

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第8回

第8回SDGs勉強会「国際教育協力の最前線 ~『質の高い教育』を問い直す」

2017年10月21日実施

国連フォーラム関西支部 第8回SDGs勉強会
国際教育協力の最前線 ~「質の高い教育」を問い直す~

 

2017年10月21日(土)に国連フォーラム関西は第8回勉強会『国際教育協力の最前線ー「質の高い教育」を問い直す』を開催いたしました。今回はその報告をさせていただきます。

本イベントでは、国連フォーラム関西運営メンバー3名によるプレゼンテーションとワークショップを通じて、国際教育協力における教育の質に関する議論の潮流を理解し、国際教育協力に関わるアクターについて学びました。

【イベント概要】

《企画概要》

第8回
イベント名:
国際教育協力の最前線 ~「質の高い教育」を問い直す~

日時 :2017年10月21日 14:00~17:00

場所 :賢者屋大阪梅田

タイムテーブル:
13:30~14:00:開場
14:00~14:05:オープニング、国連フォーラム紹介
14:05~14:25:プレゼンテーション①
14:25~14:45:プレゼンテーション②

14:55~16:00:ワークショップ
        ~この国に必要な「質の高い教育」って?~
16:10~16:35:プレゼンテーション③
16:35~17:00:クロージング

プレゼンター :

  • 矢野泰雅(神戸大学大学院国際協力研究科修士1年)
  • 浅川裕子(京都大学教育学部3年)
  • 安藤秀雄(神戸大学大学院国際協力研究科修士2年)

【開催報告】

《プレゼンテーション①》

『国際教育協力のこれまでとこれから〜「質の高い教育」と「教育の量」』(矢野)

教育協力とはどのような協力を指すのだろうか。ミレニアム開発目標の後継として持続可能な開発目標(SDGs)が採択されてから2年経ち、教育の目標において7つのターゲットが定められていますが、第1部ではこれまでの教育協力の潮流と変遷に焦点をあて、教育の『量』と『質』の観点から「教育協力」を考えました。

発表後には参加者の方から「伝統的な教育を行っている地域が存在する国であっても、純就学率100%を目指すべきなのか?」という質問をいただきました。この質問に対して、プレゼンターからは、答えは一つではないとした上で以下の文献が紹介されました。
「伝統社会における近代教育に関する課題は大変重要かつ難しい議論となっています。教育は、国家の経済開発に必要であり、1人1人の将来の選択の可能性を広げる手段として議論される傾向がありました。また、伝統社会の人々もそれらの正の影響に賛成し、同意することも少なくないことも重要です。しかし、文化継承の点から伝統社会への負の影響を与える可能性があるのも事実です。以上からわかるように、伝統社会ごとに「教育」の役割は異なり、一概に公教育を排除すべき、また普及すべきとはいうことができないため、ケースによって文脈を理解することが重要になるのではないでしょうか。」
(参考:高柳妙子「ケニアの伝統的な社会における教育の意味-ラム県とナロック県の比較から-」国際教育協力論集, 第12卷, 第2号, 2009年)

      

プレゼンテーション②

『「質の高い教育」を考える「内容と方法」の視点」〜”誰も取り残さない”ために最後の5%を教育を保障する』(浅川)

「質の高い教育」の「質」とは何か。就学率の向上や学校の設備、教師の力量形成に加えて、教育の「内容と方法」の視点も見落とすことはできません。第2部では、紛争後社会に焦点を当て、民族融和などの社会課題と教育の関わりについて、教育の「内容と方法」の視点から考えてみました。

第二部では「最後の5%」に着目したプレゼンテーションが行われました。これは学齢期の子どもの5%~10%を占める層を意味し、都市から離れた遠隔地の居住者、放牧生活者などの地理的要因に影響されるもの、障がい児、難民など、特殊な教育需要があるもの、女子などが挙げられます。教育機会の量的拡大によって、初等教育へのアクセスは飛躍的に増加を遂げていますが、まだこれに手が届かない「最後の5%」の層がいるのです。
(参考:山田肖子「初中等教育の意義と課題ー途上国の現場でのミクロな分析からー」JBIC 教育ネットワーク研究会ー国際教育開発連続講座第2回ー、2004年)

インドのカーストに関心を持つ参加者の方から、「子どもの生活に根差した教育内容と方法について、カーストの場合は具体的にどうなるか?」という質問をいただきました。プレゼンターからは、アメリカの「デモクラティック・スクール」にて実施された多様性のある集団の中の彼らの生活経験に基づいた教育方法を例にあげ、カリキュラムは公的に共通の枠組を参考にしながらも、教育現場の歴史や文化に合わせて、教師が主体的に編成していくことに価値があるのではないかという考えが述べられました。

《ワークショップ》

ワークショップ:『この国に必要な「質の高い教育」って?』

ワークショップでは、仮想国家・ヒユタ共和国のケーススタディを通して、教育内容・方法における課題を考え、多様なアクターによる関わり方の可能性をグループに分かれて話し合っていただきました。

プレゼンテーション③

『国際教育協力にどう関わるか?ー民間企業の役割ー』(安藤)

第3部では国連と民間セクターの国際教育協力に向けた動きを概観した後、事例を交えながら教育関連企業の国際教育協力に関わる活動を紹介しました。また、国際協力業界の中で近年プレゼンスが高まりつつある企業に焦点を当て、自分らしい国際育協力についても考えました。

・KUMONののバングラデシュ事業におけるアプローチについて
プレゼンではKUMON職員がBRACスクールに通う貧困層の子どもたちに対して直接関わるという形ではなく、ライセンス契約や現地スタッフ育成の面で関わっている事例を紹介しました。KUMONは国内においては、数学・国語・英語を主力として外国語や書道など様々なコンテンツを提供していますが、海外ではその国の文化や歴史等を踏まえた教科内容にしています。バングラデシュにおける教育事業は、FC展開の事業性の検討や人材育成の仕組みの確立などの為の新たなパイロット事業を2017年より展開しており、今後はJICAに限らず国連との関わりも視野に入れ、教材等のリソースを提供した教育事業の拡大を続けることを紹介しました。
プレゼンを通して、自分の思い描くアプローチがどの組織に所属することできるかは、しっかり調べて考えなければならないことを参加者の皆様と考えられたかと思います。

《参加者の声》

最後に参加者アンケートから一部参加者の声を抜粋してご紹介します。

  • 教育の質と量に分けて考えたことはなかったので新鮮だった
  • 質の高い教育と言っても幅が広く、単純な問題でないことがよくわかった
  • グループでの意見は色々な見方が人によって違っていて面白かった
  • 国際機関と言えば国連やJICAを思い浮かべませんか?という質問にハッとさせられました。民間企業もそうであること、知らないうちに意識から外してしまっていました

みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。

これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。


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第6回

第6回SDGs勉強会「アフリカの将来とビジネス~TICAD VIを経た今、日本の果たす役割とは~」

2016年12月9日実施

国連フォーラム関西支部 第6回勉強会

SDGsとアフリカ開発

開催報告

国連フォーラム関西です。2016年8月下旬、ケニアにおいてTICAD VI(第6回アフリカ開発会議)が開催されました。1993年以降日本政府が主導する形で開催されてきたTICADが、今回初めてアフリカでの開催となり注目を浴びました。
「日本はこれまでどのようにアフリカと関わってきたのだろう?」「アフリカが抱える問題は、今どうなっているのだろう?」今回のTICADをきっかけに、このような疑問を抱かれた方もいると思います。アフリカの開発、そして日本とアフリカの関係について、ゲストの方々、参加者の皆さまで一緒に考え、学びました。

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:SDGsとアフリカ開発

日時 :2016年12月9日 18:30~21:00

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス1004教室

ゲスト :

  • 田瀬 和夫氏
    国連フォーラム共同代表。デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 執行役員・ディレクター。2016年5月1日より同社CSR・SDGs推進室長に就任。
    1992年外務省に入省し、国連政策・人権人道・アフリカ開発・国際機関拠出金・人間の安全保障などを担当したのち、2004年に国際連合人道問題調整部人間の安全保障ユニット課長。大阪大学招聘教授。
  • 大豊 盛重氏
    公益社団法人 日本国際民間協力会NICCO 本部部長/NGO相談員
    放送局・テレビ番組制作会社での勤務を経て2010年NICCOの職員となる。マラウイでの飢餓の起きない村づくりのほか、東日本大震災、パレスチナオリーブ農家支援などで現地担当。現在は京都本部にて広報・チャリティイベントを担当。
  • 久木田 純氏
    国連フォーラム共同代表。関西学院大学教授(学長直属SGU招聘客員教員)。
    ユニセフ駐モルディブ事務所、駐日事務所、駐ナミビア事務所、駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2003年に 世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。
  • 大林 稔氏
    龍谷大学経済学部名誉教授。早稲田大学経済学研究科博士課程満期退学。博報堂、外務省、国連開発計画などを経て龍谷大学へ。
    アフリカの政治経済および開発援助について研究を進めるとともに、実践的にアフリカの発展に関わり、第四回TICADの際はTICAD市民社会フォーラムの代表として、アフリカと日本の市民社会の参加に努力した。

【開催報告】

第1部》講演
「アフリカの開発とTICAD」(大林氏)
「アフリカにおける国際協力とNGOの実例」(大豊氏)
「ビジネスは格差を解消できるのか」(田瀬氏)

《第2部》パネルディスカッション
「アフリカ×SDGs×ビジネス」

《第3部》座談会

当日の内容を記録致しました議事録は以下のURLからご覧いただけます。
https://docs.google.com/…/1vwAKj0t-zY0uoF4XlrqAZSXfbX-cU9nL…


多くの参加者の皆様と共に、ゲストの方々を交え充実した議論を行うことができ、運営メンバー一同とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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第5回SDGs勉強会 「人権を守ってこそ持続可能な開発に」

2016年9月30日実施

国連フォーラム関西支部 第5回SDGs勉強会

人権を守ってこそ持続可能な開発に

開催報告

すべての人間が生まれながらにして持っている権利、「人権(Human Rights)」。
ジェンダー、マイノリティの権利等々、様々な分野で語られているこの概念ですが、「重要なのはわかるけど、具体的に何を指すのかはいまひとつよく分からない・・・」そんな風に感じたことがある方も少なくないはずです。
しかし、そんな「人権」、実はSDGsの原則にその考え方が反映されているなど、現在開発政策や実践の場においても重要視されつつあります。
「人権」とは何なのか、そして人権はSDGs、ひいては国際社会にどのように関わっているのか、秋の夜長に素敵なゲストの皆さまと共に考えてみました。

 

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:人権を守ってこそ持続可能な開発に

日時 :2016年9月30日 18:00~20:00

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス1408教室

タイムテーブル:

18:00 – 18:05 国連フォーラムの説明
第一部
18:05-18:35 伊藤氏 「ヒューマンライツ・ナウの人権擁護活動から『人権』を考える」
18:40-19:00 久木田氏「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」
19:00-19:20 パネルディスカッション
 議題:「SDGs×Human Rights~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~」
第二部
19:25-19:45 グループディスカッション/質疑応答
20:00 終了予定

ゲスト :

  • 伊藤和子(いとう かずこ)氏
    弁護士 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
    1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。2004年、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員。2005年、国連人権小委員会インターン、米国NGOインターンを経て2006年に帰国。2006年に国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウの立ち上げに関わり、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。ヒューマンライツ・ナウは2012年以降国連特別協議□を付与された国連NGOとして活動中。
    同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。
  • 久木田純(くきた じゅん)氏
    関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表(unforum.org)。
    1978年西南学院大学文学部英語専攻卒業、シンガポール国立大学社会学部留学(ロータリー財団フェロー)を経て、九州大学大学院で教育心理学修士号取 得、同博士課程進学。1985年外務省JPO試験に合格、翌年から国連職員としてユニセフ駐モルディブ事務所に派遣され、駐日事務所、駐ナミビア事務所、 駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2015年1月国連退官。2003年に 世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。

【開催報告】

《第1部》講演

「日本初国境を超える国際人権活動」(伊藤氏)
「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」(久木田氏)

 

《第2部》パネルディスカッション

SDGs×Human Rights ~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~

《第3部》グループディスカッション

当日の内容を記録致しました議事録は以下のURLからご覧いただけます。
https://docs.google.com/…/1JOkYZpWCLdlsuCHeSR6EtVI6jm7…/edit


みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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第3回SDGs勉強会 「幸せの指標化への挑戦~これからの開発を考える」

2016年7月15日実施

国連フォーラム関西支部 第3回SDGs勉強会

幸せの指標化への挑戦

~これからの開発を考える~

開催報告

テーマは、開発分野で永遠のジレンマであり続ける、”幸せ”の指標化。経済成長率、教育普及率・・・人間の豊かさとは、本当に客観的に指標化できるものだけなのでしょうか。もし本当に大切なのはもっと主観的な”幸せ”なら、それを開発プロジェクトに落とすためには、主観的な幸せをどのようにして指標化しうるのでしょうか。開発分野に少しでも足を踏み入れたことがある人なら誰でも直面したことのあるその問いの答えを、豪華ゲストの皆さんと贅沢な企画で、一緒に考えてみました。

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:幸せの指標化への挑戦 ~これからの開発を考える~

日時 :2016年7月15日 18:30~21:15

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス 1408教室

タイムテーブル:

18:00~18:30:開場
18:30~18:40:オープニング、国連フォーラム紹介
18:40~19:20:講演~幸せの指標化への挑戦~
19:20~21:00:ワークショップ
  ~あなたがUNHDP(国連幸福開発計画)の職員だったら?
21:00~21:15:クロージング

ゲストの皆さま:

久木田純教授(関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表)
村田俊一教授(関西学院大学総合政策学部教授、前国連アジア太平洋経済社会委員会事務局次長)
NGO光の音符(HP:  http://hikari-no-onpu.com/ )
 西村ゆり氏(NGO「光の音符」設立者、同志社女子大学嘱託講師、京都府医師会看護専門学校講師)
 後藤聡美さん(「光の音符」学生スタッフ、神戸大学人間発達環境学研究科修士1年)
NPO法人D.Live
 得津秀頼氏(「D.Live」副代表理事、元小学校教員)


【開催報告】

《第1部》

講演「持続可能な開発に向けた「質的」アプローチの重要性と実現への課題」(村田氏)

グローバル化が進み、経済発展が豊かさの象徴となりつつある現状に対して、SDGsやGNH(国民総幸福量)といった質的な開発アプローチの重要性を説明していただきました。一人一人の多様性を認め合い、時間に追われるような生活を見直し、自分にとって何が本当に幸福なのか問い直すことが、これからの時代を生きていく人々にとって大切であると教えていただきました。

《第2部》

ワークショップ「あなたがUNHDP(国連幸福開発計画)の職員だったら?」

ワークショップでは、指標化できない価値にそれぞれのフィールドで取り組んでいるNGO光の音符様、D.Live様の両ゲストの事例をもとに、①参加者がその事例の抱える課題を発見し、問題解決のためのプロジェクトを立案する ②プロジェクト立案を通して感じた、指標化できないものの指標化の長所と短所について議論する という二部構成でグループに分かれて話し合っていただきました。

 

 

その後、ゲストの方々から活動紹介とご講評をいただき、自尊感情や地域の人々とのつながりなど、量的に測ることのできない価値の大切さを実務経験の中からお話ししていただきました。

 

《参加者の声》

最後に参加者アンケートから一部参加者の声を抜粋してご紹介します。

  • 幸せという指標化が難しいテーマについて議論したり考えるということが初めてだったので、出てくる意見や内容が全て新鮮でとても勉強になった。より一層このテーマに興味を持てた。
  • 勉強会の主要テーマである、”幸せの指標化”について議論する時間や参加者との交流の時間がもうすこしほしかった。
  • 自分の研究に関して重要な知見が得られた。

みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。

これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。


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第2回SDGs勉強会 「世界へ届け、関西の国際協力~保健分野から見る持続可能な開発~」

2016年5月27日実施

国連フォーラム関西支部 第2回SDGs勉強会

『世界へ届け、関西の国際協力

~保健分野から見る持続可能な開発~』

開催報告

 

5月27日、国連フォーラム関西・第2回勉強会「SDGs Series 世界へ届け、関西の国際協力@大阪~保健分野から見る持続可能な開発~」を開催いたしました。
本イベントでは、
中村安秀氏(大阪大学大学院人間科学研究科・教授、日本国際保健医療学会・理事長)
久木田純氏(関西学院大学教授、元 UNICEF カザフスタン事務所所長)
吉津麻美子氏(WHO神戸センター・広報官)

という3名のゲストをお招きして、様々な観点からSDGsにおける保健分野の取り組みに関して議論を行いました。
お忙しいところ、高校生から社会人まで非常に多くの方々にご参加頂き、誠にありがとうございました。以下、本イベントの報告をさせていただきます。

 

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:世界へ届け、関西の国際協力 ~保健分野から見る持続可能な開発~

日時 :2016年5月27日(金)18:00~20:30

会場 :関西学院大学 大阪梅田キャンパス1004教室

    (大阪府大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー10階)

タイムテーブル:

第一部(18:10-18:20) WHO神戸センターの方からの講演

 (18:20-19:00)  久木田氏×中村氏対談「Health × Sustainable Development~2030の私たちへ~」

第二部(19:10-20:20)  ワークショップ  テーマ:「その活動は持続的?効果的?」

第三部(20:20-21:00) ネットワーキングタイム:

学生による国際協力の意義や国際協力系学生団体が抱える組織運営の問題等について互いに相談し合ったり、それぞれの活動を共有してコラボレーションの可能性を広げたりする非公式の時間として想定しております。

ゲストの皆さま:

 中村安秀氏(大阪大学大学院人間科学研究科・教授、日本国際保健医療学会・理事長)

 久木田純氏(関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表)

 吉津麻美子氏(WHO神戸センター・広報官)


【開催報告】

《第1部》

1-1 講演(WHO神戸センター:吉津氏)
G7伊勢志摩サミット(5/26, 27開催)で話し合われた、公衆衛生危機への対応、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、薬剤耐性菌(AMR)対策の概要について紹介頂きました。

1-2 対談-Health×Sustainable Development~2030の私たちへ~(中村氏・久木田氏)
1-2-1 保健分野での現場経験と持続可能な国際協力について
中村氏:パキスタンでUNHCRの保健医療担当官として勤務された際の経験についてお話頂きました。特に、難民支援の際には、難民だけでなくそのコミュニティー全体を見ることと難民自身のエンパワーメントを目指すことがSustainabilityに繋がるという、現場を経験したからこそ感じる気づきについて話して頂きました。

久木田氏:SDGsにおける保健分野について、UNICEFでの勤務経験を踏まえてお話頂きました。特に、SDGsにおいて特徴的な、Universality(誰も取り残さず、すべての人に恩恵をもたらすことを目指す)とTransformation(途上国だけでなく先進国も変容していくことで、新たな形で目標達成することを目指す)という、二つの概念を紹介していただきました。

1-2-2 SDGsの取り組みの中で、学生だからできること、学生にしかできないこと
中村氏のメッセージ(要約):学生ならではのフットワークの軽さを活かし、まずは深く考えず世界に飛び出し、自分の目で世界を見てください。また、多数派の中に埋もれていては社会を変えることはできないため、不条理に対する怒りを感じ、少数派であることを恐れずに未来をつくっていってください。

久木田氏のメッセージ(要約):現在の地球は、温暖化や核のリスク等、様々な問題を抱えています。また、貧富の格差も拡大しており、世界は危機的な状況に立っているといえます。未来の世界を守るため、日本を飛び出し、世界では何が問題となっているのかを考え、自分の目標を定めて最後まで走りぬいてください。

《第2部》

ワークショップ「その活動は持続的?効果的?」
ワークショップでは、参加者の方々がこれまで取り組んでこられた国際協力の活動、またはテストケース(学生団体によるラオスでの歯磨きプロジェクト)について、活動の持続可能性を高めるためにはどうすればよいのかを話し合って頂きました。

以下、グループ発表の内容より一部を抜粋しご紹介致します。
・学生が活動できる時間は4年間と短く、1人の学生ができることはほんのわずかであると思う。活動内容を報告書など紙媒体で保存していくことが、組織としてのノウハウの蓄積にもなると考える。
・対象地域の文化や慣習を理解することで何が求められているのかを的確にくみ取り、それに沿った形でこちらから情報を提供していくことが必要だと考える。
・ボランティアではなく現地の人が自ら歯磨きを普及させる形を作る方が、インパクトがありより継続するのではないか。

《第3部》

ネットワーキングタイム
今回の勉強会では、参加者の皆様とゲスト、または参加者の皆様同士で自由に交流していただくネットワーキングタイムを用意いたしました。

 

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みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西をどうかよろしくお願い申し上げます。

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第1回SDGs勉強会「『貧困』を多角的に考えよう」

2016年3月18日実施

国連フォーラム関西支部 第1回SDGs勉強会

『SDGs #1「貧困」を多角的に考えよう』

開催報告

去る3月18日、国連フォーラム関西 第一回勉強会「SDGs #1『貧困』を多角的に考えよう」を開催いたしました。

本イベントでは、

久木田純氏(関西学院大学教授、元 UNICEF カザフスタン事務所所長)

村田俊一氏(関西学院大学教授、元国連アジア太平洋経済社会委員会事務局次長)

大西靖典氏(JICA関西所長)

渡部正樹氏(OCHA神戸事務所所長)

という4名のゲストをお招きして、様々な観点からSDGsターゲット⑴貧困削減に関して議論を行いました。

お忙しいところ、中学生から社会人まで非常に多くの方々にご参加頂き、誠にありがとうございます。以下、本イベントの報告をさせていただきますのでどうぞご覧ください。

 

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:SDGs #1「貧困」を多角的に考えよう

日時   :2016年3月18日(金) 18:00~20:30

会場   :関西学院大学大阪梅田キャンパス  ( 大阪府大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー14階)

タイムテーブル:

 第一部(18:10~18:55) 講演会「”多角的に考える”貧困」

 第二部(19:00~19:55) パネルディスカッション(40分):質疑応答(15分)

                                テーマ「貧困撲滅のトランスフォーメーション」

 第三部(19:55~20:00) 総括

ゲストの皆さま:

 久木田 純 氏(関西学院大学教授、元UNICEFカザフスタン事務所所長)

 村田 俊一 氏(関西学院大学教授、元UNDP駐日代表)

 大西 靖典 氏(JICA関西 所長)

 渡部 正樹 氏(OCHA神戸事務所 所長)


【開催報告】

《第1部》
  • 講演―国際開発目標の経緯と背景(久木田氏)

MDGsからSDGsへの変遷を見ながら、その概要を紹介頂きました。中でも現代社会が抱える大きな問題である、環境問題と格差拡大―この課題を解決するにあたって重要な「トランスフォメーション」という視点の提示を行って頂きました。

《第2部》
  • 講演―貧困問題の多面性(村田氏・大西氏・渡部氏)

村田氏:SDGsが抱える課題とその複雑性についてお話頂きました。中でも、貧困削減のためには、グッドプラクティスを実践するコミュニティの視点、そしてRegionalな単位からの視点が重要であること、またそれをどう国際目標に結びつけるかが課題であるといった内容に関して議論して頂きました。

大西氏:これまでの現場での経験を踏まえ、貧困削減と経済成長との関わりについてお話頂きました。中でもアフリカやアジアにおけるインフラ事業の紹介、そして、産業のトランスフォーメーションの必要性と、貧困削減におけるインフラ・産業支援の意義について説明して頂きました。

渡部氏:SDGsと人道支援の関連性に関してお話頂きました。中でも、SDGsの原則の一つである「誰も取り残さない」という点は、人道問題にどう関わってくるのか、またその試練金となる今年5月の世界人道サミットの解説を行って頂きました。

《第3部》
  • 四者パネルディスカッション―貧困削減へのトランスフォメーションとは

<貧困削減へのトランスフォメーションとは>

本題を考える手始めとして、まずSDGsにおいても主要な論点とされている「貧富の格差」の構造をどうトランスフォームできるかということに関して議論を行いました。中でも、①発展・目標の実施スピードが異なる中、コミュニティレベルで議論することの重要性、②民間セクター、中でも企業がコアビジネスで援助に携わる重要性、③職と産業によって貧困削減をしていく重要性、といった点が議論されました。

<参加者が「自分事」として捉え、できることとは>

上記の議論を踏まえて、参加者がどのようなアクションを取ることができるのか考えました。問題に関心を持ち続けることの大切さに加え、SDGsで課題とされているようなことは日本国内に沢山あり、そのようや問題にも目を向け解決に取り組む大切さについて議論されていたことが印象的でした。

《参加者の声》

・ありがとうございました。社会人になっても国際協力の情報を得られる場所を探しており、私にはぴったりだと思いました。今後も勉強会楽しみにしています!

・これまでは、国連フォーラムのメルマガに登録していてもイベントは関東ばかりでとても残念に思っていたので、今回国連フォーラム関西が設立され、関西で勉強会を開いていただけ、とても嬉しく思います。今後もこのような機会があればぜひ参加させていただきたいです。

・とても貴重な時間だったと思います。学びがとても多かったので満足しています。ありがとうございました。

 

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みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。

これからも国連フォーラム関西をどうかよろしくお願い申し上げます。

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!