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第23回 2006年7月13日開催
於・UNDP


ジョグジャカルタ地震とスマトラ沖地震
−大規模災害への国際社会の対応
中村 俊裕さん
国連開発計画(UNDP)インドネシア事務所

 

質疑応答

 

■Q■ UNDPのCrisis Preventionの部署が緊急事態のシナリオ作りをしていると聞いていたが、それは使われなかったのか。   

■A■  アセスメントは相手国政府に比較的受け入れられるが、中・長期的な復興戦略について国際機関のものを政府に押し付けることは難しい。アチェの例でも、UNDP、WB、GTZなどで作った復興・復旧のフレームワークを提示したが、政府のナショナルオーナーシップ意識の高まりの中でもあり、受け入れられなかった。やることは良いと思うし、徐々に手法が浸透すればよいが、それは今後の課題である。


■Q■ 実際に、ECLACに添った形でセクターごとに(資金やプロジェクトの)割り振りがなされるのか。モニタリングの問題は。   

■A■  ECLACでのアセスメント発表後、プランニング担当者が気を抜いてしまうということはあった。アチェでは、政府が中長期的な復興プランを作るためにチームを編成し直して長期プランを作ることにしたが、チーム編成、地方政府も入れるべきか、法律の枠組みをどうするかといったことに2-3ヶ月かかってしまった。官僚的な仕組みの中で中長期的な対応に遅れが生じてしまったといえる。

ジョグジャカルタのケースでは、アセスメントと計画作成の間に国際支援のギャップが生じてしまった。一方で大統領が期限を指定したこともあり、インドネシア政府の役人が必死にプランを作成していたことを記憶している。計画通りセクターに配分されるかは今後の課題である。特に、NGOが持つ支援額が大きい場合は難しい。



■Q■ 緊急支援から中長期の復興支援にどうつなげていくかについて知りたい。アチェの場合、2005年までの緊急支援に十分な資金があったが、2006年以降の資金、とくにマルチで集まらないということを聞いているが、緊急支援と中長期の支援の財源のギャップを現場にいてどう感じるか。中長期的に資金を集めるためのアピールはしているか。
また、インドネシアでの人道支援と中長期の支援のパターンを他国でもできるのか。できるとしたら、UNDPが音頭をとるのか。システムとしてどんなものが有り得るとお考えか。
   

■A■  被害額換算後、ドナー会議を行い資金を集めることが多いが、2年以内に使うようにといった制限が付くことはよくある。各国が資金を捻出する際、議会に対して「緊急支援のために使う」と説明することが多いためだ。UNDPの場合、1.3億ドルを2006年末までに使うことになっている。その後は、トラストファンドの500億円を使うことになる。期限は無く、UNDPは既にそこにプロポーザルを出したり、各政府に直接掛け合っている。アチェへの支援金額は足りていると思うが、中長期の支援についてまたアピールをするのもいい考えだと思う。

リーダーシップの発揮については、中長期支援については政治的になる。どの機関が何をやるかを議論し始めると収集がつかないので、どこが早く対応できるかというデファクトで決まることになるだろう。今のところは、初期の対応はOCHA、中長期はWBとなっている。国連で人道支援に人材が投入されている間に、WBはECLACのリソースパーソンを政府に派遣して手法の説明をしている。国連は人道支援が先なので仕方がない面もあり、直されない限りこの状態が続くと思う。いずれにせよ政治的な要因から、WBは国連に声をかける。国連がデータを使える人材をもっと育てる必要があるだろう。

■Q■ プラニングプロセスについて、アチェで6ヶ月、ジョクジャカルタでは1-2ヶ月だったのはなぜか。経験を積んだためか、規模が違うからか、あるいは何ヶ月以内などと決められていたためか。   

■A■  最初はジョグジャカルタのほうが規模が小さいから2ヶ月程度か、という感触だったが、実際には被害額がアチェの75%にも達したので、後から焦ることになった。科学的に決まっているものではない。

■Q■ なぜジョグジャカルタの被害額はアチェの75%にもなったのか。アチェ支援の場合、アチェとジャカルタの2チームを作ったときの効率性はどうだったか。   

■A■  住宅被害の違いが大きい。ジョグジャカルタの方が一軒辺りのコストが高く壊れた数も多かった。ジョグジャカルタの被害額の70-80%は住宅である。

効率性の問題はあまり無かった。アチェは歴史的な背景や国際社会を閉ざして来たことなどもあり、キャパシティの面でも低かった。ジャカルタが手伝って終わらせたが、ミスコミュニケーションはなかった。

■Q■ 被害額算定の際、反政府勢力からの干渉はなかったか。   

■A■  プラニングについての干渉はほとんどなかった。ただ、人道支援の際は、津波被害にあった沿岸地区とガム支配地域が重なって大変だったと聞く。

■Q■ プライベートセクターの活躍(資金の援助以外)について教えてほしい。   

■A■  UNDPとの協力の例だが、会計コンサルティング会社のデロイトが人を無償で派遣してくれ、モニタリングのフレームワークをお願いした。石油会社のシュランバーガーが800台のコンピューターを寄付したが、実際には法規定が折り合わず実現しなかったようである。また、コンサルティング会社のアクセンチュアが無償で人材を派遣してくれたので、サプライチェーンのプロセス分析(農民の収入を増やすため、農作物の供給者から消費者までの流れを改善)を担当してもらい、それは今でも続いている。



■Q■ 国連は、民間企業からの寄付を募ることはあるか。   

■A■  UNICEF、UNHCRなどは積極的にやっているが、UNDPは始めようとしている段階。UNDPのやっていることが企業に分かりにくいこともある。UNDPはGrowing Sustainable Businessへの民間企業の巻き込みを考えている。

民間企業と仕事をする時には、1)寄付をもらう、2)ビジネスをしてもらう、という2つがある。寄付の場合はシンプルにもらっておく。ビジネスをさせる場合は、例えば、食品・家庭用品会社のユニリバーは、シャンプーなどを小さなケースに入れて地元の人が買える安い値段で売った。企業にとっては市場が広がり、消費者は安く使いたいものを使えることになる。このようなモデルをITやマイクロファイナンスなどに広げようとしている。関連部署と協力して、日本の企業を巻き込むことを考えている。

■Q■ クライシス・マネジメントでは、緊急援助・プランニング・評価などを公的機関(国際機関や政府)が担当し、復興・復旧については民間企業やNGOも積極的に参加してもらい、裾野を広げて協力していくことが必要だと考える。アメリカの警備保障会社がイラクで活動するといった例もある。公的機関がコーディネートを行い、民間の活力を復興に生かしていくというやり方は、今後のトレンドになるとお考えか。   

■A■  アチェではそれが鮮明になった。国連機関や政府では対応しきれず、NGOが入ってきて支援を行った。民間企業が協力に興味を持ち始めており、今後も広がると思う。ただし、援助の実際ではアグリーメント、レポーティングなどの方法が定まっていないため、時間がかかるだろう。支援の規模は小さく、援助での事務的なやり取りにまだ慣れていないという現状を克服できれば企業の活躍も広がると思う。

■Q■ 企業が調達に参加する場合、透明性と競争が必要になる。民間企業が支援にビジネスで参加する場合も同様ではないか。無償であればできるということか。   

■A■  報酬を払うのであれば調達の範疇になる。先ほどのデロイトの例では、4ヶ月間の20人のコンサルタントの無償派遣により、500万ドルの支援だった。その後に引き続きビジネスとして入りたいといわれたが、国連では、コントラクトを結ぶ場合はオープンビディングを開くなどして気を付けている。

ただ、市場で名が通っている企業とは、2年程度の中長期的契約をする。それにより、事務作業の手間を省き効率性が増す。ただし、癒着しないよう、定期的な見直しをする必要がある。

■Q■ 被害額の計算で、lossについては、それを実行するための人件費を足すとすると必要な支援額とは違いが出てくるが、どうなっているのか。   

■A■  ご指摘の通り、計算はReplacement cost(再建築価格)のみである。100万円の家を立て直すにしても、地震対策をしようとかそのための法律も整備するといったことになれば、当然もっと費用がかかるが、それはカバーされていない。その計算の専門家はまだいないようだ。現在はReplacement costプラスアルファーのベンチマークとしかなっていない。ロジックは弱いと思う。

 

以上

担当:谷、古澤

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