2.1. 国連フォーラム・スタディ・プログラムとは
国連フォーラム・スタディ・プログラムは、参加者「みんなでつくる」ことを運営方針として、実際に国連や二国間援助機関、NGO等の現場での活動を訪問するスタディ・プログラムである。具体的には、渡航前の事前準備(訪問先のプロジェクトリサーチ、訪問先との交渉、ロジの手配、事前勉強会の企画と運営)から現地渡航、渡航後の報告(報告書の作成、報告会の実施)や事後勉強会の企画と実施まで、約1年のプロセスにおいて参加者それぞれが役割を担い、プログラム策定を行なう。2010年より開催しており、東ティモール、カンボジア、ネパール、ルワンダ、パプアニューギニア等を対象国として実施。今回で10回目となる。
2.2. ヨルダン・スタディ・プログラム(JSP)とは
2.2.1. ヨルダンを選んだ理由とJSPのテーマ
2019年2月に、渡航国選定および渡航メンバーの検討を行なうタスクフォースが結成され、その後、渡航国選定のプロセスに入った。例年と同様、タスクフォース・メンバーが各自渡航候補国を提案し、全体で議論を行なったうえで、徐々に候補国を絞り込んでいった。その際には、(1)国連をはじめとする国際協力のプロジェクトが活発に行なわれているか、(2)外務省が発表する海外安全情報において、レベル1「十分注意してください」以下の地域が大半であるか、(3)渡航費を一定程度安価におさえることができるか、(4)渡航前の学習にあたって日本語または英語で読むことのできる資料が十分に存在するか、(5)「2019年」に渡航する意義のある国であるか、などを基準とした。
東南アジアや中央アジア、アフリカ、中東など幅広い地域から候補国が提示されたが、最終的にはラオスとヨルダンに絞り込まれた。どちらの候補国も深い学びが期待できるものであったが、以下の理由からヨルダンを2019年に渡航すべき国とすることでコンセンサスに至った。
- 中東情勢は流動的であり、渡航が難しくなる可能性はあったものの1、2019年夏であれば、ヨルダンの情勢は比較的安定していることが期待できること
- 難民に関するグローバル・コンパクト2が2018年12月に国連総会で採択され、ヨルダンをはじめとする難民受入国の負担分担が国際的に大きな関心事となっていること
- 難民にかかわる学びが中心になると想定されるとはいえ、持続可能な開発・経済発展や、ジェンダー、環境問題など多様な学びを期待することができること
- これまでスタディ・プログラムが明示的に扱ってこなかった「政治」的な側面を、中東情勢を事例として学ぶことができること
ヨルダンを渡航国として決定した後、JSPのテーマについて、引き続きタスクフォースで検討を行なった。上述のように、難民にかかわる学びが中心になる一方で、難民を生み出している複雑な中東情勢と平和構築の問題、難民とホストコミュニティ、ジェンダーなどの観点から考える多様な人々の共存・共生のあり方、さらに中東に位置しながら資源が乏しいヨルダンにおける持続可能な発展というように、多面的な学びを一年間かけて行っていくことを示すことができるものとして、以下をJSPの中心的なテーマとして掲げることとした。
激動する中東の中心で紛争と共存、世界の平和を考える
〜持続可能な社会を目指す新しい難民政策のあり方とは〜
2.2.2.今年の参加者の属性
本年度の参加者は、女性 43 名・男性 14名の計 57 名であった。社会人 37 名、学生 20 名が参加した。関東からの参加が 31 名と最も多かったものの、関西 10 名、九州から 2名、北海道から 2 名と、日本の北から南まで全国から参加があった。また、特筆すべきは海外からの参加者の多さである。コロンビア、イギリス、香港、ドイツ、ミャンマー、モザンビーク、アメリカ合衆国、エチオピア、トルコ、フィリピン、そして今回の渡航先であるヨルダンなど、世界中様々な国からの参加者が12名もいたことは、今年の参加者のバックグラウンドの多様性を表す好例だ。
出身地のみならず、職業や所属の面でも多様性に富み、互いに見聞を広める良い機会となった。会社員の中でも、メーカーやIT、商社、コンサルなど業種が様々だったが、大学生や大学院生、研究機関や国連・NPO職員なども多く、普段なかなか一緒に働くことがない者同士、多くの刺激や学びがあった。
[1] 事実、比較的安定的な政権運営が行われているヨルダンであっても、大規模なデモ活動が定期的に行われるなどしている。
[2] UNHCR, https://www.unhcr.org/the-global-compact-on-refugees.html, accessed on 21 November 2019.