ウガンダ・スタディ・プログラム

オンラインブリーフィングが始動しました!

 

USPブログ(10月29日)

オンラインブリーフィングが始動しました!

オンラインブリーフィングってなに?
USPにおけるオンラインブリーフィングは、現地の訪問予定先や、日本で活動されているウガンダに詳しい方々にお話を聞き、文献やウェブページの情報からは得られない生の声を聞くために企画されました。そして、勉強会を通じて構築した仮説を検証するために開催します。

もう現地渡航しないの?
来年2月の渡航も検討していますが、訪問出来ない可能性があるのも事実です。。。ですが更に精度の高い、そして実りのある学び、報告書の作成につなげられるよう、メンバー全員で全力を注いでいます。
またSDGsの観点からウガンダを知り、改めて自分なりの国際協力のあり方や自分なりの関わり方を考える絶好の機会です。

誰のお話を聞いたの?
今回は9月下旬から10月前半に開催した3名の方とのセッションについてご紹介します。

9月30日(水) 21:00-22:00 Mulijo Wasike Shadraque さん
 
             在日本ウガンダ大使館 臨時大使代行(CHARGE D’AFFAIRES a.i)

10月5日(月) 20:00-21:30 梅屋潔さん 
              神戸大学教授

10月7日(水) 20:00-21:00 小向絵理さん
              JICA国際協力専門員

在日本ウガンダ大使館 臨時大使代行 Mulijo Wasike Shadraqueさん
まずは表敬訪問をかねて在日本ウガンダ大使館の方とのセッションです。ウガンダと日本の関係や開発の枠組み、難民に対しての寛容な政策をはじめ、観光や気候変動、COVID-19に関する現地の情報など多岐に渡ってお話していただきました。

日本との2国間関係に期待する点に関しては、「日本とウガンダは相互の友情と協力により非常によい関係性を築いていると思う。」とお話がありました。特にインフラ領域では交通ネットワーク改善、カンパラ高架道路プロジェクト、交通渋滞緩和プロジェクト、職業訓練や教育改善プログラム、熟練労働者プログラムに関しても言及されました。

また「JICAボランティアやABEイニシアチブ奨学生として多くのウガンダ人が日本の大学で学び、日本のボランティアもウガンダを訪れている。今後の日本とウガンダの2国間協力に関する主なフォーカスはインフラ、保健、教育の分野が挙げられると考えている。」とお話がありました。ここから、今まで少し遠い存在だったウガンダがとても親近感を感じました。

他にも、ウガンダが他のアフリカ周辺国と比べてCOVID-19対策でうまくいった要因をお聞きすると、「基本的にはWHOのプロトコルやアドバイスに従っている。ただムセベニ大統領主導の一貫した対策とその実行、そして過去のエボラウイルス感染症の経験の2点が功を奏した主要な要因ではないだろうか。」との説明があり、世界的に直面しているCOVID-19パンデミックに対して日本に住む私たちも見習っていこうと考えました。
これからの日本を引っ張っていく立場として、今後もウガンダとの友好関係を続けられるよう、私も引き続きウガンダに関して積極的に学びを深めていきます。

神戸大学教授 梅屋潔さん「変貌するアフリカ、その関係性」
ウガンダにおけるフィールドワークのご経験をJICA専門家としての経験と人類学者という二つの立場からお話していただきました。

梅屋さんからは、「開発業界で働いていると、フィールドにいる時間を減らしてでも報告書を上げてほしいと要請はあるが、人類学者の調査第一主義、少しでもフィールドにいたいという意識とどうしても合わなかった。」とあります。

ここからもわかるように、お話の節々で「現地との関わり方について、どこで折り合いをつけるか」、梅屋さんの中の葛藤を感じる場面が多くありました。隣人と接するように、国は違えども「こうしてあげたい」という気持ちは自然と出てくる、でも実際に自分ができることは少ないという事実に苦しくなるというお話は、国際協力の在り方を考え直させてくれるものでした。

また、調査では“見えない難民”の存在を指摘されました。地域人口の7割が難民で、難民の蓄財は認められても、土地所有は制限されます。税金を払っているのは10%だけであり、大きな病院を立てることは軋轢のもとになりかねません。つまり「誰かに支援をすることは誰かに支援をしないことである。」とおっしゃっていましたが、この言葉は、開発業界での経験と現在の人類学者としての双方の視点を持っているからこそ出てくるのだと思います。自分のやりたいこと、やっていることが必ずしも全ての人にとってプラスになるわけではないこと、誰かにしわ寄せがいってしまっている可能性がないわけではないことを、今一度心に留めて行動していきたいです。

JICA調査員 小向さん「ウガンダ北部(アチョリ地域・西ナイル地域)におけるJICAによる平和構築支援」
アチョリ地区IDP(国内避難民)帰還・定住促進支援、そして周辺諸国(南スーダン、コンゴ民主共和国)からの難民流入への対応について、JICA調査員の立場からお話していただきました。

「ウガンダ北部は、アチョリ、テソ、ランゴ地区の住民の95%がIDPキャンプに入るなど、他の紛争地域と比較してもIDPキャンプに入った割合が高いことがわかっている。住民の声を聞きながら目指す参加型開発や地方政府の能力構築については、政府と住民の関係性・信頼性の構築が重要であることを実感した。」と小向さんから説明がありました。

IDPに関してはUSP第三回勉強会でも調査しており、その実態が小向さんのお話を聞くことでより一層明確になりました。ウガンダ北部支援にJICAが関わった理由から、持続可能な開発に向けた「自立」を促す支援に関して細かく説明してくださり、中長期的な平和の定着のためには、相手国政府の能力強化が大切だと学びました。このことが、行政とコミュニティとの間のコミュニケーションの強化につながり、政府に対するコミュニティの信頼回復に寄与するのだと思います。

また、第3回勉強会の調査の中で女性や女の子のIDPが抱える問題に着目した調査を見たことがありましたが、小向さんのお話から、文献には出てこないIDPの男性も異なる脆弱性を抱えていることを知りました。アチョリ・グル大学の研究によれば、紛争終了後、男性の自殺率が上がったとされています。これは紛争の精神的ショックのみならず、めまぐるしく変わる状況の変化についていけないこと、IDPキャンプでも、元の地域に帰還しても、持っていたものを失ったこと、自分は何もできないというような失望感などがその原因ではないかとの推察がありました。調査に出てこない対象や情報に目を向け、気付くことの重要性は大きいことを学び、今後の研究でも意識していこうと考えます。

とても濃厚で、そして自分の国際協力との向き合い方を改めて考えさせられる時間でした。

今後も引き続きウガンダに関する学びを深めるため、オンラインブリーフィングの内容を発信していきます。(藤﨑)