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第42回
向川原 充さん
インターン先:
世界保健機関(WHO)本部
グローバル・インフルエンザ・プログラム(スイス・ジュネーブ)


第41回
津田 美樹さん
インターン先:
国際連合開発計画(UNDP)ウクライナ事務所コミュニティ開発部局、国際連合開発計画(UNDP)チェルノブイリ復興開発計画


第40回
田辺 陽子さん
インターン先:
国連本部 経済社会局・先住問題常設フォーラム事務局


第39回
岡崎 詩織さん
インターン先:
国連事務局ニューヨーク本部 広報局
第38回
入江 晴さん
インターン先:
日本政府国連代表部政務部及び国連政務局アフリカ2課

第37回
田中 貴生さん
インターン先:
UNEPカリブ地域事務所


第36回
岡崎 詩織さん
インターン先:
UNDP コソボ事務所

第35回
仲上 睦美さん
インターン先:
UNDP ニューヨーク本部
アフリカ局アフリカ開発会議部


第34回
高林 裕也さん
インターン先:
UNDPガーナ事務所


第33回
山中 翔大郎さん
インターン先:
国連広報センター(UNIC)東京事務所部


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HOME国連でインターン > 第43回



第43回 植村佳弘(うえむら よしひろ)さん

イーストアングリア大学 国際開発学部 ディプロマ課程修了
インターン先:国際連合開発計画サモア事務所(UNDP Samoa) - Programme Management Support Unit
インターン期間:2011年2-5月


■はじめに■

今回、国連開発計画(UNDP)サモア事務所でICT(Information Communication and technologies)インターンを行ってきた植村佳弘と申します。サモアでの経験を共有させていただきたく投稿いたしました。 1年間のディプロマ課程への留学を終え、そのままマスター課程への進学を検討していましたが、国際開発の現場を知ることで、マスター課程における研究や日々の授業により主体的に関われると思い、1年間の現場経験の期間を設けました。同サモア事務所でインターンをする前は、スリランカのローカルNGOでICTプロジェクトのマネージメントをボランティアとして行い、同プロジェクトのスタートアップ終了後にサモアに来ました。スリランカではレシピエントとして資金の援助を受ける側の活動に関わったので、次は、その資金を提供するドナー側の視点から開発の現場を見てみたいと思ったのがきっかけです。

■インターンシップ期間と場所■

2月上旬より5月中旬までのおよそ3ヶ月半(15週間)です。場所はサモア独立国の首都アピアにある国連開発計画サモア事務所です。

■インターンシップの応募と獲得まで■

2010年11月下旬にスリランカのジャングルでブログを用いた教育プロジェクトの立上げを完了し運営をしている頃に、Club JPOなどのメーリングリストで、UNDPサモア事務所でICTインターンを募集している情報に目が留まり応募しました。結果をもらったのは、1月中旬です。活動の開始は2月からです。12月、もしくは、1月上旬から活動できる人材の募集でしたので、採用から漏れているのかと思いましたが、クリスマス休暇シーズンの影響で連絡が遅れたようです。 選考の基準について採用後に教えてもらいましたが、「ICTに関連するキャリアがあること」と「長期間インターンができること」だったそうです。私は、カバーレターの中で、IT企業で販売促進用のWebサイトの企画を行ったこと、スリランカの教育に注力しているNGOでICTプロジェクトに関わっていたこと、そして、最長で6ヶ月活動できることをアピールしていました。




UNDPサモア事務所ビルディング


■インターンシップの内容■

主に事務所の広報用Webサイトのリニューアルプロジェクトを自ら企画し実行しました。インターンの契約内容にはサモアのICTプロジェクト運営のサポート業務がありましたが、運営が政府に移管されていたため、プロジェクトサポートユニットのWeb管理者としてその更新やメンテナンスに関わることが業務の中心になりました。

まず、インターンシップ開始直後は、前任者がいなかったためニューヨーク本部の作成するWebページのポリシーやガイドラインなどの読み込みを行いながら、Webサイトの現状分析と問題の抽出を行いました。その結果、4年もの間サーバー(Webページに掲載している書類や写真などを置いておく場所)がメンテナンスされておらず、古いデータでサーバーの容量がほぼ100%になっていたり、運用の為のマニュアルがなかったり、またリンクや期限切れのWebページが放置されていたりと、問題が山積みでした。また、市場調査として市民30人ほどに街で声をかけ国連開発計画のWebサイトについてのインタビューを行ったりもしましたが、多くの方が国連開発計画のことは知っていても何をしているかわからないというのが実情でした。もちろん、コミュニケーションの手段はWebサイトだけではありませんが、資金を提供してくれるドナーや市民へ活動報告をするための重要なツールの一つであるにもかかわらず、それが上手く活かされていない状況でした。

問題分析と解決方法の詳細な資料やスケジュールを作成し、リニューアルを実行するためにResident Representativeを中心とするWeb communication のミーティングを開催し、ディスカッションを行いました。この時も、参加者全員が、WebサイトだけでなくICT全般に対して苦手意識をもっている環境でしたので、理解してもらうためにイメージ図を描いたり、専門用語を使わないように工夫したりし、全員のコンセンサスを得たうえで、リニューアルプロジェクトを実施しました。

プロジェクトにおける私の担当する期間は、リニューアルを行う上でその土台となるサーバーとWebのストラクチャーの再整理と構築に、多くの時間を費やしました。業者に依頼する方法も検討しましたが、800以上もある書類の選別を行わなければいけないことを考えると、一つ一つの重要性をすぐに担当者に確認できる環境にある自分自身の手を動かした方が、効率も良くコストを抑えることができると結論を出し、私自身が一つ一つ確認をしながら実行しました。また、事務所内に散在していたプロジェクトのドキュメントや、国連開発計画の事務所として必ず開示しなければいけない情報(コンサルタントの契約情報や調達に関する情報など)などを捜しだしWebページに掲載しました。南の島にいながら部屋にこもり作業を続けることが多かったですが、サモアのMinistry of Natural Resources and EnvironmentへWebサイトに掲載する地図を調達するために折衝に行ったり、サモア観光局へ写真を調達するために交渉を仕掛けたりと、首都内ではありますがビジネストリップにはしばしば出かけていました。

インターン期間中は、Webサイトのリニューアル作業に大忙しだったので、充実した時間を過ごせたと思います。私の提案を受け入れ自由にやらせてくれた上司達には大変感謝をしています。しかし、日本であれば数分で完了するような仕事も、書類がないとか、担当者が誰であるかわからないなどの問題があり、事務所内を行ったり来たりし数週間の時間を要すこともあり、非常に骨の折れるインターンシップでもありました。Web Communicationという業務の性質上、組織を横断的に見ることができ一事務所の業務全体に対する視野を持てたことや、また環境やジェンダーの担当者とWebの打ち合わせを通し様々な話を聞くことができ、自分自身の興味が広がったことは非常に価値のある経験だったと思います。


オフィスの同僚とともに

■今後と将来の展望■

このインターンシップを通じて、Webサイトを通した組織のガバナンスの可能性についても勉強をしたいと思うようになりました。国連開発計画の各オフィスのWebサイトを研究すると、情報が豊富で、かつしっかりと管理されているオフィスがある一方、情報が更新されていないオフィスもあります。「国際連合開発計画」という同じ仕組みで活動しているにもかかわらず、情報がしっかり開示されないことは、ICTの問題ではなく、それに関係するマネージメントやプログラムを運営する人々の意識の問題であったり、そういった業務を報告するための事務処理の仕組みの問題であったりするのではないのかと考えています。約130ものオフィスがある国連開発計画なので、慎重に調査し分析すれば業務に内在する問題を発見し、解決の手だてが考えられるのではないかと思います。情報を迅速にドナーや市民に提供し事業の透明性を高め、自らの活動をしっかりと彼らに開示することで、より多くのフィードバックをもらえる体制を作ることこそ、国連開発計画のプログラムの質を向上させるために重要なのではないかと考えます。

また、次回、もしWeb関連業務に関わるのならば、活動内容をWebサイトにアップして、ユーザーフレンドリーなWebサイトの追求をしていくだけではなく、「もの言うWeb担当者」として事務所の業務がより効率的に行われるように、プログラムユニットやオペレーションユニットにもアクションを起こせたら、もっと面白くなるのではないかと考えています。

最後に、私は、日本企業で働いているときに多くのことを学んだと思っています。例えば、組織の一員として立場を認識し責務を果たすこと、物事を論理的に考え説明すること、そして問題を解決する方法などで、日本では「仕事の基本」とされることです。しかし、国連開発計画であってもNGOであっても途上国にある組織ではこういったことが弱いのではないかと、私はこの1年間の経験をもとに考えています。こういう部分は、日本のビジネスパーソンは非常に強いと思います。日本の友人や会社の上司や同僚達を見ていて、そう思います。極端な意見ですが、彼らが国連やローカルのNGOに入ったら、出される成果はもっと良くなるのではないのか・・・と。だからこそ、将来的には日本に潜在している優秀な人材を世界に送り出すことができる人材になりたいと思っています。



サモア沖地震(2009)で被災した時のままの海岸

■費用・環境など■

費用は、総額で約50万円です。内訳は航空券約23万円、VISA約1万円、海外旅行保険約4万円、家賃約8万円(月2万5千円位)、そして食費やその他の生活費・雑費で15万円位(月4万円位)だと思います。物件に関しては青年海外協力隊員の方の紹介で見つけることができました。サモアに来てから3日目には入居でき、早期に生活の基盤を整えられましたので、隊員の方々の協力は非常にありがたかったです。また、様々な貴重な生活情報も協力隊の隊員やシニアボランティアの方々のご支援がなくては得られなかったので大変感謝しています。

生活費の内訳は、大きく食費とインターネットに分けられます。まず、食費ですが、主食となる米(1kg100円位)やパン(1斤120円)はあまり高くないですが、野菜に関しては日本とほぼ同じくらいの価格だと思います(レタスは450円、中くらいの玉ねぎ5個くらいで200円)。鶏肉は骨付き胸肉が一つ50円位でした。現地のビールは1本120円位と日本に比べ安く美味しいです。次に、インターネットですが、日本のように使い放題はなく、キャパシティーベース(1MB=1STA=40円位)のプランを契約していましたので、月に1万円くらいかかりました。

生活環境に関してですが、多くの外国人にとってサモアは過ごしやすい場所のようです。実際、オーストラリアやニュージーランドから観光できている方を多く見かけました。しかし、私は月に1回くらい風邪をひいていました。住居が山手にあり昼夜で寒暖の差があったことや、道路が舗装されていない個所があるため埃っぽいのが原因かと思います。また、滞在中、犬に2回噛まれました。狂犬病は無いようですが、犬の数の多さはサモアでも問題になっているようです。


滞在中に大変お世話になった青年海外協力隊の方々


■これからインターンを希望する方へのメッセージ■

この報告書の最後に、心配されている方がいるのではないかと思われる「語学力」について書かせていただきます。まず、私の場合ですが、1年半前にイギリスのディプロマ課程に留学してから英語の勉強を本格的に始めたため語学力は高くないです。その為、インターン期間中は語学に関しては非常にストレスを感じることがありました。しかしながら、「自ら考え、自ら行動する力」があれば、インターンとしての業務を全うすることはできると思います。実際、会議を主催しコンセンサスを得ることができ、Webデザインやホスティングサービスの業者や関連組織とのミーティングもこなせました。さらに、事務所のコストを抑え、しっかりとした成果物を出すことができたので、最終的にResident Representativeから大変良い評価をもらうことができました。インターンを希望されている方の中で、語学が参加への障壁になっている方がいるのならば、困難は伴いますが挑戦するべきだと思います。組織の中に入ることで、どの程度まで語学力を高めればいいのかも見積もられ、その後のキャリア設計に活かせるようになると思います。


サモアの綺麗な海

(2011年10月26日掲載 担当: 大地田、曽我  ウェブ掲載:中村)

 



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