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第74回
森貴志さん
インターン先:
UNHCRマレーシア(クアラルンプール)Livelihood Unit


第73回
三戸部美帆さん
インターン先:
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所


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黒澤千晶さん
インターン先:
アジア開発銀行ベトナム事務所(ハノイ)


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小野克幸さん
インターン先:
経済協力開発機構 (OECD) 東京センター


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崎元大志さん
インターン先:
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所


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田中豪人さん
インターン先:
世界保健機関(WHO)カンボジア事務所 保健システム開発部


第68回
中島泰子さん
インターン先:
国連開発計画(UNDP)カザフスタン事務所


第67回
小林真由美さん
インターン先:
世界保健機関(WHO)ジュネーブ本部、Service Delivery and Safety, Health Systems and Innovation


第66回
吉田朱里さん
インターン先:
UNESCOダッカ事務所 教育部署


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HOME国連でインターン・ボランティア > 第75回







第75回 中山 綾子(なかやま あやこ)さん
一橋大学大学院社会学研究科Global Issues研究専攻修士課程2年
インターン先: 国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所
インターン期間: 2017年5月〜7月

■はじめに■

民間企業で広報業務などを5年半経験し、広報コンサルタント会社にも勤務した後、大学院へ入学しました。以前より国連でインターンをし、国際機関や社会的課題を扱う広報業務を経験してみたいと思っており、産業開発を通して貧困削減や環境の持続可能性に取り組む国連工業開発機関(UNIDO)に興味をもち、インターンシップに挑戦しました。

■インターンシップ応募から採用まで■

UNIDOについて知ったのは、インターン先を探し始めたときでした。UNIDOはウィーンに本部があり、持続可能な開発目標(SDGs)「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」の役割を主に担い、産業開発による途上国支援、環境に配慮したグリーン産業化、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントなどを促進しています。各国の開発のキーパーソンとなる投資促進担当官や外交官、環境関連の政府機関、民間企業が主な支援対象であり、パートナーです。途上国では、大学まで卒業したのに働く先がない国々がたくさんあります。UNIDOは、国連の教育支援を受けた子どもたちが成長した後の雇用先の創出、教育支援を受けるために両親の収入源となる産業を開発しているとも言え、他の国連機関と少し違うことをしており、おもしろい機関だなと思ったことが応募のきっかけです。

UNIDOは日本にも事務所を構えており、東京事務所では、途上国への直接投資や技術移転を目的に、途上国と日系企業をつなぐ事業を実施しています。UNIDOという機関は、1966年に設立されてから50年経ち、とても重要な役割を担っているにもかかわらず、日本における認知度はまだまだ低い機関です。政府や企業を対象とした事業が中心の機関であるため、一般の方が知る機会は少ないと思いますが、だからこそ、広報活動の可能性は無限大だと思い、UNIDOの広報に携わってみたいと広報魂がふつふつとわきました。また、大学院で平和構築や中国の広報外交について研究しており、アフリカをはじめとする途上国の開発における中国の影響力は大きいため、その点についても更に知見を深めたいと思い、応募しました。

大学院1年目の授業が落ち着いた2月頃より、5月頃にインターンをすることを目指して情報収集を始め、UNIDOのホームページで募集記事を見て、応募書類を提出しました。書類は、(1)履歴書、(2)職務経歴書、(3)自己紹介文をそれぞれ日本語・英語で用意し、合計6つの書類を提出しました。将来国連で働きたいこと、なぜインターンをしたいのか、前職の職務経験をアピールしました。その後、電話面接があり、志望動機や職務経験について話し、採用して頂きました。国連勤務への熱意、職務経験、前職でトルコやブラジル、中南米を担当した経験があり、インターン期間中にそれらのセミナーが予定されていることも採用ポイントだったと思います。また、ちょうど前任のインターンシップ生が終了する頃に私の応募があったようで、タイミングがよかったことも大きかったと思います。

■インターンシップの内容■

ウェブ更新、パンフレット作成、メディア会議の準備などの広報業務や、各国の投資促進担当官を招いた投資セミナーの準備・運営、途上国の方々が日本の企業見学や環境への取り組みを学ぶスタディーツアーへの同行、各国の外交官を「スマートファクトリーJAPAN2017」、「2017防災産業展 in 東京」[1]へ招待する大使館プログラムの運営、時には外部での関連セミナーへも参加させて頂きました。

【アフリカアドバイザー事業】[2]
UNIDOには、「アフリカアドバイザー事業」という、アフリカ諸国へ日系企業の進出を後押しし、日本の技術移転を促進することでアフリカ諸国の発展へとつなげる事業があります。支援する側・される側という立場でなく、企業活動を行うパートナーとして双方をつなげる事業です。私は、本事業の宣材物である事業紹介のパンフレットのリニューアルに企画から制作まで携わりました。アフリカについての知識が乏しかったため、各国の情報を調べたり、セミナーへ行ってみたり、スタディーツアーで来日しているアフリカ諸国の方々に現地における政策やビジネス動向について積極的に質問しながら作成しました[3]

【投資セミナー、ビジネスセミナー】
ウガンダビジネスセミナー、トルコ投資セミナー[4]中米5ヵ国のビジネスセミナー[5]の準備・運営にも携わりました。これは、各国より投資促進担当官を招き、駐日大使館や現地に進出している企業に協力を得ながら、各国への投資を日本政府や企業にアピールし、各国と企業を繋げるセミナーです。UNIDOでは、セミナーを主催するとともに、各国を魅力的にアピールできるような企画や制作物をつくっています。私は、資料作成や、会議の準備・運営に携わりました。各国のPR方法は多種多様で、誰が、何を、どのようなツールを用いて、どのようにPRするのかを見ることができたことは、とても勉強になりました。PRするスピーカーとして、女性や若手の担当官が来日していたことが印象的でした。また、セミナーの相乗効果を出すため、UNIDOの広報担当の方がメディアと投資促進担当官との会議をセッティングし、それがその後の記事化に繋がっていくことを見ることができました[6]。公的な内容を、いかに取材や記事化に繋げるかのヒントを得ることができましたし、広報担当の方が陰で長年努力されてきたお話も伺えました。

今回セミナーがあった国の中で、トルコについては前職で自ら強く希望して担当させていただいた国だったので、UNIDOでのトルコとの再会に感動しました。前職でUNIDOのセミナーを知っていれば、もっと社内外の広報に活用し、トルコ進出を効果的に進めることができたのにと思いました。その点からも、まだまだUNIDOは企業認知度を高める必要があると思いますし、それによって実現できることはたくさんあると思います。

トルコ(イズミール)投資セミナーの様子
中米5カ国 ビジネスセミナーの様子

【大使館プログラム】
東京ビッグサイトなどで開催される技術展や環境展に各国駐日大使館の外交官を招待し、見学ツアーを開催するプログラムです。途上国の開発・発展は、公害とともに進めるのではなく、環境に優しいクリーンな方法が求められています。それらを実現する日本企業・技術を把握し、商談に繋げるための企画です。私は、「スマートファクトリーJAPAN2017」、「2017防災産業展 in 東京」というイベントの大使館プログラムの準備と運営に携わりました。申込者リストの作成、詳細事項を大使館の方々と調整、当日はツアーに同行、その様子をウェブサイトへ掲載、アンケートレポートを日英で作成しました。24ヵ国・29名の外交官が参加してくださり、真剣に見学する様子を見て、各国における開発事業の重要性を改めて感じました。一方、会場へ向かうバスの中では参加者が和気あいあいと話しており、国を越えて交流する機会であること自体がとても重要だと思いました。


大使館プログラム:企業の展示を見学する各国外交官の様子

【アテンド】
各国から来た方々をアテンドする機会もありましたが、これも大切な機会で、特に印象に残っているのは、ウガンダの投資促進担当官と2時間マンツーマンで話す機会に恵まれたこと、南アフリカ、ケニア、セネガル、エジプトから来た方々と何時間も時間を共にし、現地のお買い物事情、女性用衣服の質、結婚する際に現地では夫が妻の家族にいくら支払うのかなどとてもローカルな話まで伺い、現地の生活や何を欲しているのかを生活レベルで垣間見ることができました。

【外部セミナー】
アルゼンチン投資セミナーなどに出席し、アルゼンチンの大統領が参加しスピーチする姿に、迫力と勢いを感じました。

UNIDOの職員のみなさんは、将来、広報業務を通して国連で働きたいと考えている私の思いを尊重してくださり、広報業務を経験できるようにして下さったり、一人ひとりの職員にお話を伺うランチ会、業務外のご飯会やホームパーティーで他の国連職員や国連に関係している省庁の方々とお話をさせていただくことができました。また、事務所全体の業務に携われるようご配慮いただき、様々な国の方々と接する機会も設けて頂きました。刺激的な日々を過ごすことができ、本当に感謝の思いでいっぱいです。

■その後と将来の展望■

まずは、大学院(修士課程)の卒業に向け、修士論文に取り組んでいます。それと同時に、国連インターン、またはその他のプログラムを通じて、支援を必要とする人々に直接携わるフィールド経験をしたいと思い、準備を進めています。将来、フィールドではない場所で働くことになったとしても、場合によっては決定権をもつような業務に携わる場合は尚更、フィールドを目で見て経験することは重要だとインターンを通して感じたためです。また、国連などの国際機関のポストにも積極的に応募していこうと思います。インターンをする前は、「英語力がついたら」、「フィールド経験をしてから」、「もっと情報を集めてから」国連ポストへ応募しようと思っていましたが、「まずはやってみる」、「いけるところまでいってみる」、「走りながら力をつけていく」ことはとても重要だと感じました。国連で働くことが目的・目標化するのではなく、自分が何をしたいかという強い思いはとても大切だと思いますし、そういう思いで、今後も進んでいきたいです。

国連は入るのも難しいですが、働き続けることはもっと大変だと思います。家庭とのバランスも考えながら、焦りすぎることなく、一方で積極的に、必要な力を様々な場所で身につけながら、国連勤務を目指していきたいです。

■資金確保、生活、準備等■

【資金確保】
大学院在学中に、国連インターンをしたいと入学前から思っていたため、資金を貯めるために入学直後から、学内外の奨学金や助成金制度の情報収集をして準備を進めていました。大学院の学費免除制度に応募・合格し、全額免除になったことでとても助かっています。学内外の制度を通して日頃から学業・生活の自己負担を抑えることで、インターン資金を貯めていけるのではと良いと思います。制度の大半は入学直後の4、5月に申込期日が集中するため、過去の情報を元に入学前から準備を進めておくことをお勧めします。

【生活】
インターンを始める1週間前に引越しし結婚、結婚生活を始めました。プライベートで大きな変化がありましたが、夫の理解もあり、家庭との両立はほとんど苦労しませんでした。いつも応援してくれる夫には本当に感謝しています。その感謝があるからこそ、インターンも家事も両方がんばろうと決め、過ごすことができました。苦労したのは、片道2時間弱かかる通勤と、大学院の研究(主に修士論文)との両立でした。帰宅してから修士論文を書く余裕がなく、インターンを始めて1ヶ月程経って慣れた頃から、同ビル内の図書館でお昼休憩時に30分だけでも修士論文を進めたり、通勤電車の中で進めるよう努力しましたが、予想以上に進められませんでした。それでも、後々困らないよう、毎日少しずつでも論文作成に取り組むことをお勧めします。

【準備】
学部は経済学部で、留学も先進国のアメリカだったため、不足している開発協力や国際関係についての知見を深めておいた方がよいと思い、大学院1年次にJICAの客員教授によるODAの授業や、国際政治、平和構築などの授業を履修し、開発や途上国について学びました。

■その他感想・アドバイス等■

【日本の国連機関について】
国連で働くなら海外で、ということを当たり前だと思い込んでいましたが、日本にある国連機関で働くことの大切さも感じられた期間でした。日本が国連分担金2位であること、緊急時に支援金を拠出する背景には、日本の国連機関で日本政府や企業との信頼を構築し、支援につなげ、途上国に寄り添う国連スタッフがいるからこそであると知ることができました。機械的ではなく、人と人とで支援が実現されていることを実感できました。

【インターンのタイミング】
大学院1年次終了直後の長期休暇の間が、ベストな時期だと思いました。2年次は修論の中間発表や、執筆に向け、予想以上に時間が必要であるため、授業も修士論文も比較的余裕のあるタイミングをお勧めしたいです。ただ、みんながインターンをしたい時期で競争率も高い時期かと思いますので、その時期以外にする場合は、インターン以外にすべきことを優先的に進めておくとよいと思います。私はそのつもりで、春休みは修士論文のフィールドワークのために海外へ行っていましたが、執筆の方ももっと進めておけばよかったと思いました。

【国連勤務について】
国連は、どこの機関で、どこの国で、どのようなポストで働くかによって、大きく状況が異なると思います。よく、国連についての本には国連の雇用システムについて記載されていますが、複雑で、文章を読んでいるだけでは理解することが難しいです。インターンを通して、雇用形態や各機関、各国の様子などをスタッフの方々に詳しく伺うことで、長年理解できなかった国連の雇用システムをようやく理解することができました。また、なじみのなかった機関で働くことで、機関によって特性があることも知ることができました。たくさんの女性職員の方々と出会うこともでき、キャリアプロセスやワークライフバランスについて相談できたことも今後の大きな励みとなりました。

【数値情報をしっかりおさえる】
各国の方々と話をする際、一番質問されたのは、「GDPに占める工業生産の割合」、「日本人管理職の平均所得水準」、「地価」などの数値情報でした。経済学部時代の知識を活用しながら返答できた点とできない点がありましたが、数値情報を共有することで他国の人とも状況を短時間で把握しあうことができるため、インターンに関連する機関、国、分野に関わる数値はおさえておくとよいと思います。

【チームワーク】
UNIDO東京事務所のみなさんは、普段から会話などのコミュニケーションが活発です。そのチームワークの強さが、セミナーなど各プログラムの本番に特に発揮されています。事務所をまとめるお二人の管理職のリーダーシップの姿もとても勉強になりました。このような組織を国連の中で作り上げ、スタッフ一人ひとりが働きやすい環境を整えることは、スタッフが取り組む国連支援に直結すると思うので、とても大切なことだと思いました。

■おわりに■

UNIDO東京事務所のみなさんを始め、インターン期間中に温かな励ましとサポートをしてくださった全ての方々に心から感謝しています。長時間の通勤は大変でしたが、毎朝UNIDOへ行くことが楽しみで、帰るときは次の日を楽しみにしながら過ごすことができました。インターンシップと実際に働くことは、異なる点も多々あるとは思いますが、改めて国連勤務をポジティブに捉え、次に取り組むべきことを具体化できたため、インターンをして本当によかったと思っています。みなさんへ恩返しできるよう、これから更に頑張りたいと思います。



2018年6月15日掲載
ウェブ掲載:三浦舟樹