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第2回
長谷川 祐弘さん
国連事務総長特別代表
(東ティモール担当)

第1回
阿部 信泰さん
国連事務次長 (軍縮担当)

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第3回 和気 邦夫さん
国連人口基金(UNFPA)事務局次長 (プログラム担当)

略歴: わき・くにお 1943年川崎市に生まれる。都立西高卒業。米国グリネル大政治学科卒。ピッツバ−グ大経済社会開発学修士。(社)海外コンサルチング企業協会、海外技術協力事業団で働いた後、1971年ユニセフ、インド事務所に勤務する。バングラデシュ、ニューヨーク本部、バンコク地域事務所、パキスタン、ナイジェリア、東京事務所等に勤務の後UNDPに出向、UNDG事務次長を経て2000年現職に就く。国連歴35年。

聞き手:古澤 智子(UNDP)、久木田 純(UNICEF)



Q. 一日のスケジュールを教えて頂けますか。(古澤)

A. アシスタントが設定し、それに従ってスケジュールをこなしています。

例えば来週月曜11月28日の予定は、

09:00-10:00

UNICEF/WHO主催のPMTCT (Prevention of Mother-to-Child Transmission) 会議、ICASA(Int'l Conference on AIDS and STIs in Africa)出席のためのブリーフィング
10:00-10:30 JICA、国連代表部の方の表敬訪問
11:30-12:30 Adolescent & Youthプログラムにおいて、明確な方針をフィールドへ打ち出すための戦略会議
13:00-16:00 UNFPAの次期Medium Term Planについてのブレインストーミング
16:30-17:30 地域局局長、テクニカルサポート部ディレクターとグローバルプランニングミーティングのフォローアップについて協議。
21:00 ナイジェリア出張のためJFKへ向かう

となっています。

これ以外にも、それぞれのアジェンダへの準備も必要です。また、国連機関の合同会議の議長をやることもあり、今年はUNDGのプログラムグループの議長を務めています。


Q. 現在の職務内容について教えて頂けますか。(古澤)

A. 二人のUNFPA事務局次長の一人として、プログラムを担当しています。4つの地域局の運営、世界中9箇所にあるテクニカルサポートチーム、国レベルの事務所への支援、国連機関とのコーディネーション、Strategic Planning Officeを通じての現状把握、モニタリング、評価、Result-based Managementの推進、また緊急人道援助を担当しています。もう一人の次長は、広報渉外、資金調達、ファイナンス、マネージメントを担当しています。人事関係は、事務局長が直接管理しています。現在、UNICEFやWFPをモデルにし、地域関係部署をフィールドへ移すよう内部改革を行っており、大きな移行期にあります。


Q. UNFPAの現在の状況、課題を教えて頂けますか。(古澤)

A. UNFPAのアジェンダは、リプロダクティブヘルスということで、アメリカ政府からのプレッシャーを大きく受けています。UNFPAは、個人やカップルの意思と権利を尊重してプログラムを行っています。しかし中国で支援も行っているため、アメリカ内の保守的な団体は、人権問題と、そして家族計画と我々が援助をしていない妊娠中絶と関連付けて、UNFPAを批判しています。そのため、それらのグループから大きな支持を得ているブッシュ大統領(共和党)の政府はUNFPAに対する支援(約3,400万ドル)を大統領権限で止めています。そのため議会で承認された予算があってもUNFPAには拠出されていません。一方ヨーロッパからの支援は大きく、ここ数年コア拠出が増えており、小さい組織でありながらもUNFPAの存在意義は増しています。最近は、人道支援活動にも力を入れ、女性や女子を対象としたプログラムを多く行うことで、各国からの一層の資金提供が期待されています。プロジェクト資金を更に増やし、被援助国での活動を充実させる必要があります。UNFPAは、世界的なアドボカシーの点では強いですが、フィールドオフィスがまだ小さいところもあり、開発途上国でのプログラム活動の点ではまだまだやるべき事も多く、今後の改革でそれが強化されていくことが期待されています。この5-6年で、財政、会計監査、人事等の面で、内部改革を通して、マネージメントやアカウンタビリティーがかなり改善されてきました。今後は、全体的に見ると現状は厳しいですが、組織のバイタリティーはあり、良い人材にも恵まれて、特にDFID(英国国際開発庁省)や欧州の政府から高い評価を受けています。



Q. UNFPAのMDGへの取り組み状況と、今後の課題を教えて頂けますか?(古澤)

A. UNFPAは、特に、母子・乳幼児の健康(目標4:乳幼児死亡率の削減、目標5:妊産婦の健康の改善)、HIV/AIDS予防(目標6:HIV/AIDS、マラリア等の予防)、パートナーシップ(目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進)、そしてジェンダー(目標3:男女平等および女性の地位向上の推進)、にUNカントリーチームの一員として取り組んでいます。

私自身、重視していることは:

第一に、妊産婦・乳幼児死亡率の削減です。産科救急ケアセンターのサービス向上のため、スキルドアテンダント(トレーニングされた看護士、助産士)を確保し、リスクのある母子のためのReferralサービスを充実させるよう取り組んでいます。アフリカでは、HIV/AIDS問題にも関わらず人口増加が予測されており、それに伴う貧困増加とヘルスサービスの維持・向上にどう対処するかが課題となっています。

第二に、UNFPAは、女性と若者に対するHIV/AIDS予防、女子教育を通したジェンダー、リプロダクティブヘルス問題に取り組んでいます。

第三に、Reproductive commodity securityです。UNFPAがリーダーシップを取り、リプロダクティブ関係物資の確保のため、政府に予算確保のアドバイスや援助コーディネーション支援を行い、予算がない場合には、UNFPAに委託されているの基金を通して、薬品、衛生材料、検査機材、コンドーム、緊急手術機材などの調達を行っています。

第四に、ジェンダーの問題があります。人道支援活動におけるGender based violenceはSensitiveな課題なので、UNFPAがリーダーシップを取り、各国政府や他機関、特にUNIFEM,WHOと協力して取り組んでいます。NGOとは、一緒にガイドラインを立て、医療だけでなく、カウンセリングや、コミュニティーサポート、HIV/AIDS予防のための治療、女性兵士や女性被害者の支援なども行っています。人道支援活動では、コンセンサスが出来上がってきているので、それを各国で主流化していくことが今後は必要となっています。

そして第五に、開発データ、MDGモニタリングや社会統計問題にも力を入れています。UNICEFやWHOと、保健統計、MDG Infoや調査の分野で協力しています。UNFPAは人口学者、統計学者が多く国勢調査やその分析は強いので、開発途上国の統計能力の開発に力を入れています。


Q. 多機関との協力はどうでしょうか?(古澤)

A. UNIFEMとは、ジェンダーの分野でアドボカシー、トレーニング活動で各国で協力しています。WHOとは、規範的・技術的なものと、トレーニングモデル、治療プロトコールを地域・国レベルで共同で作成・遂行しており、重要なパートナーとなっています。UNICEFとは、オーバーラップする部分が多いため、更なるコーディネーションが必要とされています。UNDPからは、財政、人事、総務部門などでサービスを買っています。UNDPのガバナンス、法的支援、民主化支援、選挙支援などのプロジェクトには、人口調査などのデータを提供しています。


Q. 国連で働くこと、働く意味について教えて頂けますか。(久木田)

A. 35年間働いてきて思うことは、国連では自分の信念の通り働くことができ、それが受け入れらてきたということです。そして、自分自身、P2から入り少しずつポストも上がってより責任のある仕事をさせてもらいました。仕事での満足度が高く、とても働きやすい職場だと思います。時には大変なこともありましたが、大病なく自分がここまでやって来られたのは幸運だと思っています。地味に堅実に仕事をしていれば、認めてくれる人がいて、キャリアを築いていくことができると思います。現在も、皆が働きやすい組織を作ろうと努力しています。Basic Competencyを持っている人たちに、良い環境を与え良い仕事をしてもらうというのが、私たちの目指すところです。




なお、本インタビューに関しましては、以下のウェブサイトも御参照ください。

UNFPA:
http://www.unfpa.org/

外務省 平成17年版外交青書 第4章 国際社会で活躍する日本人と外交の役割
  第1節 コラム:国際機関で活躍する日本人:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2005/html/honmon4103.html#3


担当:久木田、古澤