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「人間の安全保障:概念の発展と実践」

田瀬和夫さん(OCHA 人間の安全保障ユニット課長)
渡部真由美さん(OCHA 人間の安全保障ユニットJPO)

2006年12月1日開催



(撮影:藤原紀香、著作権:国際連合)


 第1部 人間の安全保障の概念及びその発展について【田瀬さん講演部分】
 第2部 人間の安全保障基金の取り組みについて【渡部さん講演部分】
 質疑応答

■ 第1部 人間の安全保障の概念及びその発展について【田瀬さん講演部分】

1. はじめに
「人間の安全保障」の具体的な意味や効果については茫洋としていて良く分からないと指摘されることが多い。限られた時間ではあるがこれを皆様に分かっていただけるよう説明したい。

2. 人間の安全保障委員会レポート「安全保障の今日的課題」(11ページ)
「人間の生にとってかげがいのない中枢部分を守り、全ての人の自由と可能性と実現すること、人が生きていく上でなくてはならない根本的自由を擁護し、広範かつ深刻な脅威や状況から人間を守ること。」

→学術的には意味のある定義であるが実践的ではないし、普通の人に分かりにくい。

3. 外務省パンフレット「人間の安全保障」(2003年)
「人々を直接に脅かす問題を克服するためには、国家が国境と国民を守るという伝統的な『国家の安全保障』という考え方のみでは対応が難しい。もちろん「国家の安全保障」の重要性はいささかなりとも減ずるものではないが、それに加え、人間の視点から多用な問題の相互関係をとらえ、これに包括的に対処する必要がある。これが、『人間の安全保障』である。」

→これでもまだ茫洋としている。
→そこで、私が人に聞かれたときは以下のように説明している。

4. 人間の安全保障とは、「必要とする側」を土台に全てを考える「方法論」
人間の安全保障≒デマンド・サイド・セキュリティ
  ↓具体的には
・危険にさらされている人々が安全安心を感じられるためには何が必要かをまず考える。
・現場の人々のニーズと要求を土台として、既存の組織や専門性の仕分けにとらわれず、必要な支援の方法や形式を考える。
・人々には自らの安全を守る能力が潜在的に備わっていることを前提に考え、人々の自助努力を助ける。
・究極的には支援する側のあり方を現場の要求という視点を土台として定義しなおす。人間を制度に合わせることはできない。制度を人間に合わせることが必要。

→お金がない、学校に行けない、エイズにかかった、誰かに殺されそうだ。国際社会はこれらの問題切り分けて機関を設置し対処してきたが、諸処の問題の連関を考えていかないと、人々の生活は良くならないし、不安からも解放されない。
→まず機関、それに伴うマンデートとアジェンダと財源が存在し、次に何を助けるか?という順番になっている。それを逆転させる必要がある。
→その意味では、既存の枠組みを守りたい人にとっては破壊的な考え方。



5. 人間の安全保障の特質(1)− 国際社会の『供給側の論理』の逆転的発想
・供給側の論理に基づく国際社会の活動では、冷戦終了後にグローバル化する世界の問題に対応できない。
・特に脅威が相互連関する場合、供給側の論理は有効に機能できない。
例)ポスト・コンフリクト・ギャップ

→紛争後の世界に最初に入るのは、緊急人道支援機関(UNHCR等)。人道支援機関がマンデートを終了して撤退したあと、UNDPやUNIDOが入る程に安全になるまでの2〜3年間の安全が保障されておらず、その間に5割の確立で戦争状態に戻る。
→国内避難民(IDPs)
→人身取引の問題。国際組織犯罪・性的搾取・麻薬・HIV/AIDS・貧困など多くの問題が複雑に絡んでいるため、国連機関内部の責任分担も複雑で曖昧。

人間の安全保障はこうした論理を逆転させようとする。

6. 人間の安全保障の特質(2)− secureという心理的側面の考慮
・人間の安全保障は単なるBasic Human Needs(BHN)やSafety(身体的安全)を確保しようとする方法論ではない。
・人々がsecureであるという場合、それは単なる物理的安全だけではなく、過去のトラウマや現在の恐怖、将来に対する大きな不安から解放され、「安心・安寧」を得た状態を意味する。
・人々が将来に対する希望と自らに対する自信を持っているかどうかはその社会の発展に大きな影響を与える。Empowerment(能力強化)の意味はここにある。
・人間の安全保障はこうした心理的充足までを人間の要求(デマンド)としてとらえ、そこを土台として支援をくみ上げていこうとする点で、従来の平和活動・人道支援・開発支援に付加価値を与えるものである。

7. 人間の安全保障の特質(3)− 調整(coordination)ではなく統合(integration)
調整とは、供給側にそれぞれのアジェンダや政策や財源があり、これらがヒッチを起こさないようにつじつまを合わせること。基本的にトップ・ダウンのロジック

統合とは、現場の需要とニーズを土台として、必要な専門・人材・財源などを持ち寄ること。基本的にボトム・アップのロジック。

8. 人間の安全保障の特質(3)− 人権との違いと補完性
人間の安全保障=人権保障ではないのか?どう違うのか?

人権とは、人として生まれたことで備わる「属性」とも言えるほどに成熟した規範。「権利」の裏返しとして、常に国家の「義務」を伴う。人権概念は国際制度にこの義務の履行を求める。

人間の安全保障とは、既存の論理では安全が確保できなくなったことから生み出された国際社会の道義的責任を実現する実際的な「方法論」に過ぎないと思っている。そういう意味では相互補完性はあるが、概念の次元が若干違う。

今、RBA(rights-based approach)が流行っているが、そもそも国家が存在しなかったり極めて脆弱でその義務を果たせない場合、このアプローチが機能するとは限らない。人間の安全保障は仮に国家制度が不在でも、人々が持つ能力と可能性を引き出すことにより安全を実現しようとしている。

9. 人間の安全保障を巡る国際的議論(1)1990年代の出来事
90年代は、東西冷戦が崩れて、国家によってもはや防ぐことが不可能な問題(グローバル・ウォーミング、アジア通貨危機など)が噴出した時代であった。
1991年:湾岸戦争、緒方貞子氏UNHCRに就任
1992年:リオ環境サミット、国連ソマリア活動、国連カンボジア暫定機構
1994年:ルワンダ大虐殺、UNDPの人間開発報告書で初めて「人間の安全保障」の概念が打ち出される。
1995年:社会開発サミット、北京女性会議
1997年:アジア通貨危機
1999年:コソボ危機、Human Security Network(カナダ)設立、国連人間の安全保障基金(日本)設立

© UN Photo

 

10. 人間の安全保障を巡る国際的議論(2)「恐怖からの自由」と「欠乏からの自由」

カナダ=恐怖からの自由

・ソマリア、カンボジア、ルワンダなどの経験から、人道的危機に際し安保理が機能しない場合には国連憲章を超えて国際社会が武力行使すべきと主張:人道的介入を中心に据える。
・1999年にHuman Security Networkを設立
・1999年に「介入と国家主権に関する国際委員会」を設立。「保護する責任」の概念としての精緻化を目指す。
 →斬新だが、途上国からは強い警戒心を買った。

日本=欠乏からの自由
・ アジア通貨危機の経験から、Security Safety Netの必要性の主張。人間の安全保障とは人間の生存・生活・尊厳を守ることと定義。
・ 1999年に「国連人間の安全保障基金」を設立。
・ 2000年に「人間の安全保障委員会」設立を提案。

11. 人間の安全保障を巡る国際的議論(3)2000年代に入ってからの進展
→両者が急速に近づく

カナダ:欠乏からの自由へ拡大(途上国の強い突き上げ)
・2002年のHSN閣僚会合において「欠乏からの自由」も人間の安全保障の構成要素であることに合意。
・2003年の「脅威、挑戦及び変革に関するハイレベル・パネル」において「保護する責任」が国連憲章の枠内の概念であることを確認
・人間の安全保障基金とのco-fundingの試み

日本:双方の自由をつなぐ概念
・2003年の人間の安全保障委員会報告を受け、恐怖からの自由と欠乏からの自由の双方を関連づける政策概念として人間の安全保障を理解・支持
・2003年のハイレベル・パネルの結論を支持
・2005年、2006年HSNで、「保護する責任」概念を支持
・カナダの人間の安全保障プログラムとのco-fundingの試み

12. 人間の安全保障を巡る国際的議論(4)「保護する責任」を巡っての攻防
・「人道的介入」は安保理が機能しない場合に国連憲章を超えて武力行使が必要であるとの主張。「介入と国家主権に関する国際委員会」は武力行使が認められる場合の条件の精緻化
・「脅威、挑戦及び変革に関するハイレベル・パネル」において「保護する責任」は国連憲章の枠内であることを確認
・安保理がこれまで「国債の平和と安全への脅威」と認定できなかった事態について、認定できるようにすべきとした。
・「保護する責任」と同時に「予防する責任」を明確化

13. 人間の安全保障を巡る国際的議論(5)2005年特別総会での合意
2005 World Summit Outcome
Human Security
143. We stress the right of people to live in freedom and dignity, free from poverty and despair. We recognize that all individuals, in particular vulnerable people, are entitled to freedom from fear and freedom from want, with an equal opportunity to enjoy all their rights and fully develop their human potential. To this end, we commit ourselves to discussing and defining the notion of human security in the General Assembly.

→初めて総会で公式合意されたが、まだ全ての国がこの概念について合意するに至ってないことからこのような内容。

14. 人間の安全保障を巡る国際的議論(6)これからの展望
・国連における議論の深化:Human Security Network, Friends of Human Security(日本とメキシコ主導。関心のある加盟国によるゆるやかな協議の場。), Advisory Board on Human Security(事務総長の諮問機関)
・国連における他の概念の橋渡しと国連改革への貢献:安全保障と開発と人権(In Larger Freedom、人権理事会)、平和構築と平和構築委員会、Deliver as One(システム一貫性パネル報告書。ここで言われていることは人間の安全保障の政策概念に近い。)
・ブレトンウッズ機関、地域機関とのパートナーシップ(世銀、AU、EU、アラブ連盟など)、市民社会とのグローバル・パートナーシップ

■ 第2部 人間の安全保障基金の取り組みについて【渡部さん講演部分】

0 はじめに
現場(コソボ)に1999年から3年間。
基金がファンディングすべき対象は何か、そのスピリットについてお話したい。

(まずは資料より詩の朗読)
私たちの苦しみを知ってください。
私はまだ幼いですが、
多くの大人が体験していないことをすでに知っているように思います。
あなたがフルーツやチョコレート、キャンディーを食べているとき、
私たちは雑草を食べているのです。
あなたが今度おいしいものを口にするとき、
心の中で思ってください。
「これは、サラエボの子どもたちのために」と。
あなたが映画を楽しみ、美しい音楽を聞いているとき、
私たちは砲撃の音が聞こえる地下室でじっと身を潜めているのです。
あなたが笑顔で何かを楽しんでいるとき、
私たちは泣きながら
この悲劇が早く過ぎ去ることを祈っているのです。
あなたが電気や水のある生活を送っているとき、
私たちは神様に祈っているのです。
乾いた喉を潤してくれる雨が降ることを。

Edina, 12, Sarajevo
From "I dream of Peace - Images of war by children of Former Yugoslavia by Maurice Sendak UNICEF, 1994


このEdinaちゃんにどのような支援を届けるべきか?食糧、シェルターなどbasic needsの他に、エディナちゃんが心理的にsecureと感じられるのはどういう支援かという観点から考える。それは当たり前のようであり、当たり前ではなかった。今までは供給サイドが独自の財源とプロジェクトを打ち立てていたが、人間の安全保障基金はお金を武器にして、ジョイント・レスポンスを奨励する基金。



1. 「人間の安全保障基金」設立の経緯
・1998年12月、小渕総理大臣のベトナム・ハノイでの政策演説を受け、1999年3月に日本政府の約5億円の拠出で国連事務局に設立された信託基金。
・その後日本は同基金に対し、現在まで累計約315億円(約2億7970万米ドル)を拠出。
・2006年CERFが設立されるまでは、国連に設置された信託基金の中で最大規模。
・2006年10月末現在、160件以上のプロジェクトを世界約70ヶ国で実施【資料1】
・今年3月のCERF(Central Emergency Response Fund)設立までは、国連の信託基金中で最大規模だった。

2. 「人間の安全保障基金」ガイドラインと審査手続(資料:申請手続の流れ)
人間の安全保障基金ガイドライン:人間の安全保障の考え方がより効果的に事業に反映されるよう、優先的に支援する分野は事業形態について指針を定め、また事業の申請手続についても規定。これまで3回改訂。

3. 事業審査プロセス
事業への拠出基準:人間の安全保障の理念のもと以下の6つの要素―パラメターを満たす事業
1. 人々や地域社会に対し具体的かつ持続性のある利益をもたらすこと
2. 「保護とエンパワーメント」の枠組みを実践するものであること。
3. NGOや地域団体との連携を促進し、それらが主体の事業の実施を奨励していること。
4. 事業の立案・実施に複数の国連機関が参画し、各機関の取り組みの統合が促進されること。
5. 相互関連性のある課題に幅広く取り組むものであること。
6. 人間の安全保障に関する問題の中で、取り組みが十分といえない分野に焦点を当てて、既存のプログラムや活動との重複を避けること。

Democracy Fundや、Partnership基金など、既存の国連信託基金でカバーされない事業が優先される。

4. 初期審査のポイント
1. 脅威の相互関連性→包括的な取り組みの必要性
2. 人々の視点から立つ支援の統合化

1. 分野横断性(Multi-sectoral)
2. 機関横断性(Inter-agency)

5. 予算
予算目安としては、一年間100万ドルとする。しかしながら一件当たりの支援総額に明示的な上限・下限は存在せず、必要な予算は各事業の性格と実施可能性に基づいて積算されるべきとする。
1. 可能な限り事業が実施される国・地域の資源を有効利用する。
2. 高価な国外の専門家・コンサルタントを使うことを極力避ける。
3. 予算の大半が人件費、会議費、スタッフの出張費などに使われ、現地の人々に最大限「直接に」裨益しない事業は支援対象としない。
4. 大規模な建設事業(予算額の30%以上)は支援対象としない。

6. プロジェクト例(1):「タンザニア北西部における持続的な人間開発を通じた人間安全保障の強化」
1. プロジェクト実施機関:UNDP、UNICEF、WFP、FAO、UNIDO
2. 支援総額;US$3,683,394(3年間)
3. 5つの個別目標:

 1. 住民の脆弱性の評価、調査及び人間の安全保障上の脅威への対応面での地方政府の能力 強化(UNDP)
 2. 違法な小型武器の流通による暴力の減少(UNDP)
 3. 収穫後の生産作物の損失を減少させることによる貧しい小作農民の食糧不足の改善(WFP, FAO、UNIDO)
 4. 教育システムから阻害されている若者に対する補習による基礎教育及びHIV/AIDS啓発教  育の提供(UNICEF)
 5. 環境資産の保護、水供給および衛生状態の改善を通じた女性や児童の健康に対する脅威の 減少(UNICEF,UNDP)

(背景)
紛争国と国境と接する北西部。数年前から押し寄せてきた難民が帰還を開始する中、ポスト・クライシス。開発に移るまでのブリッジがなく、国連の支援は難民にばかり、というあきらめ感が地元民にはあった。
そこで、5つの機関が上記個別目標を定め、ジョイント・レスポンスの形でプロジェクトを実行中。
今年9月に現地に行って驚いたのは、視察中の1週間、どこに行くにも5つの機関全てが車を出して一緒に車列を組んで移動したこと。彼らは他機関のやってることを評価し合い、さらに強化された政策について話し合っていた。本来あるべき姿を達成しているという意味で、このプロジェクトは今後注目されていくのではないか。

(当該プロジェクトのリード・エイジェンシーであるUNDP小松原氏より)
「自分も一緒に現地に入った。政策面のみならずオペレーション面で国連のカントリーチームが一つになっていた。それを助ける触媒的な役割として人間の安全保障基金は非常に役立っていると感じた。具体的には、まずプロジェクト全体の中での各機関の役割について相互に説明責任が求められている。さらにプロジェクトの口座や、基金への報告も、全体で一本化している。基金は、現場のレベルからOne UNを推進することを可能とする強力な武器だと感じた。」

7. プロジェクト例(2):「レバノン南部における地雷により影響を受けたコミュニティの社会的・経済的エンパワメント:地雷と不発弾の脅威除去及び社会復興の促進」
1. プロジェクト実施機関:UNMAS/UNOPS,UNDP
2. 支援総額:US$1,992,100(2年間)
3. 主な活動内容:
 1. 地雷と不発弾の除去を行うために地元の地雷撤去要員を雇用、訓練の上、支援地域に派遣 する。こうした活動を通じて、人々の能力強化を図るとともに、除去活動に対するコミュニティのオー ナーシップの要請を図る。
 2. ワークショップへの参加を通じて地域の利害関係者間の対話を構築する。こうした活動を通じて 活動の優先順位付けや地雷撤去後に実施する活動について地域内のコンセンサスを形成し、もっ て事業効果の最大化を図る。
 3. コミュニティ主導で実施する様々なワークショップや訓練活動により、対象地域の生活改善が図 れるように支援する。こうした活動により、地雷除去後のコミュニティの安定した基盤を構築する。

(背景)
今までは地雷の除去(恐怖からの自由)がゴールだったが、UNDPとのジョイント・プロジェクトにすることで、UNMASが地雷除去、UNDPはその後の土地の有効活用のために地域のニーズをすくい上げて安定した生活基盤を決めていこう(欠乏からの自由)とするプロジェクト。恐怖からの自由と欠乏からの自由いずれもカバーするという点で、まさに人間の安全保障の理念に叶う新しいプロジェクトである。

8. 人間の安全保障基金の今後の課題と展望
1. 基金の方向性(ドナーベースの拡大、マルチ・バイの連携)
現状は日本政府がシングル・ドナーだが、概念の普遍性の意味から他のドナーも巻き込んでいくべきではないのかという議論が活発に行われている。
2. 事業の審査方法と期間の短縮
脅威は時間が経てば性質も特性も変わる。当初18ヶ月かかっていた審査機関が、ガイドラインの改定により平均6ヶ月以内にまで短縮されたとはいえ、脅威に対応するという人間の安全保障の理念の実践にはほど遠い。さらなる審査機関の短縮が最も大きな課題だと思っている。
3. 事業評価と「伝える」ことの重要性
これまで160件以上のプロジェクト実施。新しい概念を実践している以上、そのインパクトの検証は必要不可欠であり、それを今後我々のユニットがいかにして実現するか。
例えば設立以来約6600万ドルがコソボ支援に拠出され現地の人々には大変喜ばれている一方、99年以降メディアの注目は東チモールやアフガンに移行している。より積極的に効果を発信することも課題の一つ。

展望:人間の安全保障基金―「人と人、国連機関をつなげるカタリスト」
 国連では、資金調達の競争、縦割り社会がまだ見られる。我々はそのような国連のカルチャーに挑戦しているが、タンザニアのプロジェクトのように現場ではそれが受け入れられていることには展望を感じる。
 国際社会からの支援が雨あられと降ってきてそれに依存してしまう国や人を作ってしまってはならない。財源に限りがあるからこそ有効活用しなければいけない。人間の安全保障基金の展望を考えたとき、やはり人と人を繋ぐ、国連機関を繋ぐ、様々な支援プログラムを繋ぐカタリストとしての役割を果たしていきたい。


質疑応答へ

 

担当:北村



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