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「国連のイラン制裁」

第94回 国連フォーラム勉強会

日時:2015年6月15日(月)19時〜20時30分
場所:コロンビア大学ティーチャーズカレッジ
スピーカー:鈴木一人氏(国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルメンバー、北海道大学教授)




■1■ はじめに
■2■ 国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルメンバーへの道
■3■ イランの核開発はアメリカから始まった
■4■ 核兵器開発の疑いがかけられたイラン
■5■ 国連によるイランへのターゲット制裁と専門家パネルの役割
■6■ 様々な国によるイランへの一方的制裁
■7■ 一方的制裁と国連制裁の相乗効果
■8■ イランとの最終合意に向けた核交渉の進捗
■9■ イランとの武器取引の制裁
■10■ イラン制裁委員会の位置づけ
■11■ 質疑応答

講師経歴:鈴木一人(すずき かずと)氏
北海道大学公共政策大学院教授。2013年12月より国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルメンバーとしてニューヨークで活躍。プリンストン大学国際地域研究所の客員研究員、筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科で国際公共政策学、国際政治経済学等の分野で教鞭を執る。日本国際政治学会、日本政治学会、日本国際安全保障学会、日本EU学会、日本安全保障貿易学会、「宙の会」所属。著書には、『EUの規制力』(遠藤乾氏と共編)、第34回サントリー学芸賞<政治・経済部門>受賞を受賞した『宇宙開発と国際政治』等。

■1■ はじめに

国連フォーラムでは、鈴木一人氏(国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルメンバー、北海道大学教授)をお迎えして、「国連のイラン制裁」についての勉強会を開催しました。

国連制裁とEU・アメリカによる一方的制裁の違いや効果、アメリカとイランを含む中東諸国との歴史的観点から見た複雑な関係性、また、6月末に迫るイラン核協議の最終合意に向けての臨場感あふれるお話を伺うことができました。

なお、以下の議事録の内容については、所属組織の公式見解ではなく、発表者の個人的な見解である旨、ご了承ください。


■2■ 国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルメンバーへの道

鈴木氏は日本の大学では国際政治を専攻し、国際政治やヨーロッパ統合に関心があった。修士課程在籍中に国連代表部で半年ほどインターンをする機会があった。その際に、外交官になるよりも、研究者になることを決意した。大学院を決める際には、欧州統合を進める各国の主権のあり方に関心があり、その分野で興味深い研究を行っているヘレン・ウォレス教授に師事することを求め、イギリスのサセックス大学を選択した。博士論文のテーマを選択する際に、防衛、航空、宇宙というキーワードがあったが、日本・EUともに実績のある宇宙を選び、ヨーロッパにおける宇宙協力を博士論文のテーマとした。 その経緯で、鈴木氏自身は国際政治学者として宇宙分野の研究を行っていると認識していたが、周囲からは国際政治分野ができる宇宙専門家と認識され、宇宙分野から引き合いがあった。

その後政治家の目にとまり、自民党、公明党、民主党のアドバイザーとして、宇宙基本法の設立にも関わった。また、宇宙開発技術は軍事ミサイルの技術とも関連が深く、その輸出管理についても勉強をしていたところ、福島第一原発事故民間事故調から誘いがあり民間人の立場から事故の検証を行った。

このように宇宙、ミサイル、原発、核、輸出管理ができるということから、国連安全保障理事会イラン制裁委員会の専門家パネル枠が日本に割り当てられた際に、政府から話があり、専門家パネルに加わることになった。様々なことを行ってきたが、広く捉えると自分の専門は、国際政治、科学技術、グローバル化であり、技術を中心にガバナンスの問題をどう扱うか、が自身のテーマとなるので、国連のイラン制裁は非常に面白いテーマだと感じ、引き受けた。

■3■ イランの核開発はアメリカから始まった

イランは1950年代から核開発を行っていた。冷戦中にソ連が水爆実験に成功し、共産圏の国々がこれに続いて核技術の拡散を始めたので、アメリカが核の平和的利用に限って技術の伝達を認めることについてのイニシアチブを取り始めた。ここから、核技術は平和利用と軍事利用の二つに分類され、アメリカは核の平和利用を主張した。今でこそアメリカとイランは敵対関係にあるものの、当時は同盟関係にあったため、アメリカが主導的にイランに核技術を提供していた。

そんな中、1979年にイラン・イスラム革命が起こった。これは第2次石油ショックを引き起こし、中東の情勢を一変させるほどの大きな出来事だった。それまでイランではアメリカ合衆国政府の傀儡政権が腐敗した独裁政治を行っていたが、シーア派のイスラム教徒による集団が独裁者を倒し、イラン・イスラム共和国を樹立した。この革命によりアメリカとの関係は悪化したが、核開発は1979年以降もアメリカ留学組を中心として引き続き行われた。今の核開発を巡るイランの政権の中心にいるのもアメリカに留学した研究者である。

■4■ 核兵器開発の疑いがかけられたイラン

2002年にイランで秘密裏に建設されたの広大なウラン濃縮施設が発見された。ウランは天然ウランのまま発電に利用することは難しく、濃縮する必要がある。発電のために必要なのは3.5から5%ほどの低濃縮ウランで十分である。ただ、核兵器を製造するためには90%以上の高濃縮ウランが必要で、そのためには複数の遠心分離機で長時間ウランの遠心分離を行う必要がある。そのため、核交渉で課題となるのは核兵器を短期間で製造できないよう、遠心分離機の数を減らすことにある。

現在、イランには遠心分離機が約2万基存在しており、核兵器を製造するのに数週間から数か月かかると推測されているが、核交渉ではウラン濃縮が出来る遠心分離機は5000基程度に抑えられ、核兵器を製造するのには最低でも一年かかるように交渉が進んでいる。

2002年にウラン濃縮施設が見つかったことで、イランの核兵器開発が疑われ、EU3(英仏独)がイランと交渉した。当時アメリカはイランとの関係が悪化しておりこの交渉には加わらなかった。実はイランは一度も核不拡散条約(Nuclear Nonproliferation Treaty:以下NPT)(注1)を脱退しておらず、この施設も平和利用であることを主張した。当時のイラン大統領も積極的に交渉に応じ、疑いを晴らそうとした。2003年のイラク戦争の最中にEU3との交渉がまとまるが、アメリカはイランの核開発は一切認めない方針を貫き、交渉結果を否定した。そのため交渉が無効になり、合意の機運が失われ、イランはアメリカ及び西側諸国と対立した。

さらにイランは保守派に政権交代し、アメリカとの関係は悪化の一途をたどった。イランはNPTこそ脱退していないものの、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency : 以下IAEA)(注2)の査察にも非協力的になり、核開発に対して強硬な姿勢を取り始めたので、IAEAの報告を受け、安保理では2006年の制裁決議をはじめとして、2007年に武器輸出の禁止が定められ、2010年には専門家パネルの設立など含めた決議が採択されるなど、4本の主要な制裁決議を採択して現在に至る。

■5■ 国連によるイランへのターゲット制裁と専門家パネルの役割

国連の(7章)制裁とは国連憲章に基づいて行われるもので、集団安全保障の枠組みのなかで、武力を使わない強制措置のことである。一般的に、制裁迂回の方法があるほど効果が薄くなるが、国連の(7章)制裁は全加盟国が義務を負っているので、抜け穴がなく、効果が強い。国連制裁には様々な形があり、外交関係の断絶や、貿易の制限など、包括的な経済制裁を課してきた。だがこれらの制裁は国家全体を対象としているため一般市民にはダメージがあるものの、独裁者にはダメージが少ない制裁だったため、制裁の見直しが始まり、ターゲット制裁という概念が出てきた。これは人やもの、活動にターゲットを当て制裁を行うものである。イラン、北朝鮮は不拡散制裁と言われており、ミサイル、核の大量破壊兵器の輸出入、武器取引にターゲットを絞って制裁措置が取られている。

核利用には平和利用と、核兵器製造を含む軍事利用の2種類がある。軍事利用に繋がるものとして、イランに対して制限されているのが(1)ウラン濃縮(2)重水炉(3)再処理の3つ。国連決議ではこの1から3の活動に関わる部品や素材などの調達を全て禁止している。例えば再処理に関わるアルミニウムや炭素繊維などをイランが輸入することは禁止されている。専門家パネルの仕事は、イランが制裁をかいくぐって、1から3に関わる部品や素材を不当に調達するのを監視することである。

また、イランは国連通常兵器登録制度(UN Register of Conventional Arms)で定義された武器の輸入を禁止されている。核の軍事利用に対しての制限以外に、軍事ミサイルを製造するために必要な部品、燃料、素材、あらゆる武器もイランから輸出することが禁止されている。また、制裁はこれら活動に関わる個人や企業も対象とする。指名された企業は資産凍結、個人の場合は旅行禁止等の措置が取られる。資産凍結の場合は、それらの売買に使われるイランの銀行口座を凍結するので、イランの銀行を使って売買を行うことを阻止する。

■6■ 様々な国によるイランへの一方的制裁

国連制裁は活動にターゲットを当てて制裁を行うターゲット制裁なので、うまくいったとしてもできることは、核開発とミサイル開発を遅らせることになる。やはりダメージを与えるものでないと制裁はうまくいかないので、国連だけで制裁を行っても効果は限られてしまう。イランの場合は、アメリカ、EU、日本、オーストラリア、カナダ等が国連制裁とは別に、国連制裁に相乗する形で一方的制裁を行っており、特にアメリカやEUが広範囲に制裁をかけている。一方的制裁の1つが、金融制裁である。これは、国際決済システムであるSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunication(SWIFT)から離脱させ、国際決済を一切出来なくする措置である。金融制裁の主たる目的はイランが武器や軍事ミサイルに関わるものを輸入することを防ぐことだが、同時に食料品、衣料品などあらゆるものが輸入困難になるため、国家経済への大きなダメージとなる。その他にも、EUによる原油取引の制裁も行われており、EUはイランから一切原油を輸入しないことでイランの外貨獲得手段を減少させている。また、EUは保険供与の禁止も行っている。これは通常船や飛行機の運行にかけられる保険供与を停止するものであり、船や飛行機は保険のかかっていないリスクのある状態で運営されることになり、結果イランと他国との人・モノの行き来が減少する。

このように一方的制裁は、各国が自由に行っているもので、基本的には、国連の議決とは関係ない。一方的制裁は効果が大きいため、通常は国民生活に非常に負担がかかり、それはイラン国民にとっても同じである。しかし、イランはもともと国内市場も大きく豊かな国であるため、国民生活は国内市場でなんとか持ちこたえられており、制裁直接に由来する人道危機が起きるところまではいっておらず、ターゲット制裁は非常にうまくいっているケースだと言える。

■7■ 一方的制裁と国連制裁の相乗効果

逆に一方的制裁だけではなかなか効果が出にくい。例えば一方的制裁における金融制裁ではドルを使用できなくなるので、アメリカやEUに対する依存度の高さ、つまり国際金融や、国際決済の中でドルを使う比率が高い国ほど厳しいものになり、効果を増す。しかしながら、最近では、中国はアジアインフラ投資銀行を金融の中心として、アメリカのドルとは違う通貨で資金を供給できる仕組みを作ろうとしている。そのためかつてのようなドル中心の政策が難しくなっている。一方、国連制裁は、グローバルに全ての加盟国に制裁義務が課されるので、一方的制裁と組み合わせると非常に効果がある。国連制裁を行う際に大切なのは、正当性を担保することである。例えば、アメリカやEUがロシアに対して一方的制裁を課しているがそれほど効果がないのは、正当性が担保されていないためといえる。

■8■ イランとの最終合意に向けた核交渉の進捗

現在国連とイランとの間で核交渉が進んでいる。この転機になったのは、 2013年に核開発問題をめぐってアメリカと激しく対立していたアフマディネジャド政権から、穏健派のロウハニ政権に変わったことである。アメリカやEUの制裁が2010年と2012年に強化された影響で、アフマディネジャド時代のイランの経済は大きなダメージを受け、それを打破することを期待されての大統領選だった。通常イランの大統領選挙は複数の有力候補者がいて1回目の選挙ではなかなか決まらないが、ロウハニ大統領は1回目の選挙で50%の投票数を獲得し、大統領に就任した。2013年8月に就任したロウハニ政権は、同年11月にはP5+1(注3)と合意(Joint Plan of Action, JPOA)を結んでいる。これにより、部分的に制裁が解除され、これまで外国に凍結されていた資金を一部イランに還元することになり、イランはこれまで禁止されていた部品等の購入ができるようになった。制裁国側との合意により制裁が緩和され、イランの景気が良くなることが明らかとなった、非常に大きな転機だった。この合意を受けて2014年の1月から部分的に制裁が緩和され、核開発も凍結されている。

ところがここで難しい問題が発生した。これまでの国連制裁ではウランの一切の濃縮を禁止していたが、上記の合意では、3.5%以上のウラン濃縮は認めない、と記載されており、3.5%以下の濃縮については触れられない。そのため、安保理決議で禁止されているにもかかわらず、3.5%以下の低濃縮ウランが、現在イランで増え続けている。さらに2015年の4月2日にP5+1とイランがスイスのローザンヌで、イランの核問題に対して2015年6月末を目指して最終合意をまとめることを決定した。この合意の中にはウランの濃縮のための遠心分離機の稼働数を、約5060基までに制限することが含まれている。これは、ウラン濃縮活動等の停止を求める国連安保理決議の求めとは矛盾している。この矛盾は、6月の最終合意の際に新しい安保理決議で解消できるように動いている。

■9■ イランとの武器取引の制裁

核の交渉が進んでいるが、イランのもう1つの大きな問題は武器輸出である。イランは中東でもエジプトに次ぐ大国で、最高指導者のハメネイ師の管理下にありながら政府のコントロールの下にはない、イランの革命防衛隊という非常に強い軍隊を持っている。1979年のイスラム革命の際、イスラム革命の思想を輸出するという概念のもとに、革命防衛隊にQuds Forceと呼ばれる外征部隊が作られた。この革命防衛隊がQuds Forceを通じて積極的に支援しているのが、イラクのシーア派民兵や、シーア派政権、そしてイエメンではフーシ派である。アメリカはかつてスンニ派であるサダムフセイン元イラク大統領を支援していたため、イランのシーア派を否定していたが、現在ではイラクのシーア派政権を支援しており、また、スンニ派の過激派組織であるISISと戦おうとしているので、イラクからはイランとアメリカは同盟関係にあるとみられている。一方イエメンからはアメリカとサウジアラビアは敵対関係にあるとみられている。

6月末に核合意がなされて、新しい安保理決議が採択され、核開発については制裁はなくなるが、ミサイルと武器取引禁止の制裁は引き続き残す可能性があることが予見されている。というのも、イランは懲罰的制裁の排除を求めているが、周辺諸国であるサウジアラビアやイスラエルがイランの勢力の拡大を懸念しており、そのためアメリカも無視はできない状況だといえるためだ。(しかし、交渉の最終盤でイランとロシア・中国がミサイル・武器禁輸の制裁解除を求め、新安保理決議で時限付の制裁解除条項が入れられることとなった)

■10■ イラン制裁委員会の位置づけ

現在国連が行っている制裁の多くはアフリカで行われている。アフリカでの制裁はイランの制裁とは異なり、内戦や人権侵害を行ったことに対する制裁で、個人や集団が制裁の対象になっている。専門家パネルは国連の政務局(United Nations Department of Political Affairs, DPA)内の安全保障理事会付属組織支局(Security Council Subsidiary Organs Branch)に属している。アフリカ制裁の専門家パネルはロスター制度に登録している専門家の中から選ばれるが、イランや北朝鮮の核不拡散は特殊で、各国が専門家パネルの選出メンバー枠を持っている。主な役割は加盟国からの制裁違反事案の報告に対する対応や、依頼事案の対応、また加盟国の協議や民間企業なども含めたアウトリーチなどである。また、年次報告書を出すことも大きな役割となっている。各国の思惑や、メディアの関心事項などにも対応しながら報告書の作成を行っている。

■11■ 質疑応答

質問:イランの濃縮3.5%以下は制裁対象外とのことだったが、濃度3.5%以下のウランではどのようなことができるのか?また平和利用へのリスクはどのようなことがあるか?

回答:核技術の平和利用は、発電、医療(放射線治療など)、動力源への利用の3つがあげられる。濃度3.5%以下のウランは、発電と動力源への活用が可能である。よってイランの現在の核濃縮設備状基的には発電を目的としている。ちなみに、放射線治療は20%の濃縮が必要と言われている。安全の管理面では原子力の3S(Safety:原子力安全、Security:原子力安全保障、Safe Guard: 原子力の保証措置)と呼ばれる基準があり、IAEAはこの3Sを審査している。原子力安全には国際的な協定があるが、イランは加盟していない。地震が多い地域に属するイランのブシェール原発は地震のリスクもあり、IAEAはその安全性についても調査を行っている。現状では調査の結果問題のない状態ではあるが、イランの原子力発電所の安全強化の必要性はIAEAも認識しており、現在の核交渉終了後に、さらに調査を行っていく予定である。

質問:専門家パネルでの調査内容についてはどのように研究しているのか?

回答:学術的な研究をしていくというよりも、近年実際に起こったことをケーススタディとして取り上げ、なぜそのようなことが起こったのかを分析していき、それをどのように解釈するかを定型化していくのが仕事と言える。研究対象として学術的に扱っているところは少ない。

質問:6月に行われる最終合意はどのような意味を持っているのか。

回答:まず、イランにとっては、最終合意が反故にされて自国に対する制裁を解除させることができなければ、国際社会への反発をさらに増すことになる。よって欧米諸国は合意が行を非でも形成させるだろう。イランはすべての制裁解除を望んでいるが、実際にはこれまで課されてきた様々な制裁を少しづつ緩和していくことになる。イランは、経済的には中程度の先進国であり、近隣諸国にとっては、イランは脅威である一方、経済的なパートナーでもある。そのため、近隣諸国にとっても実は制裁解除はメリットにもなり得る。

(注1)核不拡散条約:1968年に署名され、1970年に発効した、核兵器の不拡散、核軍縮、核の平和利用を目的とした国際条約。(詳細はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/npt/gaiyo.html)

(注2)国際原子力機関:1957年に設立した、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする国際機関。(詳細はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/iaea/iaea_g.html)

(注3)P5+1:国連安全保障理事会の常任理事国である米国、英国、フランス、ロシア、中国にドイツが加わった6カ国を意味する。

企画リーダー:志村洋子
企画運営: 上川路文哉、高橋尚子、原口正彦
議事録担当:小田理代
ウェブ掲載:中村理香