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第29回 菅原 絵美 さん

大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程
国連グローバル・コンパクト事務所(UNGCO)
2008年4月から6月(3ヶ月間)、ニューヨーク

 

■インターンへの応募の経緯■

 インターン応募の経緯については、前回の「OHCHR編」を参照してください。国連グローバル・コンパクト事務所(GCO)には、OHCHRよりも早い9月中旬(9月末が締め切り)に申請書類を提出しました。GCOは国連事務総長室の下にある組織なので、最初に国連ニューヨーク本部に掲載されているインターン応募要項に則り手続きをおこない、後にGCOに応募した旨の連絡をしました(GCOでのインターン応募方法については、GCOホームページに詳細があります)。1週間後にGCOから直接Emailで連絡があり、電話にてインタビュー(実際の内容はインターンの希望時期など)を受けました。その後、追加の書類を提出し、10月中旬に正式なインターン受入の連絡をもらいました。

  私の場合は、OHCHRにも同時に申請をしていたため、時期の調整に苦労しました。GCOと相談し、申請時には1月からの3カ月であったものを、4月からの3カ月に変更してもらうことになりました。

■インターンへの準備■

 GCOでのインターンも無給です。交通費と宿泊代といったインターンシップに関する必要経費については、今回も大学からの奨学金に頼りました。

  住居に関しては、国連本部からホテルやアパートのリストの配布がありました。多くのインターンは、住居探しに関して、craigslist (http://newyork.craigslist.org/)を使っていると薦められましたが、私の場合は運がよく、留学時代のクラスメート数名でアパートを借り、シェアすることになりました。

  国連ニューヨーク本部では、インターンのための大規模な説明会(1月開始と7月開始の場合)が設けられており、国連事務総長との記念写真撮影などもあります。残念ながら、私のような4月開始の場合は個別対応となっていました。


インターン中大変お世話になった田瀬和夫氏による撮影

■ インターンの業務内容■

 GCOは国連ニューヨーク本部の事務局ビルではなく、UNプラザ2という事務局ビルの向かいのビルの6階にありました。GCOが職員30人弱の小さな事務所であると知ってはいましたが、先のOHCHRと比べ、その小ささに驚きました。
国連グローバル・コンパクト事務所という機関は聞きなれない方も多いかと思いますので、少し説明をさせていただきます。国連グローバル・コンパクトの「コンパクト」は口約束と契約の中間程度の拘束力をもつ「約束」を意味する単語です。つまり「グローバル・コンパクト」とは、国連事務総長と企業との間のグローバルな「約束」であり、国連(事務総長)が、企業に対し、@人権保障、労働基準、環境保全および腐敗防止からなるGC10原則の企業活動内での実現を求め、さらにAミレニアム開発目標といった国連の掲げる目標を実現するためUNパートナーシップへの参加を求めるイニシアチブです。国連が推進する唯一の企業の社会的責任(CSR)イニシアチブとも言われています。

  GCの活動は、グローバルとローカルのレベルに分かれ、ローカル・レベルの活動は各国に発足したローカルネットワークが担当します。日本にも、GC参加企業が立ち上げた「グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)」があります。現在、GCには企業だけでなく、経営者団体、労働組合、NGO、学術機関、そして都市まで参加しており、参加者総数は6000を越え、ローカルネットワークも80カ国以上で発足しています。日本からは76の企業・団体(敬愛大学国際学部・川崎市)が参加しています。(2009年1月現在)

 私の派遣先は、希望通り、人権チームでした。人権チームは、GC10原則のなかの2つの課題、人権保障と労働基準の問題をメインに担当しています。また、チームのトップが弁護士であることから、法律問題(他機関との覚書(MOU)の作成、国連やGCのロゴの使用など知的財産権に関する問題など)や誠実性(integrity)確保の措置(ロゴ使用の申請許可や、参加企業のGC原則違反への苦情対応など)も取り扱っていました。インターンでは、私もこれらの活動に携わることになりました。さらに、GCO唯一の日本人だったこともあり、私は日本企業やGC-JNのフォーカル・ポイントとしての仕事もしました。

 人権に関する活動としては、@企業と人権・労働に関するツール・ガイドラインの作成や情報発信、AGCの政策立案・運営組織である人権作業部会・労働作業部会の運営、B集団的なアクション(世界人権宣言60周年記念の企業イベント準備など)の支援がありました。Aの活動においては、私も4月末にボストンで開催された第4回人権作業部会会合へ参加しました。人権作業部会は、メアリー・ロビンソン(元アイルランド大統領、元国連人権高等弁務官)を議長に、国連機関、NGO、企業からの代表者30名程度で構成されるのですが、そこでの、セクターを越えた人権議論、人権政策決定を目の当たりにし、「パートナーシップ」の現場を経験することができました。

 6月には、韓国で開催されたGCO、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)、Principles for Responsible Investment (PRI)などの共催イベントの運営に携わりました。GCのアジア地域会合も兼ねており、日本、韓国、中国、インドネシア、ベトナムを含む、12カ国のローカルネットワーク代表者によるガバナンスについての話合いが持たれました。またUNEP FIとの共催であったこともあり、日中韓から400以上のビジネスが参加しており、中国・韓国企業の存在感の大きさ、国際的な場での強烈なアピールに、圧倒されたことを覚えています。

 日本との連携は、GCボードのメンバーである富士ゼロックス株式会社相談役特別顧問の有馬利男氏との出会いがきっかけになりました。GC政策決定の場としてGCボードがあるのですが、5月のミーティングの際、出席していた有馬氏から日本でのGC活動の話について伺ったり、短い時間ながら意見交換をしたりさせてもらいました。その後、有馬氏からGC-JN事務局へ紹介していただき、GCOとGC-JNとの協働キャンペーンを企画し、運営したりすることもできました。また、6月の事務総長来日の際のGC-JN主催のレセプションにおいては、GC-JN事務局との調整役を経験しました。この調整は予想以上の細かさで、翻訳に四苦八苦しましたし、日本とは時差もあるため、その点でも苦労しました。

■インターンの感想■

 GCOは小さな事務所でしたが、その分、職員とのコミュニケーションがとりやすく、GCOの所長と議論したり、インターンが自ら企画の提案ができたりと、自発的に動けばそれが活かされる恵まれた環境にありました。インターン最終日に、ケル所長が「GCファミリーの一員だ」といってくれましたが、まさにGCOは、この「ファミリー」という言葉がよく似合う環境でした。

 また、GCOでは日本人としての役割を求められたことが印象的でした。日本企業、GC-JN、日本国連代表部との連絡役が中心で、仕事内容は極めて事務的なことでしたが、私の仕事を通じてGCOの印象・評価が少なからず形成されることを思うと緊張しました。

 GCのイベント・活動では、企業、NGO、政府(中央政府・地方政府)、大学など、さまざまなバックグラウンドを持つ方々と知り合う機会を得ました。特に、企業のCEOやCSR担当者との出会いは衝撃的でした。人権や労働問題、先住民問題、平和構築や開発での企業の役割などを真剣に議論し、自社での人権保障の取り組みを熱心に語る姿に、「企業は利潤のみを追求するというのは古典的ステレオタイプだ」というCEOの発言を重ねたりしました。
ジュネーブでの反省を活かし、ニューヨーク滞在中は、様々なイベント・勉強会に参加し、国連機関の職員の方々や学生、日本企業の方々と交流するよう心がけました。UNフォーラムでも活躍されているOHCHAの田瀬さんには、国連職員を目指すうえでのアドバイスに留まらず、ニューヨーク生活についてのアドバイスなど、大変お世話になりました。そのご縁で、今回「国連でインターン」(GCO編)用に写真を撮っていただきました。ランチやお茶の機会を通じて、たくさんの国連職員の方々、国連代表部の方々から経験談やアドバイスをいただくことができました。この場をかりて感謝をお伝えしたいと思います。


菅原撮影

■ その後と将来の展望■

 ジュネーブ・ニューヨークでの6カ月のインターン後、現在はOSIPPの博士後期課程に在籍しながら、法政大学現代法研究所国連グローバル・コンパクト研究センターで研究員として勤務するとともに、GC-JNで非常勤職員として勤務しています。博士論文を完成させなければならないので、研究と仕事の両立が目下の課題です。

■これからインターンを希望する方へのメッセージ■

 OHCHRでのインターン(「国連でインターン 第23回」参照)で前述したことの繰り返しとなりますが、インターンシップは学生としては身近な活動であり、学生のアドバンテージを活かせる活動です。インターンにあたって必要なのは、「積極性」と「行動力」につきます。「語学力は必要不可欠ですが、そればかりにとらわれていてはいけません。積極性やコミュニケーション能力、社交性など、仕事上、より必要なものがあるのだから。」というアドバイス通りです。確かにインターンに必要となる資金の確保は簡単ではありませんが、探してみると学内外で様々なプログラムが用意されています。資金調達などの事前準備を通じて、「積極性」と「行動力」が鍛えられていったようにも感じています。

 インターン中は、自身の希望を明確に伝えることも大切です。インターンからの積極的な申し入れはたいてい受け入れてもらえます。私は、3カ月間に2回の出張、他チームの会議・プロジェクトへの参加、日本でのキャンペーンの提案など、やりたいと思うことは何でも提案してみました(もちろん、全部が全部うまくいったわけではありません)。

 ジュネーブのOHCHR、ニューヨークのGCOと2か所でインターンをしましたが、多くの方々と出会い、多くのことを学んだ、とても充実した6ケ月間でした。ジュネーブ、ニューヨークでお世話になった方々、日本で私を支えてくれた方々、ありがとうございました。

(2009年3月12日掲載 担当:高田 ウェブ掲載:藤田)



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