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第21回 山田千晶さん
ADRA Japan 
プログラム・オフィサー


(子供たちの笑顔、大切にしたい)

やまだちあき 岐阜県出身。大学卒業後、英国イースト・アングリア大学大学院で開発学ディプロマ、英国ウェールズ大学大学院で自然資源管理修士号(MSc in Rural Resource Management)を取得。ウェールズ大学院在学中に、フィリピンのEuropeAID・ASIA−LINKプロジェクトの農村開発・社会調査団に参加。2006年1月からADRA Japanでアソシエイト・プログラム・オフィサーとして勤務し、同年4月にADRA Laosに赴任。2007年1月より現職。

1. ラオスにおけるADRA Japanの活動

ADRA Japanは、世界のさまざまな地域において今なお著しく損なわれている人間性の尊厳の回復と維持を目的としており、人種、宗教、政治の壁を越えて、肉体的、精神的、社会的、道徳的な全人的援助の継続を図っています。

1991年にADRA Laosが設立されて以来、ADRA Japanはラオス人によるラオス人のための事業運営の能力育成を常に配慮しながらも、この姉妹組織の教育、保健、農業など多岐にわたる事業を支援してきました。資金的な支援に留まらず、最近ではADRA Japanも、ラオスにおいて連携事業や人的支援も積極的に行い、直接受益者に支援の手を届けようとしています。2004年に始まり、今月で4回目になる、中古自転車贈呈プロジェクトはその最近の例です。学校に通うのが難しかった小学生が、日本の自転車に乗って毎日学校に通っています。

 

2. 新事業:少数民族食糧確保のための支援事業〜北部ルアンナムタ県ロン郡8ヶ村〜

2006年4月にラオスに赴任以来、村々を廻り、地域の人との交流の中で必要性を考え、より持続発展性のある案件構築を目指してきました。その案件が、今年の夏にJICA草の根技術協力事業パートナー型に採択内定をいただきました。早ければ、2008年より開始の予定です。

 


(事業対象地:ルアンナムタ県ロン郡サラ村・アカ族の民族衣装は特徴的です)

 

(事業概要)
ラオス北部ルアンナムタ県はミャンマーと中国に隣接し、山間地帯が広がっています。その県都から車で4時間のロン地区の村々は、少数民族が多く外部から隔離された貧農地域です。専らアカ米栽培に従事する村民たちにとって、自給自足の達成は長年の課題であり、近年、対象地域では、ラオスの土地・人口政策の影響を受け奥地から国道沿いに農民が移動しつつあります。また、村民自身と進出しつつある中国農業ビジネスによる持続不可能な土地利用により、食糧不足の悪循環が拡大しています。政府による実効的な農業技術支援は現在行なわれていません。農業生産の単一性と停滞を反映して、村民の栄養状態は劣悪であり農業所得は低迷しています。農業の多角化と生産性向上を通した食糧自給達成、その相乗効果として栄養改善と換金作物販売を実現する取り組みが必要とされており、村民も意欲を示しています。

 


(ADRAを呼ぶ声が聞こえたら、いかだでだって参ります!!このいかだでの川くだりは怖かった・・・IN雨季)

 

(事業地はどんなとこ?)
申請書を作成するに当たり、街の中心から20−30分の村8ヶ村でニーズ調査を実施しました。電気のない、外国人のほとんどいない、ラオスなのにラオス語よりも民族独自の言葉を話す人口が多いロン郡。【毎日、何を食べているの?】【村の近くの森では、どんな動物が狩猟できるの?どんな林産物が採取できるの?】【村の近くに水源はあるの?】【一家の収入源は?】などできるだけ村人が自分自身で答えられる質問を用意しました。というのは、8ヶ村のうちの7ヶ村は、アカ族の村。ラオスには、多くの少数民族が住んでいますが、アカ族はその中でも、調査が難しいといわれている民族です。情報から閉ざされた世界で生活をしている彼らの知識は限られており、1人で物事を考えることが苦手な人々だそうです。ある村人に質問したのにも関わらず、別の人が答えてしまうハプニングも多くありました。根気強く、笑顔で、時には冗談も交え、分かり易く答えやすい質問を考えるのも一苦労でした。また、特徴的なのはアカ族は昔からの言い伝えと共にいきているということです。生まれた双子は不吉、不運をもたらす、だから殺してしまえ!そう言い伝えられてきました。今は、その迷信も深くは浸透されてはいないようですが、実際に今もアカ族はこの迷信を信じている人もいます。双子を守れ!そう言って立ち上がったラオス人がいました。彼女の懸命なる活動をサポートしたのはUNFPAでした。迷信を非難するのではなく、文化であるならば尊重しなければならないという考えを示しながらも、双子は不運をもたらさないのだと新たな考えをアカ族に伝えたのでした。アカ族の村には、なかなか外部からの情報が入らないため、他の民族の暮らしや考え方と比較することはなく、その迷信を非難する者もいないのです。調査は、そんなアカ族の固有の文化の理解を考慮して行いました。

 


(アカ族の村。住居の多くは高床式です)

 

(事業が採択されてから事業開始まで)
NGOがここラオスで事業を開始するに当たり、まず、NGO登録、そしてラオス国からの了承の取り付けを行う必要があります。もっとも時間を要するといわれているのがMOU (Memorandum of Understandings) の締結です。早くて2,3ヶ月、長くて1年間。その後、ドナーと契約を結び、晴れて事業開始となるわけです。来年の春には、MOUが締結し、事業を開始できることを祈っています。

 

3. 国連とNGOの連携

先日、WFP主催のワークショップに参加。テーマは、【Launch-comprehensive Food security and vulnerability Analysis(CFSVA) Report】。NGOスタッフも数多く参加しました。NGOに比べ、豊富な資金力を持つ国連だからこそ可能であったWFPの調査結果は大変興味深いものでした。調査結果を発表し、共有するだけでなく、今後はこの調査結果を基にし、国連、NGOなどがお互いの強みを生かしあいながら協働で活動することができたらなんと素晴らしいだろうと思いました。月に一度開かれる日本のNGOの集まり(JANM)には、オブザーバーとして、在ラオス日本大使館や日本国際協力機構(JICA)から職員が参加します。話し合う議題に関しては、すべてNGOに関することですが、政府機関の人に、NGOがどんな活動をしているのか、NGOが今何を考えているのかに耳を傾けてもらうことが大切です。ラオスは、他の国に比べ、メディアを通じての情報の取得が難しく、またラオス政府機関の情報を得ることは更に難しいと思います。ラオスという人口約600万人の国の規模に対して、援助団体が多く、また援助の銀座といった例えの県もあります。事業地、事業内容が重らないように、事業の対象村が重ならないために、NGO同士、日本政府機関だけではく、国連機関も参加し、情報を共有する場を設け、そして、互いに連携し活動をすることが、ラオスの人々の生活基盤作りに大きな助けとなるのではないでしょうか。ビエンチャン市内の中心に、新しくUNDPのオフィスビルの工事が行われています。また、国連通りと呼ばれる通りもあるビエンチャン。ビエンチャンでは、特に国連機関の名前を新聞などのメディアでよく耳にします。しかし、その割には各国連機関がラオスで何をしているのかなどの活動自体があまり私たちに見えていないのが印象です。NGOには難しい、ラオス政府と協働で長期的なマスタープランの作成ももちろんラオスには必要ですが、今後、農村部にも焦点をあてた地域に根付いた活動をNGOと協働で実施しなければと期待しています。新事業構築のためのニーズ調査の前に、UNICEF,UNFPAのビエンチャン事務所に伺い、情報収集を行いました。UNFPAは、ルアンナムタ県でも活動をしており、近い将来、協働で何か活動ができればと思います。

 

4. ラオスの豊かさ

「最貧国の1つなのに、ラオスの人々の心は豊かだよね」、ラオスでよく耳にする言葉です。世界の最貧国の1つに位置付けられているラオスには、確実に貧困は存在すると思います。ただ、GNPでは計れない豊かさがそこにはあるのです。赴任以来、【豊かさってなんだろう】と考える機会が多くありました。ラオスにいると、ゆったりとした時間が与えてくれる気持ちの豊かさ、メコン川や多くの森などの自然が生み出す豊かさ、社会・人・家族のつながりから生まれる豊かさを感じるのです。常に助け合い、前向きな気持ちで生きるラオス人の心の豊かさは、真の豊かさなのではないでしょうか。首都のビエンチャンはここ数年、車の数が非常に増え、道路が整備され、人々の生活にゆとりが生まれてきています。少しずつ変わりゆくこの国の心の豊かさは、何年たっても変わらないでいてほしい、そう願います。

 

皆様に、以下のサイトでお目にかかれること楽しみにしています。
ADRA Japan  http://www.adrajpn.org/ 私が所属する団体のホームページです。
ラオス便り    http://adrajpnlaos.blogspot.com/  私のラオスでの生活を綴っています。

(2007年11月29日掲載 担当:井筒)

 


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