第6回 戸崎 智支さん / コーネル大学大学院
インターン先:UNFPA東京事務所 / ILO駐日事務所
(写真:UNFPA東京事務所にて、池上清子所長及び職員の方々と/
右から2人目が戸崎さん)
場所は共に東京・青山UNハウス:
UNFPA東京事務所 2005.3-8 (月2−3回)
ILO駐日事務所 2005.6-8 (Full time)
国連機関 在日オフィスで学んだこと
私はアジア経済研究所開発スクール(IDEAS)の15期研修生であり、1年目の国内研修を昨夏に終え、現在2年目の海外派遣先であるコーネル大学修士課程にて労働政策を学んでおります。専門は労働市場政策で、特に途上国の雇用創出、人材育成、労働移民に関心があります。IDEASに入学する前は、民間企業で労務・労働組合・人事企画関連の仕事を7年間経験してきました。途上国の現地法人との仕事の経験から、グローバル経済下での労働者に関する諸問題に興味を持ち、開発の道を目指しました。IDEASの国内研修が修了する6月から渡米までの期間、日本にある国際機関でインターンをしたいと考え、前年の秋から興味がある機関にコンタクトを取り始め、結局UNFPAとILOの日本のオフィスでインターンを経験しました。どちらの機関でも自分の専門につながるリサーチをさせていただき、大きなステップアップとなりました。また、将来的にもし国際機関の職員となることができましたら、日本人として国際社会と日本の橋渡し役としても貢献していきたいと考えているため、国際機関にとってトップドナーの一つである日本のリエゾンオフィスのマネジメントを身近で感じることができたことも大きな収穫でした。
■1■ UNFPA東京事務所
移民問題や途上国の労働市場政策を研究していく上で、人口問題という大きな視点を持つことは有益と考え、12月に東京事務所のHPのボランティア募集に応募しました。夏休みの期間の希望でしたが、MDGs関連のリサーチのお話を頂き、ちょうどIDEASの授業でMDGsを履修していたこともあり、3月からIDEASの授業と並行してインターンとしてリサーチに携わることになりました。リサーチではMDGsの中でも妊産婦死亡率や乳幼児死亡率などの指標を分析、UNFPA東京事務所として妊産婦の健康を向上させるためにどんな活動が必要かという点をまとめるということになりました。わずかな期間のリサーチでしたが、MDGsをはじめ、開発指標を様々な視点から検証するという経験ができました。
またもう一つ東京事務所での収穫は、リエゾンオフィスでのマネジメントを学ぶことができたことです。UNFPA東京事務所は開設から日が浅いため、組織の構築過程を目の当たりにすることができましたし、UNFPAと他援助機関、NGO、そして外務省など日本政府とのやり取りを通し、国連システムの中での日本の役割を学ぶことができました。またUNFPAへの最大の資金拠出国の一つである日本の国民に世界の人口問題を自らの問題と捉えてもらおうと、多忙なスケジュールの中でも、あえて日本全国を駆け回る池上所長のリーダーシップを目の当たりにし、日本人国際機関幹部としてのロールモデルを得たように感じています。
■2■ ILO駐日事務所
自分の専門に一番近い機関であり、IDEASの修了論文で取り組んでいた外国人労働者の問題や、人身売買に関する駐日事務所の活動に興味があったことから、UNFPA同様、直接駐日事務所に応募、幸いなことに外国人労働者問題のリサーチをさせていただけるということになりました。現在、日本には約80万人の外国人が就労していると言われています。しかし、その実態はあまり知られていないのが現状です。根本問題として、日本国民に外国人労働者を受け入れるか否かというコンセンサスが存在しないということもありますが、ここ数年日本の人口高齢化や少子化に伴う外国人労働者受け入れ問題が脚光を浴びつつあります。インターンでは、日本における外国人労働者に関する最新文献を整理し、駐日事務所の基礎的資料を作成するというミッションを得ました。駐日事務所の豊富な資料や外部の図書館の文献を集め、最新の動向を把握して代表にレポートするという内容でしたが、単に事実や抽出された課題を報告するということに留まらず、堀内代表(当時)からは常に政策担当者としての視点を求められました。また、具体的なアウトプットとして、私の集めた基礎データを、ILO駐日事務所発行の「日本における性的搾取を目的とした人身取引」(2005年12月)に採用していただきました。こうした機会をいただけたことは、コーネルでのマスター論文のテーマを決定する際にも、またキャリアを考える上でも、プラスとなっております。移民労働者は、受入国に諸課題をもたらすと共に、送出国の経済や政情が決定的な要因となっていることから、ILO駐日事務所で学んだことを活かしつつ、今後、途上国の労働政策研究に力点を移していきたいと思っています。
UNFPA、ILOと二つの機関で得た経験、知識を通し、今後の自分の進むべき道がより明確になったと思います。修士課程修了後は、労働政策を通じて途上国の労働雇用創出を手助けするような仕事をしたいと考えています。国連事務局内の関連部署やILO、IOMなどで仕事ができればと思っております。PhDの進学も視野に入れています。手段はどうであれ、途上国の人々がまともな職業生活(ディーセントワーク)を送れるように、自分の専門性で貢献する、というのが最終的なキャリア目標です。
最後になりますが、日本に限らず、国際機関でインターンをしたいと考えている方へ。自分がやりたいこと、または自分が貢献できることと、相手のニーズ(ここでは国際機関がインターンに求めるもの)が一致するのが大前提だと思います。どんなに想いが強くとも、また関連分野で高い専門性を持っていようとも、採用されない場合もあります。ですから、積極的に人的ネットワークを構築し、できるだけニーズを探るべく情報を集めることをお勧めします。