UNCT Joint Session (RCO/ IOM / FAO / UNDP/ UNAIDS / UNFPA / UNICEF)
1.組織概要(事業目的、ゴール等)
★RCO(国連常駐代表事務所):国連は、各国で活動する国連機関は国連カントリーチーム(UNCT)を形成しており、UNCT の代表を国連常駐調整官(RC:Resident Coordinator)が務め、国連諸機関間の調整を行っている。RCOはRCの日常業務を支えるために設立された。
★IOM(国際移住機関):世界的な人の移動(移住)の問題を専門に扱い、移民個人への直接支援から関係国への技術支援、移住問題に関する地域協力の促進、移住に関する調査研究などを通じて、移住にまつわる課題の解決に努める。主要事業活動:①人道・復興支援、②国境管理、③人間の安全保障、④難民の第三国移住、⑤人身取引対策、⑥移住と開発、⑦移住フォーラム。
★FAO(国連食糧農業機関):世界の農林水産業の発展と農村開発に取り組む国連の専門機関。FAOでは、①飢餓、食料不安及び栄養失調の撲滅、②貧困の削減と全ての人々の経済・社会発展、③現在及び将来の世代の利益のための天然資源の持続的管理と利用、を主要な3つのゴールと定める。
★UNDP(国連開発計画):国連システムにおける技術協力活動を推進する中核的資金供与機関として設立。開発途上国及び市場経済移行国における持続可能な開発の実現を多角的に支援することを任務とする。 「持続可能な人間開発」(Sustainable Human Development)を基本原則に掲げ、この原則の下、民主的ガバナンスの確立・貧困削減・危機予防と復興・エネルギーと環境及び HIV/エイズの5分野に 重点を置いて援助活動を行っており、その中でも特に貧困削減を最重要課題としてきた。近年では特に、①SDGs の実現(After MDGs)、②ガバナンスと平和構築、③気候変動と災害に対する対策などを主に扱う。
★UNAIDS(国連合同エイズ計画):UNAIDSは対エイズ活動の先導となってエイズへの感染を防ぎ、エイズ患者にケアと支援を提供し、HIV に対する人々や地域社会の脆弱性を改善し、エイズ流行の多様な影響を軽減する。国連の11の機関、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連児童基金(ユニセフ)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UNWomen)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関(WHO)、世界銀行(World Bank)が一体となって活動を進め、また、対エイズ対策が最大の成果を生むようにグローバル、国内のパートナーと緊密に連携する。
★UNFPA(国連人口基金):生殖・出産に関する身体的、精神的、社会的健康およびそれを享受することができる権利「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利︓SRH/R)」を推進。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)や個人の選択に基づく家族計画サービスを改善し、また持続可能な開発のための人口政策を作成できるような支援等、人口関連の支援を行う。
★UNICEF(国連児童基金):主要事業活動:保健、HIV/AIDS、水・衛生、栄養、教育、子どもの保護等の分野において、自然災害や武力 紛争の際 の緊急人道支援から中長期的な開発支援まで幅広く活動。子どもの生存のための現場での支援に加え、子どもたちをめぐる現状分析、モニタリング、具体的な政策提言も行う。
2.ブリーフィング、プロジェクト訪問において説明された内容・質疑応答の詳細
各機関から組織・活動内容についてのブリーフィングをいただいた後、質疑応答を行った。
<RCO>
パプアニューギニアでは、20の国連機関が活動し、14の機関が現地オフィスを持っている。国連の主要な役割は、1)国家能力の強化、2)技術支援・政策提言、3)グローバル・ネットワーク、4) 知的貢献である。また、パプアニューギニア政府と国連のパートナーシップをまとめた「国連開発援助枠組み(UNDAF)2018-2022」を策定しており、SDGsの主要な要素、パプアニューギニア政府の開発優先事項を基礎として、4つの重点分野(People, Prosperity, Peace, Planet)を設定している。
現在、国連がパプアで主に活動しているものとして、1)ポリオに対する対応、2)地震被害への援助、3)ブーゲンビルへの支援がある。
<IOM>
IOMパプアニューギニアでは、12のサブオフィスを設置し(2018年には4つ追加)、1)シェルターや非食料品の配布などの緊急援助、2)災害リスクマネジメント、3)気候変動と移住、4)人身売買への対応、5)国境マネジメント、6)自発的帰還の援助等の活動をしている。災害リスクマネジメントでは、コミュニティの伝統的な知見の活用(indegenous knowledge for disaster risk reduction)を行っている。
<FAO>
PNG国民の80%が従事している農業の分野において、FAOは農業省と共に、1)国の食料安全保障アクションプランの策定(3つのパイロット州においては州レベルのアクションプランを作成)、2)E-agricultureの促進(ICTを利用した農業開発)を行っている。また、国のジェンダーアセスメントにおいて、農業セクターにおけるジェンダーアセスメントの実施を支援している。
<UNDP>
UNDPパプアニューギニアでは、貧困削減、民主的なガバナンス、危機予防及び復興、女性のエンパワーメント、環境とエネルギー等の分野で活動を行っている。民主的なガバナンス支援では、昨年パプアニューギニアでは選挙があり新しい政府となり、技術協力やリソースパーソンの派遣などを通じて、包括的な5か年開発計画の策定支援を行ったり、議会制度支援としてニュージーランド議会への訪問見学や、選挙監視支援を政府に対して行っている。また、政治における女性のリーダーシップについても取り組みも行っている。環境分野では、政府・コミュニティ両方と共同し、温暖化・災害に対しての災害リスクマネジメント、生物多様性保持のための保護区の支援を行っている。保護区の活動では、国土のほとんどが慣習地のパプアニューギニアにおいて、コミュニティと関係を構築し、協働することは重要である。
<UNAIDS>
国連の中では特殊な機関であり、HIV対策という一つのプログラムで、国連をつなげている機関である。2030年までにHIVを根絶するというSDGsのゴールを達成するため、UNFPA、UNICEFなど関連する11の国連機関をコーディネートしている。対応している課題としては、医療、セックスワーカーなどの労働問題、法律など、それぞれの機関の強みを活かして、地域レベル、国レベルで対応をしている。HIV感染者の傾向は地域・国によって違い、アジアはセックスワーカー、北米は同性間、アフリカは若い女性などの傾向がある。
<UNFPA>
UNFPAは、リプロダクティブ・ライツのための機関であり、1)望まれる妊娠、2)安全な出産、3)若者の将来的な可能性を豊かにすることを目指して、1)適切な家族計画、2)妊産婦死亡の根絶、3)ジェンダーに基づく暴力の根絶に取り組んでいる。パプアニューギニアでは、国のデータで妊産婦死亡率などが高い状況である。UNFPAは、助産師や医師のキャパシティを上げることや政府が薬などの医療用品を拡充することを支援し、安全な出産ができるよう取り組んでいる。また、ジェンダーに基づく暴力では、レイプ被害者が適切に治療を受けられることやHIVに感染していないか確認することなどを支援している。政府が適切な人口統計、証拠に基づいた医療サービスを提供できるよう後押ししている。
<UNICEF>
2018年2月にハイランド地方で発生した地震に対する、ユニセフの緊急援助について説明。交通アクセスが制限され、衛星通信もよくなかったため、地震発生後48時間は、ポートモレスビーからは状況が把握できない状態だった。ハイランド地方では、国連があまり認知おらず、また歴史的に民族間の紛争も多発している地域であることから、支援に入る際は、警戒され攻撃されないよう国連とは何かという説明することから始めたが、事故が3件起こった。現地への物資の供給は、山間部のため、飛行機やトラック、ポーター等を使用し、ハイジャック対策のためエスコートをつけた。被災地では、予防接種が普及しておらず、子供の25%が何も予防接種を受けていない状態だった。また災害時にあまり認知されていないものは、子供への心理的影響がある。UNICEFは、1)WHOと連携して予防接種の支援、2)学校の再建(衛生的なトイレ、水の支援)を行っている。UNICEFは緊急キットとして、50人用の文房具や玩具などのボックスを用意しており、配布を行った。
質疑応答
1)4つの重点分野(People, Prosperity, Peace, Planet)について、SDGsの各分野との整合性は何か。
――RCO:4つの重点分野は、国の5か年計画を前進させるため方針を簡略化したものであり、それぞれの分野にSDGsの各項目は含まれている。
2)今年、RCOはより独立した役割を持つようになったが、課題は何か。
――RCO:国連の官僚的な組織(それぞれの組織においてマネジメント、予算システムが違う)をどう変革するかが課題であるが、実際のところ、劇的な変革をすることは難しく、大部分のシステムは従来のやり方で行っている状況である。
3)RCOが広報をするにあたり、主に誰に対して、どのような媒体を使用するか。
――RCO:多民族であるパプアニューギニアにおいて、ターゲットは多岐にわたる。インターネットがつながりにくい場所もあるため(特にハイランドの地震発生時)、携帯電話のテキストメッセージや、ラジオ、教会の協力を得てコミュニケーションをすることがある。パプアニューギニア政府は、ソーシャルメディアの使用が活発である。UNDAF 2018-2022では、ステークホルダー調査、メディア状況調査を行い、コミュニケーションストラテジーを策定した。
4)IOM プレゼンテーションにおいて、プロジェクトを実施するにあたり、現地の人々とコミュニケーションを取る際、教会の役割は重要ということだが、教会は国連とどのように協働しているか。難しいことはあるか。
――IOM:遠隔の村へ支援する場合、それぞれの村の宗教的リーダーのネットワークがあり、人々の支援へ協力的であるため、物資の配布等で協力してもらっている。また、彼らの代表が研修に参加することもある。
――UNICEF :少し違う視点から付け加えたい。教会(キリスト教。様々な宗派がある)は協力的であるが、それぞれが固有の信条や意見があるため、協働が難しい場合もある。ハイランド地方だけでも12以上の教会があり、いくつかは国連の人権の概念に反した発言をするところもある(特に女性の人権に対して)。
――UNFPA:保護に関しては、対立するところはないが、家族計画に関しては、教会と考え方が違う場合もある。どのような言葉で表現するかが重要である。
――UNAIDS:HIV対策に関して、教会と協力している。教会には大きな強みと弱みがある。HIV等の病気や性に関して、宗派により考え方が違うところもある。
5)ジェンダーについてPNGの男性に対して働きかけをする際、気を付けることは?
――UNFPA:ジェンダーについては、一般的に女性に働きかけることが多く、パプアニューギニアでもジェンダーに基づく暴力が起きた時の対処について主に活動しており、現状は男性に対するプログラムは行っていない。他の国では、ハスバンド・スクールという、男性に対して、暴力やレイプ防止のための啓発を行っているところもある。パプアニューギニアでも新しい取り組みとして、そのようなことを始めようとしており、これまで活動は主に首都で行われることが多かったが、地方でも行いたいと考えている。
6)IOMの人身売買に関して、モニタリングと評価はどのような方法で行っているのか。
――IOM:人身売買については同僚に確認するが、一般的な方法としては、プロジェクトマトリックスを使用し、プロジェクトレベルでは中間評価や終了時評価(外部の評価者によることもある)を行い、教訓を抽出している。
7)UNのゴールを達成するために、どのような方法で優先順位をつけているのか。ビジネスの優先順位のつけ方と方法の違いはあるか。
――UNFPA:政府の要望・希望に沿い、政府の優先順位を優先する。
――IOM: 最終的な判断は先方政府で行うが、専門家チームによる優先順位のアセスメントを行う場合もある。プロジェクトによっては、予算が全てドナー拠出の場合もあり、ドナーのプライオリティも考慮する。
――UNICEF:国連ではUN憲章(人権の尊重)が第一優先事項。政府が開発計画を策定するとき、人権の尊重が反映されるよう働きかけている。時には先方政府の方針が人権を重視していないこともあり、その場合は意見することもある。
――RCO:UNDAFの最終年には、アセスメントを行い、ステークホルダー協議にて意見を募る。また、国のビジョン2050の優先事項に沿うようにする。
3.参加者所感
パプアの主要な国連機関の方々から、一度にブリーフィングをいただき、とても貴重な時間でした。またその中に2人、日本人の職員の方がいらっしゃり、国連で働くまでの道のりをお聞きすることができました。印象に残ったことは、質疑応答にて、教会の役割やプロジェクトの優先順位のつけ方について、各機関で意見の違いがあったことです。また、パプアニューギニアの特徴である民族の多様性について、IOMでコミュニティの伝統的知見を活用した防災リスクマネジメントや、UNICEFのハイランド地方での緊急援助にて外部からの援助に警戒されないようにすることへの配慮、教会を通じてコミュニケーションを行っている等、パプアニューギニアならではだと思いました。