パプアニューギニア・スタディ・プログラム

WHO

世界保健機関(WHO)ポートモレスビー(POM)事務所

1.組織概要(事業目的、ゴール等)

WHOは、グローバルな保健問題についてリーダーシップを発揮し、健康に関する研究課題を作成し、規範や基準を設定する。また、証拠に基づく政策選択肢を明確にし、加盟国へ技術的支援を行い、健康志向を監視、評価する(PNG Country Cooperation Strategy 2016-2020)。

<WHOのPNGにおける優先支援分野> ※PNG保健分野まとめ(PSP参加者作成)

  1. Achieving sustainable health outcomes:結核(HIVとの併発を含む)の撲滅、予防接種の普及、妊産婦・乳幼児の死亡率低下
  2. Strengthening health systems:農村地域への保険サービスの普及(資金のスムーズな流通、監視体制の強化)、医療人材の育成、最低限の医薬品・機材・情報へのアクセス確保
  3. Emergency preparedness,surveillance and health security:National Department of Health(NDOH)による災害時のリスクマネジメント能力強化、Field Epidemiology Training Programmeの継続による監視能力強化
  4. Sector overview,policy dialogue and development cooperation:保健分野を包括的に捉えた政策の構築(WHOが助言)

2.ブリーフィング、プロジェクト訪問において説明された内容・質疑応答の詳細

ブリーフィングにおいて説明された内容
<担当者の所掌業務について>
ポリオ、マラリアの蔓延予防対策/事後対応担当

<WHOのPNG国内での所掌業務について>
感染症予防、リプロダクティブヘルス、食事に対する栄養価向上プロジェクトを実施している。また、国家間を伝播する可能性のあるSARSのような感染症を予防する責務がある。太平洋西部において蔓延しているポリオが現在の最大の懸念事項である。ポリオについては、ワクチン接種によって15年間は予防効果が継続する。2018年9月時点で問題となっていたハイランド地方で感染が確認されたポリオウィルスは他のエリアに拡大する恐れがあるとされている。

切迫した状況下では、他のエリアからPOMに伝わってくる感染情報を待っていることが出来ない。また、近隣のオーストラリアにおいては、免疫レベルが非常に低いため、PNGからの感染症が蔓延する可能性を内包している。また、過去に火山噴火の影響によって約600名以上の方が避難生活を送り、地震によって100名近くの方が亡くなったことがある。PNGにおいてWHOはそれほど強固なシステムを保有していないのが実情。

質疑応答内容
<PNGにおける成功事例について>
資金残高が潤沢ではないため、直近でポリオ対策の資金8億円を調達した経験については成功事例として挙げられる。

<ワクチン接種の実情について>
コミュニティ内で需要はあるものの、主に以下の2点が阻害要因となっている。
・医薬品供給自体が十分に追いついていない点
・地理的に医薬品の供給がしづらい点

<国民の健康意識と行動力の向上について>
「なぜその健康に対する取り組みが重要なのか?」に関する教育レベルを向上させるべき。特に、友人関係など仲間同士のPeer Lead Educationが必要とされている。

<鉱山地域におけるHIVの実情について>
資金が巡っている地域であり、歓楽街のようなものが発達しているため、HIVが多くなる原因にもつながっている。

3.参加者所感

国連機関として多角的な視点に立ち、PNG以外の国家で発生した過去の反省点を踏まえながら、WHOとしての役割を模索し、職務を行っている印象があった。具体的には、太平洋地域では2000年に根絶したはずのポリオが再流行しているPNGの現状を受け、WHOでは初期対応が遅れたエボラの大流行を反省し、エビデンス収集前に対応策を先行して講じることで、少しでもポリオの拡散防止に努めようとしている点などが挙げられる。

一方で、これに伴ったワクチン接種の計画は、部族間の衝突や部族の地理的な孤立など、PNGならではの困難に直面していることを伺うことが出来たと同時に、長年世界中で活動をしてきたWHOならではの知見を生かした取り組みが行われている様子もあった。