新年を迎えて:国連フォーラム幹事一同より
国連フォーラムの皆様、
あけましておめでとうございます。
昨2007年、国連は新しい事務総長を迎え新たな時代に入りました。
パン・ギムン事務総長のリーダーシップはどうだったのか。大きな
可否なくこなしているところが、アジア的なのでしょうか。事務局
改革などで地道な成果を挙げている反面、コフィ・アナン前事務総長
のようなカリスマに欠けるという評価をする人もいます。この新しい
事務総長の下で国連はどう変わり、これからいかなる方向へ進んで
いくのでしょう。
国連は昨年、気候変動と地球温暖化をトップ・プライオリティにしまし
た。このことはIPCCやゴア米国前副大統領がノーベル賞を受賞したことに
も象徴されています。12月に行われたバリでの締約国会議では、米国や中
国も含めた形でロードマップに合意がなされ一定の進歩が見られた反面、
温暖化ガス排出量削減の数値目標などを巡る各国の思惑にはいまだに大き
な違いがあります。来年の洞爺湖サミットで日本がどのような役割を果た
すのかは、たいへん注目されるところです。
また、2007年はMDGs達成の中間地点でした。5歳未満の死亡が1000万人
を切るなどいくつかの目標で進展が見られたものの、目標達成への道は未
だ厳しいと感じられます。事務総長は、来年は開発に力を入れると述べて
きています。しかし、MDGs達成にはさらなる進展が必要であり、5月に開催
されるTICAD IVをはじめとする開発のアジェンダ、特にアフリカに焦点を
当てた取組みがさらに重要性を帯びてきそうです。
そして、開発だけではなく、安全保障、平和構築、人権といった異なる分
野の課題をいかに結びつけていくかもこれからの国連の大きな、かつ喫緊
の課題です。ミャンマー、イラク、アフガニスタン、スーダン、チャド、
そしてパキスタンでの混迷。国連の予算の約3割がダルフールへの
UNAMIDに費やされることになりました。肥大化するPKO予算に対する疑
問も生じるでしょうし、さらにこのような事態を防ぐための貧困、環境、
武器取引などへの対策をどのように進めていくのか、防災や鳥インフルエ
ンザなどのな危機的状況をいかに予防し、対応していくのか。さまざまな
分野で国連の果たす役割を強化し統合していく必要がありましょう。
国連改革については、PKO局分割などの努力がなされた反面、一昨年の
ハイ・レベル・パネルの報告書がめざした「One UN」は、必ずしも
その目標どおりには展開していません。また、国連総会での予算についての
決議において唯一米国のみが反対票を投じ、20年ぶりにコンセンサスが
成立しなかったなど、国連という組織のあり方についても、大きな課題が
残されているように思えます。先のアルジェリアのテロにも見られるように、
国連そのものが政治的活動の対象となる時代に、国連はいかなる組織で
あるべきなのでしょうか。
2008年はどのような年になるのでしょう。北京オリンピックを機に中国の
国威が高まると同時にアジア全体の占める位置が高揚するかもしれませ
ん。中国ばかりでなく、インド、ロシアなどの新興大国の世界経済への貢
献度が大きく見えてきています。このことは、地球温暖化防止や開発の議論
にも一つの方向性を与えるかもしれません。一方、引き続きアフリカは
重要であり続けるでしょう。アフリカ問題の解決なくして、国連の使命は
果たせないと言っても過言ではありません。そしてその中で国連の役割が
どのように変わり、日本はどのような役割を演じるのかが注目されます。
国連フォーラムの幹事会では、昨年同様、こうした国連での変化を捉え、
メンバーのみなさんに多様で質の高い議論の場を提供し、積極的に活動を
展開していきたいと考えております。今年は、新たな企画も加えてさらに
ダイナミックで充実したフォーラムにしていきたいと思っております。
国連フォーラムのメンバーが先月2000人を超えました。メンバーがつくっ
ていくフォーラムです。幹事一同、みなさんの積極的なご参加をお待ちし
ております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
幹事一同
久木田 純、田瀬 和夫、須永 和男、青木 滋紀、朝居 八穂子、穴井 路想、池田 直史、石塚 恵、井筒 節、稲垣 朝子、宇都宮
美恵、大谷 美紀子、大槻 佑子、奥村 礼子、亀井 温子、城戸 武洋、紀谷 昌彦、國京 彬、黒田 和秀、桑原 りさ、小谷 瑠以、佐々木
佑、猿田 佐世、柴土 真季、清水 和彦、杉山 章子、鈴木 香織、高田 真理江、田辺 美穂子、堤 敦朗、土井 香苗、徳田 朝子、富田
玲菜、中村 俊裕、西川 絢子、林 神奈、平岡 今日子、藤澤 有希子、藤田 真紀子、山口 絵理、山本 晋平、山本 紀子、横山 雅子、吉田
明子、芳野 あき
連絡先:kanjikai[at]unforum.org
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