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国連フォーラム設立5周年にあたって

2004年10月24日「国連の日」に発足した「国連フォーラム」は、今日、5周年を迎えました。

国連のことをもっと知りたい、国連の活動に貢献したいと考えている多くの人々に、知識を得、議論に参加し、さらには具体的な活動に参画するきっかけとなる場を提供することがこのフォーラムの使命です。その使命をこの5年間果たすことができたでしょうか。多くの既存のフォーラムがある中で、国連フォーラムはそれらとうまく連携すると同時に独自の付加価値を生み出してきたでしょうか。これを機にこの5年間を振り返り、幹事会として今後の指針を皆さんと共有、議論したいと思います。

5年前の「国連の日」の前日、それまで数ヶ月かけて準備をしてきた国連フォーラムの発起人10人がニューヨーク郊外で昼食をはさんでフォーラムの趣意書の最終案を議論しました。組織の要となる使命については特に時間をかけて議論し、「場を提供する」という点を最も大事にすることで合意しました。そして翌日にはその趣意書と案内文をワシントンDC開発フォーラムや国連日本人職員会、JASIDなど既存のネットワークに流し、フォーラムの活動が始まりました。

最初はメーリングリストとそれを記録するブログのみでしたが、発起人が中心となって結成した幹事会によって、「勉強会」や「インタビュー・シリーズ」、「国連でインターン」、「フィールド・エッセイ」など様々な活動が企画、運営されるようになりました。最初のMLへの投稿は国連本部で行われたノーベル経済学賞受賞のアマルティア・セン博士の講演の報告でした。12月にはインド洋の津波についての報告が次々にあり、少しずつ国連に関心を持つ参加者が増えました。2005年には専用のウェブ・サイトも立ち上げ、ML登録者も500人を超えました。2006年には1200人、2007年には2000人、 2008年は2500人と増え、現在約3500人の登録者がいます。この間さらに、「国連職員NOW!」や「私の提言」などの企画も加わり、さらにたくさんの人々が参加するようになりました。勉強会やセミナーの数も増え、他のフォーラムとの合同オフ会なども開くようになりました。

参加者の内訳を見ると、最初は国連職員や外務省などの関係者が中心でしたが、その後学生や研究者、NGO関係者、企業やメディアの参加者も増え、幅広い層に関心を持たれるようになりました。MLへの投稿には、様々な会合や報告書などへの情報も多く、このフォーラムと関心が重なるいくつかのフォーラムとの間にフォーラム間のネットワークができているようです。また、国連総会や安全保障理事会でオバマ大統領や鳩山首相が演説を行った今年の9月にはこれらの演説についての投稿が集中的に行われ、フォーラム参加者の様々な意見を反映することができました。

フォーラムの幹事会は、これらの企画を運営、調整するために現在ニューヨークと東京に事務局を置き、定期的に幹事会を開き、世界中に広がった50人を超える幹事が様々な活動を担当しています。さらにその幹事を助けるサポーターも数多く協力しています。フォーラムの活動はこれらの幹事、サポーターの国連への熱い思いとボランティア精神に支えられています。このフォーラムはMLとウェブを利用したバーチャル世界での活動と、勉強会やオフ会などのリアル世界での活動を組み合わせて行ってきました。これからもこれらの特徴をうまく活用していきたいと思っています。また、今後は双方向性とスピード、情報量などを高めるためにクラウド・コンピューティングやショート・メッセージング、画像ストリーミングなどのIT技術も利用して、さらに使いやすく、価値のあるものにしていきたいと考えています。

国連を取り巻く環境と世界は今大きな変化を予感させています。ひとつは、ノーベル平和賞までもらったオバマ大統領に象徴される新しいタイプのリーダーシップです。その特徴は、核兵器廃絶や気候変動への対応など、これまでいわば理想的ではあるが現実的ではないと思われていたことを今の世代の責任として正面から対応しようとする姿勢です。この発想は人類の理想を掲げた国連憲章に通ずるものですし、このような変化は国連の役割をも大きく変えていく可能性があります。世界が抱える多くの問題に正面から立ち向かう、高い理想と価値観に基づいて行動することができる、そういう時代が来たという予感があります。もうひとつは、中国経済の一足早い回復やブラジルのオリンピック開催国決定、来年の南アフリカでのワールド・カップ開催、汚職に対峙したユドヨノ大統領の再選、ますます重要度を増すG20などに見られる世界の多極化です。世界の趨勢は、一国主義から多国主義へと振り子が戻っていくところであり、これらを調整し、世界の総意を形成し、問題解決に向かって協力していくために、国連の役割はさらに重要になっていくと思われます。

一方、アフガニスタンやパキスタン、イラクでの紛争の泥沼化が顕著であったり、ギニア(C)やコンゴ(DRC)、ナイジェリアなどでの資源争奪戦の中での殺戮と人権侵害、イスラエルとパレスチナ双方の戦争犯罪など、平和と人権がいまだ遠い地域が多くあります。2015年の国連ミレニアム開発目標の達成期限まであと6年に迫り、国連内部や援助国、民間団体も今立ち上がって行動しようと呼びかけていますが、目標達成にはODAや民間、企業の総力をあげての取り組みとその効率化が必要です。

このような世界情勢の変化の中で、国連フォーラムは参加者の知恵と情報力、そしてネットワークの力で議論を深め、発信力を高め、有意義な場を提供し続けていきたいと考えています。国連フォーラムがその使命を果たすために、常に学習し改善する組織であるよう、幹事一同考え活動してきました。

フォーラムは使命を果たしているでしょうか。今後国連フォーラムに何を期待されるでしょうか。是非皆さんのご意見をお聞かせください。

2009年10月24日 国連フォーラム幹事会一同

久木田 純、田瀬 和夫、須永 和男、青柳 華子、秋山 瞳、池田 直史、石井 はるか、井筒 節、岩崎 寛央、岩崎 優、植村 亜希子、内田 絢子、内田 麻衣子、大地田 清佳、大槻 佑子、岡崎 詩織、荻 七菜子、奥村 礼子、亀井 温子、紀谷 昌彦、桐谷 純子、國京 彬、黒田 和秀、桑原 りさ、小谷 瑠以、斉藤 理恵子、佐藤 萌、猿田 佐世、柴土 真季、清水 和彦、志村 洋子、菅野 弘、杉山 章子、菅野 文美、鈴木 香織、鈴木 三輪、清野 美心子、高田 真理江、高橋 利志子、高浜 晴美、田辺 陽子、堤 敦朗、富田 玲菜、仲上 睦美、永島 杏紗、中村 俊裕、中山 莉彩、成松 潤子、錦織 有史、原口 正彦、平岡 今日子、藤田 真紀子、宮脇 麻奈、望月 康恵、山本 晋平、吉田 真紀、芳野 あき、渡辺 哲也、渡辺 知子

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