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第37回
国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の現状と課題
川上 隆久さん UNAMA官房長(Chief of Staff)

第36回
緊急援助における公衆衛生の役割
國井 修さん
国連児童基金(UNICEF)保健戦略上級アドバイザー
第35回
障害者の権利条約--その意義、条約策定過程、今後の課題
伊東 亜紀子さん 国連経済社会局(UN/DESA)

第34回
気候変動と貧困
隈元 美穂子さん隈元 美穂子さん
国連開発計画(UNDP)エネルギー・環境グループ 
地球環境ファシリティー 
第33回
高まる国際組織(改編)への期待 ダボス会議報告
藤澤 秀敏さん
日本放送協会(NHK)アメリカ総局総局長

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HOME勉強会 第38回 > Q & A



「国連平和構築委員会の現状と展望〜議長国に就任して」
星野俊也さん
国連日本政府代表部 公使参事官

「ピースビルダーのための寺子屋とは〜広島平和構築人材育成センターの挑戦」
上杉勇司さん
広島大学大学院国際協力研究科 准教授


2007年7月9日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連邦人職員会/国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会


■1■第1部 国連平和構築委員会の現状と展望 【星野さん講演部分】
■2■第1部 質疑応答
■3■第2部 ピースビルダーのための寺子屋とは 【上杉さん講演部分】
■4■第2部 質疑応答

 

■1■ 質疑応答

■Q■ 教訓作業部会が始動したとのことだが、教訓として共有できるような事例には具体的にどのようなものがあるか。 

■A■ 現時点の教訓作業部会での議論の対象となっているのは一般的なものが多いが、これまでに扱われたテーマとして、例えば、平和構築プロセスにおける選挙というものがあった。和平合意直後の初回の選挙は国連PKOの下でまずは実施されるが、平和の定着のためには二回目以降の選挙を現地の人々が自らの手でいかに公正に行うか、そして政権交代があった場合にはいかに平和的に権力の移譲を行うか等が重要となる。その観点から各国が経験をシェアする議論がなされた。その他、アフガニスタン政府と国際社会の間で合意された「アフガニスタン・コンパクト」に見られるような当事国の自主性と国際社会からの支援を結びつけるための手法や、西アフリカ、大湖地域、中米などを例に国別の平和構築の取組と地域ぐるみの取組とを結びつける意義等、興味深い論点が取り上げられている。

■Q■ 平和構築委員会と世界銀行・IMFとの関係はどのように整理されているのか。

■A■ 「統合平和構築戦略」を策定するといっても、現地の対象国には世界銀行の「貧困削減戦略文書(Poverty Reduction Strategy Paper, PRSP)」等既存の戦略が存在する。したがって、それらと重複することなく、「平和構築」という観点からいかなる付加価値をつけることができるのかに力点を置くようにしている。

■Q■ たとえば現在のネパールのように、国際社会の観点からは平和構築を支援する必要があると思われても、当事国からは内政干渉をしてほしくないと拒否されるような事例もあるのではないか。平和構築委員会が関与するためには当事国からの要請が必要だと理解しているが、その点は今後の課題だと言えるのではないか。

■A■ PBCは、当事国からの要望も踏まえつつ、安保理や総会、経社理、事務総長等からの諮問要請を受けて検討対象国に取り上げるかどうかを決定する。確かに、平和構築の作業は、多くの場合、国家のガバナンス機構の立て直しを伴うことから、それを外部から支援することは「内政」に深く関わるものとなる。しかし、基本的には同意が前提となるので「干渉」というわけではない。(逆に言えば、検討対象国は内政に「干渉」される覚悟がいる。)有無を言わさず議題化が進む安保理とPBCはここでも大きく性格を異にするが、安保理と連携し、(当事国の基本的な同意を前提に)安保理で議題となった国の平和構築フェーズのフォローアップをすることはPBCの重要な役割である。

 

第2部 質疑応答

■Q■ 日本政府はこの事業のために1.8億円、一人当たり600万円を投資するとのことだが、具体的にはどのように使われるのか。

■A■ 一人当たり600万円というのはあくまでも話を分かりやすくするための単純計算として捉えて頂きたい。この金額は、講師への謝金、海外実務研修にかかる渡航費、着後手当、保険料等に使われることになる。つまり、海外実務研修にあたって、基本的には受け入れ機関が人件費を負担する必要はない。ただし渡航費については、日本から研修先への往復渡航費はHPCが負担するが、赴任後に発生する活動費は受け入れ機関が負担することになる。また、現在の就職先を休職してこの研修制度に参加する人については、出向元の職場に対してその分の補填をすることも検討している。

■Q■ 国内研修の期間中は研修員全員が6週間寝食を共にするとのことであり、説明の中ではアジア的なやり方という点が強調されていたが、海外生活が長い人にもなじめるような雰囲気なのか。

■A■ 東京で説明会を行った際、NGOや国連機関で実際に平和構築の専門家として活躍している方々にも来て頂いた。その方々からは、平和構築に携わるために必要な資質として、チームワークと柔軟性が挙げられていた。どのような機関で働くとしても、チームワークと柔軟性は欠かせない。国内研修では、自ら周囲に溶け込み、リーダーシップを発揮して頂けることを期待している。

■Q■ 書類選考通過者に対して面接あるいは電話インタビューを行うとされているが、日本に帰国しなければいけないのか。

■A■ 海外在住の書類選考通過者に対しては、国際電話でのインタビューを通じた面接を行うことを考えている。面接のために日本に帰国する必要はない。

■Q■ 日本での説明会にはどのような人が参加し、どのような点に関心が持たれていたか。

■A■ 東京のUNハウスで行った説明会には約180人の参加者があり、そのうちおよそ三分の一が学生だった。あとは社会人として仕事を持っている人が多かった。関心が持たれていた点としては、応募資格に「平和構築に関連する諸分野で2年以上の実務経験を有し」とあるが、これまで自分が働いていた分野が「平和構築に関連する諸分野」にあてはまるのかどうか知りたい、というものがあった。これについては、募集要項で列挙されている分野はあくまでも例なので、そこに書かれていない分野であっても、これまで何らかの専門的な知見を培ってきた方はぜひ応募して頂きたい。 
実務経験が2年を大幅に超えて5〜6年あったとしても、長すぎるということは全くないので心配せず、むしろその知見を活かして平和構築の分野で活躍して頂ければと思う。その他には、研修を終えた後本当に就職できるのか、という質問が多かった。この点については、日本政府ができる限りの後押しをするとはいっても、最終的には本人の実力にかかってくる。
研修員が何人どういう機関に就職したかということはこの事業の成否を判断する上での最もわかりやすい指標となるので、HPCとしても研修員の就職を支援していきたいと考えている。
また、どのような機関または地域で海外実務研修を行えるのか、という点にも関心が持たれていたが、現時点では、アジアを中心とした平和構築の現場を念頭に置いている。実際にどのような人材が研修員として派遣されるのかは、研修員の希望と受け入れる側の機関の事情の双方を考慮しながら調整していくことになる。

■Q■ 平和構築支援が必要とされるような現場においては、日本では考えられないような事件が起こることもあるし、たとえば撃たれた時に何と叫べばよいか、ブービートラップとはどういうものか等、紛争後の不安定な地域だからこそ知っていなければならないこともある。国連機関では、安全研修に合格しなければ職員を紛争後地域に派遣しないとも聞いている。この事業では文民の育成に特化するとのことだが、文民だからこそ、平和構築の理論とは別に、紛争後地域で生活するための軍事的な知識や安全面での訓練を受けていることが求められるのではないか。

■A■ 東京で説明会を行った際、同じような質問がNGOの方からも出された。確かにこれは重要なことであり、国内研修修了後に行う予定の「海外実務研修に向けたガイダンス」の中で、派遣前研修として安全対策を実施したいと考えている。あわせて国連ボランティア計画(UNV)の協力を得て国連ボランティアを派遣する前に実際に行われているような研修をこの事業の研修員にも提供したい。あるいは、UNHCRが人道援助活動のための訓練センターとして設立した「eセンター」の安全対策カリキュラムを実施する等の方策についても現在検討中である。また、軍事活動の経験者を講師に招くことで、研修内容を平和構築の現実に少しでも近づけていきたい。

■Q■ カナダのピアソンセンター(レスター・ピアソン記念PKO訓練センター)等、平和構築に関する人材育成を行っている機関は他にもあるが、そういった既存の機関と比べてどのように独自性を出していくのか。

■A■ HPCは何といっても本年立ち上げたばかりの組織なので、自分の力だけで一から始めるのではなく、海外の実績のある機関とパートナーシップを築き、取り入れるべきところは積極的に取り入れていきたい。とはいえ、既存のカリキュラムを丸写しするのではなく、この事業の趣旨に合うように練り直していきながら独自性を打ち出していきたいと考えている。

■Q■ 海外実務研修の派遣先はアジアが中心になるとのことだが、アフリカにも平和構築を必要としている国が多く、TICAD(アフリカ開発会議:Tokyo International Conference on African Development)等を通じて日本政府も積極的にアフリカへの支援を行っている。それにもかかわらず、派遣先はアジアに限定されるのか。

■A■ 主な派遣先はアジアという方針はあるものの、平和構築の観点から見れば、もちろんアジアだけではなくアフリカ等他の地域で研修を実施することも視野に入れなければならないだろう。実際には、受け入れ機関との調整が必要となることに加えて、万が一の場合に日本政府としてどのような対応を取ることができるか、等の点を考慮した上で最終的に派遣先を決定していくことになる。

■Q■ 欧米あるいは国連機関で現在主流となっているやり方に対して違和感を持っている人も多いためアジア的なやり方を模索していきたいとのことだが、違和感とは具体的にどのようなことか。

■A■ 私(上杉プログラムオフィサー)自身の経験では、現地での知見の集積があるにもかかわらずそれを活用しようとせず、他の国の成功例を押しつけようとする、現地の人が無知であると決めつけて「教えてあげている」と相手を見下したような態度で仕事をしている、と感じたことがある。相手が失敗したときに、日本人であれば相手と一緒に対応策を考えられるのではないかと思うが、欧米から支援に来ていた人は現地の人を怒鳴りつけていたのを見たこともある。対等なパートナーとして現地の人と共に働くことができるか、平和構築の主役はあくまでも現地の人であり自分たちは「名脇役」であるべきだとわきまえているか、という点で、日本人としては欧米流のやり方に違和感を覚えることがあるのではないだろうか。
(参加者からのコメント)平和構築支援を必要としている国は世界各地にあり、価値観も様々だ。そのため現地の人に受け入れられる方法は国によって違うはずなのに、欧米流のやり方が主流となっているのが現状。これまでの平和構築支援で失敗例とされているものの中には、欧米一辺倒のやり方が失敗の一因となっているものもあると思う。多様な価値観の中で支援をしていける柔軟性が必要であり、特にアジアでの平和構築については、アジア的な価値観に基づいてアジア的なやり方で支援を行うことも重要ではないか。

■Q■ 就職支援の一環として、優秀な研修員は、原則2年間、国際機関に若手職員として派遣するとのことだが、現在年間40人ほどいる邦人JPOの中で、JPOを終えた後も国連機関に残る人材は半数に満たないのではないか。国連機関における邦人職員を増強するという外務省の観点を踏まえれば、この研修制度は、JPOに応募する前段階にある人が受けるべきものとの位置づけと理解してよいのか。JPOを終えた後、P3ないしはP4レベルとして国連機関内に残り、昇進していくのは自分の力だけでは難しく、日本政府の後押しも必要とされているが、その点について日本政府としてはどのように考えているのか。

■A■ 国連機関の邦人職員数を増やすためには、JPO、国連職員採用競争試験、この人材育成事業、どれか一つだけで十分というものではなく、様々な方法を組み合わせていく必要があると考えている。JPOを終えた後も長期的に国連機関で勤務している人材は確かに少なく、実態は厳しい。いろいろなプログラムを複合的に使いながらキャリアを形成していくことが重要だと思う。この事業に関して言えば、今後、国際機関等の国際舞台で活躍したいと考えている人、国際機関若手職を経験した上でネットワーク作りやプレゼンテーション能力の面でもっと力をつけたいと考えている人、両方の立場の人に活用して頂きたい。人材育成とは、すぐには成果が出なくても、中長期的な視野を持って着実に取り組んでいくべきものだと考えている。

■Q■ ちょうど空席がある場合、国連機関の方からHPCに対して海外実務研修員を派遣してほしいと申し入れてもよいのか。

■A■ そうした申し入れは大歓迎。5ヶ月間の海外実務研修が終わった後も引き続きその国連機関で働くことができるのであれば、それを受諾するかどうかは本人次第であり、HPCとしてはむしろその方が望ましいと考えている。この事業では将来性を重視しており、いろいろな人材が切磋琢磨することでよい結果が出ることを期待している。

以上

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議事録担当:大槻


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