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第40回
気候変動の影響と、アジアそして日本の取り組み
三村 信男さん 
茨城大学地球変動適応科学研究機関教授
第39回
「小型武器問題−国連行動計画の履行と日本の取組み」
益子 崇さん
国連軍縮部
プロジェクト調整官 
第38回
国連平和構築委員会の現状と展望
〜議長国に就任して

星野 俊也さん
国連日本政府代表部 公使参事官
ピースビルダーのための寺子屋とは
〜広島平和構築人材育成センターの挑戦

上杉 勇司さん
広島大学大学院国際協力研究科准教授

第37回
国連アフガニスタン支援ミッション
(UNAMA)の現状と課題
川上 隆久さん 
UNAMA官房長(Chief of Staff)

第36回
緊急援助における公衆衛生の役割
國井 修さん
国連児童基金(UNICEF)
保健戦略上級アドバイザー  
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「「難民救援」から「平和構築」へ - 国連取材の現場から」
水野 孝昭さん
朝日新聞ニューヨーク支局長

2007年8月31日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会

 

質疑応答

 

■Q■ 私は日本の得意分野である人間の安全保障やPKOの分野で、日本がもっと能力を発揮し、また、国連を利用していければと思っているが、現在、PKOに対する日本の貢献が減っていることを危惧している。今、自衛隊の部隊を出しているのはゴラン高原だけである。世界では120カ国以上がPKOに軍を出しているし、中国も韓国も出している。スーダン・ダルフールも史上最大の危機であるが日本はほとんど人員を出していない。軍事部門における、日本の貢献のあり方についてのお考えを聞きたい。 

■A■ スーダン・ダルフール問題は、国際的な人道危機の焦点である。国連も、日本もすごい資金を供出しているのに、日本では話題にもならない。たとえば、ODAや国連分担金は「削れ」「減らせ」と言った日本の政治家だが、ダルフールPKOに500億円も出すことには議論すらしない。もちろん自責をこめて、日本のメディアが、ダルフールの人道危機の実態を伝えてきていない責任もある。80年代のアフリカの饑餓について、朝日新聞は何度も一面で連載をやった。80年代には、日本は世界に出て行かなければ!という前向きの雰囲気と、国際的な人道活動への初々しさがあった。しかし、バブルがはじけたあと、その雰囲気が変わってしまったようだ。 たとえばPKOにしても、自衛隊員の声をきくと、「アフリカのゴマの難民キャンプでは生活条件も悪くて苦労したのに、メディアの注目も浴びなかった」というアフリカはこりごりという感想をきく。日本が世界に誇る組織である文民警察についても、カンボジアで犠牲者が出たのでPKOはもうけっこうだ、という雰囲気だそうだ。制服の部隊がPKOに参加しなくなってしまっている。

自衛隊にせよ警察にせよ、私は多くの人がPKOに参加して、国際社会の現場を踏む体験を共有するのはいいことだと思う。憲法9条を守ると言うことと、紛争の現場で武器使用を判断することは矛盾することではない。現場を経験しないで議論をしていると、地に足のつかない、重箱の隅をつつくような議論になりがちだ。

たとえば、カンボジア総選挙の投票日前の緊張した数日、私はカンボジア・シュムリアップにいた。激しい雷雨の夕方、ポルポト派が襲ってきたという噂が町中に一気に広まり、政府軍が戦車を繰り出した。国連の施設に怪我をした人がたんかで運ばれてきた。私も国連施設に駆け込んだ。武装したニュージーランド兵が塹壕で銃を構えるのをみて安心した経験がある。国連の兵士が守ってくれると安心したのである。このときの「ポト派襲撃」はうわさが引き起こしたパニックだった。結果的には笑い話だった。だが、あれが本当の襲撃でニュージーランド兵たちが応戦していたら、と考えざるを得ない。国連施設に駆け込んで「助かった」と思った私は、もし自衛隊が同じような状況で「他国の民間人を守る」ために武器使用に踏み切ったとして非難できるだろうか。

もちろん過剰防衛になってはいけないし、国連部隊が応戦すれば中立の立場を失う上に、紛争もエスカレートすることになりかねない。ただ、今話したような状況で国連施設が襲われた時の応戦なら、最低限の武器使用はセルフディフェンスと言えるのではないか。

■Q■ 邦人職員増強という観点からの質問をしたい。邦人増強は、難しく、なかなか進まない。そこで伺うが、NGOにおいてはどのような展開をして人的強化がなされてきたのか、NGOで活躍されている方々が国連に対してどういう見方をしており、それがどう変化してきたのか。最近は、PKOも、NGOと接点を持つようになってきたし、PKOの取り組みも平和構築など、分野を広げてきた。NGOもPKOもいろんなマンデートを内包するようになってきた。従来、NGOだけが活躍していた分野について国連も入りこむになってきている。このような状況において、NGOの方々がこれからどのように国連に関わっていけるか、私見をお聞きしたい。

■A■ 良い例がある。自治医大出身者として国連で活躍する国井さんのケースである。JVCが医療チームをエチオピアに派遣しようとした際、自治医大などの医療機関と提携をはかった。その当時、彼は自治医大の学生だった。その当時からの志を生かして、彼は熱帯医学を専攻した。外務省にも出向して、現在は国連で働いている。彼は、医者の世界と官僚の世界、学者の世界などを経験した上、NGOと外務省と国連を体験してきている。彼のようなキャリアは成功例だが、実際には日本のNGOには専門家を抱えて育てていくだけのキャパシティがないのが実情のようだ。

欧米社会だと、NGOと政府やシンクタンクの垣根が低い。CARE(国際人道NGO)で働いた経験が、次の就職の際の売り込みのステップになる。NGOで働いたことがステータスにもなり、国連機関などへの就職にも有利に働くが、日本社会では必ずしもそうならっていない。NGOが社会の中でステータスのある職業にならなければならない。NPO法案などできてはきたが、日本の社会全体のキャパシティがまだ小さいと思う。

■Comment■ 私も、1-2年遅れて、同じような体験をしてきた。シンガポールに82年頃に留学をし、バックパッキングをしていた。マレーシア、タイ、JVCのオフィスにも行った。私の駐在したナミビアのUNTACは粗雑であったが、ナミビア自体は、国連が、選挙から独立に向かって支援をし、達成し、その後国も落ち着いたという良い例の一つであり、それに日本が関わっていたというのも、とてもうれしいことである。

水野さんがお話しされた「セキュリュティ」についての考え方も、同じ感想を持った。私がナミビアに行くときも、村に大変深く入っていたので、いつ殺されてもおかしくないような状況であった。私は、つい先日、東チモールにも行ってきたが、私の去った2時間後に、次のフライトに乗る予定にしていたユニセフの職員が、現地の人から投石を受けて命からがら戻るという事態があった。 「セキュリティ」について、国連にとっては丸腰で行くことの強さと危うさがある。 イラクにおいて、国連が初めてターゲットになったとおっしゃったが、ナミビアにおいても、規模は違うかもしれないが攻撃されたことがあった。私自身、おそわれたことがある。もっとも、組織的に国連に対する攻撃がなされたという点ではイラクが転機であったと思う。

マルチ・ラテラリズムと言う言葉があるが、「道具として国連を使う」ということに深く関わる。北朝鮮と日本の関係についても、一国だけの関係でやらないで国際的な枠組みを設定して、その枠組みで問題を解決するのが必要だと思う。日本はもっと国連を使っていかなければならない。

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議事録担当:猿田



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