「国レベルでの国連調整問題」
三浦 順子さん
UN Coordination Analyst, UN Resident Coordinator's Office
質疑応答
■Q■ UNDAFの優先分野として、中国の国際条約加盟を推進するとあったが、何が対象か。
■A■ 全般。批准に向けての準備、また実施体制の整備をサポートしていくニーズがある。条約と国内法との間にギャップがあり、批准してもかなりの留保があることがある。国連としては政策アドバイスができるのではないか。国連としての得意分野での協力。2012年の京都議定書改定の際に、中国は規制強化の対象国になると言われている。それまでに実施体制を強化しておくことが急務。
■Q■ 人権分野での条約加盟推進は難しいのではないか。1993年にウィーンで人権の大きな世界大会があった。その際にアジアにはアジアのやり方がある、といってシンガポール・中国が参加しなったという危機があった。人権の立場からは政治的権利が重要だが、中国政府が最も反発するセンシティブな問題でもある。
■A■ たしかに難しいと思うが、(ICCPRを批准するなど)以前より積極的になってきていると思う。
■Q■ 表向きはトップダウンに改革が行われているが、人々からのフィードバックはどのように反映されているか。特にアセスメント過程等。どうなっているか?また市民の参加を進める上での戦略は?
■A■ NGO(中国では民間社会組織、CSOと言われることが多い)は、中国にもあるが、GONGOといって、All China Women's Federationなど政府と強く結びついていることが多い。各province/townshipごとにもその下部機関があって、社会的な問題に関与している。社会問題についての議論/討論もどんどん広がっている。
■Q■ 国連のコーディネーションを中国で行う上での特徴は?中国での援助調整の難しさは?
■A■ 中国のODAからの卒業との関係。既に低所得国ではない。省庁が縦割りなので、調整が難しい。また、ドナーコーディネーションがうまくできていないという印象がある。インフォーマル・ドナー・コーディネーション会議が定期的にあるが、政府主導のドナーコーディネーション会議は不定期であまり活発ではない。エイズ分野では、様々なドナーからのリソースが急増している一方、保健省のコーディネーションキャパシティーがおいついていない。国連はドナーやNGOと共に、エイズTheme Groupを作って、保健省をコーディネーション面でアシストしている。また、日本人から、日本が中国を援助する理由を聞かれる。私は次のように考える。エイズ、環境、保健衛生に関してはまだ援助が必要な分野。また、経済社会格差が広がっており、格差是正が緊急課題となっている。人権にもとづくアプローチも重要。少数民族、こども、障害者、出稼ぎ労働者などの保護が重要。現在140万人が都市の戸籍を持たない、出稼ぎの人たち。建設現場で働いていて、けがをしても保険がないので手当てが受けられない。社会保障の問題が残っている。社会不満がどんどん募っているように思う。反日デモはそうした不満をそらすものといわれる。中国のジニ係数は0.4を越え、米国のそれを超えていると言われている。世界的に0.4を超えると社会的な反発出てくると言われている。
■Q■ なぜRCはUNDPのRRが兼務しているのか?
(参加者コメント)もともとUNDPはファンディング機関だった。それが、他のエージェンシーのように、事業をやるようになった。もともとの事務局からの指示を各機関に伝えるという機能が残っている。UNDPのリージョナルディレクターが、現場での指揮を行っていた。RCをUNDPがやっているのは、その名残と理解している。地域によってはUNDPが中心でないことも多い。政治的に動いていることもある。うまくいっているところ、いかないところ、属人的に決定されている。スーダン、タンザニアはうまくいっている。UNDPが信用されていないのでなく、UNDPの現場トップが信用されていない。組織の問題と、個人の問題とは切り離せない。どういう枠組みにすれば調和化ができるか、この実態を考える必要がある。
■A■ 調和化が進んでいる場合でも、簡素化はまだ進んでいないのではないかと感じている。
■Q■ RCが地元政府にとって意味のある存在になるために、何か策はないか?
(参加者コメント)誰が現地で国連を代表するか?一億ドルの質問。国連改革の核。事務総長特別代表がいれば別PKOがないとき、調整が難しい。
■A■ PKOミッションが出ている段階は調整がうまくいっている印象。
(参加者コメント)RCをUNDPではなく他の機関がやることが検討されている。RCをあぶれた人がカントリーダイレクターになっているのか?それよりもRCオフィスを充実させることが有効だと思う。RCは、規模が小さい国では機能していると思う。カザフスタンなど機能しているのでは。中国など、大国では難しいのではと思う。(補足説明:高級副代表や副代表がカントリーダイレクターになるケースも多いと思われるが、国によっては新たに雇用される可能性もある。)
■Q■ ナショナル・オーナーシップの現状は?UNDAFにおける内容のすり合わせはどうなっている?
■A■ 政府との合同リトリートで、政府方針を確認したうえで、今後5年間に戦略的課題となり、なおかつ国連全体として協力できる分野を重点協力課題として決定する。(UNDAFは政府の意見も反映され、調印もされているが、ナショナル・オーナーシップが高いとまでは言えない。)
■Q■ OCHAとUNDPとの間のコーディネーションはどうか?うまくいっていないのでは?
(参加者コメント)まだ、UN内で、人道支援と開発との間には大きな断絶がある。やる気はあるが。人道支援の中での調和化は行われているが、さらに開発との接点はまだ。
■A■ CEBリトリートの報告書では、人権などアドボカシーになればなるほど、調和化の必要性が低く、開発援助分野では中度、人道援助分野では必要性が高いと分析されている。人道支援と開発との移行期における調整に関して、まだ制度が整備されていない。各国連機関のTOR、棲み分けを決めていく必要があると思う。
■Q■ 反日デモはなぜ起きたと考えるか。
■A■ 経済社会格差による市民の不満については述べたとおり。これまでの抗日運動で見られた日本をやじるような言葉ではなく、むしろ政治的なアジェンダになっている。安保理入りなどと絡んでいる。政府側は自発的行動と発表しているが、組織されているのではないかと言われている。各地でTシャツやロゴ、スローガンが統一されていて組織的対応を暗示。
参照:UNDGのウェブサイトhttp://www.undg.org
※括弧()内はご本人による補足説明
三浦 順子 氏/現在JPO。難民を助ける会(東京・ミャンマー)、UNOPS東ティモールを経て、UN Resident Coordinator's Office 中国