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「SDGsの潮流:民間と政府の視点から」
国連フォーラム×東京大学KOMEX SDGs勉強会第1回
日時:2018年5月9日(水)
場所:東京大学駒場キャンパス
スピーカー:原琴乃氏、横田浩一氏
冒頭、国連フォーラム幹事より、国連フォーラムのこれまでの活動紹介を行うと共に、SDGs勉強会の立上げ、及びその主旨説明を行いました。本勉強会では、2015年の国連総会で採択されたSDGsの大きな流れを、組織、個々人が、当事者としてどのように捉え、行動に結びつけていくか、仲間たちと共に考え、議論する場を創り出していくと共に、各人が夫々の立場からソーシャルチェンジに挑むきっかけ作りを行うことを目的としております。
第1回目は、今後の議論や行動の土台となるよう、外務省/国際協力局 地球規模課題総括課 課長補佐 原琴乃さんと、慶應義塾大学大学院/政策・メディア研究科特任教授 横田浩一さんをお招きし、政府、民間企業や地方創生の視点からSDGsの大きな流れについて、お話し頂きました。
尚、以下の議事録の内容については、所属組織の公式見解ではなく、発表者の個人的な見解である旨、ご了承ください。
原 琴乃(はら ことの)氏 |
原さんからは、「持続可能な開発目標(SDGs)について-SDGsを通して、豊かで活力ある未来を創る-」と題し、政府の取り組みやSDGsに取り組む意義などにつき、ご紹介を頂きました。原さんは総理を本部長とするSDGs推進本部の運営に携わるなど国内基盤整備と政府の具体的な取り組みに尽力されています。
原さんプレゼン要旨
2015年に策定されたSDGsは2001年策定のミレニアム開発目標(MDGs)がその前身だが、MDGsは国連から途上国への提案であったのに対し、SDGsは各国が自発的に合意した17の国際目標であり、その特徴は、普遍性、包摂性、参画型、統合性、透明性である。17の目標は、@MDGsを引き継いだ社会政策的な内容(目標1-6)、A経済関連(7-12)、B環境関連(13-17)、の大きく3つに分類され、それぞれが相互に繋がっている。
不安定・不確実な社会の中で、持続可能な未来を示す羅針盤としてSDGsが盛り上がってきており、各アクター(各国政府、企業、投資家、地方自治体、市民社会)において取り組むメリットと取り組まないリスクを理解し、協力・競争する時代になってきている。
これまで日本政府として、日本がSDGs先進国になるために、SDGs採択後初のG7サミットである2016年の伊勢志摩サミットにおいて国内外の実施にコミット、同年に「SDGs実施指針」を策定するなど内外に向け積極的に活動してきた。その後「SDGsアクションプラン2018」においてSDGsへのアプローチとして3つの柱(科学イノベーションSociety5.0、地方創生、女性のエンパワーメント)を掲げ、「日本SDGsモデル」として実施指針を8分野に分類し政府の主要な取り組みとして注力している。SDGsのキーワードは参画型であり、政府ができることは限られているとの発想のもと、政府としてはベストプラクティスを示すために「ジャパンSDGsアワード」を実施するなど、参画を促す仕組み作りに力を入れている。
国連グローバル・コンパクトの日本に於けるローカルネットワークである、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの調査によると、ビジネスセクターにおけるSDGsの認知度は、経営者層、若手層で高い一方、中間層で低く、アクションを起こすまでのステップと合わせ課題となっている。一方で、SDGsは世界的に、企業が取り組むことで企業価値の向上、事業の成功に直結すると見做されており、SDGs=Business Development Goalsともいわれる。SDGsに取り組まないことは企業にとってはリスクでもあり、具体的には将来的に各国での規制等に対応できなくなるリスク、取引先から排除されるリスク等が考えられる。取り組むメリットとしては、社員のモチベーション・生産性向上への寄与が挙げられる。日本企業が伝統的に強みとする、三方よし、3R(Reuse, Reduce, Recycle)などの精神、最先端の技術などはSDGsを実現する上での強みと捉えられる。
民間企業以外でも、地方公共団体、市民社会に於ける取り組みは着々と進んでいる。エンタメ業界との連携など、市民社会への周知の為の活動にも注力。今後、政府としては、国連ハイレベル政治フォーラム(2019)、G20サミット(2019)、東京オリンピック・パラリンピック(2020)などの機会を活かし、取り組みの深化や、発信の強化を狙う。SDGsの地方、企業への展開サポートを通じ、SDGsの達成⇒日本経済の持続的な成長へと繋げていきたい。
横田 浩一(よこた こういち)氏 |
原さんに続き、横田さんより「SDGsをケースから考える」と題したプレゼンテーションを行って頂きました。横田さんは、日本経済新聞記者を経て独立され、企業のブランディング、CSRなどを専門として、最近はソーシャルビジネス・地方創生などの分野でも積極的に活動されています
横田さんプレゼン要旨
SDGsが対象としている社会課題は、東京など都市部では分かりづらく、高齢化・過疎化の進んだ地方でより顕在化している。
中小企業の事例としては、自動車リサイクル業の会宝産業(金沢市)によるアジア・アフリカでの事業展開、廃棄物管理業の明和工業(金沢市)によるバイオマス炭化事業、JICA研修生の受け入れなどの海外での活動事例があり、これら地方の中堅企業のSDGsへの取り組みに注目が集まるようになったことで、優良企業の取り組み姿勢にも変化が起きている。
また、日立製作所のような大企業においても、社会課題起点でビジネスを考えなおすこと、(東日本大震災により社会課題が顕在化した)釜石市などの地方自治体と連携を推進することによって、日本の都市部において今後起こり得る課題を先取りしてビジネスに取り込むことができるようになるとともに、従業員の意識改革にもつながっている。
「企業とはどうあるべきか」、「組織の危機管理はどうあるべきか」という問いに対して、2030年を見越した長期的な視点を持つことが重要である。2030年に想定される様々なリスク(環境、自然災害、貧困・格差など)に加えて、その時の自らのキャリアを検討して、組織・個人としてのありたい姿を想像してみて欲しい。SDGsはセクター産官学間の連携、世代を超えた共創のための強力な共通言語になる。
お二人の講演後、会場の参加者も交えたディスカッションを行いました。
ディスカッションでは、SDGsの地方創生への適用、これまでの取り組みのSDGsの枠組みでの整理、SDGsとESGの関連性、取り組みのモニタリング指標、日本と海外における取り組みの連携の可能性などについて双方向の議論が交わされました。
会場には社会人が多かったこともあり、大企業では、既得権者の観点から積極的に取組むインセンティブも少ないのではないかとの質問も上がりましたが、横田さんからは、長期経営・未来志向の視点に立つことが大事との指摘が為され、例えば、2030年に目指すべき社会、所属組織の在るべき姿、また起こり得るチャンスとリスクを夫々考えることで、課題を自分のものとしてリアルに感じ、具体的にSDGsを考え始めるきっかけになるのではないかとのヒントを頂きました。
また、出席した学生からLeaving No One Behindを謳っているSDGsにおいて、SDGsを取込んでいない人が取残される懸念はないのかと本質的な問い掛けも飛び出す等、会場も大いに盛り上がりました。
最後に、東京大学/総合文化研究科 特任准教授 井筒節さんより、SDGsの策定プロセスに関与されたご自身の経験も踏まえたご講評を頂き、SDGsを理解するに当たっては、MDGsからSDGsへの移行プロセス・相違点、SDGsの序文・本文の一言一句に込められた多様なステークホルダーの考え方、時代背景の変化などについて十分に理解することが大事であることを共有頂きました。
このトピックについてさらに深く知りたい方の為に、当日の資料、及び講師の方々による寄稿記事を紹介致します。
原さん当日プレゼン資料
「持続可能な開発目標」(SDGs) について
「SDGs NOW! 17 Goals to Transform Our World」
https://youtu.be/WXpZ-b4Qskg
横田さん寄稿(日経BizGate記事)
SDGs時代にこそソーシャルビジネスを
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2856695026032018000000?channel=DF260320183664
「ソサエティー5.0」時代のソーシャルビジネスとは?
公共サービス・地方課題も革新の好機
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2899068004042018000000?channel=DF260320183664
SDGs、中小企業・地方に商機と言えるワケ
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO2957115019042018000000?channel=DF260320183664
2018年8月11日掲載
企画リーダー:井上良子、上川路文哉、田島真理恵
企画運営:井筒節、工藤真友美、小池あずさ、田瀬和夫、矢富諒子、山川まゆみ
議事録担当:長壁一寿、小山匡
ウェブ掲載:三浦舟樹