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玉村 美保子さん
国連世界食糧計画
日本事務所代表

玉村美保子(たまむらみほこ):大阪府出身。京都大学卒業後、英国ロンドン・スクール・オヴ・エコノミクスにて経済学修士を取得。1989年国連ニューヨーク本部に赴任。国連本部財務官室、国際原子力機関(IAEA)ウィーン本部、国連ニューヨーク本部平和維持局(PKO局)、国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)東京事務所長を経て、2002年6月1日より、WFP国連世界食糧計画・日本事務所代表(現職)。

Q.国連で勤務することになったきっかけを教えてください。

ロンドンの大学院で学んでいたのですが、国連の競争試験を受験したのが直接のきっかけです。ぼんやりと国連にあこがれはありましたが、国連でなければいけないということではなかったですね。学生の頃から国際的な仕事がしたいというのはありましたので大学院は外国に行きましたが、卒業してから何をしようかという時に「じゃあ国連にしようかな」という感じです。

Q.今なさっている仕事はどのようなことですか。

WFPの日本事務所代表として、日本政府や地方自治体、民間部門(NGO、企業、個人など)、メディア等とのパートナーシップを促進しています。WFP日本事務所には、政府・NGO関係、民間協力、広報をそれぞれ担当するチームがあり、世界のWFPの活動資金を確保するため努力しています。また、認定NPO法人であるWFP協会の理事としての役割も務めています。

Q.国連で働く魅力はなんでしょうか。

WFPは国連の中で最大の人道支援機関です。災害時には緊急支援の物流・支援要員の移動を含め、全体的にヒトとモノの流れを統括する役目を持っています。そういう立場であるが故に、緊急事態が生じると一番に現場に乗りこまなければなりません。その点が大きな魅力ですが、同時に欠点でもありますね。2005年はインド洋地震による津波の被害に始まり、中南米のハリケーン、ニジェールの旱魃、ダルフール紛争、パキスタン地震など、これでもかと思うくらい大規模な人道的危機が起こりました。そのたびに全力で支援活動にあたらなければいけません。

また、日本からずいぶん遠いところで起きていることと、自分たちが毎日やっていることがいつも連動していますね。職場によると思いますが、自分たちのやった結果というものが明白に世の中の事象とつながっているというのは非常にラッキーなことではないかと思います。そういうのはなかなか普通は見えにくいのではないでしょうか。国連は大きな組織ですが、それでも一人ひとりの役割はすごく大きいと思います。それも国連で働くことの魅力のひとつかもしれません。

Q.これまで印象に残った仕事はなんですか。

すべてそのときに全力投球してやっていますから、ひとつを選ぶのは難しいですね。あえて選ぶとすれば国連本部PKO局にいたときに行ったモザンビークでしょうか。紛争後最初の総選挙があったのですが、テント生活をしながら選挙管理の仕事にあたりました。ずいぶん前ですが非常に懐かしいし、印象に残る仕事でした。

Q.国連に入って一番大変だったことはなんですか。

たいへんだったのは去年のインド洋地震による津波の時ですね。あの直後は年末・お正月関係なく即座に支援活動にあたりました。我々の活動をご支持いただくために駆け回りましたね。ほかにはイラク危機や北朝鮮への食糧支援でしょうか。人道支援の場合はすぐに活動を開始しなければいけません。治安が悪く、災害で人が通れないような場合でもヘリコプターで物資を届けるといったことをしなければならないのです。PKOの展開にもスピードが要求されましたが、緊急性という意味では比較になりません。すぐに行動を起こさなければならないのです。少しでも対応が遅れると、多くの人々の命にかかわるからです。予断を許さない状況ですから非常に緊張感がありますし、仕事もその期間はかかりっきりになります。日本にいても同じです。現場の状況を把握するため電話やメールで現地事務所と連絡を取り、世界中のスタッフを繋げての電話会議もあるので時間的に夜中になったりする。体力的にも時間の拘束という意味でも非常に厳しい仕事でした。

Q. UNOPS東京事務所とWFP日本事務所と二つの代表を歴任なさっていますが、日本からしかできない仕事とはどのようなものでしょう。

やはり日本国内で国連全体ないしWFPの活動を広報するということですね。これは日本国内でないと難しいと思います。特にWFPに来てからは色んなところに出掛けて講演をしたり、テレビに出演したり、新聞へ投稿するなど、一般の方々やメディアの方々とお仕事する機会が増えました。私自身も仕事の範囲が広がったなと思っています。

Q.現在取り組んでおいでの分野で日本ができる貢献についてどうお考えでしょうか。

日本は人材の宝庫だと思っています。学生さんという予備軍やNGOの方々など、既に国連の活動について半分足をつっこまれているような方々も含めて、本当にたくさんいらっしゃいます。その中で特にすばらしいなと思うのは民間企業の人材ですね。民間企業には若手・中堅を問わず非常に優秀な方がいらっしゃいます。そういった方々に社会的な、地球規模的な問題に興味を持っていただきたいと思っています。そしてできれば我々の活動に参加していただきたいですね。例えば一年でも二年でも休職して何らかの活動に参加していただければ、地球規模的な課題というものがさらに世の中に知れ渡るのではと思います。

Q.これから国連を目指す若者、グローバルイシューに取り組もうと考えている若者にメッセージをお願いします。

とりあえず就職したらどうでしょうか。一番興味を持っていることを一所懸命勉強して、いい成績で大学を卒業するのがひとつ。また英語を一所懸命勉強してネイティブなみになる。もちろんおしゃべりだけじゃなくて書く能力も必要です。国連でお仕事するにはやっぱり書けないとだめです。学生さんが考えている「書ける」という水準と、国連職員に求められている水準にはかなり開きがあるような気がしています。逆に英語力さえあれば、知的な水準はかなり高い方が多いので即戦力になると思います。個別分野について勉強することももちろん大切ですが、英語の勉強も怠らないでほしいです。

大学卒業後、まずは民間企業で働いてから大学院に行ってもいいのではという気がします。そうすることによって社会人として必要な基礎的な能力や常識を身につけられます。大学院にすぐに行くなというわけではありません。大学院に先に行ってから就職してもいいと思います。いずれにしても、責任ある社会人として経験をつめば、人間的にも大きくなれると思います。勉強も大切ですが、頭でっかちな人間にならないようにするということです。

また、在学中に国連機関でインターンシップを経験するのも良いと思います。WFP日本事務所でも常に募集しています。将来のプロフェッショナル・スタッフの候補生として取り扱われるので、結構たいへんだと思います。学生の方々でも責任ある仕事が与えられています。

(2006年10月20日、聞き手:國京彬、早稲田大学、幹事会・東京事務局。
写真:橋本のぞみ、幹事会)

2006年11月6日掲載 


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