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(写真1: 2015年10月11日国連大学で行われた国際ガールズ・デーイベントの国連人口基金東京事務所のブースにて)
第64回 黄 銀智(ふぁん うんじ)さん
東京大学大学院 人文社会系研究科 社会文化研究専攻 博士課程
インターン先:国連人口基金(UNFPA)東京事務所(UNFPA Tokyo Office)
インターン期間:2014年10月〜2015年11月(1年間)
■はじめに■
東京大学大学院人文社会系研究科で社会学を専攻している黄銀智と申します。韓国出身で、修士課程より日本に留学しています。私は2014年10月より約1年間、国連人口基金(UNFPA)東京事務所でインターンシップを行いました。
■インターンシップの応募について■
私は現在、大学院で高齢化社会の社会政策,特に要介護高齢者のマネージメントに関する研究をしており、活力ある超高齢社会を共創するグローバル・リーダー育成プログラムにも所属しています。当プログラムは医療・介護・社会参加や生活環境など超高齢社会で起こりうる社会問題を解決するグローバル・リーダーの養成に力を入れており、そのプログラムの担当教授よりUNFPA東京事務所でインターンを募集しているということを聞きました。私自身,研究が机上の空論にとどまるのではなく人々の生活に実際に活かされる具体事例に普段から興味を持っており、国連の組織のなかでもUNFPAは人口問題に特化した活動をしている機関であったこと、そして特に当機関が2012年に発表した報告書『21世紀の高齢化:祝福すべき成果と直面する課題』のグローバル発表が日本で行われ、アジア、そして世界に向けて情報を発信している事務所であったことから応募を決めました。
UNFPA東京事務所はインターンとボランティアを募集しています。英文の履歴書と志望動機を提出し、面接と試験を受けて正式にインターンシップに参加することになりました。志望動機の執筆の際には、自身の研究活動だけでなく、NGOや国際交流などの社会活動を中心に、UNFPAに対する自らの関心と貢献できることのアピールを心がけました。ただ、学生や社会人、そして国籍、語学力など多彩な人材が集まっているところであるため、選考の基準は多様です。興味のある方はまず応募してみることをお勧めします。
■インターンシップの内容■
UNFPA東京事務所は、主要な支援国に対して人口問題や性と生殖に関する健康/権利(SRH/RR)の重要性に関する情報提供を行い、政府および市民とのパートナーシップを深める「連絡事務所(Liaison Office)」という位置づけで、人数・規模ともに小規模です。そのため、事務所のなかでのコミュニケーションも親密であり、とにかく様々な業務に携わることができる貴重な場所だったと感じています。詳細は事務所の状況により日々変わりますが、私が働いていた一年間の業務内容を以下に少しご紹介致します。普段の業務は、日本の方々にUNFPAについてよく知って頂くための広報活動が中心でした。特に私はオフラインでの講演活動、国際ガールズ・デーなどのイベントに向けた資料や配布物、記事の作成などを主に担当することが多かったのですが、最近はオンラインで情報を発信することも重要なため、ウエブサイト(http://www.unfpa.or.jp)はもちろん、Twitter(@UNFPA_Tokyo),facebook(https://www.facebook.com/unfpa.tokyo)などのSNSでの広報活動にも力を入れていました。その更新のために、日々世界のどこかで行われているUNFPAの活動に関する情報を収集し、日本の方々が興味を持つような内容のものを選定して、それを日本語に訳し投稿するまでの一連の作業を担当させて頂いたことで、東京にいながらもUNFPAの活動について深く理解することができました。
また、UNFPA東京事務所では記者会見、国際会議などの重要なイベント等も多く、随時柔軟な対応が必要です。例えば,2015年3月には宮城県仙台市で開催された第3回国連防災世界会議(UN World Conference on Disaster Risk Reduction:WCDRR)に際し、国連事務総長の潘基文(パン・ギムン)をはじめ、災害時における女性の脆弱性とその役割の重要性をアピールするために、UNFPA事務局長ババトゥンデ・オショティメインを代表とした世界中の事務所の職員たちが日本に集まりました。国内移動・宿泊先の手配などの受け入れ準備から実際の会議の準備に直接関わらせていただいたことは、国際会議の最前線を支えるというとても有意義な経験でした。
そのほかにも、毎年発表される世界人口白書(The State of World Population)の記者会見や国際人口問題議員懇談会(JPFP)主催の国際会議が開かれるときに、ニューヨーク本部から事務局次長を含む他の職員の来日に合わせ、お手伝いをさせて頂き、東京にいながら国際組織で働く職員の方々の姿を直に感じることもできました。小さい事務所である分、インターンとはいえ一人前としての仕事が求められ、またその分、そういうときに事務局長、事務局次長などの役員の方々と垣根無く話し合える機会も多く設けていただきました。
(写真2: 2014年11月28日、UNFPA事務局次長のケイト・ギルモア(当時)、アジア太平洋地域事務所長の堀部伸子(当時)、東京事務所長の佐崎淳子および他の職員・インターン・ボランティアたちとUNFPA東京事務所にて)
■東京事務所で特に求められるスキル・業務■
UNFPA東京事務所は、本部と地域事務所、そして実際にプログラムを実施しているカントリー・オフィスなどと常に協力することが求められます。例えば、2015年4月末に起きたネパール大地震に際して、UNFPAネパール事務所は日本政府からの緊急無償資金協力を受け、被災された女性・少女たちのための衛生キットの配布、移動式リプロダクティブ・ヘルス・キャンプの設置などの支援を行いました。その詳しい内容を紹介するために、ネパール事務所のスタッフと連絡を取り、資料を提供してもらいました。またそういったUNFPAの活動について現地で取材をしたいという日本の新聞社の記者の方をネパール事務所に紹介したこともありました。その過程で,世界各国の事務所のスタッフと交渉するスキルが必要だと感じました。
私はほかの外国人インターン・ボランティアたちより日本生活が長く、普段日本語で授業を受けて論文を書いているという経験から、日本語で行う業務を多く担当させていただきました。私は日本での社会人経験がない分、ビジネスの慣習などに戸惑ったこともありましたが、スタッフの指導や、インターンの中での協力体制が確立していて、チームで働くことができたため、自信を失わず最後まで臨むことができました。また,個人の能力にあわせて仕事を担当させていただくことが多く、オフィスの環境も日本語と英語両方で仕事ができるように整っている事務所でした。
(写真3: 国連人口基金が運営しているネパールのラスワ地域のリプロダクティブ・ヘルスキャンプを訪れた女性 Photo: UNFPA)
■資金確保、生活、準備など■
私は東京に住んでいるため、特別な資金は必要ありませんでした。通常の学期中にも身近な場所で国連に関わる経験ができるのが東京事務所でのインターンシップの強みの一つだと思います。一方で、特に長い夏休みに入ると、海外からのインターンやボランティアも多くいました。応募段階で生活面に関しても必要なアドバイスをいただいていました。東京事務所でのインターンシップは、身近なところで自分の今ある能力を精一杯活かして世界に貢献できる仕事を経験できる場所だと思っています。
■その後と将来の展望■
インターンシップ期間中、2030年に向けた持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の決定という国連のなかでも大きな出来事がありました。その新たなアジェンダの一つとして脆弱な人々、子ども、若者、障がい者、HIV/AIDSと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民を含むすべての人々の人権を確保することがより強く求められています。比較的長期間のインターンシップのなかで事務所内外の様々な出会いに恵まれ、今の自分の研究内容が今後の世界に役立つ内容だということを確認しました。今後は引き続き大学院で博士号取得を目指すとともに、いつかその学位と今回のインターンの経験を活かして国連人口基金などの国連機関と関わる機会があることを願っています。