「Political Economy of Africa in the Post-ICPD Era
1994年カイロでの国際人口開発会議(ICPD)後の
UNFPAを取り巻く環境の変化について」
大橋 慶太 さん
国連人口基金(UNFPA)アフリカディヴィジョン
■Q■ 人道危機における典型的なReproductive Healthの問題とは?
■A■ 正確な難民のデータの確保がまず重要。また、Reproductive Health Kit(出産に必要なものが入っている)を配布している。
■Q■ 保健分野での緊急援助はUN機関ではWHOとUNICEFが中心になってアセスメントをすると聞いたことがあるが、全体のコーディネーションはどうなっているのか?
■A■ 現地にいるエージェンシーが協調して計画を練る。実際に現地で動くのはUNICEFやOCHA、WHOになるが、各機関の強みによっても違う。
■Q■ 現場において、AIDS関連の援助プロジェクトの連絡窓口はどこになるのか?各国にさまざまな国連機関があり、どこに話を持っていけばいいのかよくわからない。
■A■ 各国のUNDPのレジデント・コーディネーターが一般的に窓口になっているが、国によって力関連が違うので、ほかのエージェンシーのコーディネート力のほうが強いこともある。そういう場合はUNDPに話を持っていっても上手く機能しない可能性もある。UN内でも現在、見直しをしようという話もある。UNDAFを中心として協調関係を強化しようとする試みもある [it's already doing this, but not sufficient]。2国間協調やNGOも含めての協調関係の構築は今後の課題。
■Q■ 現在は国連機関内で資金管理のコーディネーションはされていないのか?
■A■ 各機関が成果を見せたい、資金を取りたいという思惑をもっているので、難しい。現段階で簡単な解決策はない。
■Q■ 日本からNYに来て国連機関を見ていると、コーディネーションの問題をよく聞く。重複して複数のエージェンシーが同じ分をやっていると、調整が必要になり、生産性が下がってしまうと思うのだが、もっと各機関が専門分野に特化すべきなのではないか?
■A■ UN機関間での住み分け調整は、機関間でのテーマグループにより、行われている。各機関の資金をまとめて、被援助国の政府の下に予算をまとめるのが理想だが、各機関の思惑もあるので、臨機応変な対応が必要。
■Q■ アフリカ以外の地域と比べた場合、UNFPAの戦略のアフリカにおける特徴は何か?
■A■ たとえばHIVについていえば、アフリカとアジアでは感染経路が違うといったことがある。アフリカではホモセクシュアルに対する保守的な価値観、一夫多妻制の存在などが影響して、感染経路は主に性交渉によるが、アジアはもっと経路が多様。ほかの例ではアジア各国は自力でセンサスを実施できるが、アフリカ諸国はセンサスのプロセスを自力で終了できない(資金が不十分なため、データの分析と結果の公表および配布ができない)といった違いがある。ジェンダーについては、単純化はできないが、アフリカでは女性蔑視の風潮がまだ強いといえるのではないか。
■Q■ アジアとアフリカで重点分野の違いは?
■A■ たとえば、アジアでは高齢化が問題になっているが、アフリカはまだそれが優先順位に上がってくるということはまだない。
■Q■ 人口爆発について全世界の人口は90億まで増えるのではないかという話を聞いたことがある。ますます飢餓が深刻化するのではないかという気がするのだが、アフリカ大陸は何億人を養えるのだろうか?
■A■ 絶対数が問題になるのか、それとも富の分配や技術の進歩が進めば、数は問題ではないのではないかという疑問がある。アフリカに関していえば、農業の生産性と分配が改善していけば、まだ人口が増えても問題はないのではないか。アジアに比べたら総人口はずっと少ない。実はアジアのほうが深刻なのかもしれない。
■Q■ UNとして、人口の数値目標はあるのか?
■A■ 人口指標としてはたとえば出生率がある。通常人口学の世界では2.0または2.1が標準値だが、アフリカでそれを目指せとはいえない。アフリカの文化との兼ね合いもある。具体手な数字は各国が決める問題。死亡率に関しては世界共通で低いほうがいいので、指標がある。
■Q■ 人口増加に富の分配や技術革新といった社会変容が追いつかないと、やはり飢饉が起きてしまうのではないか。開発援助政策のコーディネーションが出来ていないと困るのでは?
■A■ 過去のデータでは、食料増加が人口増加を上回っている。また、逆に人口増加が技術革新を促すという意見もある。
■Q■ アメリカが資金を止めている理由は何か?
■A■ 中絶に関する問題が一番大きい。UNFPAが中国での中絶をサポートしている、というアメリカ国内の政治団体の圧力があった。実際にはUNFPAはサポートしていなかった。(緊急の場合のみ容認し、人口抑制の手段としては認めていない。)
■Q■ DBSが進んだ場合、UNFPAの役割はどうなるのか?
■A■ UNFPAに限らず、各機関が得意分野においてガイダンスを行っていくことが中心になるだろう。政府主導での開発政策が進むことは望ましい変化。
■Q■ Reproductive HealthやGenderの分野において、男性に対してはどういうアプローチがなされているのか。
■A■ フェミニズムではなくジェンダー、というディスコース変化の中で、男性の取り込みは進んできている。 UNFPAでは男性に対しても「4つのパートナーシップ」で協調関係を構築しようとしている。具体的には、宗教指導者、メディア、議員(人権に関する法整備)、若者(若者の権利)、とのネットワーク構築。