国際保健と人間の安全保障
〜ヘルス・システムの強化に関するグローバル・アクション〜
武見 敬三さん
ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員、日本国際交流センターシニアー・フェロー
マイケル・ライシュさん
ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健政策教授、武見プログラム担当教授
2009年2月20日開催
於:ボストン・ハーバード大学
ハーバード公衆衛生大学院武見国際保健プログラム・
ボストンJapan Society・国連フォーラム共催
合同勉強会
質疑応答
■Q■ G8は先進国の集まりだが、ここでの決定は途上国での政策実行にどのように反映されるのか。
■A■ 影響力のある主要国間の一致した政策を表明することにより、国際保健に関する政策決定の主たる流れをつくる。他方において、そのG8における政策決定に、途上国からの参加を求めることが重要である。昨年は北海道洞爺湖G8サミットの2か月前にTICAD4が横浜にて開催されたことは非常に意義があった。このように政策を積み上げていく中で、途上国の意見をきちんと組み入れていくことが必要である。
■Q■ 多くある政策提言をどのように整理していくのか?
■A■ いろいろな考え方をまとめて行くのは難しい、その過程は極めて政治過程となることから主要議題となるためには、政治的モメンタムが不可欠である。しかし気候変動とくらべれば国際保健は政治的モメンタムは少ないが関係者間の対立が少なく、まとめやすいと思う。また、国際社会全体での調整するのは難しいので、G8で主たる流れを作ることは効果的である。
■Q■ 母子医療の改善は、日本では地域の協力があってできたということだが、途上国では?
■A■ 当時の日本の母子手帳をみると、高校卒業の女性が多かったことが幸した。母子手帳が難解な単語で書かれていたにもかかわらず効果を上げることができた。しかし識字率の低い途上国では、母子手帳の内容が漫画や図案で表示されている。JICA がジャカルタのスラムで健康診断を実施し、世界食糧計画(WFP)が最後にごほうびとして食べ物をあげるシステムを取り入れた。その結果母親たちは健康診断に来るようになった。このように土地にあわせて何が必要か知り、それを利用しつつ母子保健を推進する。ちなみに日本ではかつて母子手料を持っていくと配給の砂糖がもらえた。どこもはじめは同じだったのでは。
■Q■ 保健医療政策の人材の話に関して。どのように、どのような人材が増えればよいのか?
■A■ 保健医療の人材は、厚生労働省の中に多くいると考えられる。しかし可能性のある人がたくさんいるものの、厚労省では主に日本国内に関する仕事をするため、このような人々の知見が海外に発信されることが少ない。これから必要なのはキャリア・パスを変えていくことではないかと思う。WHOなどで働いたことがある人が得た知見を生かせるようなキャリア・パスをつくるべき。外務省やJICAに出向したり、または外部からのキャリア・パスを厚生労働省内に持ち込む必要があるのではないか。そしてきちんとした政策目標をつくり、行政改革を行うべきである。
また医者や弁護士など中間管理者などを人材としてもっと採用する必要がある。JPOのみでは不足である。国連職員の例をとってみても、そうあるべき半分の数しか日本人はいない。人材を育成するため、専門的知識、英語力などをもつように人材教育するべきである。
議事録担当::中山(莉)
ウェブ掲載:柴土