「気候変動への適応」
隈元美穂子さん
国連開発計画(UNDP)エネルギー・環境グループテクニカルアドバイザー
2010年2月23日開催
於:国連人道問題調整部会議室
国連フォーラム主催勉強会
質疑応答
■Q■ 気候変動は潘基文事務総長が力を入れている分野だが、UNDPでも変わった点はあるか。
■A■ UNDP自体が大きく変わったというわけではないが、事務総長のリーダーシップにより、気候変動のイベントが国連にて開催された。また、これまでFAO、WHOを含む様々な国連機関が気候変動を考慮するようになってきている。事務総長のもと各機関が協調して取組を進めていくようになってきている。
■Q■ 適応支援において生活環境を変えなければならないようになった場合、そこで生活しているひとたちの文化の持続性、移住にまつわる人権問題にどう対処するか。
■A■ まさにこれからの課題であり、近時のUNDPの出版物のテーマは人の移動であったが、その原因の一つに気候変動(例:アフリカでの渇水)があげられている。このように気候変動にまつわる問題は、社会経済的側面も含め様々な観点から対処しなければならない。
■Q■ COP15(コペンハーゲン)の現場からの評価如何。
■A■ 現場の声は意外に反映はされていたが、今回のCOPに対する事前の期待が非常に大きく、はっきりとした結果が出なかったことでこれからの話し合いに影響がでることが考えられる。
■Q■ 多様な機関による気候変動支援による貧困削減支援はどの程度効果があるのか。
■A■ 最終的な目的は貧困削減でありそれに向けて努力しているが、多くの適応プロジェクトがまだ早期段階にあることと、適応支援プロジェクトがどのように貧困削減につながっているかを示すインディケーターの設定、またそのインディケーターをどのようなデータを用いてモニタリングするかは難しく、これからの課題である。
■Q■ 適応分野におけるビジネスチャンスはあるのか。
■A■ ある。例えば、災害保険の分野について、保険会社がマイクロ・インシュアランスという取組を始めているのも1例である。ただ、マイクロ保険に関しても、現在まだ試験段階であり、様々な課題がのこされている。そのひとつの課題は、現在殆どの場合において、政府からの補助金を用いて保険がなりたっており、これから他の地域に広げていく際に、実際ビジネスとして成り立つのかがまだ明確ではない。よって、まだ多くの課題が残されている。
■Q■ 人類にとって最適な気温は存在するのか。
■A■ 倫理的な問題も絡み、一概には言えないが、気温上昇することで発展途上国にはマイナスに働くことが多く、先進国にはプラスに働くことが多い。よって、全世界の平等かつ維持可能な成長を考えた場合は、温暖化は最小限に抑えられるべきと言える。
議事録担当:錦織
ウェブ掲載:斉藤亮