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第5回
国レベルでの国連調整問題
三浦 順子さん
国連中国常駐代表室
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第6回 2005年7月1日開催

新たな援助潮流への日本の貢献を目指してーJICAの課題と挑戦

小島 誠二さん
独立行政法人 国際協力機構(JICA) 理事


質疑応答


■Q■ JICAはどう変わったか?外務省とJICAとの関係如何?JICAが独立行政法人化したことで、外務省、各省庁、JICAとの関係はどう変わったか?意思決定に際して、JICAの独立性はどうなったか?

■A■ 案件の採択までは政府。実施はJICA。実施の仕方、つまり投入量と成果の見積もりはJICAの仕事。JICAの在外事務所も参加する現地タスクフォースができていて、そこでの議論が案件の採択に大きな役割を果たすようになってきている。JICAの在外事務所の推薦に基づく案件の採択率が高くなっている。各省庁が関わることになっている制度は別として、実態はそのように変わってきている。


■Q■ 実施のフレキシビリティについてお聞きしたい。予算の単年度制はどうなっているか?繰越は認められているか?本部から在外主導へという場合、在外事務所が独自に使える予算が増えたかどうか?UNDPでは現地でカントリー・プログラムを行う場合、現地の事務所長が決めないと進まない。

■A■ 単年度制度に変化はない。ただし、ローリングプランを導入して予測性を高めている。イギリスのNGOの調査によると、日本のODAは「予測性が高い」と途上国に評価されている。在外主管案件については原則として在外事務所が責任をもって行う。各省庁との関係等があって本部でやらざるを得ないものを除いて、在外事務所が行う。一定規模を超えると理事会での審議を経るが、それ以外は在外事務所で実施できる。繰越は行われるが、それを減らそうというのがJICAの取り組み。ただし、一定額の繰越は出てこざるを得ない。予算は、まず地域部に配布されて、それが課題部や在外事務所に流れる。


■Q■ 国際機関との連携。この2、3年、JICAと世銀で連携を深くしたらいいのではと感じている。世銀をみていると、英国のDFIDなどとは深い関係を持っている。そこまでいかなくても他の国際機関と連携を強化する予定はあるか?

■A■ 制度化された協議は過去3年間くらい途絶えていたが、今まさに世銀や地域開発銀行、国連との連携を進めている。昔はプロジェクト・レベルでの連携が中心であったが、今後はもっと政策レベルでの連携と調整が必要。PRSPの作成・モニタリング、MDGsの実現等について、世銀は大きな影響力を有しており、そういうところと一緒に仕事をしないと効果的・効率的な援助を行うことができない。最近の債務削減の議論、国際開発協会(第二世銀、IDA)増資のうちの30%のグラント化等については、JICAとしても関心を有している。国際機関もJICAの意見・方向性を知りたいのではないか。ODAの基本理念である人間の安全保障、capacity development等について、できる限り多くのドナーや途上国と共有していきたい。人間の安全保障という言葉を使うかどうかは別にして、世銀もそのコンポーネント、アプローチ方法を共有しているようである。


■Q■ MDG達成への努力。MDGsの一つに人権があり、rights-basedアプローチを導入するのがUN内で進んでいる。ダムを建設するについても人権への配慮や計画への参加の確保が必要。北欧やカナダではrights-basedアプローチを採用しているが、JICAではどうか?

■A■ そのように呼ぶかどうかはどうかは別として、JICAの体制はそれに近いものと思う。すなわち、環境社会配慮ガイドラインを2004年度から導入し、プロジェクト案件が途上国の環境に悪影響を生じさせないよう外部の有識者の参加も得た審査委員会で検討する体制をとっている。ジェンダーについては特別なユニットを設けていて、ジェンダーと開発との関係を特別に見ている。マイノリティについてはどうですかという疑問があろうが、マイノリティに対する配慮は社会配慮に含まれる。北欧と実態において差はないと思うし、あってはならないと思う。環境社会配慮を行うに際し、追加的な労力が必要となり、JICAが色々な圧力に晒されることにもなろうが、環境社会配慮は必要である。


■Q■ 平和構築について。紛争予防。UNでも取り組みを進めようとして難しいところ。業績の評価が必要だが、それが難しい。JICAではどうか。

■A■ JICAでは紛争後の復旧・復興支援は色々と実施しているが、紛争予防の実績はあまりない。ただし、紛争後に、再発を予防する視点を入れた開発・ 復興を実施するということは重要。JICAは貧困削減に資するプロジェクトに取り組んでいるが、貧困削減が紛争防止に資するかどうかについては意見が分かれる。和解の促進などについては、JICAとしても貢献できるのではないかと考えている。緒方理事長も南アでそういうことを目的としたセミナーに参加した。異なる民族の人たちが一緒の職場で働けるような機会を設けることが考えられる。しかしながら、JICAが直接紛争予防に関わることは難しい。強いて言えば、ガバナンスの問題として、関わることができるかも知れない。地方政府の強化や法整備(土地所有権の概念を確立すること)などが紛争防止に資するとすれば、JICAとしても、その限りにおいて紛争防止に関わることができるだろう。やはり関与は間接的になる。紛争そのものに関わるツールとしては、紛争のアセスメント調査があるが、JICAとしては、むしろ、紛争後、再発防止のために何が開発援助でできるかを考えていきたい。


■Q■ 再来週、安保理のテーマ別会合で紛争と人道援助、平和構築といった分野のディベートがある。アフガニスタンやイラクでの国軍の解体、新しい国での国軍の創出などミリタリー絡みの問題、Disarmament, Demobilization and Reintegration (DDR)、法と秩序、シビリアンポリース、などを含む広い課題。一部はPKOでもバイの援助でもやられていると思うが、総じて、日本はあまり手を出さないという方針でやってきた。その結果、日本の実績は薄い。JICAでどこまで取り組めるか。JICAの中でどのように検討されているか?こうした分野へのJICAの取り組み姿勢や問題意識はどうなっているか?

■A■ 難しい分野。JICAは警察の訓練を行っている。イラクの警察官を隣国で訓練したり、退役軍人を再トレーニングしている。また、法整備支援等は行っている。DDRの前の方は、難しい。JICAの中でイシュー別(課題別)検討を行っており、平和構築についてどこまで肉薄できるか、ガイドラインを改訂中。また、できることはできるだけ早くやるようにしている。このことは、DDRの各コンポーネントを切れ目なく実施するためにも必要である。クリエイティブに考えなければ行けないと思っている。

■Q■ JICAと自衛隊の間で、将来的に平和構築分野でいろいろ連携できるのか?あるいは警察との間は? 常任理事国になれるかどうかは別として、将来的にこうした分野で日本としてはもっと踏み込んで必要があると個人的に考えているが、JICAの役割は?

■A■ 警察とは従来、連携関係がある。自衛隊との組織的連携はない。緊急援助隊では自衛隊と従来共同して行っているが、平和構築分野ではない。取り組むかどうかは政府が検討することではあるが、各国の取り組みや、こんなやり方が可能ではないか、というアイディアをJICAとして出すことは可能である。

(参加者コメント)アジア開発銀行やUNDPにいて、政策と実施との関係については、はたして連携すべきかと思っている。融資をしている組織と技術協力をする機関で政策と実施とは異なり、またバイとマルチとでも政策・実施ともに異なる。政策と評価は一緒にすべきだが、実施とは異なるのではと思う。学問的にも面白いテーマではないか。政策は理解できないといけないが、立案まで実施主体がやらなくていいのではないか。


■Q■ JICAからマルチの機関へ人を派遣していると思うが、マルチからJICAへの人の派遣はあるのか?

■A■ 今のところ、UNHCR及びユネスコからは実績がある。ただし、世銀やADBなど融資機関からの出向はない。受け皿として、むしろ国際協力銀行(JBIC)が適当かも知れない。UNDPからの実績はない。

(参加者コメント)UNDPからの派遣、考えてみたい。

■A■ 歓迎する。


■Q■ アフリカ援助について。アフリカへの増強に対して、どこを削るのか?

■A■ JICA予算全体が増えれば、他の地域への予算額は変化しない。割合という意味で言えば、アジア等の減少が考えられる。アジアの中所得国向けの円借款が減っていけば、それに応じて、技術協力の割合が減っていくということがあり得るかもしれない。中米は別として、南米の中所得国に関しては減っていくことがあり得る。


■Q■ バイでアフリカ向けを増やすというとき、歴史的にも経済的にも関係が薄いアフリカに対して、日本の国益という観点で、国民向けの説明はどうなっているか。

■A■ 英国のブレア首相は「アフリカは良心の傷」、つまり人道支援の対象だと言っている。アフリカを救うことは、世界が取り組まなければならない課題になってきていると思う。それを無視して日本が国際社会で重要な地位を占めることは難しいのではないか。それを国益と呼ぶかどうかは別として、国際社会が一緒になって取り組まなければならない課題に、日本も取り組むべきであるということである。


■Q■ 途上国側には日本の経済発展の秘訣を知りたいというニーズがある。技術協力に責任を有する政府でなく、商社・日本企業がそれを果たしてきたという意見もあるが、JICAが果たした役割は何か?

■A■ 民間企業等が貿易・投資を通じて果たしてきた役割の重要性は言を俟たないが、日本のODAも、民間による貿易・投資の環境を整備するため重要な役割を果たしてきており、JICAもインフラ整備、技術移転等を通じてしかるべき貢献を行ってきたと思う。


■Q■ 小泉首相が対中国ODA、そろそろ卒業と発言。どのような方針か?

■A■ 円借款及び無償資金については結論が出ている。あとは技術協力をどのレベルで行うかという話。中国には貧困が残っている。環境問題は日本に影響をすぐ及ぼす。私見では、しかるべきレベルの技術協力は将来も続けることが国益に適う。


配布資料(Word形式)

(担当:長島)

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