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第6回
新たな援助潮流への
日本の貢献を目指して

小島 誠二さん
国際協力機構(JICA)理事
第5回
国レベルでの国連調整問題
三浦 順子さん
国連中国常駐代表室
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第7回 2005年8月26日開催
於・国連代表部会議室
国連邦人職員会/国連日本政府代表部/国連フォーラム 合同勉強会

 「紛争後の社会における平和構築のための国連の役割」
長谷川 祐弘さん
国連東ティモール事務総長特別代表

 

質疑応答

 

■Q■ 今日挙げた6つの分野、財政的な配分はどうあるべきか。国家予算を、いかに資源配分するのが最適か。どのように使っていくのが理想的か。

■A■ 時期による。紛争回復直後と、2〜3年後では、全く異なる。東ティモールでは2002年に独立し、12月に暴動がおきた。直後に、安定化プログラムの予算を作ろうとしたとき、何に優先順位をおくかで、議論が紛糾した。国連機関は、教育や保健衛生に多く配分すべきだと主張したが、私は今でも、警察官養成が先決で正しかったと信じている。しかし安定した現在では、保健衛生分野の方が警官養成よりも優先である。

「人間の安全保障基金」は、他に類を見ない、とても貴重な基金である。元兵士や社会的弱者を対象としたRESPECTプログラムへ400万ドル、AMCAP(アイナロ・マナトゥトゥ・コミュニティ活性化プログラム)が600万ドル、DESAが入ってきて160万ドル、 その他FAOにも供与された。総額約1,200万ドルの支援を受け、大変感謝している。できれば、外務省でも外務省が信頼する方でも、開発・人間の安全保障というものを熟知している方を現地に派遣していただきたい。というのも、現地のニーズと、東京やNYの基金から受ける質問とでは、認識のギャップがかけ離れているので、それを埋めるためだけに、時間が浪費されてしまう。

UNDPの強みは、HQはあまり通さず、5年間駐在代表にお金を任せてもらえることだ。政府や現地の人と相談して予算配分できる。基金も、経験があり物事をよくわかっている人を、現場まで出してくれると、基金への感謝も増すのでは。

 

■Q■ 公共政策の人材の確保で苦労したと聞いているが、どうだったか。

■A■ 初めに、行政機関を作る、省庁を作る。安保理の予算で、Stability advisor と呼ばれる100 人の国連アドバイザーを、教育省や保健省に送り込んだ。それに加え、UNDPを通してDevelopment Advisor と呼ばれる200人のアドバイザー・ポストを作った。彼らは、何でもやる。たとえば、14,000人分の給料を払うシステムを作る、教科書を作るなど。各省庁には、アドミのアドバイザーもつけた。インドネシア統治時代の公務員は、みな引き上げてしまったので、東ティモールには公務員に行政能力がある人がほとんど残っていなかった。

アドバイザーの受け入れにあたって、言語の問題が生じた。国連側は、正直なところ、政府がポルトガル語を国語とすることに対して、必ずしも賛成していなかった。葡語を話せなくても、アドバイザーとして採用すると政府側から批判がなされた。かといって、政府と相談してポ語を話せる人を採用しようとなると、友人を連れてきたがり縁故主義が広まった。そこで政府から一人、国連から一人、外部から一人の審査委員会を作り、採用をはじめた。ひとつのポストに30〜50人が応募してきて、資格のある人材が集まってきた。時間はかかったがそれでだいぶうまくいった。

 

■Q■ 平和構築委員会ができるらしいが、現地から見て、どのような役割が必要か?これがあったら、どのように変わっていたか?どれくらい期待しているか?

■A■ 大賛成だ。初めは、正直なところ懐疑的だったが。これまで、国連平和維持活動局(DPKO)の下、平和維持活動を行ってきて、とても遣り甲斐があったと思ってきている。今回は、平和維持から平和構築に移るまでの三年間で、紛争後の変化を見ることができた。毎日のように社会のニーズが変わっていくのが、見ていてわかった。それが、NYにいる方には、なかなか把握できない。HQの対処の仕方が、必ずしも現地のニーズに噛み合わなくなってしまう。

もっと具体的にいうため、例を挙げる。例えばNYで大火事があるとする。消防署は、多くの消防士と消防車が必要だ。次第に、火事がなくなった。次に、防火のための組織造りが必要になった(institutional capacity building)。 既存の組織を、現状のニーズに合ったものに変え、持続可能な能力をつけていくとなると、PKOとUNDPの中間のようなものが必要になる。それが、平和構築のニーズ。つまり、現場の問題を把握し、政府が解決するのをアドバイスする、コンサルティング的役割が必要。それが、紛争後の国連の役割である。

UNOTILは現在、飛行機二機とヘリコプター二機を、医療退避のために持っているが、PKO予算ではそういうものには、すぐに予算がつく。しかし現場では、今では民間の飛行機がよく飛んでいるし、豪にはflying doctorもいるから、すぐ飛んできてくれるので、あまり必要ない。それよりも、汚職を無くすようなコンサルティング予算が必要といっても、DPKOはなかなか予算をつけてくれない。DDRなどには、すぐに予算がつくが。時期によって、ニーズは変わる。

必ずしも、全てよくなるかはわからないが、平和構築委員会ができれば、そういった対処の仕方が変わってくるのでは、と思う。もし私がNYで受け皿になってやるとするならば、現地でニーズがどのように変わってきているか、現地の人が必要だといっていることを、率直に聞けると思う。現場の必要性を満たせる機構が、本当に必要だと思う。平和構築に対応できるようなシステムが、国連に必要。

しかし昨日、ホワイトハウスの担当官と話して驚いたのは、現在国連から出されているプロポーザルには、委員会の参加国を24カ国くらいにしてどういう国が参加するかということばかりが述べられててあって 、現場でどのような活動をするかは、全く述べられていないと聞いた。ただ機構を作れと書いているばかりで、どういった活動と機能をもつものなのか、どのような必要性があるのか、全く議論されていない、と話していた。それでは困る。

 

■Q■ 東ティモールは、平和構築のモデル・ケースとなりうるのか? それとも、ただ運が良かっただけなのか? 国が小さく、外からの介入が比較的簡単で、石油があった。アフガンやイラクと比べて、運がよいのでは。

■A■ 運がよかったというのが、三分の一。国際社会の対応が適切だったというのが、三分の一。地元に、国際社会と協調して、真面目に取り組んでいこうという人材がいた、というのが三分の一。

国際社会の対応が適切であったという理由に三つある。第一に、原油からの収入は、まだ使用されておらず、これまでは国際社会からの資金で行ってきたが、その使い道が、これまで話してきたように、適切であったと思う。

第二に、セルジオ・デメロ 東ティモール国連暫定統治機構(UNTAET)国連事務総長特別代表(SRSG)のもと、国連機関が協調してやっていこうという、ピラミッドが完全にうまく作られていた。その前の99年の住民投票を監視したUNAMET(国連東ティモール支援団)は、軍と警察が別々だったので、9月の騒乱を防げなかった。アフガニスタンのISAF(多国籍軍)と警察の指揮系統が、別々。ソマリアでの失敗は、米の独走。カンボジアは、今ではフンセンの独裁と腐敗がひどいと聞く。東ティモールでは、独裁と腐敗をいかに防ぐかが、新しい課題。

第三に、インドネシアが、東ティモールの独立を受け入れたのがよかった。そうでなければ、現在でも紛争状態が続くことになる。豪が多国籍軍に出した指揮官が賢明だったのだろう。9月15日に入り、半年以内に完全に引き上げ、指導権を国連PKO、タイ人の国連PKOコマンダーに引き渡した。もしそのまま豪が残っていたら、よくなかっただろう。

そして何より、東ティモールの指導者たちが真面目だった。真面目に取り組んで国連の意見をよく聞いてやっている。アドバイスをよく聞く。それが、成功するための何よりの要因である。

以上

(担当:藤澤)

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