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ホーム > スタディ・プログラム > MySP >報告書目次>3.2.シャン州

国連フォーラム主催
「みんなでつくる」 ミャンマー・スタディ・プログラム(MySP)
活動報告書:3.2.シャン州


 

3.2.1.シャン州地域概略

−地図

−地理

州都はタウンジー。中国及びタイと国境を接するため、同国との貿易が盛ん。州都タウンジーの熱気球祭りや、漁師が片足漕ぎをすることで有名なインレー湖など、多くの観光資源を有する反面、後述のとおり麻薬の栽培が盛んだったり、同州内に居住するさまざまな部族とミャンマー政府軍との間での戦闘が行われていた時期もあり、危険な地域も存在する。

−歴史

もともと「シャン」という呼称は、外国人が「シャム(タイの古称)」と呼んでいたものがなまったものとされており、タイ民族と民族的に近いとされる。なおシャン民族はミャンマーの中で、ビルマ人に次ぐ人口を誇る。14世紀初頭からシャン族の王朝が栄え、エヤワルディ川流域まで攻勢をかける時もあったが、16世紀中頃にポルトガルの傭兵を雇ったビルマ族のタウングー王朝に滅ぼされた。同王朝の衰亡後、ビルマ最後の王朝となったコンパウン王朝の支配下に入り、英緬戦争に勝利した英国の植民地となる。

−地域の独特なポイント

同州は麻薬栽培の非常に盛んな土地といわれてきた。アフガニスタン・パキスタン国境の「黄金の三日月」地帯と並ぶ「黄金の三角地帯」と呼ばれる世界でも最大の麻薬生産地域を同州は含んでおり、同州を根拠地とした軍閥が麻薬生産や覚せい剤の生産を行うことで紛争の資金源としているといわれている。一方、国際社会の援助もあり、麻薬関連の違法(illicit)な作物から、そばなどの合法(licit)な作物への転換が一部で進められている。MySPでもWFPのプロジェクト訪問などを通して、国際社会の援助による違法作物から合法作物への転換例の実情を見ることができた。他にもUNODC(UN Office on Drugs and Crime, 国連薬物・犯罪事務所)やJICAなどが関連プロジェクトを実施している。


3.2.1. UN-Habitat

日時:11月25日
場所:Myin Mu Village nearby Pindaya
担当者、所属:UN-Habitatヤンゴン事務所 大島美喜さん、Filed Thechinical Coordinator Ye Win(ヤ・ウィン)さん他。

−訪問プロジェクトについて

  1. 学校訪問(小学校)
  2. ・教師は女性職員のみ(20代前半〜30代前半が中心。女性は役職につけないようで、校長は男性。)
    ・教室はとても綺麗。この学校は、政府支援のみで、国連など外部からの支援は受けていない。
    ・学校のすぐ近くに僧院がある。
  3. Mini Dam Renovation
  4. ・280家屋、全1505名、男性754名、女性751名
  5. 植樹
  6. ・村から徒歩30分ほどの場所で桜の木を植樹した。
  7. 農村ステイ
  8. ・2〜3名ずつに分かれ、家庭に泊まる。
  9. 現場の様子
  10. 実際に人力でつくられており、大勢で多大な労力がかけられているのが見て取れた。村中の人手を総動員してつくられたため、村のひとたちのマインドに、団結力向上の効果があったのではないかと感じた。


–質疑応答

・プロジェクト後の人々の変化は?→幸せになった。

−参加者の声(佐藤曉浩さん)

People’s Process(住民自らが開発の主体となり自身の生活の改善に努める過程)を推進するUN Habitatのプロジェクトを視察すると聞き、住民の意思決定がどのようなプロセスを経て、どの程度反映されるのかという点に関心を持ち、訪問した。主なプロジェクトは、貯水ダムの整備とダムまでの道路づくりであった。このプロジェクトは、住民の話し合いで決まった優先順位に沿っている一方で、水関連のプロジェクトの寄付先を探していた日本資本の寄付により成立している。そのため、両者の意思決定がどの程度反映されて構築されたものであるか詳細な点に関して疑問が残った。また、住民によるメンテナンス能力や新たなプロジェクトを実施する能力がどれほど構築されたのかという点のリサーチも十分には出来なかった。PindayaはAungbanというYangonやMandalayへの農作物輸出拠点となるマーケットに比較的近く、訪問前のイメージと比較すると豊かな農業生産地という印象を受けた。しかし、シャン州の州都Taunggyiの教育学校で学んだ教員が教えているが、村の教育水準は不十分であり、20代前半の若者もほぼ英語を話せない状況であった。例えば、シャン州の農作物に注目している外資企業の参入という環境変改に対して、彼らが適応し、自らの力で村や生活を守る力をつけるためには、村の内発的な問題だけではなく、外発的な問題に適応する能力の構築も必要だと感じた。

スケジュールの都合上、住民へのインタビューの時間は十分に取れなかった。また、小学校教員とは、簡単な英語の質疑応答しかできなかった。その中で、シンプルな質問を1つずつ投げかけることで、事を明らかにすることの必要性や難しさを学んだ。そして、現地の言葉を学ぶことで、現地の人に心を開いてもらい、彼らとの関係の変化を感じた。


3.2.2. WFP

日時:11月26日
場所:Mae Hae Township (School Feeding), Sae San Eung Township (Assets Creation)
担当者、所属:Filed Monitor Assistant: Pansy Dwe, Programme Assistant: Nang San San Aye

−訪問プロジェクトについて

ー現場インプットの内容
ポピー栽培農家の多い地域。2005年に政府がポピー栽培を禁止したため、一時的に現金収入が途切れた。それを補うためにWFPの食糧緊急支援が開始された。現在は果物畑等への切り替えが進んでいる。

  1. 給食配布プロジェクト (School Feeding Project)
    −農家と年長者により食糧保管委員を形成し、彼らが配布された食糧を管理。
    –本プロジェクトでは、午前10時頃の休憩時間に、お昼ご飯までの集中力を維持するため栄養クッキー(High Energy Biscuit)1パック(13~15枚入り)を配布。栄養クッキーの配布リストはそのまま出欠表として利用。
    –栄養クッキーには20種類以上のミネラルが含まれ、1パックで一日に必要なエネルギーと栄養分を含有。
    –栄養クッキーは出席時のみ配布のため、月ごとで80~90%の出席率以上の子には全員にお米を配布するプログラムと比較すると、出席率の向上に貢献。給食配布プロジェクト前の出席率80%に対し、現在約90%。
    –配布後は学校に来るのが楽しくなった生徒が増え、腹持ちも良いため、家での食事の量を減らせるようになり、食費の抑制にも貢献。
    –時おり各生徒から1枚ずつ回収し、配布対象にならない小学校未満の年齢の子供たちにも配っている。
    –シャン州南部では、慢性の栄養失調による低身長を改善させるためECCD・幼稚園・小学校の児童とその母親や乳母にも栄養強化食料を与えるプログラムも2年ほど継続中。
     
  2. 池プロジェクト(food for cash)
    –コミュニティの世帯数は24。職業は農家、日雇い労働者で、収入は日毎2,500チャット。作っている作物はトウモロコシ、米、豆類、野菜類など。
    –学校までは徒歩45分。小学校には現在27名、中学校は10名。中学校は寮に入らなければならず、月に30,000チャットかかる。
    −コミュニティのリーダーは僧侶(45歳)。ヤンゴンで教育を受けた後、2011年この村に派遣される。村人を教育・啓蒙し、2013年からコミュニティ開発がスタート。
    –池は一週間に1度のペースで全員参加して掘る。所用時間は2ヶ月間。
    −池からの収入は一世帯当たり38,000チャット。
    –池には約7000匹の魚が養殖してあり、年に2回(2月と10月)マーケットで販売。仕入れ値は約15MK/匹、成長後の販売価格は1000~1500MK/匹。7000匹のうち実際に販売可能となるのは60%ほどで、売上げた利益のうち10%は運送費、管理人の人件費などのコストに。計算上得られる利益は一年で約7,500USD。学校建設費用はおよそ30,000USD。
    –池の管理は、年配の村民と指定の管理人、僧侶などで構成されたProject Manegement Communityで管理(Project始動前まで)。プロジェクト始動後は、村長が管轄。管理のためのトレーニングは行っていないが、ローカルなやり方が存在し、他の村から学習するシステム。
    −幼稚園建設資金を集める目的で池プロジェクトを開始。幼稚園入園を必要としている子供の数は10~15人。
    −当コミュニティは、2025年までに、村から学校までを繋ぐ橋、幼稚園、給水タンクを優先的に、その後は図書館、コンサートホール、アドミニストレーションオフィスの建設も自主的に予定している。



3.2.3. UNDP

日時:11月27日
場所:Myay Ni Gone village、Taung Gyar Le Village(共にインレー湖周辺)

−訪問プロジェクトについて
・現場の様子(中心地からの距離、雰囲気、村の位置づけ等)
村には人がほとんどいなかった。学校にも生徒なし。(その日は木曜で、ちょうど市場の日だったからとのこと。)
 
−現場インプットの内容
・プロジェクトリーダーは選挙で選ばれた男性。
・UNDPでは、国連職員自らコミュニティ会議で指揮をとることはなく、必ずコミュニティの中から若くて意欲的な者を見つけ、そのひとをプロジェクトのリーダーとする。この発掘が大切らしい。
・せんべい作り用の釜
UNDP支援前:木材を燃料とする釜で熱する。毎日3,000-4,000チャットの木材を消費。
支援後:籾殻を燃料とする釜を導入。初期投資は100,000チャット(10年耐用)
⇒木材は、燃やす際の身体に悪い煙が&火力も強すぎ。また、環境にも負荷が。
  籾だと煙も少なく、女性たちにとっては作業しやすい。UNDPは15台を配布したが、評判が広がり、その他3台の購入が見られた
・基本的に女性の仕事(現場で会ったのは27歳で2人の子供持の母であった。20歳からせんべい作りに携わる。)
・3am~11amで仕事を行う。
・せんべい1つ当たり50チャット。1日900個のせんべい。

−参加者の声(谷口凜さん)

どれもインレー湖周辺のプロジェクトで、現場を視察することで諸プロジェクトが実際の生活の一部に浸透していることが実感できた。例えば、煎餅用のストーブでは、燃料を木材から籾殻へと代替できるようになったことで、明らかな森林伐採の効果が見て取ることができた。また、有機肥料を作って販売しているプロジェクトでは、金額的な利益が把握でき、変化が実感できる例として興味深かった。しかし、現実にそのプロジェクトが、どの程度、人々の生活を改善させ、どの程度満足感や幸福感を向上させているのかというところに関しては、やはり掴みきれなかった。それ故、さらに深い調査をするためには、より長い滞在による現地の方の思いや考えへのより深い理解が不可欠だと感じた。全体を通して、インレー湖周辺におけるUNDPのプロジェクトは、煎餅用ストーブ、有機肥料を作る設備、肥料用植物の切断装置、トイレの浄化装置、電気のパイプライン、といった「物」を提供することで支援しているという印象が比較的強かった。電気のパイプラインについては、さすがに完成物としての供給が必要とされるものだが、有機肥料関連の設備や煎餅用ストーブなどは消耗品のため、彼らの手による持続的な維持が可能なのかという点において、やや疑問が残った。
 
今回視察した点が今後キャリアに活かされることがあるとすれば、今回見た各設備や装置などに関して、日本の中小企業の優れた技術などを導入するつなぎの役割となる、インレー湖周辺で細々と行われている産業をより大きなビジネスとして定着させる、環境問題や現地の伝統の保護と両立させながらインレー湖周辺を観光スポットとして発展させる手助けをする、というような方向が考えられる。規模はとても小さいが、非常に目に見えやすい形で現地の人々の生活へポジティブな影響を与えられる優れた技術や草の根のビジネスを考えるきっかけにはなるのではないかと感じた。