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第31回
道券 康充さん

国連開発計画

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近藤 哲生さん
国連コソボ暫定統治機構
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国連事務局・PKO局

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宮口 貴彰さん
国連開発計画

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幸田 シャーミンさん
国連広報センター(UNIC)所長

幸田シャーミン(こうだしゃーみん):国連広報センターUNIC所長。聖心女子大学英文科卒業。ハーバード大学ケネディ・スクール・オブ・ガバメント卒業。1984年からフジテレビ「スーパー・タイム」でニュースキャスターを務めるなど、テレビ・ラジオなどで活躍。

Q.国連広報センター所長に就任された経緯を教えてください。

15年ほど前から環境問題に携わる中で、環境問題の解決の中で国連が果たす役割の大きさを知りました。そして発展途上国に取材に行くことが増え、初めて意識したのが、実際は「欧米では」という意味なのに「世界では」とか「インターナショナル」という言葉を深く意識しないで使っていたこと。つまり、発展途上国も含まれて初めて使われるべき言葉なのだから、グローバルやインターナショナルというのはおかしいことに気付き、そこから私の世界観も変わったのです。

それから、ローカルとグローバルを組み合わせた言葉で「グローカル」という新語がありますが、私たちの地域だけの問題と思っていることが実は地球の反対側の人の生活に影響を及ぼす問題であったりします。例えば今後温暖化による海面上昇が他国の存続維持の危機につながる恐れなどが挙げられます。このように他者との関係を常に感じながら生きていかなければいけないという大きなメッセージを環境問題は私たちにつきつけているのだと思います。自分の地域のことだけでなく、国際化の中での自分と他者とのつながりを考え、そして一番脆弱な立場にある人々のことを考えながら自分の行動を意識する。その考え方がまさに国連の考え方なのです。いろんな法律を作るにあたっても、192カ国のそれぞれの利害や物事の優先順位が異なる中で、それを乗り越えて合意形成をしていかなければならないのです。決して易しいことではないけれど、国連をいかに質のいい話し合いの場にしていくかが、世界の問題解決をしていく上で非常に重要だと思いました。

そんな思いが重なって、今までやってきたキャスターやコミュニケーションの仕事の経験を活かして、国連を通して何か小さくてもいいから貢献していきたいという気持ちになったのです。そこで所長のポストが空席になったことを知り、ギャラクシー(国連の人材公募システム)に登録して、試験と面接を受け、幸運にも就任することになったのです。決まるまでが長かったからそれは大変でしたけど、決まった時はとても嬉しかった。特に国連50周年と言う節目の年に就任できた事はよかったと思っています。

Q.国連で実際に働いてみていかがですか。

まだまだ入り口をちょっと覗いたくらいの所でしょう。奥が深い所だと思いますので、もっともっと知りたいですね。きっと素晴らしい人たちが大勢いると思う。国連のいい所は、チャレンジャーが多い所ではないでしょうか。人生一直線ではなく、自分なりに色々なチャレンジに立ち向かい、何かを得るには何かを失う覚悟で挑戦してきた気迫が感じられるから、魅力的なのかもしれない。一人一人の人生のストーリーをもっと聞きたいなと思います。

Q.UNICではどんな活動をされているのでしょうか。

今の一番の仕事は、皆様に国連を身近に感じて頂くことです。私たち一人一人が、世界の人々とつながっていることを理解していただくことです。常に自分の行動が離れた他の国に、そして未来の世代の人たちに影響している、つまり時間と空間を越えた関係を意識するということが求められる時代です。それを感じさせてくれる所である国連の活動を理解して頂けるよう活動しています。今後は子供たちにも国連のことをもっとわかりやすく伝える活動に力を注ぎたいと考えています。

私が国連に入って皆様からよく頂くご意見は、国連が何をしている所かよくわからないという事です。そこで私はまずは国連で働く日本人の生き方やチャレンジを見て頂き、そこから皆さんに「私も何かできるかもしれない」という事を感じてもらいたいのです。その為にまずは人間を通して活動を伝え、そしてその次にそれぞれの問題について考えて頂きたいと思っています。

Q. 人間の安全保障写真展について教えて頂けますか。

NY本部で去年の10月から12月まで写真展が行われたのですが、その写真を日本でも展示することになりました。国連に関心がある人だけでは無く、国連のことを普段あまり考え無い人々の目にもどこかで留まって、国連に関心を持つきっかけになってくれればいいなと思っています。

人間の安全保障は、世界中の様々な場所で困難な状況にある人々が自ら立ち上がることができる様お手伝いをすることだと思うのです。人々自身の視点を大切にして支援を組み立てて行こうという考え方といえます。日本はこれまで、この新しい考え方を国際社会で広げる大きな役割を果たしてきました。そして、「人間の安全保障基金」という財源を使って世界中で160以上のプロジェクトを行ってきました。日本と国連の貢献で現場にどのような変化をもたらすことができるのか、人々に本当に役に立つ支援を行うにはどうすればいいのか、そういうことを写真とヒューマン・ストーリーの組み合わせで日本の皆様に見て頂きたいと思っています。今年、東京をはじめとしていくつかの都市で写真展とセミナーを開催する予定です。

Q. 国連で働くことの魅力は何でしょうか。

国連に入ってくる人はそれぞれが環境や人権などといった専門テーマを持っていて、自分の活動が弱い立場にある人たちにプラスの影響を及ぼす事ができたらという思いで入ってきている人が少なくないので、そのプラスのアクションのチームメンバーになっていくのが一番の充実感だと思います。人間は誰かの役に立ちたいのだ思います。自分の幸せだけでなく、また自分の家族を超えたもっと広い所で役に立てたらこんなに嬉しいことは無いと思うんですね。その活動の場の一つが国連だと言えるのではないでしょうか。UNICは、その活動を皆さんにお伝えすることを使命と思っています。就任まだ10か月なのでまだまだですが、もっと充実感、満足感を得られる様な直接的な活動に取り組みたいと思っています。

Q.リーダーシップについてのお考え、心構えやアドバイスなどをお聞かせください。

リーダーシップとは、変化を起こさなければいけない時に必要だと考えます。変化は苦痛をもたらします。今まで慣れ親しんだ価値観や優先順位を変えなければならず、ストレスも伴います。そういう中では変化のペースも大事なんでしょうね。私のリーダーシップの考え方は、いい仲間とともに、チームで本当に必要な変化を起こしていくという事です。

私のモットーをお話しますとね、好きな言葉は「アクション」、嫌いな言葉は「リアクション」なんです。自ら行動を起こすのが好きなのです。キャスター時代もそうだったのですが、どんなに辛くとも絶対に逃げない諦めない。それをモットーにやっていけば自分なりに色んな壁を乗り越え、昨日までダメかもしれないと思っていたのが嘘の様に、清々しい空気を味わう事もできる。そういう気持ちでやっていくと色々な挑戦を乗り越えられるのかなと思っています。今の目標はいいチームワークを作って、みんなで一緒に頑張って行きたいという事です。まだまだ新米ですので、どうぞ応援してくださいね。

Q. 最後に。多忙な毎日を送っていらっしゃると思いますが、幸田さんのリラックス方法、オフの日の過ごし方を教えてください。

最近は時間が無くてできませんが、以前は週に2〜3回泳いでいました。春からはできれば週に2回は泳ぎたいですね。最近は犬の散歩でしょうかね。公園の中を朝晩30分くらい犬の散歩をします。私にとってはそんなに運動にはならないんですが、いい気分転換にはなりますよね。朝からきれいな空気を吸ってね。うちの犬は食事よりも散歩が好きなので、楽しくてしょうがないみたいですよ、ヨークシャテリアだからちっちゃいですけどよく元気にお散歩しますよ(笑)。

 

(インタビュアーから一言)
キャスター時代とまったくお変わりないシャーミンさんにお会いするや否や驚いてしまいました。知性はもちろんのこと、優しさと芯の強さも併せ持つ、チャーミングで華のある素敵な女性で、お話をしているうちにたくさんの刺激とパワーを頂きました。シャーミンさんが緒方貞子さんのことを「同じ時代に生命を授かって、同じ空間に存在し出会えたことを本当に嬉しく思う。本当に素敵な方。」と表現されたのですが、私も今回シャーミンさんと同じ時空に存在できたことを思わず感謝せずにはいられないほど、シャーミンさんは素敵な方でした。そして、日本の女性の社会進出が遅れているとの世界からの評価を受けている現在、シャーミンさんのような日本人女性のリーダーが活躍されることを誇りに思いました。今後の益々のご活躍をお祈りしています。 桑原りさ

(2007年2月14日、インタビュアー:桑原りさ、コロンビア大学院 国際関係・国際メディア専攻。フリーアナウンサー。写真:田瀬和夫、国連事務局OCHAで人間の安全保障を担当。幹事会コーディネーター。)

2007年3月5日掲載

 

 


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