第4回 中村 秀規(なかむら ひでのり)さん
第4回 中村 秀規(なかむら ひでのり)さん
インターン先:UNICEFウガンダ事務所
■1■ インターンシップの応募と獲得まで
国連フォーラムの幹事活動で存じ上げていたユニセフ本部の久木田さんにお願いして、インターン受け入れが可能か、いくつかのサブサハラ・アフリカのユニセフ事務所に対して打診・依頼をしていただきました。それに対してウガンダオフィスより受け入れ可能との回答がありました。その後、ウガンダオフィスに大学院教員からの推薦状を含む必要な応募書類を送付するとともに、業務内容や期間など詳細なTORについて交渉し、正式に決定しました。
なお私は2005年5月に大学院を修了しており、インターンの条件である在学中の大学院生ではありませんでしたが、応募時点でも現地の人事担当者の取り扱い上も問題にはなりませんでした。またホームページ上、ユニセフでのインターンは16週間を最大とするとなっていますが、これも任意に決定可能でした。ただし他のオフィスでもこのとおりかどうかは分かりません。
■2■ インターンシップの内容
私は、長期紛争の影響下にある北部地域を担当している、Northern Region Unitでインターンを行いました。この部署は、インターナショナルスタッフのRegional Managerの下、ナショナルスタッフである4人のプログラムオフィサー、2人の財務・調達担当者、および1人の秘書から構成されています。首都カンパラにあるこのオフィスのほかに、最近設置された4つの地方オフィスにもインターナショナルおよびナショナルスタッフがおり、北部地域のプログラムの運営を行っています。私は主にRegional Managerの業務をサポートしつつ、必要に応じて個別にプログラムオフィサーの支援を行いました。主な担当業務は以下のようなものでした。
- 1) ユニセフが支援している、地方政府/NGOによる人道・開発プログラム(5ヵ年開発支援Government of Uganda-UNICEF Country Programmeおよび人道緊急支援Consolidated Appeal(CAP))の案件進捗管理ツールの開発・運用、および報告書作成の支援
- 2) 緊急無償資金協力を通じてトップドナーとなっている日本を含む、各ドナーの資金使用状況に関する管理ツールの開発・運用、および報告書作成の支援
- 3) 北部地方への現地訪問による進捗管理・年計画立案の支援
具体的な活動としては、例えば次のようなものが挙げられます:
- 1) 13の北部地域地方政府(州)および約60のNGOによる2004年および2005年プログラムの進捗報告書をドラフティング
- 2) 主要なプロジェクト6つについてロジカルフレームワークを作成
- 3) 北部4州について、活動するNGOおよび活動分野(保健、教育、水、子供の保護など)と支援対象となるIDP(国内避難民)キャンプの一覧表を作成
- 4) ユニセフが調達し州・NGOに配布する物資の調達状況管理ツールを作成・運用
- 5) 約30のドナーによる資金活用状況について進捗状況書を作成
- 6) 主要なドナー4つに対してドナー報告書をドラフティング
- 7) 5回の北部地方への現地調査を実施
なお、インターンの受け入れとTOR交渉を担当した方が私のインターン開始前に他のアフリカのオフィスに所長として赴任されたこと、また実際の上司はTOR決定時にはホームリーブでウガンダを離れていたことから、上司との交渉を経て、最終的な業務内容は当初のTORとは一部異なるものとなりました。またインターン後半期には業務を拡大して当初のTORにはなかったCountry Programmeに関わる業務が中心となりました。
■3■ 資金確保、生活、準備等
国連でのインターンは無給です。したがって渡航費、現地滞在費など必要な費用はすべて自弁しました。ただしウガンダ国内の地方出張にあたっては規定の日当宿泊費が支給されました。住居費は非常に高くなりましたが、生活費は低く抑えることが可能でした。準備段階では、ユニセフのインターンの条件にもなっている、保険の加入も行いました。夜間到着でまた首都と空港のある都市が離れているため、ウガンダ入国初日の宿泊の手配と翌日のオフィスまでの送迎は事務所が行ってくれました。最初の数日間はホテルに宿泊し、その後アパートに移りました。住居については、私のインターン以前にオフィスでJPOをされていた方のアドバイス、その方が紹介くださった大使館の方の情報、ユニセフスタッフの助言などを得て、ホテル、不動産業者およびアパートと交渉して決めました。アパートからオフィスまでは徒歩で25分ほどかけて通勤していました。
■4■ 感想
上司の配慮もあり、5回ほど北部地方に出張できたことが貴重でした。その多くは地方行政府とのミーティングでしたが、一度、ドイツとイタリアのユニセフ協会の方々によるユニセフプロジェクトの視察に同行する機会があり、IDPキャンプ、病院、夜間避難所、NGO活動サイトなどを訪問しました。IDPキャンプでは、何百世帯もの人達が、密集した、狭い土壁の窓のない小屋に住んでいる様が強制収容所のように見えました。治安が悪く農作業がなかなか再開できない状態で、仕事がない状態が続く男性がアルコール依存になるといった状況も見ました。一方で、LRA(神の抵抗軍)に拘束されていた経験のある少年・少女が職業訓練や心理サポートを受けて地域社会に復帰しようとしている姿や、HIV/AIDSに感染して治療を受けている少年が病気に屈しない様子は、希望を感じさせました。インターン期間中にも、外国人旅行者が襲撃・殺害され、また現地NGOスタッフや、子供を含む一般現地人が襲撃され殺されるなど、治安が悪い中で、実際の現地の状況を少しでも見ることができてよかったと思っています。紛争影響下の北部の異なる3州に行き、他に遊牧主体で、部族間の争いが続き、また旱魃の影響を受けている北東部や、スーダンやコンゴ民主共和国との国境に近く難民もいる北西部にも行くことができたため、地方における自然環境や抱える問題の違いを見ることもできました。普段は首都のカンパラにいて過ごしていたことから、地方と首都との格差を体感することにもなりました。また首都では次期大統領選挙をめぐって、野党側候補の逮捕に抗議する暴動と警察による鎮圧という事件があり、たまたまユニセフオフィスが事件場所から近かったために風で流れてきた催涙ガスを吸ってしまうといったハプニングを経験し、文字通りアフリカの不安定な政治を身体で感じることもありました。
インターンができることは限られていますが、自分の仕事によってプログラムの効果的・効率的運営のためのアセットをチームに残し得たと思っています。また業務を通じて、NGO・地方政府といったパートナーとのプロジェクト運営や、資金調達・管理、ドナー・National Committees(先進国のユニセフ協会)とのコミュニケーション、物資調達・管理、またリージョナル・チームとテクニカル・クラスター(保健・栄養、HIV/AIDS、初等教育・就学前教育、水・衛生および子供の保護といった専門分野にかかる技術支援部門)によるマトリクス運営など、ユニセフの仕組みについても勉強しました。毎週一回のオフィス全体会議での所長の解説のお蔭で、UNリフォームの状況とユニセフおよび国レベルでの対応についても学びました。オフィス内の議論や仕事の仕方、さらには普段の会話から見えてくる、各人の仕事や人生における価値観・優先順位の多様性を知ることも勉強になりました。
ウガンダ滞在を通じて、ユニセフ内外のいろいろな人達(インターナショナル/ナショナル・スタッフ、ウガンダ以外のアフリカ人スタッフ、欧米人・ウガンダ人NGOスタッフ、ウガンダ地方行政官、欧米人/ウガンダ人コンサルタント、ウガンダの一般青年)と接し、彼らの開発や援助についての多様な見方を知ることができたことは、業務以上に重要だったと思っています。汚職の実態やその原因、ドナーの役割、調和化、MDG、援助の理由、開発の必要性、援助依存など、途上国の人たちに聞いてみたいと思っていたことについて議論することができました。一方で、こうしたことはごく限られた経験で、地方出張や首都の歩き回りで見えるものも含めて垣間見だったとも感じています。日本とアフリカ、自分と途上国開発との距離を体感することがアフリカでのインターンの目的の一つでしたが、インターンという時間的経済的投資とのバランスを含めて、その距離は感じ取ることができたと思っています。