第3回 鈴木(ナブ)裕子さん UNDPタンザニア事務所
略歴:すずき(ナブ)ゆうこ デラウェア大学(国際関係・社会学)卒業後、日本で短期間の大学勤務のち、ピッツバーグ大学国際公共政策学(国際開発学)修士修了。ワシントンDCの開発コンサルタント会社でUSAIDのプログラム運営の経験の後、2003年12月よりタンザニア事務所にてJPOとして勤務。
JPOとしてタンザニアに着任して、そろそろ2年になろうとしています。UNDPタンザニアでは主に2つのエリア―民間セクターとのパートナーシップ促進(Global Compact-Growing Sustainable Business Programme)と援助協調―を担当しています。今回は援助協調について書かせていただきます。
タンザニアの援助協調といえば、現地日本大使館、JICAからも何度かDevForumで報告のあったとおり、パリ会議でもハイライトされたりしたイノベーションあふれる試みが行われています。日本政府も一般財政支援を試みています。日本だけでなく、各ドナーも、New Aid Modalitiesやパリ会議宣言の具体化を試みています。援助協調におけるタンザニア政府のリーダーシップ、オーナーシップが益々強まっており、グローバルレベルでも注目をあびる一要因となっています。Development Partnersもそういった傾向をバックアップしていこうという積極的な姿勢を持ち、とてもInclusiveなドナー会合を軸に、Joint Assistance Strategy (JAS)やIndependent Monitoring Group (IMG)などを通して援助協調も益々進んでいます。UNDPはそうした援助協調を進めていくうえでの重要な役割をはたしています。そういった中で、私はドナー会合の事務局をAid Coordination Advisorとともに運営しています。
新しいAid Modalities(一般財政支援やセクター支援)を通して益々進んでいく援助協調、そしてDebt Relief、Millennium Project-scaling up、Aid Effectivenessにおいてこれまで以上にますます必要不可欠になってくるいくつかの点においてUN・UNDPの果たすべき役割は今まで以上に重要となってきている気がします。私はこの必要不可欠な点は、主にCapacity DevelopmentとTrustだと思っています。Capacityは人材育成ももちろんですが、それ以上に、単なる技術転換だけではなく、国の機関(InstitutionsとDevelopment Management Process)の強化とReform、そういったプロセスにおいて不可欠な人材育成(リーダーシップ、コーディネイト力など)、そして何よりもMutual Trustの育成と強化は援助協調において最も必要なものだと感じています。
上記の二点におけるUN・UNDPの役割は、政府の真のパートナー、Neutral Player、Impartialityといった観点から思った以上に大きいと思います。タンザニアではUNDP Resident Representativeが現地ドナー会合のPermanent Facilitatorとしてドナーの調整を行っています。ドナー会合の運営はUNDPが行っています。
Trustに関して言えば、ドナー間のTrust Buildingだけでなく、ドナー・政府間のTrust BuildingにおけるUNDPの役割はドナー会合内でも評価を受けていると思います。前述のJASのドナー間の意見調整時に改めて認識が高まったのが、Frequent Effective Dialogue(理想的には政府のリーダーシップ・オーナーシップのもとで)の必要性でした。セクターレベルでのStructured Dialogueだけでなく、ハイレベルでのDialogueの役割が、ますます重要になっています。一般財政支援の観点からだけでなく、ローマ・パリ宣言の具体化を志しているJASの観点からもStructured Frequent Effective Dialogueの重要性が高まってきていると思います。
ハイレベルDialogueに関して言えば、3年以上滞っていたDevelopment Cooperation Forum(DCF)が半年前に再開されました。このForumは、Chief Secretary(タンザニア政府行政のトップ)の指揮のもと、Permanent Secretary(中央政府機関の行政のトップ)とDevelopment Partnersの間でのDialogueの場所です。私はこのForumの運営をChief Secretaryのオフィスと共に行っています。このForum、そして他のセクターレベルそしてThematicレベルのDialogueを通じてTrust Buildingが行われていくというのが今の状況です。また益々進む一般財政支援の中、財政支援ドナーとそうでないドナーを含めたInclusiveなプロセスが必要となっています。UN/UNDPはそういったInclusiveな援助調整を進めていくうえでのTrust Buildingにおいて重要な役割を果たしていけると思っています。
Capacityに関して言えば、政府のキャパシティを包括的にサポートしていく必要があります。特に、タンザニア政府の第2次貧困削減戦略(スワヒリ語の頭文字をとってMkukutaとタンザニアでは言われています)はタンザニア政府によるタンザニアのための政策で、このコンサルテーションはとてもオープンでComprehensiveなものでした。この政策はJASの根本でもあり、UNのUNDAFもこの政策を軸に作成されています。この政策ゴールの実現には政府のSector Policies/Strategies、Budgeting Process(MTEF:Mid-term Expenditure Framework、PER:Public Expenditure Review)そしてPoverty Monitoringのプロセスの協調、調整が必要となっています。そしてドナーのプロセス、Dialogueの協調、調整も益々進む必要があります。
UNDPはこの協調プロセスにも積極的に関与していますが、PERに関して言えば、まだまだ努力の余地がたくさんあります。セクターレベルでのDialogueにおいても、Sector Policies/Strategies、MTEFのMkukutaへの協調などの討論が行われますが、こうしたセクターレベルでのUN(UNDPだけでなく、UNICEF、FAOなど)の関与が益々必要となってくると思います。こうした流れのなか、UNリフォームを積極的に進めていかないと、正直UNの立場、場所が益々狭くなってくるような危機感を当地にいると感じます。
ベトナム・カンボジアでのお話にもあったとおり、政策アドバイザーとしてこういったDialogue ForumやPERを通じて積極的にアドバイスしていきつつUNとしてのAdvocacyも進めていくにはハイレベルの知識と経験が問われていくのだと感じています。DFIDなど一般財政支援の比重の大きい機関はこうした政策アドバイスを積極的に行っていくための人材をそろえています。UNDPはこうした人材を育て、そろえていくだけでなく、政府のオペレーション支援(例えば選挙バスケットの運営)などオペレーション方面の効率化も益々進めていく必要があり、この政策アドバイスとオペレーションの両立はこれからの試練ではないかと思います。
援助協調の進むタンザニアでは、プログラム、プロジェクトの現地資金調達が益々難しくなっており、政府の開発政策運営、キャパシティ強化、一般財政支援、JASをコンプリメントするプログラムでないとなかなか資金調達が進まないという現実があります。こういった中で、UNリフォームを進め、UN・UNDPの役割を確立し、UNのコアファンドを増やしていき、UNDAFを通してUNのNicheを生かしたプログラム、プロジェクトを組む必要があるかと思います。この援助協調、一般財政支援という電車に乗り遅れないように、私も日々、UNDPの援助協調への貢献に関わっています。
<参考>
タンザニアの援助協調に関するドナーのウェブサイト
Tanzania Development Partners Group (DPG)
http://www.tzdpg.or.tz/
担当:粒良