第2回 宮本 香織(みやもと かおり)さん
第2回 宮本 香織(みやもと かおり)さん
OECD/DAC事務局*
インターン先:UNFPAバンコク事務所
■1■ インターン期間
1988年夏の3ヶ月
■2■ インターンシップへの応募から獲得まで
私はアメリカの大学院で開発を勉強しておりましたが、あるフォーラムで、ひと間違いをして話しかけた日本人が、偶然父の会社の後輩であり、研究者として同大学に在籍していたので親しくなりました。彼女は政治記者として人脈が広く、私が夏にアジアの国連機関でインターンをしたいが、受け入れ機関を見つけるのに苦労している、と申し上げたら、時の農林大臣の姉であり、たまたま私の学部の大先輩でもあった人がUNFPAのバンコク事務所長をしていたので、コンタクトをとってくれ、そこで一夏インターンをする話がまとまりました。
■3■ インターンの内容
結局仕事の内容自体はたいしたことなく、UNFPAバンコク地域事務所が様々な国連機関に拠出している委託事業の情報を一つにまとめる、という単純な作業が主でした。ということで仕事としてはあまりチャレンジングではありませんでしたが、同じビルに勤める多くの若い国連職員と親しくなり、「なあーんだ、国連ってこんなところか」ということがわかり、その点では大変有意義でした。また、地元のタイ人グループとも何度か旅行したりして親交を深め、途上国の人の考え方やかかえている問題にも触れることができました。
■4■ その後と将来の展望
私はハーバードのケネディースクールで行政学修士(といっても開発が専門)を取得しましたが、その後CAREに採用されて2年間スリランカの児童母子栄養補助事業を担当し、次は又タイに戻って主にマイクロファイナンスの事業を2年半担当し、それから世銀に転職して本部で主に東アフリカの保健衛生関係の融資を4年間担当しました。OECDのDAC事務局には7年前移り、つい最近まで援助審査を行っておりました。将来の展望は、このにっちもさっちもいかない開発産業から足を洗って小説家になることです(半分冗談)。
■5■ 資金確保、生活,準備等
インターンシップは無償でしたが、大学院から奨学金として3千ドル貰い、それで充分過ごせました。バンコクでの住居は、文通していた日本での友人が偶然同じ国連ビルに勤めているUNDPのタイ人職員を知っており、彼女の同僚でハウスメートを探していたフランス人のJPOに紹介されて同居しました。このフランス人とは今でも親しくしております。それから上記の記者がボストンの電車の中でたまたま話しかけた日本人がタイと深いつながりをもっており、彼女の紹介で多くのタイ人の友人を得ることができました。彼女らとも今でも親しくしております。事前準備は予防注射以外、現地でコンタクトしたい人にタイに行くからよろしく、と手紙を書いて知らせることくらいでしたかね。
■6■ その他感想アドバイス
インターンシップでは仕事としてはあまり期待しない方が良いと思います。現在、逆にインターンを常に採用する側になっておりますが、たいがい委託する仕事はそれ程高度なものではありません。皆さん大学院ではむずかしいことを学んでいるので、それを発揮したいという気持ちもわかりますが、採用側としては責任のあるものはあまり任せられないのが正直のところです。ですから張り切って、「こんなこともやりたいからやらせてくれ」といって売り込んでくる候補者には若干ためらいを感じることもあります。
では何を期待すれば良いかと言いますと、雑用的あるいは基本的な仕事を任せられながら、「国際機関ってこんなもんか」と肌で感じることだと思います。国際機関にもいろいろありますが、多くの学生にとっては未知のもので、かなり幻想をいだいているところがありますので、ドロドロした人間関係、ポリティックス、非効率性、理不尽なこと等多く、至って人間的な集団組織である、とわかれば良いのではないかと思います。それで完全に幻滅せよ、というのではなく、様々な欠点を承知しつつそれでも国連ないし他の国際機関に勤める意義があるかどうか自分で確認することが大事なのです。そしてもしそれでも、と思うなら、どういうやり方で採用してもらえるか、とインターン中情報収集しておけば、就職活動に絶対に役立つと思います。
インターンシップを確保するためのアドバイスとしては、なるべく多くの人に希望の組織や任地のことを話し、何かつてがないかと常に探索することです。、知人の知人の遠い親戚など、思いがけなく全く関係ないところにコネができたりもするものです。そのためにも普段からネットワークを広げておいた方が得でしょう。
それからバンコクのインターンには奨学金がおりましたが、それ以前に私は自己資金でスーダンのイスラム系NGOでインターンをした経験があります。これも大変有意義なものでした。もし資金的に余裕があれば、自腹を切ってでもインターンシップを経験した方が良いと思います。後で必ず回収できますから、自己投資だと思い、途上国の経験をなるべく多く積む事をお勧めします。
UNFPA:http://www.unfpa.org/
*正式名称:Organisation for Economic Co-operation & Development/Development Co-operation Directorat