第71回 高田 実さん 国連開発計画開発政策局 環境・エネルギーグループ 持続可能なエネルギープログラム マネージャー

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プロフィール

高田実(たかだ・みのる):北海道大学工学部学士・修士号取得。日本原子力研究所研究員を経て、青年海外協力隊員としてガーナで3年間を過ごす。96年から98年まで、JPOとしてアンゴラや南部アフリカ各国で再生可能なエネルギーの普及に携わる。三重大学機械工学科博士課程修了。98年より国連開発計画環境・エネルギーグループ、2006年より同グループ持続可能なエネルギープログラム マネージャ。

Q. 国連で働くようになった経緯を教えて下さい。

小さい頃から宇宙やロケットに興味があったので、大学では修士まで原子力工学を勉強しました。大学院在学中から日本原子力研究所で働いていましたが、卒業後すぐ、青年海外協力隊に応募してガーナへの派遣が決まり、そこでは中学生・高校生に算数を教えることになりました。地元の人々と村落開発ワークショップを立ち上げることになり、JICAの草の根事業からの資金援助も受けて、通常は2年間の期限があるところを結局3年間いました。当時は開発について何も知らなかったですね(笑)。土からレンガを作るところから始めて、田舎の高校に学生を集めるための学生寮を建てることになりました。人口千人ほどの小さい村で、電気、水道もなく、ランプと井戸水での生活でしたが、それがかえって、村の生活に溶け込むのによかったのでしょう。皆と地酒を飲みながら仕事して楽しかったですね。

それがきっかけで、開発に関係のあるエネルギーについて興味を持ち始め、再生可能なエネルギーを勉強するために三重大学の博士課程に進学することを決めました。ちょうどその頃、偶然本屋でJPOについて知り応募してみたら合格しまして、98年からアンゴラへ行きその地域の再生可能なエネルギーの普及に2年間従事することになりました。その後日本に帰国し博士課程を終えましたが、国連ではアンゴラでの仕事以来、現在までずっと環境・エネルギーグループで働いています。

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Q. アンゴラでは具体的にどのような仕事をされたのですか。

アンゴラへは南部アフリカ共同体(SADC)で再生可能なエネルギーを普及させるための地域プロジェクトを実行、管理する業務に携わるために派遣されたんです。でも実際行ってみたら、プロジェクトが始まっていないばかりでなく、プロジェクト・マネージャーも何か月か先にならないと来ないことを知らされてびっくりしました。「君なんで来たんの?」って(笑)。しかたがないので初めのうちは本を読むなどして勉強していたのですが、しばらくしてそんな状況に耐えられなくなったので、現地のスタッフと交渉して、正規のプロジェクトが始動するまでの間にUNDP現地事務所で水や生物多様性、ゴミ処理など環境分野全般のプロジェクトを一通り任されることになりました。そのうち正規のプロジェクトが始まってからは、早朝から昼まではUNDP現地事務所で、昼から夜まではSADCの事務所で働き、2つのオフィスを毎日往復しながら、文字通り朝から晩まで環境とエネルギー関連の仕事に没頭しました。非常に充実した2年間だったと思います。

Q. これからのキャリア・パスについてはどうお考えですか。

これからどうなっていくかは正直なところ分かりませんね(笑)。ガーナ以来、エネルギーと開発に関連のある仕事に携わりたいと思ってきましたし、現在の仕事でも両方に関われていて非常にやりがいを感じています。今は、全世界でおよそ20億人(途上国の貧困層のほとんど)ほどいる電気のない人・薪を主燃料としている人に、どうやって現代的なエネルギーを与えるか、ということを集中してやっているのですが、当面の目標は、これに世界規模で筋道をつけることですね。将来的には、エネルギーか開発かのどちらかに重点を絞ることも可能ではあるのですけれども、この先もやはり今のような感じで両方をできればいいなと思っています。

Q. 環境やエネルギー問題が世界的に注目を浴びるようになり、さらに今年日本はG8サミットの議長国にもなりましたが、これからの日本の取り組みはこれからどのように変化し、世界リードしていくことができるとお考えでしょうか。

まず気候変動とエネルギー問題の密接な関わりを認識し、持続可能なエネルギー開発に向け政治を方向づけていくことが大事ですね。日本には、先進国や発展途上国がともに持続可能なエネルギーの開発を進めて行くための経済力と技術が十分にありますし、国レベルだけではなく民間企業の貢献も目立つようになって来ています。持続可能なエネルギーによって私たちの暮らしを支えることは、技術的には十分実現可能です。あとは政治的な方向性を定めて実行可能な順序で社会的、経済的、構造的な要因を取り除いていけば、日本もドイツやスウェーデンなど北欧諸国のように環境やエネルギー分野で世界をリードしていくことができるのではないでしょうか。

気候変動のような世界規模の問題に対処するには、世界中の国が皆(ある程度)納得するルールが必要ですが、国連は、それを議論する場です。しかし、国連は一つの「世界政府」ではなく、独立した国の集まりですから、これをまとめるのは本当に至難の業です。それを可能にしてきたのは、国や個人の強靭な意志とリーダーシップなのではないでしょうか。そう考えると、日本が気候変動問題で強いリーダーシップを発揮し続けることは、今後ますます増えるであろう地球規模でのルール作りをリードしていく上でも、大変重要な意味を持つものと思えてなりません。

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Q. 国連の魅力はなんでしょうか。

そうですね、個人がワークライフバランスを決める上である程度の決定力を持っていますから、生活の質が高く仕事内容の自由度も高いということでしょうか。独創性・説得力・実行力があり、イニシアチブをとっていくことさえできれば、国連というのは、個人のレベルから大きな組織のアイデアを形づくることができる非常にダイナミックな場所です。さらに、そのプロセスにかかる時間も、日本の組織と比べるとだいぶ短いといえます。でもその反面、国連はそのようなイニシアティブを発揮できなければ、明日自分のいる場所さえ保証されないような組織でもあるのです。

私生活面での配慮に関しても、国連だから融通を利かせることもできると思います。例えば、休暇は話し合いで決めることができるので、はじめから決められた休暇しか取れないということはありません。家族で過ごす時間を少しでも多くつくりたいので、月1-2回ほどの頻度である出張もできるだけ短くしてもらっています(笑)。

国連は確かに、業務の細分化という組織的な弱みを抱えています。一方でこの組織は、職員一人ひとりの想像力や独創性を重要視して、大規模で重要な事業への期待に応えようと努力しています。それを可能にするために、個々の職員が職環境や私生活をデザインできるというのが国連の魅力なのではないでしょうか。

Q . 国連で働くことを目標としている若者にメッセージをお願いします。

常に自分のやりたいことを追求して、できるだけ明確にすることですかね。それをしっかりわきまえていれば、理想と現実のギャップにはまった時に忍耐力となって自分を支えることができると思います。実際に私も、アンゴラに行った当初はプロジェクトがまだ立ち上がっていないばかりか、ポルトガル語を話す現地の人とのコミュニケーションがうまくとれずに戸惑いましたが、結局最後は自分で行動を起こし、それから今までも道を切り開いてくることができました。国際協力に興味を持っておられる皆さんには、ぜひ「国連に入ること」自体ではなく、自分がその舞台で何をしたいのか、何ができるのかをよく考えて世界にどんどん羽ばたいて行ってもらいたいです。

(2008年2月7日。聞き手:鈴木香織、幹事・勉強会担当。写真:田瀬和夫、国連事務局OCHAで人間の安全保障を担当。幹事会・コーディネーター)

2008年4月19日掲載