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第65回 佐々木優貴(ささき ゆき)さん
上智大学大学院 グローバル・スタディーズ研究科 国際関係論専攻博士前期課程2年
インターン先:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 広報部門
インターン期間:2015年4月から6月末まで
■インターンシップの応募と獲得まで■
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所での広報インターンシップの情報は、修士1年の2月頃、国連フォーラム及び研究室のメーリングリストで知りました。私は大学院進学の志望動機の一つに国連機関でのインターンを挙げていましたが、ゼミや研究活動の忙しさから自ら情報を探すことをやめてしまっていましたため、突然舞い込んできた朗報でした。
しかし、当初は応募すること自体に何度も悩みました。大学院での勉強と、3月から始まる就職活動との両立が不可能だと思われたからです。その先のキャリアを考え、大学院を2年間で卒業することを絶対条件にしていた私には、休学の選択肢もありませんでした。その結果、入学前の希望を叶えるチャンスを逃すべきでないという結論に至り、学業・就職活動と両立してインターンを行う覚悟で応募を決めました。
応募の経緯は、中学生の頃から持っていた貧困問題に対する違和感に始まります。先進国で暮らす私たちがこの課題解決に関わるべきなのでは、と漠然と考えていた私は、学生として貧困問題解決に携わるべく、大学3年次に(特活)アフリカ日本協議会で約9ヶ月間政策提言のインターンシップを行いました。そこでNGOと政府、企業、そして国連との関わりを通して、特に、多くのリソースやノウハウを持つ民間企業による貧困問題解決へのコミットメントの必要性とその少なさを痛感しました。この経験から、次は国連機関と民間企業の連携を知り、そこに携わりたいと考えるようになりました。
応募に際しては、上智大学と国連開発計画が2014年の12月に提携を結んでいたため、(選考プロセスはUNDP内の一般規定には沿うものの)大学のグローバル教育センターを通して書類を送付しました。選考プロセスは<一次>書類選考(レジュメや志望動機等)、<二次>英文和訳試験(課題)、<三次>面接の三段階からなり、応募から採用決定までは1週間〜10日ほどかかりました。採用プロセスの期間は事務所のその時の事情等にもよるようで、私の採用時期は最短の速さだったようです。書類選考の際は、形式が決まっていない為、インターン、アルバイト、大学など様々な経験から言える強みをできるだけ多く明記し、それに基づいて「なぜUNDPなのか」という志望動機を論理的に説明するよう心掛けました。英文和訳課題は、実際の業務でも中心になることが予測されたため、即戦力になれることを示すよう与えられた時間で最大限ブラッシュアップすることに努めました。特に人物の肩書や事実関係など、課題の文書だけではわからない情報を自主的に調べることは不可欠でした。面接では、現在の自分の研究とは直結しないものの、これまでの自分の経験と、開発における企業連携という具体的な問題意識が志望動機につながっていることを簡潔に説明しました。自分が持っている様々なスキルも、遠慮なく積極的にアピールすることが大切だと思います。
■インターンシップの内容■
UNDP駐日代表事務所は、世界の開発課題解決に向けて政府、民間セクター、市民社会、教育・研究機関等との連携を行い、持続可能な人間開発を推進しています。駐日代表事務所の主な役割は、途上国でプロジェクトが実施できるよう、日本政府や国民からの理解を得て、予算を確保する「広報」と「資金調達」です。職員の方は、UNDPが世界約170か国で実施している取り組みを、広報出版物、ソーシャルメディア、メディア、イベント等を通じて、情報発信を少ない人数で行い、政府、市民社会、民間企業、アカデミアなどとの連携も強化しています。その広報部門業務の補佐を担当するインターンの業務内容は、大別して(1) 広報業務の補佐、(2) 民間連携業務の補佐の二つです。具体的には、広報の根幹となる日々のニュースクリッピングから、外部向けプレゼンテーション資料作成、翻訳業務、民間連携に関わる調査まで、状況によって異なります。
ここで求められるスキルは、個人的には3点あると考えます。まずは、的確な翻訳スキルです。翻訳する文書は、UNDPのニューヨーク本部が発表した英文のプレスリリース、出版物や、日本のメディアに掲載されたUNDP関連の記事など日英両方含まれ、いずれもUNDPの広報として重要なものです。そのため、翻訳では内容はもちろん、数値や固有名詞などに細心の注意が求められます。また、情報はなるべく早く広報されることが望ましいため、迅速な作業であることも必須です。そのため、日頃から密にコミュニケーションを取り不明点を明らかにしておくことも重要になります。
次に、細部までチェックを怠らない丁寧さです。これは、特に外部の方の目に触れる資料を作成する際に当てはまります。例えばプレゼンテーション資料なら、数ミリのズレの調整や書式の統一など、ごく細部の確認作業をぬかりなく行います。なぜなら、人に情報を伝える際は見た目の「印象」が最も大事だからです。このような広報一般において重要なことを学べるのも、このインターンの大きな収穫だといえます。一見地味に見えるこの作業は、最終的にプレゼンテーションを印象に残るものにし、成功させるカギになります。
最後に、状況に臨機応変に対応するスキルです。34代続いているインターンの業務は、勤務時期によって従事する業務は異なりますし、変化、進化もあります。来客やイベント等では臨機応変な対応が必要になります。ここで重要なのは、自分なりに機転を利かせて動くことと、その結果を後任に伝えることだと思います。同じことが起きたとき、何度も確認する手間を省くためです。このように、「新しい」業務に直面したときは、主体的に対処する必要があります。
以上に述べたように、基本的にUNDPインターンは事務作業が中心ですが、それは職員の方が前面に出て行う広報業務に直結します。つまり、見方を変えれば、インターンの業務はUNDP駐日代表事務所の広報業務の中核をなすともいえるのです。これを直に感じられることが、このインターンの一番の醍醐味だと思います。
(共にインターンをした仲間たちと)
■資金確保、生活、準備等■
まず、金銭面についてですが、他の多くの方も書かれている通り、国連インターンでは金銭の補助は基本ありません。かかる費用は主に交通費、昼食代ですが、私は大学3年生から続けているアルバイトでまかなっていました。昼食は、表参道周辺だと比較的高いので、真向いにある青山学院大学の学食や、近くにあるコンビニ等を利用していました。中にはお弁当を持ってくる方もいらっしゃいました。
次に、学校生活との両立についてですが、私はこれに苦戦しました。先に書きましたように、私はインターンと学業・就活を両立させていましたが、結果からいうと、3つの両立は私にとってほぼ不可能に近いものでした。なぜなら、結果的に、インターン期間中の就活はほぼすべて上手くいかなかったためです。他方、学業については、受講する授業を減らすなど工夫をしたため、両立することができていました。ただしこのことは、決してインターン中に就活をすると上手くいかない、ということを言っているのではありません。振り返って私が強く感じたことは、潔く1つを諦めるべきだった、ということです。それは私の場合、就活だったと思います。就活はインターン終了後でも行うことができます。私は少し焦ってしまっていたのかもしれません。しかしながら、1つ1つのパフォーマンスを高めるために、何かを諦める・後回しにするということは、スケジュール管理の上で大変重要であると気付きました。
■その後と将来の展望■
この4月から、民間企業にてコンサルタントとして勤務しています。NGO、国連機関でインターンを経験した次のステップとして、UNDPの主な事業相手である民間企業で働きたいと考えていたためです。これまでのインターンを通して、NGOは理念が共有されている一方、リソースや他のステークホルダーとの連携をさらに強める必要があること、国連機関は官僚組織ではあるが確立されたネットワーク、リソースを活かしさらに新しい領域にチャレンジできること、という両者の特徴を知りました。NGOと国連機関に共通する点は、利益を追い求めず、自分たちが共有する目的を達成するために奔走する点だと考えます。これらを踏まえ、リソースを多く持ちかつ理念が共有された民間企業において、社会課題の解決に関わりたいと考えています。コンサルタントという職業を選んだ理由は、多くの企業が持つ課題解決を通して、広い意味での社会課題解決に貢献できるのではないかと考えたためです。将来、開発分野で働くことも視野に入れていますが、実際はまだ何も決めていません。これまで持ってきた興味・軸を捨てずにいれば、自ずとなすべきことが見えてくると考えているためです。今は目の前の仕事をこなすことからはじめ、同時に開発問題の情報収集や学習を怠らずに精進したいと考えています。
■その感想、アドバイス等■
駐日代表事務所だからこそできる経験として、3点挙げられます。一つ目に、各国から来る幹部職員(総裁、局長、国連常駐調整官、所長等)とお会いする機会があります。要人来日時は、UNDP駐日代表事務所が窓口となり、日本でのプログラムを行うためです。肩書きから受ける堅そうな印象とは異なり気さくで、かつ学生と話すことに積極的な方が多いため、お会いする機会を存分に活かしてほしいと思います。二つ目に、学生では得難いビジネススキルが得られる点が挙げられます。インターン生には社会人経験者も多い為、求められるスキルは確実に学生以上のレベルだといえます。職員はインターン生も貴重な“戦力”としてみてくださり、人材として育てようと業務ガイダンス、フィードバックもOJTを通して行ってくれます。最後に、日本にいながら世界の国連機関の一員として働ける点です。私のように2年間で学校を卒業したいなど、様々な事情で海外インターンを諦めている方がいるかもしれません。しかしながら、UNDP駐日代表事務所でのインターンは、日本にいながら世界の国連の一員であることを実感できるという魅力があります。
今後UNDPでのインターンを志望される方へのアドバイスは、2点あります。まず、「なぜUNDPを志望するのか」を明確にしておくことです。数ある国連機関の中で、なぜ「日本にある」「国連開発計画」を志望するのか、ブレイクダウンしていけば、理由はそれぞれあると思います。それらを自分の経験やスキルに基づいて説明できれば、面接官も納得すると思います。次に、日頃から正確に翻訳(日英両方)できるよう訓練しておくことです。これは一朝一夕で鍛えられるものではありませんし、応募の時点で即戦力となることが求められます。これに応えるため、正確かつスピーディな翻訳スキルを日々磨くことは重要だと考えます。これらはあくまで個人的な見解ですが、経験した者としてこれからチャレンジする皆さんに参考になれば幸いです。私もUNDPでの素晴らしいインターンの経験をもとに、次のステップでたくさんチャレンジしていきたいと思います。