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第19回 2006年3月7日開催
於・UNDP


「政務局における紛争予防と平和構築の役割」
梅津 伸さん
国連政務局 政務官

 

質疑応答

 

■Q■ 昨今国連諸機関や部局の統廃合が議論され、国連システム一貫性に関するハイレベルパネルも設置された。DPAの観点から見て、DPKOとの統合は適切か、また可能か。あるべき姿は何か。

■A■ DPAとDPKOは、統合するのは可能であると思うし、しても良いとは思う。昔は、Special political departmentというのがあったがその後92年にDPAができた。両局の間に軋轢が生じるのは、似たような仕事をやっていて業務内容に重複があるから。前USG for Political Affairs (Kieran Prendergast) はDPAは頭脳、DPKOには day-to-day の細々したことをやらせておけば良いなどと公言していた。DPKOのoperation部やadministration部の業務内容は、個々のPKOの日々の活動の管理・運営なので、軍隊や文民警察のローテーションなどを考えたりしている。PKOを展開しているところだけを見ている。それがPKO局の限界の一つだ。例えば、DPKOは東ティモールだけ見ていて、インドネシア側や或いは東南アジア全体でで何が起きているかを、把握していないことがままある。そのような場合に、DPAが地域的視点から業務に参加することの付加価値は確実にある。その点から言うともしDPAとDPKOが統合したら、PKOという名称はなくならざるを得ないだろう。何故ならその新しい部局はPKOが展開している場だけではなくて、全世界をカバーしなければならないからだ。個人的には、これまでDPKOとの軋轢を感じたことはない。何故ならば担当してる案件に関して、DPAとDPKOの間にうまい具合に住みわけが出来ているからだ。例えば東ティモールに関して言えば、DPKOは日常的な管理業務、DPAはjustice & reconciliation を担当するというように役割が明確に分かれていた。キプロス紛争に関しても、DPKOが管理業務を管轄し、DPAが事務総長のgood offices mission についてリードを取るということで完全な業務分担ができている。ただ、両局間の情報の共有度合いについては、ミッションによってケースバイケースで一概には言えない。


■Q■ 平和構築委員会の設立後の組織形態についてどう考えるか。

■A■ 本来であれば、平和構築委員会サポート・オフィスが事務総長室に直結するのは不自然。何故ならば官房内にはfunctionalなオフィスが設立されるべきではないから普通に考えれば、平和構築のフォーカルポイントであるDPAの中にサポートオフィスが出来るべきだが、事務局上層部の協議の結果事務総長室に設置されることになったと聞いている。事務局改革や平和構築など、国連改革に関する情報はDPAにすらあまり入ってこず、加盟国側から教えてもらうことの方が多い。

 

■Q■ 政務局は小規模な組織とのことだが、個々人の仕事の負担が増えること以外に人員不足の影響はあるか。

■A■ 最も影響を受けるのはデスクオフィサーであり、例えばヨーロッパ局では何十という国を10人弱のオフィサーで分担している。近年は仕事の範囲が純粋に政治的な事項から更に広範囲な事項へと拡大しているが、一方でポストはほとんど増えていないため、結局は人員不足が仕事の内容に反映されることになりかねない。国連改革の中では、DPAには16ほどの新ポストが増設されると聞いているが、各 regional divisionにとってはせいぜい1人増える程度。JPOを受け入れたりもしているが、2年で任期が終わってしまう。上層部には人員増加を頼んでいるが、あまりまともに取り合ってくれない。結局は予算委員会に掛け合うのを避けているのだろうか。事務総長が活発になればなるほど、DPAは忙しくなるわけである。


■Q■ 実際に紛争が起きた場合、DPAの中でどのように有機的な対応を取っているのか。また、DPAで行ったpolitical analysisは国連内の他部局にどのようにフィードバックされ、共有され、生かされているのか。

■A■ 状況に応じて対応は異なるが、ありうる対応としては紛争勃発後、まずDPA・DPKO・OCHA・UNDPなどの主要な部局やAgencyが協議し事務総長に勧告したりする。必要とあらば事務総長声明を発表する。状況が許せば、現地国政府の合意を得たうえで現地にミッションを派遣したりすることもあるだろう。この場合、現地国政府との交渉は基本的にはDPAがリードする。当該国の合意を得ることは、国連の大原則。政治的交渉が進めば、それぞれの活動が始められる。大まかに言えばCrisisに関しての政治交渉であればDPA、人道援助であればOCHA、平和維持活動になるということであればDPKOがそれぞれ積極的に動くことになるが、最近は比較的臨機応変に対応していることが多い。担当案件によって対応が異なることもある。近年は、ブラヒミ・レポートを受けて、案件毎にタスクフォースを設置して一環した計画を立てるという方向性ができつつある。スーダンはその好例だった。イランに関してもタスクフォースのようなグループが設置されており、そこにはIAEAも含まれ、毎日協議していると聞いている。安保理付託はアメリカ等P5が決めることで、国連事務総長の役割は限られてはいるものの、DPAはいつ付託されてもいいように準備だけはしなければならない。現アナン事務総長は部局・機関間のコーディネーションに非常に配慮しており、ECPS、ECHA、UNDG等ハイレベル委員会を設置して国連内の風通しをよくしていこうと努力してきた。そうした努力の成果が出始めてきたのではないか。DPAのpolitical analysisも、そうしたハイレベル委員会の場で関係部局・機関に提供されることになる。他の部局に情報を提供しない人もいるかもしれないが、ガリ前事務総長の時代から比べたら、情報の共有は格段に改善されたのではないだろうか。

 

■Q■ DPKOが独自の情報に基づいて政務局のpolitical analysisと異なる主張をすることはあるのか。

■A■ 例えばキプロスに関していえば、両局間の情報共有は極めて良好。本部からフィールドに向けて公電を打つことがあるが、特にどちらか一方の局から送信するということは決めておらず、どちらの局から送信されたとしても、もう一方の局にコピーが入るようになっている。電報に限らず、電話や電子メールでの情報もほぼ共有されている。このため、両局間で分析結果が異なることはほとんどない。また先述した通り、役割分担が明確なので仕事はしやすい。good offices missionについてはDPAがリードをとってきたし、逆に、DPKOの領域であるといえるforce commander(Head of the Peace-keeping Force) などの人事に、DPA側から口を出すこはあまりない。


■Q■ 東ティモールのjusticeに関するレポートを政務局が作成するようになった経緯は何か。

■A■ Justiceに関する懸念はインドネシアでの裁判が行われることになった2000年頃からあった。そのとき既に、ラモス・ホルタ(現外相)とセルジオ・デ・メロ(当時、UNTAET事務総長特別代表)の間で、専門家の調査分析は必要なのではないかという話があり、それが発展してCommission of Experts (CoE)になったわけだ。独立後セルジオ氏が東ティモールを離れて、国連人権高等弁務官となった後も、彼のイニシアティブを受けて、2003年8月にDPA・PKO局・OHCHR・法務局の4人のUSGの連名で事務総長への提言を作成した。しかし、2003年8月19日にバグダッドの国連爆破テロが起き、セルジオ氏が亡くなり、話も頓挫してしまった。推進力となっていたセルジオ氏の亡き後11月頃までは一種の空白状態となり、ジュネーブの人権高等弁務官事務所と事務総長室側は双方とも相手が行動を起こすのを待っていた。そこで、DPAが双方に状況を説明したところ、当時の官房長の instructionによりDPAがこの案件を担当することになった。2004年末にはCoEのメンバーを公表する目前となっていたが、スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害が起き、公表を遅らせた。結局CoEが正式に任命されたのは2005年2月となってしまった。


■Q■ 安保理の中で意見が分裂した場合、DPAはどのようなアプローチを取るのか。

■A■ 火中の栗を拾わないという人もいるし、事務局が安保理案に刷り合わせすることもある。P5の意見にはやはり重みがある。図式をごく単純化して言うと、キプロスではアメリカ・イギリスがトルコ系キプロス人側とトルコ側、ロシア・中国がギリシャ系キプロス人側を支持し、フランスどちらかというとギリシャ系キプロス人側にやや近い立場にあった。このように、安保理常任理事国の中で意見が分裂すると、冷戦構造同様、膠着状態に陥ってしまい、そこに事務総長が入っていく余地はあまりない。国連の最大にして最後の主役はあくまでも加盟国である。事務局は、最終的には脇役の弱い立場に置かれることは多い。DPAが安保理にレポートを提出する際、レポートの内容が理事国の意向と乖離しないよう事前にすり合わせすることはままあることであるが、ブラヒミ・リポートにもあるように、事務局としての独立性を保つことも重要である。安保理に阿ったレポートを作成するというわけではない。例えば、現在執筆中の東ティモールとインドネシアの裁判に関する事務総長レポートについても、安保理内には、それぞれの国で異なる意向があるがあるため、いちいち理事国の意向を気にばかりしていてはレポートも書けない。レポートの性質や内容にもよるが、たとえ安保理の意に反していても、必要があれば事務局独自の意見を提出する覚悟は常になくてはならない。

 

担当:大槻、藤澤

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