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第19回
政務局における紛争予防
と平和構築の役割

梅津 伸 氏
国連政務局 政務官

第18回
紛争と開発
黒田 和秀 氏
世界銀行

第16回
日本外交における人権
鈴木 誉理子 氏
外務省
第15回
MDGsの現状と
UNDPの政策について

西本 昌二 氏
国連開発計画

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第20回 2006年3月31日開催
於・UNDP DC-1 19階 会議室

国際開発学会(JASID)NY支部/国連フォーラム 合同勉強会

「Leverage (梃子) としての援助:旧ソ連圏支援の現状と限界」
柳沢 香枝 氏
国連開発計画(UNDP)南南協力特別ユニット
シニアアドバイザー

 

質疑応答

 

■Q■ 日本のウズベキスタンに対するこれまでの援助の歴史を現在の方針を教えて下さい。

■A■  1993年に、ベラルーシとロシアを除く旧ソ連邦13カ国がOECD/DACの援助対象国となり、日本はその認定に大きく関わり、援助も始めた。それ以前の米ソ冷戦期の影響もあり、JICA内部に旧ソ連邦に対する知識は皆無に近かった。そこでまずは、地域合同で日本に研修生を招聘しマクロ経済、財政金融分野の研修を実施した。1999年にはJICA事務所がウズベキスタンに設立された。日本の援助全体では、円借款で空港の修復、火力発電所の復旧等を行った。保健セクターでは、母子病院の改善、保健・医療財政改革(経済改革に一番影響しない分野から)を支援した。旧社会主義国にビジネスや日本語、コンピュータ等を学べる日本センターを設置し、ウズベキスタンが一番成功しているが、そのスキルを使える仕事はなかなかない。民間セクターの発展無くして経済発展はあり得ないことから、今後は法律分野で民法等を改善して、いかに国家の介入を防ぐかも課題である。国別援助計画策定には、一昨年から現地ODAタスクと東京タスクとの合同で取り組んでいるが、経済改革等国家の根幹に触れる支援をどう扱うかという点やアンディジャン事件後の対応も不透明で、結論は出ていない模様。


■Q■ エリートグループと変革の意識のある農民層にどう援助していくのが良いと思うか。

■A■ 農民とは、日本型の個人農ではなく、主に農場主・農場経営者のことであり、どう経営するかを支援する。彼らを組織化し、流通や品質の向上を目指すのが良いと思われる。 また、国家が企業活動の阻害をしているので、制度面を変えていき、国家の介入を軽減する必要がある。現在の税制は、モスクワ中央政府からの財政支援の代替として、税収を上げることのみを目的に設計されている。しかし、税金は国が収奪するものではなく、企業の健全な成長を助長するものであるべきである。このため税務行政改善プログラムが近いうちに始まる予定である。


■Q■ ソ連が崩壊する以前は社会指標は比較的良かったと言われるが、本当にそうだったのか。その変化は?実際この指標はどうなっていると思われるか。

■A■  教育は、以前は確かに良かった。現在でも、大学の教師の質に比べ、学生は優秀である。1996年に政府が基金を作り、優秀な人材を留学させていた。但し教育の中身はソ連時代のままであり、変革が必要。他方保健指標には問題がある。乳児死亡率は、旧ソ連の定義に基づき生後7日以内に死亡した乳児を除外して計算されており、ユニセフが使っているものと全く違う。現在ウズベキスタン政府は16人/千人と発表しているがユニセフ推計では56人/千人前後とされている。旧ソ連の指標は社会主義の勝利を示すために作られたもので、その変更にはナショナルプライドが邪魔をしている。しかし一旦このことを認めればドナーも援助がしやすくなる。例えば蘇生装置があれば救える命も多数あると言われている。


■Q■ ウズベキスタン政府としては、政治的変革も経済的変革も歓迎していない。しかし、欧米の援助は体制も含めて変える援助をしようとして失敗した。日本が果たしてそのような国に援助する意味はあるのか。自分がミャンマーにいた際の経験では、彼らは政治的変革をする気はなかったが、経済的変革をしようとする兆しはあった。官僚が真面目な良い人たちだったので、この人たちのために何かをしてあげたいという気持ちが沸いたが、ウズベキスタンの場合、そういう気持ちにさせる人材はいるか。

■A■ タジキスタンがPRSPを受け入れてドナーの言うような経済運営をし、協調しているように見えるのは、ドナーに付いて行く他に選択肢がないからであろう。キルギスが世界貿易機関(WTO)に加盟した結果、国内産業の育成に苦慮しているように、ドナーと協調して来たことが果たして良いことなのか否かはまだ分からない。ドナーにとって優等生であることと、国の発展との関係はどうなのか疑問である。日本は体制を変えようせず、細々と安定的に援助を続けている。日本の経済学者に共通しているのは、Gradualismの方がBig Bangより良いという思想である。国と民間セクターの関係について言えば、日本は、国が中小企業をコントロールしているのではなく、中小企業をサポートしている、というスタンスである。その逆を行くウズベキスタンに、日本のこういうやり方を伝えていけるのも日本の特徴ではないだろうか。変革を望んでいない国に援助をする必要があるのか疑問に思う時もあるが、できれば少しずつ徐々に変革に移行するのを助ける形の援助に意味はあると考える。

若者は優秀で物事を良く分かっているが、それを発揮する場がない。変革を望むそういう若い世代に支援していくところに、やりがいが見つけられる。そして、それを徐々に改革へ繋げるためにはやはり援助が必要。また、社会は急激に移行するものではない。


■Q■ インターネットが普及するとウズベキスタンの状況は変わると思うか。

■A■ 現在、ロシアが作る反ウズベキスタンサイトにはアクセスできない等、メディアのコントロールは厳しい。アンディジャン事件の時は、NTV(ロシア)、BBCもCNNも映らなくなってしまった。インターネットが普及しても、もともと民主主義の伝統がないので、下から革命を起こしていくのは難しいのではないか。

■会場からのコメント■ 北朝鮮、ミャンマー等の国にどう支援していくのかというのは、非常に難しい課題である。いくつかのアフリカの国ように、ドナー主導で骨抜きになってしまってもいけない。自分たちでやって行ける国をどう支援し、どういうアプローチを取るのかは、引き続き大きな課題である。


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以上

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担当:古澤


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