石井香織さん
UNDPアフリカ局・TICADプログラム調整官兼部長代行
2008年9月11日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会
質疑応答
■Q■ アフリカ開発の最大のチャレンジは?
■A■ 個人的な見解だが、「実務能力の低さ」だと思う。アフリカの開発援助へのさらなる資金投入が提唱されているが、いくら資金があったとしてもなかなか思うようにプロジェクトが実施されないことが多い。また、人材育成に力を入れると才能のある人材が国外に流れてしまう傾向がある。政府の汚職・腐敗防止システムなどの導入を試みても、アフリカ諸国の首脳級の政治的な意志とコミットメントが得られない限りうまくいかない。この点、アフリカでは近年政治家の世代交代の転換期にさしかかっているので、今後は、国際基準で政治を引っ張っていける透明性のある指導力の下、トップダウンで良い方向に国造りが進むのではないかと期待する。
■Q■ フォローアップ・メカニズムとはどのようなものですか?
■A■ まず、事務局となる外務省が定期的に情報提供を行う。さらに、共催者やAU(アフリカ連合)、アフリカ諸国、ドナー諸国などのTICAD主要関係者が、「横浜行動計画」に沿って活動が実施されているかどうか年に1回活動報告書として取りまとめる。同報告書は閣僚級会合で吟味され、要すれば実施加速化の提言を取りまとめることもフォローアップの仕組みとして予定されている。
■Q■ 個々のプロジェクトを分析し、成功と失敗要因を抽出した“Lessons Learned”を作成し、学者や学生なども含めた多くの人と共有することが大切だと思うが、そういったプランはあるのか?
■A■ UNDPはモニタリングと評価に力を入れており、“成功と失敗要因”を日々分析している。TICADの性格上、政治的なハイレベルの会合でお墨付きを得ることも大切だが、“成功と失敗要因”を専門家と深く掘り下げることも有益だと思われるので、今後ぜひ検討して行きたい。
■Q■ UNDPはどのようにして日本企業のアフリカへの投資促進にかかわっているのか?
■A■ アジアとアフリカの企業家間のパートナーシップを構築し、両地域の貿易と投資促進に貢献することを目的とした、アフリカ・アジア・ビジネスフォーラム(AABF)を過去4回開催した。日本企業は2007年の第4回目に初めて参加したが、現実のところ、新たな日本企業の投資誘致はとても難しい。その中で、日本政府が現在派遣しているハイレベルの貿易投資ミッションは画期的であり、TICAD IVの成果としてJBICの投資基金も設立されることになっているので、今後に期待したい。なお、UNDPもGrowing Sustainable Business (GSB)の主導の下、貧困削減への寄与が見込まれる日本企業のアフリカ進出を支援するプログラムを立ち上げている。またAABF Vに向けて更なる日本企業の参加を働きかける予定。
■Q■ 中国からはアフリカへ中小企業がたくさん進出しているが、日本政府はODAを倍増し、日本企業の投資倍増を目標としたところで、アフリカへのインパクトはあるのか?
■A■ 近年、中国は国を挙げてアフリカに投資をしており、インフラやエネルギー・海洋資源の確保など、多岐にわたる事業を展開している。しかし、アフリカが日本の投資に求めているのは、先端技術、環境にやさしい技術、雇用条件を守る倫理観のある日本企業の進出など、日本にしかできない投資の仕方ではないか。
■Q■ 三菱商事がモザンビークのモザール・アルミ精錬工場でコミュニティ開発を行っているらしいが、国連は関係しているか?
■A■ 三菱商事が独自で「企業の社会的貢献」として実施しているのだと思う。コミュニティを巻き込む大規模な投資を行う場合、現地の法律にもとづき、地域住民が裨益する施設を提供しければならないことが多いので、UNDPは直接関わってはいない。だが、要請があった場合は、前述したGSBなどで対応することは可能であろう。
議事録担当:芳野
ウェブ掲載:藤田