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第49回
TICAD IV後の展望
石井 香織さん 
UNDPアフリカ局
TICADプログラム調整官兼部長代行

第48回
平和構築における
人材育成の課題と展望

篠田 英朗さん 
広島大学平和科学研究センター准教授
広島平和構築人材育成センター事務局長

第47回
米国の気候変動政策と
ポスト京都議定書の国際交渉

三又 裕生さん(JETROニューヨークセンター)
小紫 雅史さん(在米日本大使館)

第46回
第52回女性の地位委員会と
日本女性監視機構(JAWW)報告

原 ひろ子さん 
JAWW代表、城西国際大学客員教授
お茶の水女子大学名誉教授
第45回
日本のアフリカ開発へ向けた取り組み
と国連外交

森 美樹夫さん
国連代表部経済部公使
第44回
「日本とアジア~世界の平和構築に
如何に貢献すべきか
−現場での取組、
知的貢献、そして人材育成−」

紀谷 昌彦さん
外務省総合外交政策局国際平和協力室長

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医療援助の現場における最近の課題 及び 国際社会における女性NGOの視点

黒普@伸子さん
第63回国連総会日本政府代表団顧問
(日本BPW連合会会長、国境なき医師団外科医)

2008年11月6日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会

質疑応答


■Q■ 緊急医療援助現場におけるコーディネートについて、特にNGOと国連との連携について成功例、失敗例は?

■A■ フィールドで国連がいるという実感がないため、成功例、失敗例を考えるのは難しいが、MSFが赴く地域は、子供への暴力や水の配給など問題が多いため、UNICEF、WFPと共に働くことはしばしばある。


■Q■ 緊急援助におけるクラスターアプローチ*について、現場で機能していたか?

?(*クラスターアプローチ:人道・緊急支援などにおいて、各機関の役割をセクターごとに明確化することで、アカウンタビリティーと透明性を高め、より効果的な支援を目指そうとするやり方)

■A■ 答えるのが難しい質問だが、例えばイラクではNGOが山のように集まっていたので、OCHA(国連人道問題調整局)が常にコーディネートを行っていた。栄養、トランスポーテーション、ロジスティックスなどに分かれていて、その都度必要なスタッフが参加するという形で活用していた。


■Q■ NGOからみて国連に期待する役割とは?

■A■ 国連に期待することを考えるのは難しいが、紛争現場等での現地セキュリティーがいまNGOでは重大な問題なので、国連の責任ではないのかもしれないが、そのような事項を取り扱うオフィスを国連内に設立できないか。国連本部は権力者の集まりなので多大な期待はしていないが、関係諸機関と各国にいる調整官には期待をしている。時折各政府から、プロジェクトやリポートにおいてNGOからの情報を使用したことで不満があがることがあるが、国連は自信を持ってNGOと働いていることを主張してほしい。NGOがもっと信頼されれば、困っている人々にもっと力が届くと思う。


■Q■ どのような基準、意思決定で緊急撤退等の決断をおこなうのか?

■A■ ケースバイケースである。基本的にはフィールドが判断をおこなうが、仕組みとしてはフィールド、オペレーションデスク、ヘッドクォーターの協議となっている。往々にしてヘッドクォーターが撤退を決め、フィールドがそれに反対するということが多い。また、MSFは紛争状態の中でどの勢力に対しても中立を信条としている為、一般市民のみならず兵士も助ける。しかしこの考え方が現地で信用されなかったり、またこの中立関係を利用されることもある。地元有力者への根回しなどがミッション遂行には重要であり、これが上手くいかない場合ミッションを行わないこともある。場合によってはテストで数人派遣して様子をみてから本ミッションを始めることもある。なお最近は地元の国連関係機関で勤務経験のある現地の人を雇うことが増えていて、そういった人からの情報をもとに動きを決めたり、判断を下すことも増えてきている。


■Q■ 現地スタッフのキャパシティビルディングについて。また地元政府へのキャパシティービルディングは行っているのか?

■A■ 場所によって様々である。スリランカでは現地外科医がいなかったが麻酔医はいたため、手術室の看護師に対する指導を重点的に行った。ナイジェリアでは、毎週火曜の7時半から勉強会を開催した。インドネシアのアチェでは、賃金が少ないため看護婦が治療の際患者にお金を要求する現実があったので、給料をあげるというインセンティブを出したところ、外科病棟勤務希望者が増えたということもあった。様々な所属の人が混じっている場合、MSFが企画してそれぞれに対してトレーニングを行うこともあれば、現地スタッフ達が自ら計画しMSFがサポートに回る場合もある。MSFが雇用しているスタッフだけのところの方がやり易いことは確かだが、基本的に敵を作らないように所属がMSFであるかないかに関わらず、関係する人々皆にトレーニグを行うようにしている。


■Q■ ポストコンフリクトでのミッションで上手く行った例及び支援の中で足りないと感じたことは何か?

■A■ ポストコンフリクトの状態によって、栄養が足りないのか、感染症が多いのが、事故が多いのか、医師が足りないのか、など状況は変ってくる。プランをたてどこまで資金を使うかはケースバイケースだ。現在はICRC(赤十字国際委員会)のように、ポストコンフリクト地域に長くいる団体が多いので、ハンドオーバーしている傾向にある。


■Q■ 今後MSF組織として強化したいと考えている分野及び方向性はなにか? またそれに関する黒崎先生の個人的な意見について。

■A■ 24時間以内に必要なものをもっていけるというMSFの強みを生かし、自然災害時におけるMSFの活躍を促進できないかと思っている。またさらにMSFは現在手術室キットを持ってフレキシブルに対応できるようになったが、政府からの許可がなかなか下りず対応しきれなかった例などがあるので、その点を改善すべきだ。(ミャンマーでは政府の許可がなかなか下りなかったため対応しきれず、患者が感染症などで死亡することが多かった。)なお、発生する避難民へ対応できる人材確保及び栄養の確保も重要だ。

また、アドボカシー、すなわち人に知らせることも重視している活動の一つだが、レポートの提出により活動国から追い出されたり、捕まったりする原因になっているのも事実なので対応が必要だ。(過去にはスーダンでレイプ被害者に関するレポートを報じたスタッフがつかまった。)

さらに、結核への対応及び結核とエイズ併発への対応・研究も必要だ。最近は薬が効かない菌(多剤耐性菌)が増えている。しかしながら、薬を開発する先進国の製薬会社は、先進国で高く売れる薬しか作らないため、感染症などの熱帯での病気に対する新薬が1年で一つ、二つか出ない。これは国連期待する役割のひとつだが、率先してこのような途上国で需要がある薬を開発・製造できるようにしてほしい。


聴衆からのコメント

淡々と語られていたが、自分の生命が危険にさらされる中で、人の命を助ける活動に敬意を表したい。また、その経験を政策レベルへと上げている点が素晴らしい。
紛争地での援助では、病院内での安全、そしてどこまで行ってどこで撤退するかという判断が大きな課題。ユニセフやWFPも現地へアクセスできず、NGOからの情報に頼っている状態である。しかしながら、国連やバイラテラルドナーにしかできないことも同時にあると思う。達成したい目標という点では、みな一致するものがあるのではないか。関係者が構造的な障壁をのり越え協力することが将来必要となるのではないだろうか。

2002年くらいから、人間の安全保障ではFistulaへの支援を行っている。古いプロジェクトだが、男性の行動を変えるという視点は入っていなかった。これは単に保健の問題だけではない。今いる患者を治しても、社会全体を変えないかぎり、根本的な解決になはならない。よって、男性側がかわらなければ、社会は変わらないと思う。自分を含め、常に考えるべき問題であると思う。

黒崎先生のコメント

先進国では、内視鏡手術の普及により、将来的に開腹手術ができる医師が減ってくるのではないかと危惧している。医師の目から見た医療援助という観点において、これからの日本で外科手術、開腹手術、帝王切開など外科医として何でもオールラウンドに一通り出来る人物をどうやって育てられるかが課題だと考えている。こういった後継者の育成も、自分の課題だと思っている。
また、DNDI(ニグレクトディズイーズ)などへの関心を高めることにも力を入れたいと思っている。
最後に、(株)CHINTAIがCSRとして行っているチンタイクリック募金*が先週2千万円を超えたので、皆さんもどうぞ興味があったらクリックしてみて下さい!(*株式会社CHINTAIが、クリック1回につき1円をMSFに寄付する取り組み)

以上

 




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議事録担当:鈴木(三)
ウェブ掲載:菅野

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