勉強会・キャリアパネル
第2部 キャリアパネル
2010年4月24日開催
於: アメリカン大学 Kogod School of Business、 KBS 118号室
国連フォーラム・DC開発フォーラム・アメリカン大学座論共催
パネリスト(着席順):
北田祐子氏(国連)
田瀬和夫氏(国連)
斉藤恵理子氏(世銀)
甲賀大吾氏(世銀)
ファシリテーター:
菅野弘氏(世銀)
1)自己紹介と仕事紹介
氏名:北田祐子(きただゆうこ)氏
所属:国連事務局 経済社会局 ユース・プログラム(UN DESA, UN Programme on Youth)
役職:JPO、Associate Social Affairs Officer
略歴:
横浜市出身。
ハワイ大学およびイースト・ウエスト・センター(東南アジア研究修士)、
オーストラリア国立大学(人類学博士)。博士課程在学中に国連競争試験合格。
フィリピン・マニラのスラムにて児童労働に関する調査研究およびNGOボランティア。日本でNGO、UNFPA、UNHCRなどに勤務。
フランスで語学留学および有機農場ボランティア。
2010年1月よりJPOとしてUN DESAのUN Programme on Youthに勤務。
2010年6月よりESCAP東・北東アジア地域事務所(在韓国)に勤務予定。
氏名:田瀬和夫(たせかずお)氏
所属:国連事務局 人道問題調整部
役職:人間の安全保障ユニット課長
略歴:
1967年生まれ。東京大学工学部卒、同経済学部中退、ニューヨーク大学法学院客員研究員。1991年度外務公務員I種試験合格、92年外務省に入省し、国連政策課(92年〜93年)、人権難民課(95年〜97年)、国際報道課(97年〜99年)、アフリカ二課(99年〜2000年)、国連行政課(2000年〜2001年)、国連日本政府代表部一等書記官を歴任。2001年より2年間は、緒方貞子氏の補佐官として「人間の安全保障委員会」事務局勤務。2004年9月より国際連合事務局・人道調整部・人間の安全保障ユニットに出向。2005年11月外務省を退職、同月より人間の安全保障ユニット課長。外務省での専門語学は英語、河野洋平外務大臣、田中真紀子外務大臣等の通訳を務めた。
氏名:斉藤恵理子(さいとうえりこ)氏
所属:世界銀行 アフリカ局保健セクター
役職:オペレーション・オフィサー
略歴:
日本赤十字看護大学を卒業。
看護師として勤務する傍ら、東大国際保健学に進学しその後米国テューレーン大学大学院公衆衛生学部で主にアフリカのエイズの研究をする。
2000−2002年UNAIDSのジュネーヴ本部とバンコクの東南アジア地域事務所にJPOとして勤務。2003年より米国フィラデルフィア・エイズ協会でHIVカウンセラーおよびエデュケーターとして、地域に根ざした活動をする。
2008年より世銀本部のアフリカ局でブルンジ、レソトなどの保健プロジェクトに携わっている。2児(2歳と5歳)の母。
氏名:甲賀大吾(こうがだいご)氏
所属:世界銀行 環境局カーボンファイナンス・ユニット
役職:カーボンファイナンス・スペシャリスト
略歴:
慶應義塾大学総合政策学部卒(国際政策コース)。米国ミシガン大学自然資源・環境スクール修士課程修了(自然資源・環境政策学)。1999年、国際協力事業団(現、国際協力機構、JICA)に入団。中国国際センター(広島)、森林・自然環境協力部(当時)、タンザニア事務所勤務を経て、2008年に世界銀行にヤング・プロフェッショナルとして採用。地球環境ファシリティ(GEF)事務局を経て、現在カーボンファイナンス・ユニットにてクリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトなどを担当。
2)国際機関で働くということ:国際機関を志した理由や経緯、国際機関で働く魅力
<斉藤さん>
ワシントンDCに夫の仕事の都合で引っ越してきた際、アジア人が集まるネットワークイベントがあり、丁度仕事を探し始めたところだったので参加しました。そこで知り合った世銀の方に翌日CVを送ったところ、すぐ面接に呼ばれ、話が進みました。日本の信託基金(トラストファンド)を使ったプロジェクトですぐに働ける日本人職員を必要としていたのです。ジュネーブのUNAIDSで働いていた経験があり、拙いながらもフランス語が話せたことが面接で好印象を与えたと思います。
私が感じる国際機関で働く魅力は「愛は世界を救う」の気持ちだと思います。国際機関で働く、多国籍、多文化の大勢の職員が根底に共通して持っているものは「愛」なのではないでしょうか。その気持ちを是非持って国際機関に飛び込んできてもらいたいと思います。
<甲賀さん>
国際機関を志したのは、1992年にリオで行われた地球サミットで提唱された「持続的開発」のコンセプトに共感し、途上国の環境保全・貧困削減に関わりたいと思うようになったためです。大学卒業後はJICAへ就職し、二国間援助の枠組みの中で開発に携わる経験をしました。
一方で、一度組織の外に出て、自分自身を成長させ、より大きなインパクトを与えることができるような人材になりたいと考え、世銀にもチャレンジしました。Young Professionals Program (YP)を通じて世銀に就職したのですが、YPは就業時点で32歳以下という制限があるので、応募を考えている人は注意をしてください。YPは世銀内でのいわば幹部養成プログラムで、2年間で世銀内の2部署を経験します。同期が40名ぐらいいますが、3分の2がPhD保有者ないし近く取得を予定しているのが現状です。
<北田さん>
国際機関を目指した理由は、様々な国籍の職員が協力して世界の課題に取り組むという点に惹かれたからです。JPOに応募することが、多くの日本人にとってエントリーポイントとして有効だと思います。JPO受験の際は、面接の時に、任期が終了する2年後の自分のキャリアプラン(=国連に残って働きたいという意思)をアピールするのが大切です。
国連競争試験については、過去の問題を参照して対策をする必要がありますが、競争試験に合格したからといって、すぐにポストのオファーが来る人のほうが少ないのが実情です。また、必ずプレースメントされるとも限りません。わたしは2005年に競争試験に合格しましたが、PhD卒業後は日本で短期の仕事を転々とし、ようやく合格したJPOを通じて国連に入ることになりました。競争試験に受かっても、次は1つのポストをめぐり合格者の間で更なる面接試験があることが多いです。採用は自分でコントロールできるものではなく、タイミングによるところが大きいということを覚えておいてください。
就職全般に関して、国際機関だけに絞らず、自分の興味を掘り下げて、自分自身のそれぞれのやり方で開発に携わってほしいと思います。
<田瀬さん>
試験・面接を通じて職員になるには、まず採用プロセスをよく知ることが重要です。面接の1問目は、「このポストになぜあなたが最適か説明してください」と必ず聞かれます。まず、カバーレターにその内容がしっかりと書かれていなければなりません。履歴書に、”Planned”や”Led”という自分の判断やイニシアティブが必要となる経験をしてきたことをアピールする動詞を入れることも重要です。採用する側としては、必ず応募者すべての書類を見て判断するので、応募書類には細心の注意を払う必要があります。Competency-based interview(自分の性格や特徴などを過去の具体例を挙げて説明する面接)は、自らの過去の経験を整理し、準備をしっかりしておくことが必要です。
インターン等を通じ、組織内に入り込むことは極めて有効だと思います。入り込んだら実力を証明し、信頼を得ることが大事です。CVは嫌がられても、定期的に送っておくことで相手にアピールができます。また同じ相手に再度CVを送る際には、自分の成長をアピールしなければ意味がないということを覚えておいてください。
必要な素養は人間力に尽きると思います。異なるバックグラウンド持つ人材の集まりなので、会議などでも、参加者のさまざまな意見から最大公約数を見つけ、発言できる人はとても重宝されます。言葉の細かいニュアンスを使いこなし、最大公約数となる意見を発言し、さらに文章に落とせる力は重要です。
3)役立つスキルやlessons learned に関して:
日本人として国際機関で苦労したこと、生き残るために必要なスキル、大学または大学院時代にやっておいたほうがいいこと、国際機関で業務を進める上で役立つスキルについて
<斉藤さん>
JPOとして国連に勤務経験があったこと、仕事で必要だったフランス語が少しでもできたことに加え、日本人であること、女性であることは採用の際に、有利に働いたと思います。面接の際は、聞かれたことだけに簡潔に答えるということも重要です。また、面接をする方も実は話したいことがたくさんあるので、面接の最後に「質問はありますか?」と聞かれたら、必ず質問して、自分が熱心であること、また相手のことも聞きたいことをアピールしてください。仕事をする際には、建設的な批判が出来ることは重要なスキルですので、積極的に意見を言う訓練をしておくことも重要です。アルバイトやボランティアも運動も、すべての経験が財産になりますので、学生時代は、やりたいことに全力で取り組み、いろいろな経験をして、豊かな人間になってください。
<甲賀さん>
帰国子女ではない日本人なので、語学力では正直今でも苦労しています。話す力は日々の業務の中で上達しますが、書く力は意識しなければなかなか上達しないので、学生時代に修士論文を書く機会があれば必ず書いた方が良いと思います。CVにPublicationとして書けるようにするとさらによいです。書く力を学生時代から積極的に磨いていくことが大切だと思います。
また、PhDを目指すということを早い段階で考えておくのはいいことだと思います。世銀のマネジメントはPhD保有者を重宝する傾向があります。YPの面接では、「世銀であなたが30年間勤めた後、何を成し遂げたと言えるようになりたいですか?」という質問がありました。開発の分野で自分が何を成し遂げたいのかということを長期的な視点で突き詰めることもとても重要です。
<北田さん>
学生時代には、Assertiveness Training(「爽やかな主張」の練習)を今からやっておくと良いと思います。また、リーダーシップ、マネジメントの考え方は、自分が「駆け出し」であっても仕事上役に立つことが多いです。今は必要ではないかも知れませんが、5年後の自分に投資するという意味でも、学生時代から始めると良いと思います。また学生時代はAcademic Freedomを謳歌してほしいですね。社会人として組織に属してしまうと、いろいろな制限が発生してしまうので、学生の間に学術を極めることは、職場での能力としても役に立つはずです。
<田瀬さん>
国連の中にいる限りでは、国連憲章が述べている精神に共感している人が集まっていると思います。長期的に国際機関で何を成し遂げたいかという使命感を突き詰めることは重要です。
質疑応答
■Q■ YPの制度が改正され、期間が限られない契約ではなく、5年間に限られると聞きました。この場合、YP期間中に職を離れてPhDをとることが難しくなってしまうと思われますが、その影響はあると思いますか。
■A■年齢制限に達しないのであれば、YPに応募する前にPhDを取得することをお勧めします。
■Q■ 現場からの距離間、大きな組織であることによるジレンマを感じたことはありますか。
■A-1■本部は現場をサポートするという理念の下の業務をしているので、精神的にジレンマを感じたことはありませんが、送金等現場ではすぐに必要なものが、本部の内部上のプロセスにより、すぐに送れないことがあったりと、温度差の違いは感じることはあります。
■A-2■ある地域社会でどれだけいい仕事がなされていたとしても、国レベルや国際レベルでの変革や後押しが伴わないと、人々の生活がなかなか良くならないという課題が残ります。国際的な政策レベルで議論できるのは本部の機能であり、とても重要だと感じています。
■Q■民間セクター等を含め、一度外の組織に出て、再度国際機関へ戻ってくるということに関してはどれだけ柔軟だと思いますか。
■A■ 在籍期間中にどれだけの信頼を築くかということで大きく変わってくると思います。組織を移動する人は多くいるので、比較的柔軟と言えるのではないでしょうか。
議事録担当:菅野(弘)
ウェブ掲載:陳穎