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ワークショップで学ぶ国連の基礎知識

第80回 国連フォーラム勉強会

日時:2014年2月28日(金) 19時00分〜21時00分
場所:コロンビア大学ティーチャーズカレッジ会議室

 




■1■ はじめに
■2■ 各グループの発表、田瀬氏のコメント
■3■ まとめ
■4■ 関連サイト


■1■ はじめに

国連フォーラムでは、今年初めてとなる勉強会を2014年2月28日(金)ニューヨークで開催しました。「ワークショップで学ぶ国連の基礎知識」をテーマに、国連の基本的な知識について8つの小グループで約40分間調査を行い、その後各グループ5分間発表・議論し、国連に関する見識を深めました。本勉強会には国連関係者、企業や民間公益組織に勤める社会人、大学教授、学生を含む40名が参加しました。各班の発表後は、国際連合事務局人道調整部人間の安全保障担当顧問で国連フォーラムのコーディネーターでもある田瀬和夫氏のコメントを頂きました。

8つのテーマは下記の通り;
1.「国連の基本のキ(国連ができることとできないこと等)」
2. 「ポストミレニアム開発目標に新しい指標を入れるとしたら何を入れますか?またその理由はなぜですか?」
3. 「世界の飢餓に苦しむ人口を半減させるためには、どうしたらいいですか?」
4. 「グローバルな規模で災害に強い社会を作るにはどうしたらいいでしょうか?」
5. 「加盟国の雑学を語ってください(加盟国の国旗、国連への贈り物、国連本部の場所についてなど)」
6. 「国連と民間企業・組織の連携をもっとうまくするためにはどうしたらいいですか?」
7. 「日本と国連の関わりについて語ってください。(日本が安全保障理事会の常任理事国になっていない理由、日本が国際社会でリーダーシップをとるべき分野・課題など)」
8. 「国連職員になるためのプロセス・国連職員として成功するためにはどのようなことが必要でしょう?」


■2■ 各グループの発表、田瀬氏のコメント

1.「国連の基本のキ(国連ができることとできないこと等)」

国連(関連サイト1関連サイト2)ができること

  • 平和・経済活動・人権、人道支援
  • 個人、企業ではなく、国を対象

  • 国連ができないこと

  • 国家主権に関することについて介入(国連で勝手に国を決められない。)
  • 国連非加盟国の情報収集(できない訳ではないが、加盟国ではないので難しい)
  • 公平性のコントロール(例えば、拒否権を持っている安全保障理事会の常任理事国、そして資金力、アピールのうまい国の主張が通りやすい傾向が伺える)一つの解決策としては、拒否権を弱める。
  • 加盟国の最終政策決定権限(加盟国の尊重。)

  • 田瀬氏のコメント:国連の役目は、国際社会のルール作りで、できないことは、主権を侵害したり越えたりするようなことである。ただ、主権の絶対性は薄れてきており、主権の自体の内容について再検討がされてきている。今後グローバル化の進む中で、国連が主権を超えて何かできるのか、主権国家ができないことを補完していけるようになるのだろうかということは課題となるだろう。


    2.「ポストミレニアム開発目標(関連サイト3関連サイト4)に新しい指標を入れるとしたら何を入れますか?またその理由はなぜですか?」

  • 紛争地域の子ども達を支えるメンタルケアに関する指標。
  • 経済に関する指標。途上国ビジネスのプロセスでは、外資企業による搾取が問題となっており、途上国の経済レベルはいまだに低い国が多い。外資のみでなく、途上国国内の企業が発展できるような地盤を作っていくのが重要である。
  • 飲料水、衛生施設等含む防災に関する指標。今後、自然災害に耐えられるインフラ作り、そして環境の持続可能性が大事になってくるだろう。

  • 田瀬氏のコメント:発表者が挙げたインフラ、投資、経済格差、防災等は、2015年以降、大きな問題となるだろう。メンタルケアや尊厳(Dignity)等は、計るのが難しいという点からミレニアム開発目標に入っていないとも言えるが、今後、このような数量化が難しいものもなんらかの形で指標化する努力が必要だと言える。 


    3.「世界の飢餓に苦しむ人口を半減させるためには、どうしたらいいですか?」

  • 現在、世界の約10億人が飢餓に苦しんでおり、1分間で約17人が飢餓が原因で死亡している。死亡原因の第一位である飢餓を半減させるには、食糧の配分、企業の社会的責任(CSR)活動の活発化と価値の向上、そして作物の品種改良が鍵となるだろう。
  • 世界の人口に行き渡る量の食糧はあるが、食糧の配分に問題があるため飢餓が起きている。どのようにうまく食糧の配分ができるか、流通システムを見直す必要がある。
  • 民間企業によるCSR活動(関連サイト5)は、ビジネスを追求するという性質より、利益の少ない貧困地域への民間企業の投資が多く行われているとはいえない。一つの解決策としては、途上国の貧困、飢餓を削減するために鍵となる民間企業におけるCSR活動の価値の向上、また、一人ひとりの意識の改変が重要となるだろう。
  • 食糧を増やすためには、作物栽培に適した耕地環境の整備、そして作物の品種改良が必要である。アフリカでは近年、日本も支援しているネリカ米(New Rice For Africa)(関連サイト6関連サイト7)が注目されている。

  • 田瀬氏のコメント:発表者が述べたように、世界では飢餓がある一方、一部では食べ残しが多い(30%)のが現状である。食糧問題は、政治、人権、統治、格差拡大の問題が密接に関わっている。
    今後、アフリカの発展には、農業が鍵となるだろう。途上国への投資に関しても、アフリカの農業投資は避けては通れない。急増する中国のアフリカ投資は、今のうちにインフラを確保し、農業が拡大し、食糧マーケット膨れ上がり、自国に利益が出るのを待っているとも考えられる。一方で、リスクも大きい。例えば、作物を植え付ける土地は広大であるが、土地の所有権が認められないという問題や、インフラが整備されていないという問題がある。土地の改革が必要である。


    4.「グローバルな規模で災害に強い社会を作るにはどうしたらいいでしょうか?」

  • 自然災害に対する防災、復興には、国内外の支援が欠かせない。 国内では、専門家の知識をどう広げるか等、パブリックコミュニケーションが大事となる。また、防災に関する一人ひとりの意識を高めるためにも、教育は重要である。防災対策について、例えば、おしゃれな防災キットや、アプリを使う等クリエイティブなアイディアを取り入れ、楽しみながら学ぶと、関心向上に繋がるだろう。災害大国である日本が様々な知識、アイディアを今後発信していけるのではないか。

  • 田瀬氏のコメント:1994年、2005年の横浜、神戸に引き続き、仙台で、第三回国際防災会議(関連サイト8)が開催される。2005年から2015年は、「兵庫行動枠組」が策定された。国連内での防災分野は、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)がリードしている。厳しい多くの災害経験を持つ日本は、防災・減災の分野において、世界をリードしてきており、発表グループが述べたように、地震速報、クリエイティブなツールで、今後もリーダーシップが発揮できると期待する。
    専門用語では、一般的に使用されている自然災害を二つの用語、natural hazardsとnatural disastersで使い分ける。Natural hazardsとは、地震や火山活動、台風などの自然現象のことをいい、natural disastersは、natural hazardsによって受ける被害や影響のことを指す。従って、同じ規模のNatural hazardsであっても、社会の対応力によって、そのdisasterの被害の規模は異なることになり、natural disasterは人為的(man-made)であるとも言える。従って、災害は、対応する社会の能力によるので、予防と、災害発生後のダメージに対しての回復力・底力(Resilience)によって被害を減らすことが出来ると言える。


    5.「加盟国の雑学を語ってください(加盟国の国旗、国連への贈り物、国連本部の場所についてなど)」

  • ニューヨークの国連本部は、1946年、ロックフェラー財団から資金を得て建設された。その前は、屠殺所。
  • 国連の前に並んでいる国連加盟国の旗はアフガニスタンからジンバブエでアルファベトッC順に並んでいて、毎日5人が旗の管理をしている。雨の日には旗は揚げられない。
  • 日本からの国連への贈り物として、1954年6月 平和の鐘が贈られた。この鐘は、世界60カ国のコインから鋳造されたもので、年に2回鳴らされている。
  • 国連事務総長は、Ban Ki-Moonと表記し、KiとMoonの間にハイフンがある。それは苗字を名前の後につける国々の人が、Mr. Moonと誤って読んでしまうのを防ぐため。

  • 田瀬氏のコメント:国連の場所は、昔はスラムであった。フィラデルフィアなども候補に挙がったが、ロックフェラーからの資金を得てニューヨークが選ばれた。
    日本が贈った平和の鐘は、日本の国連加盟以前に贈られた。この鐘は、毎年世界平和デーに事務総長が鳴らすことになっている。


    6.「国連と民間企業・組織の連携をもっとうまくするためにはどうしたらいいですか?」

  • グローバルコンパクト(関連サイト9)が国連と民間企業・組織の連携サポートをしている。
  • 国連が企業を認知し、企業と協力することによって、CSRやBOPビジネス分野での評判が上がるという、プラスのインセンティブがあるだろう。企業の意思決定はトップダウンであることも多いので、経営陣の意識改革も重要となる。
  • 国連と企業の連携の例としては、住友化学のマラリアの蚊帳プロジェクトがある。現地のニーズに合致したビジネスを展開している。このようなBOPビジネスは、企業にとっても好機であることもあるが、まだ事例は少ない。
  • 国連と企業の距離はいまだ遠く感じる。その原因には、双方の相手に対する情報不足が挙げられる。Best practiceのリストを作って開示にしたり、国連が技術のニーズを開示したりするといい。
  • 国連と連携をしているのは、実績がある安定した大企業が多い。中小企業が政府や国際機関にアプローチできるノウハウ、仕組みづくりを模索するのも必要ではないか。

  • 田瀬氏のコメント:国連と企業の距離やインセンティブに関しては、国連が意図的にしている部分もある。それは、ライバル会社も考慮し、特定の企業だけに評判を与えないためでもある。(ユニセフは国連の中でも先進的で、積極的に企業との連携推進をしている。)
    住友化学のマラリアの蚊帳に関しては、実際そこまで大きな利益には繋がってはいないのが現実だと聞いている。しかし、企業の価値につながるし、途上国貢献のためにも期待したい。続けていくためには、企業が工夫し、利益を大きくすることが必要。
    国連はマーケットを提供する場ではない。しかし、国連、企業両者にとってのWin-winは可能であると思う。


    7.「日本と国連の関わり(関連サイト10)について語ってください。(日本が安全保障理事会の常任理事国になっていない理由、日本が国際社会でリーダーシップをとるべき分野・課題など)」

  • 日本の国連への分担金率(関連サイト11)は約3億円、世界第2位。分担金率が高い割には日本人の国連職員は少ない。それは、国連に加盟することへのはっきりした目的意識がなく、リーダーシップが欠けているからもしれない。JPO制度を例にとってみても、応募者数は減ってきている。これは、国連ではどんなことができて、日本が何ができるかという点がはっきりしていないため日本人における、国連に対する興味、が減っているのかもしれない。

  • 田瀬氏のコメント:日本人職員の割合は、1%である。日本人にとって必要な点は、積極性、そして優先順位をつけること、そしてルール作りに勝つことである。その点、アメリカ、イギリス、フランスはその点が強い。ルール作りは、自分が正しいと思う価値を世界の価値にすることであり、常任理事国になったとして、そのあとに何を提示するのか、目的意識を持つことが大事である。


    8.「国連職員になるためのプロセス・国連職員として成功するためにはどのようなことが必要でしょう?」

  • 国連職員になるためのプロセスは、Young Professionals Programme (YPP)、JPO派遣制度、空席公募、政府からの派遣等がある(関連サイト12関連サイト13)。
  • 国連職員として活躍するために必要な野能力は、語学力、専門知識、俯瞰的に見る能力を高めることが重要である。
  • 成功するという定義は、人によって違う。例えば、長年現場に携わり、その国の自立的発展を成功と考える人もいれば、昇進していくことを成功と考えることでもある。国連で活躍してきた人をロールモデルとして、自分はどうしていきたいのかを考えることが大事である。

  • 田瀬氏のコメント:国連で働くには、国連憲章を胸に、使命感を持つことが大事である。働き方に関しては、国連のみならず、金融機関、NGO、政府等、多くの業界をまわり様々な経験をもとに働くケースがある。


    ■3■ まとめ

    小グループに分かれ、国連に関して各自リサーチをしたり、意見交換をし合う中で、国連に対する知識を深め、また今まで知らなかったことを学び、短時間であったが良いインプット、アウトプットの場になった。実際に国連で働く田瀬さん、また教授や社会人からの知見と分析に基づいた深いコメント、そして学生の国連に対する情熱、意欲で、会場は盛り上がり、時間があっという間に過ぎた。



    ■4■ 関連サイト

    1.国連事務局ホームページ(英語)
    http://www.un.org/en/

    2.国連広報センター(日本語)
    http://www.unic.or.jp/

    3.ミレニアム開発目標とポスト2015年開発目標(英語)
    http://www.un.org/en/ecosoc/about/mdg.shtml

    4.日本外務省 ポスト2015年開発目標(日本語)
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs/p_mdgs/index.html

    5.日本経済団体連合会 企業の社会的責任(日本語)
    http://www.keidanren.or.jp/policy/csr.html

    6.TICAD TICADの成功事例 ネリカ米 ― アフリカのための新しい稲(日本語))
    http://www.ticad.net/ja/stories/voices04.html

    7.Africa Rice Center (英語)
    http://www.africarice.org/

    8.国連防災世界会議(英語)
    http://www.bosai-sendai.jp/

    9.国連グローバルコンパクト 
    http://www.unglobalcompact.org/(英語)
    http://www.ungcjn.org/gc/index.html(日本語)

    10.国連日本政府代表部
    http://www.un.emb-japan.go.jp/(英語)
    http://www.un.emb-japan.go.jp/jp/index.html(日本語)

    11.外務省ホームページ: 国連通常予算分担率・分担金 (日本語)
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html

    12.国連事務局キャリアサイト (英語)
    https://careers.un.org

    13.外務省国際機関人事センター(日本語)
    http://www.mofa-irc.go.jp/index.html

    14.国連の意義・役割を再確認、国連フォーラムが自由な発想でワークショップ:開発メディア
    http://dev-media.blogspot.com/2014/04/blog-post_2101.html

    ※この議事録は各グループからの発表をまとめたものであり、各グループは上記のもの以外にも参考にしたウェブサイト、書籍等がある旨をご了承ください。

    企画リーダー:羅佳宝
    企画運営:逢坂由貴、小田理代、原口正彦、志村洋子
    議事録担当:志村洋子
    ウェブ掲載:羅佳宝