「グローバルヘルス:家族の健康―グローバルに活躍するプロフェッショナルと共に学ぶ夕べー」
第82回 国連フォーラム勉強会
日時:2014年4月18日(金)19時00分〜21時30分
場所:コロンビア大学ティーチャーズカレッジ会議室
スピーカー:ノーラ・コーリ氏(国際精神医学ソーシャルワーカー、障がい者のデイケア施設 施設長)
日下英司氏(国連日本政府代表部参事官)
■1■ はじめに
■2■ 共催団体Sujataについて
■3■ 発表内容(コーリ氏)
■4■ 発表内容(日下氏)
■5■ ケーススタディの内容
■6■ さらに深く知りたい方へ
国連フォーラムは2014年4月18日(金)、ニューヨークを拠点に活動する医療福祉系の学生団体Sujataと初めて合同で勉強会を開催いたしました。「グローバル・ヘルス」をテーマに、海外育児団体および国連日本政府代表部から講師をそれぞれお迎えし、1時間弱のレクチャーのあと、小グループでケース・スタディを通じてグローバル・ヘルスについて知識を深めました。以下の議事録の内容については、所属組織の公式見解ではなく、発表者の個人的な見解である旨、ご了承ください。
ノーラ・コーリ氏 日下英司氏(国連代表部) |
ニューヨーク邦人医療支援ネットワーク「Japanese Medical Support Network」に所属する学生団体で2013年に発足。医療福祉を学ぶ様々な大学、大学院生を中心に約20名程度で活動中。 団体URLはこちらからご覧ください。
異文化において、自分と異なる価値観や考え方を持つ人と円滑に接しようとするときに、以下10か条が参考になるかと思われる。
1. Be flexible and compromise
⇒ 自分を持ちながらも時には妥協して常に自分の価値観に見直すこと。
2. Don't lose yourself
⇒ 周りに流されず自分らしく生きること。
3. Be curious
⇒ 特に異文化社会では分からなくて当然という気持ちで、常に好奇心のアンテナを張って、新しい情報を吸収しようとすること。
4. Be positive, optimistic, and have faith
⇒ 誰だって前向きで明るい人のそばにいたいもの。周囲を引き寄せるような人材になること。
5. Take responsibility over your action
⇒ 大人になった以上、自分で決めたことや自らの言動には責任を持つこと。
6. Be confident in who you are
⇒ 自分に自信を持ち、オンリー・ワンな自分を目指すこと。
7. Study and always improve your communication skill
⇒ 自分の考えをきちんと言葉にして表すこと。特に海外では黙っていては誰も自分のことを分かってくれない。
8. Respect
⇒ 海外においては、日本ほど上下関係に気をつけなくてもよいが、他人の長所から学び、お互いの良さを共有し合うこと。
9. Understanding and acceptance
⇒ 違う価値観を遮断するのではなく、まずは最後まで聞いてみる姿勢と努力が必要。何もすべて無差別に受け入れなさいとは言わないが、まずは他人の意見に耳を傾ける余裕と包容力を持つこと。
10. Independent and having social network
⇒ (精神的・金銭的ともに)自立し、職場や友情関係などの決まった枠組みを超えて、自分にしかできない形で社会に貢献しコミュニティの一員になること。
2015年までに達成すべき国際開発目標としてとりまとめられた「ミレニアム開発目標」の達成期限が近づいている。現在国連においてポスト2015開発のアジェンダ作りについて活発に議論がなされていて、日本政府としてはアジェンダの一つに、いわゆるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以降UHC)を盛り込みたいと働きかけを行っている。
UHCとは世界保健機関(WHO)により「高度な財政難に苦しむリスクを負うこと無く、万人が、必要な場合に、高品質の医療サービスを受けられること」と定義付けられている。UHCが目指す持続可能な保健システムは、健康不公平に対処し、財政危機からの保護を保障し、人間の安全保障を実現するために重要である。その中で日本は長寿社会と非感染性疾患が予防可能な社会を作り上げてきた実績に基づき、その教訓や制度設計のノウハウを通じて国際保健外交を展開し、世界のUHC普及に大いに貢献できる立場にある。
UHCと言っても、万国共通のパッケージを構築するのは現実的ではなく、その国々の社会的・文化的ニーズを反映した枠組みを推進していくことが大事だ。各国でUHCを進める上では、1) 財政的要因(医療支出が国庫を圧迫していないか?移送費は高額でないか?)、2) 物理的要因(近くに医療施設があるか?熟練した医療従事者は十分にいるか?)、3) 文化的要因(国民は広く保健知識を持っているか?国民のあいだに医療不信はないか?)の3つを考慮する必要がある。我が国の国民皆保険制度は、上記三要素を徐々に拡大しながら現在の形が出来上がった。
我が国の国民皆保険制度は、もともとあった保険制度の対象者を徐々に拡大させることで実現することができたが、これには社会的な背景が大きい。第二次世界大戦終了後で健康保険がまだ強制加入でなかったとき、朝鮮戦争からの軍事特需や自民党発足によるいわゆる「55年体制」などの影響もあり、日本は次第に経済成長の道を歩み始めた。そして国民全体に連帯感が生まれ、当時の鳩山一郎首相の強力なリーダーシップのもと、綿密な制度設計が行われ、遂に1961年に国民皆保険が実現した。
日本の経験を一般化し諸外国へそのまま適用させるのは妥当ではないが、我が国が経てきた教訓や制度設計において鍵となるポイントをこれからも世界へ発信し、UHCの共通理解へと結び付けようとする努力と積極性が、国際保健システム構築における日本の意義と思われる。
(グループA-B)
Hさんは日本でアメリカ人の主人と出会った。当時Hさんはバリバリのキャリアウーマンで、夫は英語の先生として来日していた。結婚後、10年ほど前にアメリカに移住し、現在は二人の子供(10歳と16歳)と暮らしている。彼女はパートで事務の仕事をしているが、ほとんどは専業主婦。今回ソーシャルワーカーであるあなたへ、彼女は次の相談をしに来た。主人が自分のことをばかにし、自分を単なる家政婦、子どもの母親としか見てくれず、不満である。また、主人は自分の親戚や家族とばかり過ごし自分の趣味だけに時間を費やし、彼女のことを構ってくれない。しまいには何を伝えても言葉で言いくるめられてしまう。彼女は英語が得意でなく、また田舎生活のため相談できる日本人友人も周りにはいない。彼女にどうアドバイスするか。
(グループC-D)
フランスおよびジャマイカの国連代表部の立場から、国連総会で採択するUHCに関する決議案への準備として、各国における歴史、政治、外交の重要課題等の背景を踏まえ、UHC決議案へ賛成または反対の立場を表明しなさい。
このトピックについてさらに深く知りたい方は、以下のサイトなどをご参照下さい。国連フォーラムの担当幹事が、下記のリンク先を選定しました。
http://www.caretheworld.com
http://www.sweetnet.com/index.html
http://www.un.org/en/ecosoc/about/mdg.shtml
http://www.jica.go.jp/topics/notice/20130725_01.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai4/siryou3.pdf
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page3_000401.html
※この議事録は各グループからの発表をまとめたものであり、各グループは上記のもの以外にも参考にしたウェブサイト、書籍等がある旨をご了承ください。
企画リーダー:逢坂由貴、ファムティホイ フン
企画運営:小田理代、原口正彦、志村洋子、羅佳宝、スジャータ側スタッフ
議事録担当:岩崎元太、原口正彦
ウェブ掲載:羅佳宝