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ワークショップ「自分の心の声に沿った世界貢献の形」
スピーカー:牛嶋浩美氏(絵本作家・イラストレーター)
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「アフリカ経済の転換と産業政策 ーエチオピアにおけるJICAの政策対話とカイゼンから考える」
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スピーカー:季村奈緒子氏 (国連グローバルコンパクト/アジア・オセアニア担当リレーションシップマネジャー)
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第90回(後日掲載予定)
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スピーカー:ラミチャネ・カマル氏(JICA研究所研究員※)、畝伊智朗氏(JICA研究所所長)
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「国際機関や開発分野でインターンシップを考えている人のための体験共有会」
パネリスト:大崎文子氏、橋本仁氏、本間靖健氏、羅佳宝氏 
コメンテーター:村田敏彦氏 、矢島恵理子氏

第87回
「日本の国際協力と安全保障:開発と政治の現場への提言」
園部哲史氏(政策研究大学院大学教授)
鬼丸武士氏(政策研究大学院大学教授)


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「世界の開発援助の潮流と国連開発システムを考える」

第99回 国連フォーラム勉強会

日時:2016年1月23日(土)15時00分〜17時00分
場所:コロンビア大学Mudd 924号室
スピーカー:二瓶直樹氏(国際協力機構、前国連開発計画)





■1■ はじめに
■2■ 自己紹介
■3■ 国連開発計画(UNDP)とは
■4■ UNDPジャパンユニットの業務
■5■ UNDPと国際協力機構の比較
■6■ 開発援助の潮流
■7■ キャリア形成について
■8■ 質疑応答
■9■ さらに深く知りたい方へ

講師経歴:二瓶 直樹氏 (にへい なおき)氏
現国際協力機構(JICA)中央アジア・コーカサス課主任調査役(前UNDP対外関係・アドボカシー局ジャパンユニット・JICA/日本連携アドバイザー)。 2003年、国際協力機構 (JICA) 入構以来、日本のODAに従事。2009-2012年、中央アジアのウズベキスタンにて、市場経済移行期の社会・経済開発を目的とした民間セクター及び法整備支援、運輸・電力インフラ支援に従事。2012年8月よりUNDP本部にて勤務。早稲田大学大学院社会科学研究科修士卒。

■1■ はじめに

国連フォーラムでは、「世界の開発援助の潮流と国連開発システムを考える」と題し、二瓶直樹さんより、3年半の国連開発計画(UNDP)でのご経験と今後の開発援助の潮流についてお話を伺いました。

最初にUNDPの組織・対応課題・近年の動きなどをご説明いただいたあと、3年半の間に二瓶さんがUNDP本部対外関係・アドボカシー局ジャパンユニットでご担当された多岐にわたる業務についてご紹介いただきました。その中で国連常駐調整官システム、南南協力、三角協力、人間の安全保障基金など、国連開発機関の援助システムにおける仕組みについて、板書も交えながら分かりやすくご説明いただきました。

以下の議事録の内容については、所属組織の公式見解ではなく、発表者の個人的な見解である旨、ご了承ください。


■2■ 自己紹介

国際協力機構に2003年に入団し、外務省出向、教育セクター支援を経て中央アジアのウズベキスタンで3年半勤務し、2012年の8月からUNDP本部に出向している。これまで開発プロジェクトマネジメントから政策まで幅広く携わってきた。個人としてロシア語圏地域、ガバナンス、紛争予防や平和構築に関心がある。

■3■ 国連開発計画(UNDP)とは

UNDPは1966年に設立(今年は創立50周年)された、国連総会及び経済社会理事会の管轄下にある機関。UNDP 執行理事会が年3回開催され、日本を含む36カ国がメンバー。ニューヨークに本部があり、135の国と地域に常駐事務所を設置。177の国や地域で年間6000件を上回るプロジェクトを実施するなど、国連システム最大のネットワークを有する。

総裁は元ニュージーランド首相のヘレン・クラーク氏。2009年4月から2017年4月まで総裁を務め、現在は2期目である。

対応課題は、ガバナンス、平和構築・紛争予防、防災・気候変動(環境エネルギー含む)、女性のエンパワーメント、保健HIV/AIDS、貧困削減、危機対応をカバー。

組織は、5地域局(アフリカ、アラブ、アジア大洋州、欧州CIS、中南米)、政策プログラム支援局(課題担当)、対外関係・アドボカシー局、管理サービス局、総裁室、独立評価室、監査室等がある。

2014年に大きな組織改革を実施し、人員削減、組織構成の変更、本部から地域への人員シフトがあったほか、危機対応局(Crisis Response Unit) が設置された。危機管理局初代局長は日本人の中満泉氏。危機対応局設立の背景はイエメンなど世界中で緊急対応が近年増加したためである。

UNDPに勤める基幹スタッフは7500名で、うち日本人職員は86名(全体の3%)であり非常に少ない。加えて国連常駐調整官(Resident Coordinator、以下「RC」)として2名の日本人がモルジブとカザフスタンで勤務している。RCとは国連の現地事務所のトップのことである。世界中にある国連の事務所のトップは国連開発計画出身者が担当していることが多い。RCの運営には年間UNDPが約88百万ドルの予算を拠出している。

RCシステムについてやや詳しく説明しておきたい。例えばインドにはUNDP、UNICEF、WFP 、UNESCO等の国連専門組織が活動している。各機関のプロジェクトに重複があるなどして非効率になることを防ぐために、RCを設置し、複数の国連専門機関の現地での調整をおこなっている。各国ではRCの元に国連カントリーチーム(UNCT)という組織が設けられ、各国で策定されたUNDAFが中期的な国連開発機関による開発戦略文書となっている。

国連開発機関の活動資金はコア予算とノンコア予算から構成される。コア予算は国連加盟国から国連開発機関の基幹予算として拠出され、ノンコア予算は各国から各機関に対して拠出される。コア予算もノンコア予算も任意拠出金であり強制的に決まっている金額ではないため、経済状況等に左右されるので不安定になる傾向がある。日本のUNDPに対する拠出金は全体の8−9%(2009-2013年はトップドナー)であるが、日本の拠出金レベルに対し日本人職員の数(全体の3%)は多くない。

■4■ UNDPジャパンユニットの業務

UNDPジャパンユニットは、日本政府とUNDPの連携強化を目的としたユニット。外務省出身の上級顧問、コンサルタント、及びJICA出向者である私の3名で構成されている。これまでの3年半では主に以下の事項に関与した。

1. ミレニアム開発目標(MDGs): 未達課題の達成のための支援
2. 2030年までの開発アジェンダ(SDGs)の策定:日本政府とのアドボカシー面での協力
3. アラブの春以降の中東支援:選挙などガバナンスや難民問題支援
4. アフリカ支援:特にアフリカ開発会議(TICAD)を通じた支援(2013年横浜でおこなわれたTICAD Vの参加、及び2016年初のアフリカ・ケニア開催となるTICAD VIの準備)
5. 防災への取り組み:2015年3月仙台防災会議への参加、フィリピン、ネパールの災害後支援等
6. アフガニスタン支援:中央アジアなどの周辺地域の治安安定
7. ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた連携
8. 危機対応:シリア、リビア、イエメン、ウクライナ、南スーダン等
9. 選挙支援:中立性が求められる場面では2国間支援ではなく国連を通じた支援が効果的
10. 気候変動:中進国による気候変動の取り組みをカリブ地域などで支援
11. 新興国への支援:日本政府は南南協力及び三角協力に定評がある。日本は、途上国に技術、資金提供をおこなっており、三角協力のチャンピオンである
12. 人間の安全保障:人間個人の保護と能力強化に焦点を当てた開発支援の概念である「人間の安全保障」の普及と、関連するプロジェクトを支援する「人間の安全保障基金」案件の形成
13. 日本のビジビリティ(Visibility, 見える化、認知度向上などの意):日本政府の「顔の見える支援」の促進
14. グローバル人材の育成:各種講演やアウトリーチなど
15. 日本政府(外務省、JICA)との戦略対話:中東、アフリカ、アジア支援、国際保健、MDGs、SDGs等、幅広くの重点開発課題を協議

■5■ UNDPと国際協力機構(JICA)の比較

JICA UNDP
設立 1974年 1966年
人員 職員1800人
専門家 年9000人派遣
職員7500人
IPスタッフ2600人
代表 北岡伸一理事長(元国連大使) ヘレン・クラーク総裁(元ニュージーランド首相)
ネットワーク 本部東京
海外90、国内15箇所
本部ニューヨーク
拠点135カ国
年間予算 9000億円 - 1兆円 4500億円
事業 技術協力(人材開発)
無償(インフラ)
円借款(インフラ)
技術協力(人材開発)
小規模インフラ
強み 日本の技術・比較優位性
ハードとソフトの組み合わせ、ビジビリティ
中立性、統率性、危機対応、活動の早さ
弱み 危険地域での活動、支援開始までの時間 任意拠出金の不安定性

UNDPは国連システム31機関の中心的な位置におり、日本政府のUNDPとの協力関係の国連システムの中でも統率力が高い。また、RCは国連機関の現地代表として、国によっては大臣級の扱いとなるため、途上国政府との関係強化において重要な役割を担っている。また、ガバナンス分野(特に治安・警察分野)では国連に強みがある。危険地域における対応も国連は足早く対応が可能。また日本の二国間での支援は形成から実施までに多くの時間を費やすが、UNDPはプロジェクトの実行までの速度が非常に早い。

■6■ 開発援助の潮流

・人道と開発の統合的アプローチが促進される。今年の取り組みとしてはトルコで開催される世界人道サミットに注目が集まっている。
・ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)はグローバルファンド(The Global Fund:GF)やグローバルファイナンシングファシリティ(Global Financing Facility:GFF)などの信託基金に資金が集中する傾向にある。
・気候変動はCOP21を踏まえ引き続き行動が強化される見込み。さらに主要な二つの基金(緑の気候基金(Green Climate Fund :GCF)と地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF))の差別化が促進される。
・アフリカ支援はTICADの例にも見られるように今後も中心的存在である。
・テロ・過激派対策や社会安定化は引き続き重要課題であり、社会脆弱層がテロに加担しないよう貧困の削減が急務。
・政府開発援助は概して減少傾向にあり、特に国際機関への拠出が減少していく傾向(特にコア予算)。
・開発を担うアクターは多様化(ODA以外の民間セクター資金や個人等)している。
・インフラ投資のニーズは、アジアインフラ投資銀行への設立にも見られるように途上国の経済発展が進んでいることを背景に増加している。

■7■ キャリア形成について

国連のキャリアは実力・運・ネットワークの3要素が重要だと思う。特に開発系組織を志向する場合は海外・現場(途上国)経験が不可欠である。また業界研究は重要であり、とりわけ関係者からの生の声を多く集めること、さらに知見を広めることで、バックグラウンドの多様な職場への適応能力を高める。加えて、自分が売ることのできる専門性を常に磨くことは重要である。


■8■ 質疑応答

質問:緑の気候基金(Green Climate Fund :GCF)と地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)との具体的な違いは。
回答:GCFはNGOやADBなど認証を受けた国連以外の組織にも資金提供している。

質問:他国もUNDPにユニットを持っているのか。
回答:他国はUNDPのプロパースタッフが担当している。ジャパンユニットのような出向者によるチームはない。

質問:ジャパンユニットは世銀の理事室と同じような役割なのか。
回答:異なる。UNDPの理事会での交渉・協議は日本政府ニューヨーク国連代表部が担当している。

質問:政府開発援助の減少の傾向は金融危機以降か。
回答:それに加え円安とユーロ安の影響も受けている。最近は欧州における難民受け入れのため国内向け追加支出などの事情も影響している。

質問:ネパールにおける災害後ニーズ調査ではどのような専門家が参加したのか。
回答:ネパールの災害後ニーズ調査では23のセクター(教育、保健、エネルギー、防災対策等)が設定されて、各国連機関やJICAなどから各セクターへ専門家が派遣され、セクター毎の復興のための課題や必要な投資を精査した。

質問:20年後の途上国のイメージは。
回答: 天然資源の有無、国内情勢の安定の有無によって二分化されると思われる。中進国の間でも、さらなる経済成長を達成する国と、後退する国に分かれるだろう。更に中進国では、富の再分配の問題、都市と農村間に広がる格差などがある。

質問:感染症対応においてWHOと比較した際のUNDPの特徴は。
回答:UNDPは遠隔地や現地コミュニティに入り啓蒙活動などを行う。

質問:RCシステムへの評価は。
回答:途上国側から一定の評価を受けている。ただ日本人のRCは現状2名なので、今後人数が増えることを期待する。

質問:日本政府以外にUNDPが重視しているパートナー国は。
回答:UNDPは多くの国々から拠出を受け、様々なパートナーがいるが、伝統的にはOECD-DACの北欧諸国、米国、英国のプレゼンスが高い。

質問:UNDPとJICAのインフラ支援の違いは。
回答:UNDPのインフラ支援はより人間の生活に必要不可欠なインフラ(コミュニティレベルの橋や道路など)であり、JICAのインフラ支援は大規模な発電所・道路から経済・社会インフラまで対応している。

■9■ さらに深く知りたい方へ

このトピックについてさらに深く知りたい方は、以下のサイトなどをご参照ください。国連フォーラムの担当幹事が、勉強会の内容をもとに下記のリンク先を選定しました。

● UNDP駐日事務所ウェブサイト:連載コラム
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/presscenter/articles/2016/01/26/nihei.html

● 中央アジア・コーカサス開発研究会(グループ)
http://www.facebook.com/groups/298398100231283/

● R+EE 露・東欧地域研究会(グループ)
https://www.facebook.com/groups/436215346470056

2016年8月12日掲載
企画リーダー:志村洋子
企画運営:原口正彦、中島泰子、西村祥平、平井光城
議事録担当:高橋尚子
ウェブ掲載:三浦舟樹