サイト内検索



第91回(後日掲載予定)
「世界の貧困問題に取り組むAcumenが大切にしているリーダーシップ像」
第90回(後日掲載予定)
「グローバルな環境で働くこと」
第89回
「ポスト2015開発目標と障がい者のソーシャルインクルージョン」
スピーカー:ラミチャネ・カマル氏(JICA研究所研究員※)、畝伊智朗氏(JICA研究所所長)
第88回
「国際機関や開発分野でインターンシップを考えている人のための体験共有会」
パネリスト:大崎文子氏、橋本仁氏、本間靖健氏、羅佳宝氏 
コメンテーター:村田敏彦氏 、矢島恵理子氏

第87回
「日本の国際協力と安全保障:開発と政治の現場への提言」
園部哲史氏(政策研究大学院大学教授)
鬼丸武士氏(政策研究大学院大学教授)


第86回
「ビジネスの力で世界の食料・環境問題に寄与する」
スピーカー:株式会社ユーグレナ 出雲充代表取締役社長
永田暁彦取締役(経営戦略・経理財務・総務人事担当)


第84回
「人事はこんなに面白い」
矢島恵理子氏(国連日本政府代表部一等書記官)


第83回
「防災と途上国開発」
由佐泰子氏(WFPペルー事務所 プログラムオフィサー)


全タイトルを見る⇒  

HOME勉強会 > 第92回

「核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議の意義・現状・展望」

第92回 国連フォーラム勉強会

日時:2015年5月19日(火)18時30分〜20時15分
場所:国際交流基金ニューヨーク日本文化センター
スピーカー:黒澤満氏(大阪大学名誉教授・大阪女学院大学教授)




■1■ はじめに
■2■ 核不拡散の国際政治体制
■3■ 核兵器の不拡散に関する条約の枠組み
■4■ 2015年NPT再検討会議の背景
■5■ 核軍縮を進めるために、2015年NPT再検討会議
■6■ 質疑応答
■7■ さらに深く知りたい方へ

講師経歴:黒澤満(くろさわ みつる)。
大阪大学名誉教授・大阪女学院大学教授。大阪大学法学博士。1976年より新潟大学法学部にて教鞭をとり、1991年より大阪大学法学部教授。1980年 〜1982年まで米国ヴァージニア大学客員研究員。1994年より大阪大学大学院国際公共政策研究科教授、1998年〜2000年まで同研究科長。2003年〜2004年米国モントレー国際大学客員研究員。2008年大阪大学名誉教授。2008年大阪大学退官後、大阪女学院大学国際・英語学部教授。日本軍縮学会初代会長。世界法学会(理事)、国際法学会(元評議員)、日本平和学会(元理事)、国際政治学会(評議員)などを歴任。『核兵器のない世界へ』(2014年、東信堂)、『核軍縮入門』(2011年、信山社)、『軍縮問題入門』(2011年、東信堂)など著書多数。

■1■ はじめに

国連フォーラムは国際交流基金ニューヨーク日米センターと共催で、国連本部で開催中の核不拡散条約(NPT)再検討会議にあたり、日本政府顧問としてニューヨークに滞在中の軍縮・不拡散の専門家、黒澤満 大阪大学名誉教授・大阪女学院大学教授をお迎えし、「不拡散条約(NPT)再検討会議の意義・現状・展望」をテーマに勉強会を開催しました。 黒澤教授は「軍縮国際法」の分野を切り開いた第一人者として知られ、大阪大学、新潟大学等で教鞭をとる傍ら、日本軍縮学会初代会長、世界法学会理事等を歴任。1995年以降20年間にわたり、NPT再検討会議5回全てに日本政府顧問として参加してこられました。

軍縮国際法の根幹、核不拡散の国際政治体制にはじまり、NPT再検討会議の歴史的展開、2015年のNPT再検討会議の重要点まで、幅広い部分について黒澤教授自身のご経験にもとづきお話いただきました。

今回の国連フォーラム勉強会開催日は、4月27日から5月22日開催中であったNPT再検討会議4週目の2日目で、会議終了の3日前という時期でした。 

なお、以下の議事録の内容については、所属組織の公式見解ではなく、発表者の個人的な見解である旨、ご了承ください。


■2■ 核不拡散の国際政治体制

核兵器の問題は、1945年8月6日の広島、長崎への原爆投下から始まった。アメリカが1945年7月に世界初の核実験をおこない、それに続き、ソ連が1949年、イギリスが1952年に核実験をおこなった。そのような流れで徐々に核実験が増加した。1953年にドワイト・アイゼンハワー米大統領が、平和のための原子力(Atoms for Peace)を国連総会で提唱し、1957年に国際原子力機関(International Atomic Energy Agency or IAEA)が設立された。

1950年代後半からは、西ドイツにアメリカの核兵器が配備され、核兵器の範囲が拡大した。このような核兵器範囲拡大の恐怖から、スエーデン、カナダ、スイスが核兵器開発に関する研究を開始した。

1960年にはフランスが、1964年には中国が核実験をおこなった。

1960年代初め、ケネディ米大統領が核の脅威が広がることに危惧を覚え核兵器不拡散を訴えたことから、世界的に核兵器不拡散の流れに入った。1965年から交渉が始まり、核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons or NPT)が1968年に署名され、1970年に発効した。

■3■ 核兵器の不拡散に関する条約の枠組み

NPTの目的・内容は、核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用の3本柱から成り立っている。2015年にパレスチナが加わり、パレスチナを含め191カ国がNPTに加盟している。

NPTは、基本、核兵器を持つ国を増やさないという原則を持ち、1967年1月1日までに核兵器を保有していた核兵器保有国は保有を許されるが、保有していなかった非核兵器保有国は保有を禁じるという原則があり、ある意味差別的である。条約加盟に関しては、非核兵器保有国から不満の声が上がることが多い。

条約の内容が差別的なので、将来的に核兵器保有の可能性も残すべきという声や核兵器の平和利用に疑問を持つ声も日本国内から出ており、1976年まで日本政府は批准しなかった。

■4■ 2015年NPT再検討会議の背景

NPT再検討会議は、5年毎におこなわれ、過去5年間、どのような進展があったか、今後どのように発展していくべきかを検討する会議である。

条約は通常無期限であるが、差別的な側面を持つNPTは当初25年の期限付きの条約で、25年後に期限について再度決定することになっていた。再検討・延長会議を同時におこなうという規定があり、1995年にNPT再検討・延長会議が開催された。1995年の会議では、核不拡散の重要性を考慮し、条約を無期限に延長し、5年 毎に再評価をおこなうことが決定された。

2000年のNPT会議では、核実験をおこない新しく核兵器保有国になったインド・パキスタンは参加せず、アメリカも、包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty or CTBT)が上院で否決される等、悪い雰囲気ではあったものの、最終的には、国連常任理事国であり同時に核兵器保有国でもあるアメリカ、中国、ロシア、英国、フランスが13項目の核軍縮に合意した。

2005年のNPT会議では、当時の米ブッシュ政権が国連に対し非協力で、具体的な合意には至らなかった。

2010年のNPT会議では、オバマ大統領就任後にアメリカ・ロシア関係が改善し、新戦略兵器削減条約(新START)の交渉が始まったという時代の流れもあり、22項目の核軍縮に関する文書の合意達成に至った。

なお、新STARTは2010年に署名、2011年に発効し、アメリカとロシアの戦略核弾頭数を約2200から1550まで削減することで合意、順調に実施されている。2013年にはアメリカは更に三分の一の戦略核弾頭削減を提案したが、プーチン政権は、アメリカがヨーロッパにミサイル防衛を配備していることから協力を拒否した。クリミア問題が勃発し、現在はアメリカとロシアの関係は悪化の一途を辿っている。

2014年、核兵器保有五カ国は中央アジアの非核兵器保有国に核兵器を使用しないという議定書に署名し、アメリカ以外の国々が批准をしたことは前回NPT会議からの進歩である。しかし、新START、CTBTに関しては進展がなく、軍縮会議も始まっていない状況から、核軍縮の停滞が非常に大きな問題として取り上げられた。

それに加え、中東、イスラエル問題も進んでいない現状もある。

2015年のNPT再検討会議は、そういう状況で始まった。

■5■ 核軍縮を進めるために、2015年NPT再検討会議

2015年のNPT再検討会議では大きく分けると、核兵器が使用されると人道的にどのような影響があるかという問題と、核軍縮をどのように進めるかという二点が主要トピックスとなっている。

核兵器廃絶国際キャンペーン(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons or ican) のBan2015のパンフレットの6ページ目(下記参照)にあるように、2010年のNPT再検討会議では、最終的に採択された文書に、”Deep concern at the catastrophic humanitarian consequences of any use of nuclear weapons (核兵器の使用による壊滅的な人道的な帰結に深い懸念を示す)”という文書が盛り込まれ、核なき世界へに向けて枠組みを確立する努力の必要性が再認識された。


2011年には、国際赤十字による核兵器廃絶へ向けての決議が採択された。2012年5月には、スイスを中心に16カ国が核兵器は壊滅的でいかなる状況においても使用されないことが人類全体の生存そのものの利益である、という歴史上初めての人道的共同声明が出され、核兵器廃絶が訴えられた。その後このような声明が国際社会で5-6回ほど続けて出された。

2013年3月にオスロで開催された第一回核兵器の人道的影響に関する会議には128カ国が集まり、核兵器使用による人道的影響について話し合われた。日本からの被爆者も参加した。

2014年2月メキシコのナヤリット州で開催された第二回核兵器の人道的影響に関する会議では、核兵器使用による人体、社会、環境、その他に及ぶ長期的影響が確認された。

2014年12月にウィーンで開催された第三回核兵器の人道的影響に関する会議には158カ国が参加した。当初5大国は会議参加に否定的であったが、最終的にはアメリカ、イギリスが参加し、人道的影響に関して大きな動きがあったと言える。

2012年スイスを中心に核兵器の人道的影響に関する共同声明が発表されて以来、共同声明発表は続いており、今回2015年のNPT再検討会議でもオーストリアを中心に159カ国、オーストラリアを中心に26カ国が共同声明を出している。核兵器がいかなる場合においても使用されないことや、核兵器廃絶の方向へ進んでいくことが提案された。オーストリア提案は基本的には歓迎されたが、核兵器をなくすためには、人道的影響を考慮すると同時に、安全保障面も考慮しなくてはいけないと主張している国(核の傘下にある国を含む)もあり、安全保障と人道の両方を重視した声明である。フィンランドと日本だけは相反する軸を持つ両方の声明に賛同している。

多くの国が科学的見地から核兵器使用における壊滅的な影響を認識している。5大国の中では、アメリカ、イギリスは人道的影響を認めているが、他の国(特にフランスやロシア)は否定的である。5大国とその他の国々の対立、また、非人道性を訴える159カ国とその他の国の意見対立が繰り広げられている。

核軍縮をどのように進めるかについて、幾つかの選択肢が出ている。

1つ目の選択肢は核兵器の全面禁止条約をすぐに交渉すべきというもの。これは非同盟諸国の主張で、以前からずっと出ていた選択肢である。化学、生物兵器はそれぞれ条約があるが核兵器を全面禁止にしようというものである。イスラエルの関係で入らないエジプト、シリア、そして北朝鮮等を除き、化学、生物兵器の禁止条約には多くの国は賛同している。

2つ目の選択肢は禁止条約の作成である。IcanのBan2015のパンフレットの3ページ目(右記参照)にあるように、1972年に生物兵器が、1993年に化学兵器が全面的に禁止されている。1997年に対人地雷、2008年にクラスター爆弾禁止がされたが、核兵器はまだ禁止されていない。

1997年と2008年の条約は特殊で、アメリカ、ロシア、中国、インド等の軍事大国は入っていない。1997年の条約は、NGOとカナダが中心の対人地雷禁止国際キャンペーン(International Campaign to Ban Landmines or ICBL)により、大国なしで条約を作成しようということで実施された。クラスター爆弾禁止に関してはノルウェーが中心となり、オスロプロセスとして実施。大国はほぼ入っていない状況である。

核兵器禁止に関する条約作成に関しては、核兵器保有国は前向きではないため、核兵器保有国抜きでどこかの国が率先して核兵器禁止をしようという動きである。

例えば、対人地雷禁止条約にアメリカは入っていないが、条約ができて以降、アメリカは生産や輸出を停止した。このように国際条約ができると国際規範となり影響与えるのではないかという期待がある。日本も対人地雷を100万個廃棄した。 

現在実施しようとしているのは、2つ目の選択肢の核兵器禁止条約で、幾つかの国が支持しており、核兵器全面禁止条約は核兵器保有国が中心になり、例えば15年、20年と段階的におこない廃止するのはどうかという提案である。 禁止条約は、核兵器保有国が入らなくてもいいのでとりあえず使用禁止を進めようという動きで、このような条約が現在議論されている。

3つ目の選択肢は枠組条約を制定し、核兵器を削減すると決め、その後具体的な行動については各議定書で実施していくというものである。温暖化効果ガス削減を目指す気候変動枠組条約が一つの例である。温暖化効果ガスを減らそうという枠組条約を最初に制定し、各国が加盟した後に、京都議定書ができ、締結国会議 (Conference of the Parties, COP)を毎年開催し議論をおこなっている。核兵器禁止に関して言うと、核兵器廃絶ということについて合意し枠組みを策定した後に、その後の具体的な行動に関しては議定書で決めていこうということになるだろう。

4つ目の選択肢はブロック積み上げ方式 (Building blocks) である。最初から核兵器禁止条約を作成し実行していくのは困難なので、ブロックをひとつずつ積み上げ、最終的には、包括的核実験禁止条約 (Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty or CTBT) や、核兵器禁止条約を実現しようという方法である。

5つ目の選択肢は、Step by step方式。一歩ずつ、一つに焦点を絞る方式である。例えばCTBTに焦点をあてて実行し、それが実現できたら次の段階に進む方式で、この選択肢は5大国の基本的な考え方である。

上記のような5つの選択肢の中から、どれを選択するかという議論がおこなわれている。最近はStep by step方式でも、幾つかのステップを同時に取ることも可能だと5大国が言い始めている。

核兵器廃絶を望んでいる条約当事国のうちの半分の国々の立場は、すぐに条約の交渉を始めたいと望んでいる。人道的な立場から見ると、核兵器は非常に危険である。ただしそれだけの理由で条約交渉の理由になるのかという懸念もあり、これらの国は、1つ目の核兵器の全面禁止条約でも2つ目の禁止条約でもどちらでもいいので進めていこうという立場を取っている。 

日本は人道的側面は重要だが、ブロック積み上げ方式で現実的かつ実践的に最終目標を達成したいという立場を取っている。条約を一度に作成するのは困難なので、一歩ずつでも出来るところから始めていこうという立場だ。人道的側面は大事だが安全保障の環境が整うことも大事と考える。

このように3週間同じような議論が繰り返されてきている。



■6■ 質疑応答

質問: 日本は現実的で実践的とおっしゃっていたが、具体的に会議ではどういう立場を取っているのか。
回答: 5年前の2010年に、核リスクの低い世界を目指す目的で、日本、オーストラリアが中心になり、カナダ、ドイツ、オランダ、ポーランド、フィリピン、ナイジェリア、メキシコ、ペルー、チリ、アラブ首長国連邦の12カ国から成る軍縮・不拡散イニシャチブ、(Non-proliferation and disarmament Initiative or NPDI) を形成し、核軍縮・不拡散の取り組みに関する様々な提案をおこなっている。国際社会ではたいてい不拡散が優先されることが多いが、日本語訳では軍縮が優先されている。イメージで言うと、非同盟運動(Non-aligned Movement or NAM)が端に、5大国が逆端に位置するとすると、このグループは、5大国側に位置している。また、中間には、新アジェンダ連合(New Agenda Coalition)がある。

条文作成の際に核の傘下にいる日本にとって問題となる点は、「核兵器の不使用は人類そのものの生存にとっての利益」ということに対しては賛成であるが、「いかなる状況においても」という部分に関しては国内において反対意見もあるという点である。日本やアメリカは、70年近く核兵器が使われてこなかった、このことを永遠に続けることが人類の利益になる、という立場に賛成している。

国内的な観点では日本は唯一の被爆国であるという認識が強いが、一方他国による国際的な観点では、日本は核の傘下の国という認識が強い。

質問: 会議の意思決定方式に関して、全会一致の原則と、議定書を作る関係性について教えてください。
回答: 先ほど会議の3本柱について述べたが、具体的には核軍縮、核不拡散、核の平和利用について主要委員会で議論されている。

主要1、2、3委員会の中にはそれぞれひとつずつ機関があるので、合計6つの機関で構成されている。各機関で最終原案を作り、最終的にまとめる。

今朝の全体会議で、主要委員会の委員長がそれぞれの報告を発表した。6つの機関の意見を準備委員会で話し合い合意に達するというのは難しいことである。

5年前の2010年の会議では、主要委員会2、3では前進は見られたが主要委員会1の前半に関して前進は見られなかった。最終的には、後半のみ合意の文書で採択された。正式的には主要委員会で全会一致となるわけだが、実際にはそのように上手くいかない。

今回のNPT会議は3週間開催されたが、同じ議論が繰り返されており、議長がまとめた原案を提出するのに対して、妥協する雰囲気もなく、残り3日しかないので、いかなる文書に対しても合意が形成されない可能性もあり、非常に厳しい状況である。

全会一致原則は国連安全保障理事会の常任理事国や軍縮会議も含め、国際社会では基本である。日本国内では単純多数決が基本であるが、国際社会では多数決というわけにはいかない。

質問: 5年に1度開催の会議に関して、事前の交渉はあるのか。また、インド、パキスタン、アメリカ等、立場の違う国々をとりまとめるのは非常に難しいと思うが、安全保障における改善手段はどのようなことがあるか?
回答: 議長が決まると、議長中心に調整が始まる。2007年、その下の主要委員会の議長は天野之弥現IAEA事務局長だった。2007年の会議を非常にうまくとりまとめたこともIAEA議長に選出されたこと要因につながった。

2つ目の質問については、国によって核兵器への捉え方が異なっている。安全保障理事国や核の傘の下にある26カ国は、核抑止や安全保障を重要事項であると捉えているが、残りの国々は核兵器を否定的に捉えており、例えば非兵器地帯を作っている国々は、核兵器はないほうが安全だと考えている。日本はどちらかというと核に依存していると言える。

アメリカは、オバマ大統領は2010年に核兵器使用は先制攻撃を受けた場合にのみ使用するという提案をしたが、共和党からその案は潰されてしまった。

核兵器に対する考え方は、一部の議論にあるが、タバコに対する非正当化の考え方にも似ているのではないか。昔はタバコは格好良かったが、実際には健康にも良くないし、臭いし、自身のみならず周囲にとってもマイナス面ばかりである。核兵器に関しても、保有していても使用することは出来ず役立たずであるし、使用されたら大変であるし、またテロリストに盗まれたり、サイバー攻撃やコンピューター操作ミス等の危険もある。だから、核兵器を減らしていくのも、禁煙運動と似た論理で進められたらいいのではと個人的に思う。

質問: 条約の法的拘束力はどれくらいあるのか。違反すると罰則や制裁はあるのか?
回答: 通常は条約違反がすぐに制裁に結びつくということはほとんどない。今回の合意ができても政治的合意であるので、非難はされても法的責任は問われない。ただ各国が合意に基づいて努力をしていこうという、どちらかというとソフトなものである。

質問: 先ほどタバコの例があったが、核兵器を使用しづらい雰囲気を出すのは難しそうに思われる。どのよう実現できると考えているのか?
回答: 法的に処罰する方向を考えるということは可能である。国に対して刑事罰を課す(賠償)というのは難しいが、個人に対する刑事裁判権は存在するので、国際刑事裁判所で、国の責任者に対して刑罰を課すことはでき、核兵器の使用に対して言うと、侵略、人道の罪のように、核兵器使用の罪のように国際犯罪に入れようという動きもある。

質問: 世界各国の首脳や、社会自体がどんどん変わっていくが、現在までに過去5回のNPT再検討会議に参加したことを振り返り、何か変化があったか。
回答: アメリカ大統領の意向は非常に大きく影響するということが言える。外務大臣や首相が実際に行くというのは重要で、会議の成功にも左右すると思う。

■7■ さらに深く知りたい方へ

このトピックについてさらに深く知りたい方は、以下のサイトなどをご参照下さい。国連フォーラムの担当幹事が、下記のリンク先を選定しました。

2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT)(United Nations)

http://www.un.org/en/conf/npt/2015/index.shtml

http://www.un.org/en/conf/npt/2015/background.shtml

United Nations Office for Disarmament Affairs (United Nations)

http://www.un.org/disarmament/

核兵器不拡散条約(NPT)2015年 再検討会議 (2015年4月27日〜5月22日、 ニューヨーク国連本部)(国際連合広報センター)

http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/13695/

International Campaign to Abolish Nuclear Weapons

http://www.icanw.org/

核兵器不拡散条約の概要 (外務省)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/npt/gaiyo.html

軍縮・不拡散イニシアティブ(外務省)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000031005.pdf

企画リーダー:原口正彦
企画運営:小田理代、上川路文哉、志村洋子、高橋尚子、原口正彦
議事録担当:志村洋子
ウェブ掲載:中村理香