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第9回 2005年10月25日開催

「PKOの3つの視点―ミッション、国連本部、安保理」

国連日本政府代表部参事官
川上 隆久氏

 

質疑応答

 

■Q■ 国連ナミビア独立支援グループ(UNTAG)の場合も、規模は小さいが、DDR(武装解除、動員解除、元兵士の再統合)、選挙登録などを含む包括的なミッションであった。現場でのマネジメントはかなり現場に任されていた。事務総長特別代表(SRSG)の機能強化はいつから始まったのか。

■A■ カンボジアの場合、特別代表はUNTACのヘッドとしてPKOの活動を統括するとともに、暫定プロセスへの関わりについてもシアヌーク殿下とほぼ同等の権限を持っていた。例えば、SNCが決定できない場合に特別代表が代わって判断を下すことができた。しかし、カンボジアで直接に行政を行った訳ではない。東ティモールの場合は、特別代表は同時に「暫定行政官」であり、東ティモールの行政を統括する権限を与えられた。

■Q■ PKOのマンデートの中にDDRをどこまで入れるべきか。ミッション、国連本部、安保理はそれぞれどのように考えているか。

■A■ ミッションはDDだけでなく、Rまできちんとやりたいと考えている。安保理はRの部分はUNDPなどでやってほしいと考えている。DDとRの間のギャップをどうにかしようというのがハイレベルパネルの発想であった。国連本部は両者の間にあって立場を決めかねている。今までで一番Rに近いことを予算に入れたのがリベリアのPKOであった。自分としては、PKOのマンデートのなかにRのスタートアップまでを入れるのはいいと思うが、Rの全て入れるのは行き過ぎと思う。

■Q■ PKO予算は加盟国に支払義務があるが、日本の場合国の通常予算からは出せないため、現在は予備費から支出している。金としては都合が悪く、大きな金である。日本の国内世論と安保理の間に齟齬があるのではないか。

■A■ 国内世論において、PKO予算が多いこと自体がけしからんという議論はいまのところは少ないと思う。むしろ自衛隊の話が議論になる。また、PKO部隊による性的虐待、ミッション後の紛争への後戻りなどの方が問題となっている。

■Q■ 1999年の東ティモールにおける破壊行為は防げなかったのか。

■A■ 1999年春の段階で、政務局は政治ミッションなので文民だけでいいと言っていたが、選挙は治安が大事であり、せめて文民警察が必要であるとPKO局は考えた。自分がPKO局の調査団を率いて現場に行くと、そこでは民兵が徘徊して我が物顔に振舞っているのが目に余った。民兵をコントロールできるのはインドネシア国軍であり、インドネシア国軍と話ができるのは軍人であった。そこで、自分から軍事監視要員を派遣すべきであると提案、インドネシアと交渉の結果、軍事連絡要員という名称の下で50人を入れることになった。インドネシアはもともと、PKOは絶対認めない、現地の治安にはインドネシアが責任を持つと言い張ったが、住民投票の後で起こった破壊行為を止められず、多国籍軍が介入することになった。

■Q■ 選挙を行うには機が熟していなければならないという主張があるが、どういう条件がそろったときが選挙を行うときか。

■A■ カンボジアの場合、選挙をやりたいという強い住民の要望があり、国連は選挙を決行した。問題は、選挙の結果を確保し、法と秩序を維持できるような治安機関・行政制度が整備できているかである。

■Q■ 選挙は国連の活動の中で中心となるのではないか。

■A■ 選挙はミッションの目的と極めて密接につながるツールである。一度は失敗したリベリアとハイチの場合は、ガバナンスの問題があった。選挙後国連がどこまで主導していけるかはケース・バイ・ケースである。

■Q■ 選挙の不正を防止するためには何が効果的か。

■A■ 脅迫が行われないようにするためには、特に選挙所の管理がポイントと思う。選挙所とその周辺も含め、中立的な環境で選挙が実施できるようにする必要がある。

■Q■ PKOの活動は幅が広くなり、現場でのコーディネーションが重要になっているが、実際に機能しているのか。あまりにドナーが多い場合は、日本はいったん手を引き、他国の関心が薄くなったところで支援を行うという戦略はあるか。

■A■ シエラレオネではカントリーチーム自体が平和構築ミッションの中に入っており、それによりコミュニケーション・分配がうまくいくだろうという前提がある。後者の質問に関し、例えば東ティモールの場合はかなり幅広い国際支援が確保されているが、それだから日本が手を引くというのはどうであろうか。日本は第二次大戦の際に占領した経緯もあり、この地域で役割を果たせないというのは問題があろう。

■Q■ 安保理は決議を採択するが執行は行わない。平和構築委員会の報告はどのように行われることになるか。

■A■ PKOのマンデートに直接係るような案件、例えば要員の規模といった問題は、安保理と事務総長の話であり、平和構築委員会は直接関係しない。一方、DDRのRをどうやるかについては、平和構築委員会が議論すべき問題のひとつであろう。

■Q■ リベリアとハイチではなぜ一度失敗したのか。PKOの失敗と成功の分かれ目は何か。

■A■ ハイチでは国連は警察能力の構築に相当に力を入れたが、アリスティド大統領(当時)が警察を適切に使うことができなかった。リベリアではテイラーが選出されたときの選挙自体にも相当問題があったと聞くが、やはりテイラー大統領(当時)の責任と考える。リベリアのようなケースを考えれば、PKOの成否についてはその後の発展も併せて考える必要があろう。


 

(担当:清水)

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