2015年12月26日
国連フォーラム・ワシントンDC開発フォーラム合同
冬のネットワーキング・カンファレンス in 東京
報告書
国連フォーラムは、2015年12月16日に政策大学院大学において、DC開発フォーラムと合同でネットワーキング・カンファレンスを開催しました。オフ会から名称が変更してからは初めての開催となりました。例年同様、国連フォーラム幹事主催のセッションを複数行う第一部の後、第二部として懇親会が開かれ、100名以上の参加者が交流し、親睦を深めました。
【第一部】
第一部では、3つのセッションが行われました。まずスリランカ・スタディ・プログラムの報告が行われ、その後「国連グローバルコンパクトと持続可能な開発目標」について、そして最後に「国連機関・社会におけるジェンダーへの取り組みと今後の日本の課題」と「The UN and Africa - Towards TICAD VI」のセッションが同時進行で催されました。
「スリランカ・スタディ・プログラム報告」(スタディ・プログラム班)
第一部最初のセッションは、スリランカ・スタディ・プログラム(以下SSP)参加者によるSSPの活動報告でした。SSPは、2015年5月から総勢45名で始動し、9月初旬の渡航のみならず、勉強会や事前準備、渡航後のまとめや報告に至るまで多岐にわたる内容を実施してきました。本セッションは、これまでに得た学びの発表(平和構築と持続可能な開発の視点から)、及びそれに基づく会場を巻き込んだディスカッションの二本立てで行われました。
「平和構築」の視点に基づく学びの発表では、内戦終結後の和平プロセスの調査を通じ、SSPのメンバーが民族問題、種々の格差の存在を認識したことから、平和構築に取り組む国際機関の現状・課題について伝えました。 「持続可能な開発」の視点からは、持続可能性を「国連からの自立的・継続的経済成長」と定義づけ、政府によるオーナーシップの重要性について再認識し、スリランカにおける国家・人的資本・環境資源の観点からの政策の在り方について考えを深め、発表しました。
続くディスカッションでは、上記の発表をもとに、よりよい持続可能な社会づくりのためになすべきことについて、会場を複数のグループに分けて議論を行いました。「国際機関や政府という紋切りではなく、NGOの活用など地方や社会的弱者の種々の特性ごとのニーズに応じた支援を行うべき」「民族融和・協力によって国全体の持続可能性が高まるため、まずは彼らの協調を促し、国民全体として統一させる必要がある」等の意見が共有され、それぞれのグループで活発な議論が交わされました。
「国連グローバル・コンパクト」シリーズ 「国連グローバル・コンパクトと持続可能な開発目標」(国連とビジネス班)
続く「国連とビジネス」のセッションは、シリーズ企画として打ち出している国連グローバル・コンパクト(UNGC)に関して、2名のゲストをお招きし、「UNGCと持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマに行われました。
最初に国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の上野明子事務局次長より「GCNJの活動概要とSDGsへの取組みについて」との題目でご講演をいただき、その後、財団法人CSOネットワークの黒田かをり事務局長・理事からも「SDGs達成のために企業に期待すること −NPO/NGOの視点から−」との題目でご講演をいただきました。
上野氏からは、UNGCとGCNJの活動内容について全般的に説明いただいたあと、昨年ニューヨークで行われたUNGC15周年記念のイベントや日中韓ラウンドテーブルなどの活発な活動状況をお話いただきました。特に、GCNJ会員企業・団体の執行役員、部門長クラスを対象とした1年間のプログラムである「明日の経営を考える会(AKK)」において、将来各社の経営を担う方々が企業の社会的責任(CSR)やUNGCに関する中身の濃い議論が行なわれていることを紹介されました。
黒田氏は、開発目標であったMDGsと比べSDGsは、インクルーシブな成長に重点が置かれ、経済・社会・環境を統合的に扱っていくことに特徴があり、その実現においては民間セクターへの大きな期待が寄せられていることを指摘されました。また、SDGsにおいて企業とNGOの連携がより積極的に実現されようとしていることに触れられ、具体的にどのような協業が行われているかについて解説がありました。
その後の会場との質疑応答では、SDGsに民間企業を巻き込んでいく上で国際機関がとるべき行動や、NGO側が抱えている課題、民間企業が国際貢献に積極的な役割を果たしていく上で乗り越えるべきハードルなどについて、双方向での活発な議論が行われました。
「国連機関・社会におけるジェンダーへの取り組みと今後の日本の課題」(国際仕事人に聞く班)
第一部最後のセッションのうちの一つ、国際仕事人に聞く班のセッションでは、「ジェンダーに関する考え方について −国連機関・社会におけるジェンダーへの取り組みと今後の日本の課題−」をテーマにパネルディスカッションが行われました。ファシリテーターに上智大学教授で、元UNIDO勤務および元ILOアジア太平洋地域部長の浦元義照氏、パネリストに立教大学教授で難民を助ける会(AAR)理事長・長有紀枝氏、デロイトトーマツコンサルティング合同会社で人権とジェンダーに携わっていらっしゃる向井真代氏にご登壇いただきました。
「ジェンダー」を軸に、パネリストのお二人からは国際的な業務に携わる女性としてのご経験、ファシリテーターの浦元氏も国連勤務時のご経験を中心に、公私にわたる個人的な経験から組織内および国内外での社会、文化的背景にいたるまで、幅広い切り口からディスカッションが行われました。
海外の事例では、被支援国各国でジェンダーの平等性と意識の高さを感じられたご経験、日本におけるジェンダーの問題の現状が浮き彫りになった事例として、東日本大震災、労働環境、ワークライフバランス、男性への逆差別、特に多くの女性が直面する仕事と妊娠・出産・育児・家事のバランス等が取りあげられ、活発な意見交換がなされました。
性別を問わず誰もが活躍できる環境、組織内の生産性や国際競争力を高めるために必要な事項を考察しながら、海外およびILOの成功例やデータ等も多数ご紹介いただきました。その中で、リーダーがジェンダーにおける平等性を積極的に奨励するリーダーシップ、生物学的違いを尊重しながらも平等性を保っていくセンシビリティ、ジェンダーに関する扱いの規則化が重要事項として挙げられ、"He for she"キャンペーンの紹介や、企業内ジェンダーの取り組みの導入等の提言がなされました。
その後、質疑応答でも活発な意見交換がなされ、上記ディスカッションで提言された内容のルール化、2015年8月に発足したUN Women日本事務所についての紹介等もされました。
「アフリカの今」シリーズ“The UN and Africa - Towards TICAD VI”(私の提言班)
第一部3つ目のセッションのもう一方のセッション、私の提言「アフリカの今シリーズ」特別セッションは、旧・オフ会にも前例がない、GRIPSとの連携による英語を用いたセッションとなりました。日本人女性初の国連職員であり、現在、アフリカ連合アフリカ開発新パートナーシップ機構(NEPAD)総裁特別顧問を務めておられる池亀美枝子氏をメインスピーカーに、4人のアフリカ出身のGRIPSの学生をコメンテーターとしてお招きして、"The UN and Africa - Towards TICAD VI"というテーマについて、白熱した講演、参加者との掛け合いが行われました。
池亀氏からは、対談形式で参加者を巻き込みながら、国連の歴史的背景から始まり、「アフリカが将来の世界の中でいかに大きな位置を占めるか」といった話題、そしてこれまでのTICADプロセスと各回の特徴などについて、心に響くご講演をいただきました。質疑応答において、「日本からアフリカへの投資を増やすにはどうすればいいか」という問いに対して池亀氏は、「日本は米国のようなアフリカからの輸入関税免除といった措置も視野に入れるとよい。リスクを恐れないことが重要」と強調されました。
アフリカ出身の4人のコメントの中には、「アフリカの状況も変化してきている。アフリカに対する否定的なイメージが払拭されてほしい」「日本のメディアは偏っている。英語で情報を仕入れて、アフリカに対しても積極的にビジネス展開をするべきだ」などの声があがりました。
最後の池亀氏からのメッセージでは、「日本にもメディアの多様性が必要だ」「日本人が世界で活躍するには、日本のことをまずよく知り、その上で国の意見ではなく、自分なりの意見を言えることが大切である」などといった力強いお言葉をいただき、会場は興奮した雰囲気に包まれたままセッションが終了しました。
なお、当セッションの内容については、国連フォーラム「私の提言」の記事でご覧いただけます。
「アフリカと国連 ーTICAD VIに向けてー」池亀美枝子
【第二部】
第二部では、立食懇親会が行われました。国連フォーラム、DC開発フォーラムに関する簡単な紹介の後、政策大学院大学副学長の園部哲史氏から乾杯の音頭が発せられました。
第二部には、第一部で登壇された方々も多数参加してくださり、第一部の熱が冷めず、ディスカッションの続きをしているグループも見られました。参加者の中には、国連で勤務したご経験がある方も非常に多く、学生からベテラン国連職員まで活躍の場は様々な100名以上の参加者の間で活発な交流がなされました。 懇親会の終盤には、元国連WFPアジア局長の忍足謙朗氏からご挨拶があり、ご自身の国連における長年のキャリアを踏まえ、若者へのメッセージをいただきました。
どのグループでも会話に花が咲き、時間がいくらあっても話が尽きることはなく、あっという間に閉会時刻となりました。今回の成功をたたえ、また次回への期待を込めて、盛大な拍手で会が締めくくられました。
(オフ会 報告担当:山田 圭介 / ウェブ掲載担当:高橋 愛)
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【参考】主催者について
国連フォーラムは、国連のことをもっと知りたい、国連の活動に貢献したいと考えている実務者、研究者、学生、メディア関係者など幅広い人々を対象として、国連についての 知識を得、議論に参加し、さらには活動に参画する場を提供することを目標としています。さらに、 議論の深化と発信を通じて、参加者にとって有意義な変化を引き出すことを目標としています。
http://www.unforum.org
ワシントンDC開発フォーラムは、グローバルな開発戦略と日本の関わりについて考え、行動に移すための関係者の情報交換・意見交換の場です。フォーラムを通じての交流は、日本や途上国、国際機関所在地など世界各地に広がっています。様々な開発関係者が、組織や場所の制約を超えて情報と知見、更には情熱と気概を共有し深化させることが出来れば、大変嬉しく思います。
http://www.devforum.jp