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ホーム > スタディ・プログラム > MySP >報告書目次>2.2. 第二回勉強会

国連フォーラム主催
「みんなでつくる」 ミャンマー・スタディ・プログラム(MySP)
活動報告書:2.2. 第二回勉強会


 

2.2. 第二回勉強会


日時:9月7日(日)13時〜16時 
場所:東京:JICA市ヶ谷地球ひろば(2階和室)
   北海道:カフェ
   関西:大阪大学豊中キャンパス
   九州:九州大学箱崎キャンパス21世紀交流プラザ

 

テーマ:Strategic Priority1 包摂的成長


—目的
ミャンマーの開発課題について、国連の枠組み(UNDAF: United Nations Development Assistance Framework)における4つのStrategic Priorityごとに勉強していくこととし、Strategic Priority1である「包摂的成長」をテーマに、国連の活動枠組みに基づいてミャンマー経済の現状及び見通しを捉えること、また、どのように包摂性をもった経済発展を遂げていくべきか、について考えることを目的とした。

—勉強会の進め方
東京を中心とし、北海道・関西・九州会場及び海外からの参加者をGoogleハングアウトでつないで開催。計33名の参加となり、勉強会の講師として、大和総研アジア事業開発グループ事業推進チーム 次長 村田素男氏を招聘した。

 当勉強会は、(1)「Strategic priority 1 とは?」、(2) 「ビジネス視点から見た包摂的成長」、(3)「グループディスカッション」、(4)「ゲストスピーカーの講演」の4部構成だった。(1)では国連の枠組みであるStratgic Priorityについて、参加者の山下さんが整理した内容をもとに、参加者の山田さんから説明がなされた。(2)では現在のミャンマー経済の状況につき、概要を説明するとともに、ミャンマーが抱える課題や経済発展の潜在的可能性について、参加者の宮崎さんより発表した。(3)では、ミャンマーの包摂的成長にとって必要なことについて、グループに分かれ、参加者間で議論を行った。(4)ではミャンマー経済・ビジネスに詳しい大和総研の村田氏からミャンマー経済・ビジネスの概要を説明いただき、参加者からの質問にも答えていただいた。

—インプット内容

  1. 「Strategic priority 1 とは?」では主に以下の項目に関する説明がなされた。

    最初にミャンマーの現状として、今後の成長のポテンシャルについての注目度が高いものの、現在のミャンマーは人間開発指数(HDI)が低位にあること、及び経済中心都市ヤンゴンと、国内避難民や民族紛争を抱える地方の格差問題(州別・職業別格差の発生)という二つの格差問題について発表があった。次に、今回の勉強会のテーマであり、United Nations Country Team(UNCT)のミャンマーに対する開発援助における4つのStrategic Priorityの中の1つである包摂的成長(Inclusive Growth)の概念について説明があった。また、ティン・セイン大統領の指導の下に策定されたミャンマー政府の考える重要開発課題に基づいた戦略目標であること、「包摂的」とは結果のみでなく経過においても全ての人の参加が求められるということなど、今後のミャンマー訪問を見据えて非常に重要なポイントについての説明があった。
  2. 「ビジネス視点から見た包摂的成長について」では、以下の項目の説明が行われた。
  3. まず、道路や橋、空港などのインフラ開発だけでは最貧層に受益が行き渡らない問題がある点が指摘された。トリクルダウン効果(高所得者層の所得が増加すれば、購買意欲増等の結果として、低所得者層も徐々にでこそあれ所得向上の恩恵を受ける、という経済理論)の限界を現すものであり、支援の手が最後まで行き届かない、最貧困層(ラストマイル)をよりターゲットとして明確化した形での支援を行う必要性について説明がなされた。また、経済が不安定な国、財政管理が未熟な国にとって、開発援助の借款(借金)の返済は負担であるという事実が、ミャンマーの実例をもとに説明された。  

    次に、ミャンマー経済の成長はいかにして可能かというテーマのもと、国民の6割が従事するのは農業部門であること、従って同部門従事者の所得向上、及び農業従事者が多く住む地方の生活水準の向上の重要性について説明がなされた。そのための一つの方策として、雇用を伴う経済成長の必要性(技術や工場の集積が必要な工業への発展。例:縫製業→製造業)が強調された。ミャンマーの労働人件費は、周辺諸国に比べて非常に低く、外国資本の製造業を誘致する上で魅力的な環境ではあるが、他方、安定電力供給、物流網整備などの課題が残されていることも指摘された。

    その他、外交の絡む二国間援助・国連の開発援助と異なり、外資の民間企業のミャンマーへコミットメントがあるわけではないこと、民間の活力を取り込む必要性、軍部の経済への影響力、政権交代による停滞リスクなどについて説明があった。

  4. グループディスカッションでは、「ミャンマーが包摂的成長を行なうには、あなたはどうすれば良いと思いますか?」というテーマで参加者間で活発な議論がなされた。発言者と主な発言の趣旨は以下のとおり。
  5.    ◇太田:インフラへの投資の仕方、中進国の罠。
       ◇櫻井:インフラ開発促進、内側からの意識改革、経済成長のみに留まらない包摂的成長に向けた新たな指標、政治の安定。
       ◇小池:PEST=政治的(徴税制改革)・経済的(高付加価値生産品輸出)・社会的(ビルマ語の普及・多民族国家としての政策)・技術的(外国企業誘致・技術伝達)。
       ◇川橋:ボトム層農業成長(FAOプロジェクト・稲作生産性向上)、民族紛争の存在。
       ◇佐藤:人材教育(中間技術者層・行政官・初等中等教育)、農業改革(生産性改善、流通販売まで)、日本からの援助のスタンス。

  6. ゲストスピーカー講演 
  7. 勉強会の最後を締めくくる形で、大和総研の村田素男氏から以下のようなお話を頂いた。

    ミャンマーには東南アジアとインドの性質が混在している。土地代が高い(軍の土地所有によりヤンゴンには土地が少ない)上に電気代が高く、しかも電力供給が不安定で、その結果頻繁に起こる停電のため、安定した製造業の活動に支障が出てしまっている。

     歴史的に見ると、戦後直後ミャンマーは割と発展していたが政策的失敗により経済成長が遅れてしまった。特に事実上の鎖国状態になってからは、経済制裁により低迷した。

    日本企業と韓国企業の違いとして、日本企業はミャンマー周辺国との比較により進出を決める。視察が多く、進出の決断が遅い。ボトムアップ型で一度決めたことは破らないが、即断して、後で調整するトップダウン型の韓国企業のやり方の方がミャンマーへの進出には向いているといえる。

    ミャンマーへの投資の障害としては、上述した不安定電力供給、高い土地代に加え、規制の不透明さ、コンプライアンスに縛られている。例えば新たにビジネスで組もうとしても、SDN(Specially Designated Nationals and blocked Persons) リストに載っていることで実現しないこともある。

    ミャンマーは将来のビジョンを議論する段階(どんな産業をどう育成をするか)にある。それに関連して、どんな産業を誘致していくかというビジョンも必要。

−参加者の声

–そのテーマに関する勉強会にくる前の印象
 ミャンマーの民主化に伴う欧米による経済制裁の緩和や開発援助の再開とともに、民間企業の進出意欲が高まっている時期ということもあり、ミャンマー経済の発展に積極的・前向きなイメージが先行しがちであるなか、逆にミャンマー経済発展におけるボトルネックや弊害といった負の側面についても学ぶことで、ミャンマーの現状を冷静に分析したいと考え、勉強会に参加した。国連の枠組みで重視されている経済成長における包摂性を考えるというのは重要な視座であるが、実際の実行段階において、自由な経済活動を行う民間企業や経済政策を考えるミャンマー政府は、具体的にはどのように考えるのか、という問題意識をもって勉強会に臨んだ。

–勉強会で学んだこと・発見したこと・疑問に思ったこと
国連を含めた開発援助機関は、民間企業や経済のメカニズムでは行きわたらない部分を公的に支援していく形で、ビジネスの世界とは別に動いている印象をもっていたが、今回「包摂的な経済成長」というテーマで国連による取組みと民間企業による取組みの双方を考察したことで、今後は経済活動の主体と、開発援助の主体がWin-Winの関係を目指して協働していくような可能性があるのではないか、と考える機会となった。