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国連フォーラム主催
「みんなでつくる」スリランカ・スタディ・プログラム(SSP)
第2節 訪問機関
第3項 労働支援
6.国際労働機関(ILO)第4項 教育
7.セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
8.コロンボ大学
9.国立教育研究所
第3項 労働支援
No | 6 | 訪問日 | 2015/09/08 | 訪問機関 | 国際労働機関(International Labour Organization: ILO) |
訪問事業名 | |||||
Local Empowerment through Economic Development (LEED) Project |
ILO農業協同組合前にて | 作業中の女性ILO包装作業所にて |
訪問先事業概要
事業地訪問における主要論点
- 高付加価値作物の輸出による経済的基盤整備を主軸に据えた持続的雇用形態の構築。
- 社会的弱者を包摂した一からの社会構築。
- 地域経済活動の支援および、地域経済と市場(スリランカ南部更には国外市場)との橋渡し。
主な議論内容・質疑応答内容
市場分析と高付加価値作物の分析および発展がILOの強みであるという。加えて、現地の人々に農林水産業に必要なノウハウの提供を行っている。その一環として、漁業に必要な船を作る企業を民間が中心となって立ち上げている1 。
Q:ILOによる事業終了後の歩みは?A(村人):紛争中、シンハラ人のことを悪であると教わってきたが、実際に会ってみたところ悪い人々ではなかったと感じている。
1ILO東京事務所「平和、繁栄、パパイヤ」, http://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_351057/lang--ja/index.htm, accessed on 27 October 2015.
参加者の所感
第4項 教育
No | 7 | 訪問日 | 2015/09/08 | 訪問機関 | セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(Save the Children Japan: SCJ) |
訪問事業名 | |||||
(1)ECCDセンター(幼稚園) (2)Mullativaikkal East Government Tamil Mix School(小学校)における教育事業 |
Mulattivaikkal East Government Tamil Mix Schoolにて
訪問先事業概要
- ECCDセンター(幼稚園)
2013年11月より事業開始。国際協力機構(Japan International Cooperation Agency : JICA)の投資により建設。SCJが子どもの保護者を対象にした能力向上と意識啓発研修や教員への研修などを実施。 - Mulattivaikkal East Government Tamil Mix School(小学校)
2014年5月より事業開始。日本の民間基金からの投資により建設。SCJが教員への研修や経済的に厳しい状況下の子どもへの教材・制服の提供などを実施。
2Save the children Japan, http://www.savechildren.or.jp/about_sc/, accessed on 16 November 2015
事業地訪問における主要論点
- 心のケア
- 意識改革
- 教育上の格差
主な議論および質疑応答内容
- ECCDセンター(幼稚園) 概要:同幼稚園は2013年に創設され、約15人の生徒が通園している。通っている生徒はタミル人がほとんどである。 就学前教育の位置づけ:渡航前勉強会においては、就学前教育の位置づけがいかなるものかに関して議論が頻繁に行われた。SCJによると、あくまで就学前教育は学校生活に必要な社会性を身に着けることが最も大きな目的とのことだった。 SCJと保護者の間の意識の差:ただし、SCJ側が社会性を育てることを第一目標にしている一方で、保護者の間では、英語教育などをはじめとした勉学面を重視してほしいとの意見が強く、SCJと保護者の間に就学前教育に対する意識の差があるとのことだった。その差を埋め合わせお互いが歩み寄ってよりよい就学前教育を行うために、意識改革を目的とした保護者への意識啓発研修などを積極的に行っている。
- Mulattivaikkal East Government Tamil Mix School(小学校) 概要:同小学校は2014年に創設され、19人の学生が通学している。通っている生徒はタミル人がほとんどである。 心のケア:SCJとSSP参加者の間で最も大きな議論となったのは、紛争後の心のケアの問題である。紛争による心のケアをする機関や仕組みは現時点で皆無に等しく、紛争のことには触れないようにしているとのことだった。また、紛争の根本原因として民族対立があるはずであるが、歴史教育は世界史しか行われていないとのことだった。 教育上の格差:都市部と比べると、やはり地方の学校は勉強するための環境が整っていないことが多く、受けられる教育の質に格差が出てくる(地方間格差)。また、経済的に豊かな人の方がよりよい教育を受ける機会が多く(経済格差)、タミル人よりシンハラ人の方が都市部に多い分、よい教育を受けられる可能性が高いとのことだった(民族格差)。
参加者の所感
渡航前から「スリランカは就学率や識字率が高く、一見教育が上手くいっているように見える一方で、実際は教育の質に格差が存在するのではないか」という仮説を持っていたが、その仮説がある程度妥当であったということを今回の訪問を通して感じた。
都市部ではなく地方の学校や幼稚園は、勉強できる環境があまり整備されていないことなどを実感し、そのような格差を是正するためには何ができるか、自分なりの考察を試みていた。しかしながら、SCJの職員さんが「以前は教育上の平等を実現するために、地方の人向けの奨学金などが支給されたりしていたが、一部の人のみを優遇するのは公平ではないという趣旨の下、それが廃止された」という話をしてくださり、教育上の実質的な平等とは何なのか、そのために何をすべきなのかを、より深く考えていくことが必要だと強く感じた。また、スリランカの真の平和を実現するためには、内戦による心の傷を癒すことが必要不可欠なはずであるのに、それに触れないようにしている現状の教育を変えなければならないのではと考えた。No | 8 | 訪問日 | 2015/09/06 | 訪問機関 | コロンボ大学(University of Colombo) |
訪問事業名 | |||||
内戦後のスリランカの状況に関する講義およびグループ討議 |
グループ討議の様子
訪問先事業概要
内容は以下の通り。
- SSP参加者によるSSPの説明
- Dr. Assesおよび大学院生によるスリランカの現状についての説明
- 「スリランカの未来について」をテーマとしたSSP参加者と大学院生のグループ討議
グループ討議の内容
スリランカの未来について全体を6班に分けて議論を行った。議論の内容は多岐にわたったが、どの班についても政府の政策についての議論が大半を占めた。
問題意識として多数派のシンハラ族と少数派のタミル族の関係性について議論した班が多く、”One Nation, One People, regardless of religion and race” (多民族国家、シンガポールの国家ビジョンより引用)や“Peaceful Coexistence” (平和的共存)をどのように実現するかというテーマでディスカッションした班もあれば、“One Nation, One People”(一民族一国家)という体制を推奨する班もあった。
その他にも、「発展を続けている都市部と政治的に取り残されている北部の関係をどのようにすればよいか」や、「汚職や賄賂などに起因する政治家に対する不信感をぬぐうことができるのか」などの問題について議論が交わされた。
参加者の所感
No | 9 | 訪問日 | 2015/09/10 | 訪問機関 | スリランカ・国立教育研究所(National Institute of Education) |
訪問事業名 | |||||
研究所における事業の内容や、スリランカの教育事情についての説明 |
研究所の方々との集合写真
訪問先事業概要
スリランカ事務所における主要論点
- スリランカには、学校が10,000校、生徒が400万人、11の試験がある。
Grede11, 13の試験結果が、その後の進路決定に大きな影響を与える。また、40%の学生は不合格となり、公立校には進学できず、私立校および専門学校に進学する。 - 国外への留学生も多く、イギリス、オーストラリア、マレーシア、中国、タイ、日本などが留学先となっている。留学後、帰国する学生の割合は15〜20%ほどである。
- スリランカでは言語による問題を解決するため、母国語以外に第二言語として、タミル語、シンハラ語、もしくは英語での教育を取り入れている。
主な議論内容・質疑応答内容
母国語での教育を第一に行う。第二言語としてもう一つの言語(タミル語またはシンハラ語)、上記に加えて英語教育を行っている。言語問題による教育へのアクセスの格差を減少させるため、タミル地域においては、特にタミル語のできる教員数増加や英語教育を推進している。英語教育は高等教育を受けるために必須であり、英語教師の育成を強化している。
(2)紛争教育
約25年にわたる内戦について、2009年より主に北東部の300校で、特別なカリキュラムを提供して歴史教育を行っている。具体例として、シンハラ人とタミル人の融和と共生に関して、内戦被害からの回復法などを、授業内容として扱っている。
学校が職業訓練を実施している場合もあるが、2012年からは職業訓練学校がその役割を主に担っている。機械学や生物学など、学べる範囲は様々であるが、特にエンジニア育成と観光学を強化している。教育と職を得ることは密接に繋がっているが、最大の課題は充分な職業機会がないゆえに発生する高い失業率(18〜30%)である。そのため、高等教育への進学支援以外での取り組みが必要とされている。
参加者の所感
また、講演では、現在高等教育への進学率が低いことや留学後に海外流出してしまうことが課題として議論されていたが、今後の経済成長には高等教育への進学率を増やすことよりも、就学前教育や初等教育に注力しようとしている点は意外であった。しかし、工業や産業での人材育成には、専門性に長けた人を育てることも重要である。今後、スリランカがどの分野での経済成長に焦点をあてるかによって、教育面で重点的に支援をしていく対象も変わってくるであろう。
第2部 第3章 第2節 訪問機関 の他の記事も読む
第1項 食糧安全保障
1.国連食糧農業機関(FAO)
2.国連世界食糧計画(WFP)
第2項 人の移動・移住
3.国連人間移住計画(UN-Habitat) 北部事業地
4.国連人間移住計画(UN-Habitat) コロンボ事務所
5.国際移住機関(IOM)
第3項 労働支援
6.国際労働機関(ILO)
第4項 教育
7.セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
8.コロンボ大学
9.国立教育研究所
第5項 子どもの支援
10.国連児童基金(UNICEF)
11.サルボダヤ職業訓練センター(SVTC)
第6項 難民保護
12.国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
第7項 経済・金融
13.世界銀行(WB)
14.アジア開発銀行(ADB)
第8項 開発
15.国連開発計画(UNDP)
16.国際協力機構(JICA)