「21世紀の地球と環境」
UNEPアジア太平洋地域事務所次長
西宮洋(にしみやひろし)さん
略歴:
1954年(昭和29年)8月28日愛知県豊橋市生まれ
73年 愛知県立時習館高校卒
78年 京都府立大学農学部卒
78年 環境庁入庁(造園職)
79年 阿寒国立公園管理官(他2国立公園管理官を経る)
86年 外務省国連局社会協力課課長補佐
89年 環境庁自然保護局野生生物課鳥獣保護専門官
92年 外務省在ブラジル一等書記官
95年 環境庁自然保護局企画調整課課長補佐
97年 山陽四国地区自然保護事務所次長
99年 JICAカンボジア環境省大臣顧問
2001年 環境省総合環境政策局民間活動支援室長
02年 環境省東北地区自然保護事務所長
05年 UNEPアジア太平洋地域事務所次長
(現在に至る)
はじめに
地球環境問題は歴史的に見て1970年代のオゾン層破壊問題から徐々に人口に膾炙されるようになったが、近年ではG8サミットや国連総会でも最優先課題として認識され、国際政治の主要議題にまで昇華している。
特に、地球温暖化防止対策は昨今の世界の焦眉の急となっているが、地球温暖化による気候変動は、人間に例えると長年の不節制がたたって高血圧、高血糖などにより総合的に悪症状が発現するメタボリック症候群とよく似ている。この病気の治療方法は体内に摂取するエネルギー総量を減らし、運動により体内の贅肉(無駄な脂肪)や老廃物を削減して代謝を良くすることである。
地球温暖化防止の究極目標は地球温暖化ガスの最大原因である化石燃料の消費を大幅に削減することである。その目的のための最大公約数的手段は、
1.いずれ枯渇する化石燃料の消費を減らし再生可能なエネルギー源に代替する
2.浪費をやめ、世界の社会経済及び我々の生活の中での無駄を徹底的になくす
3.あらゆる物及びサービスなどのエネルギー効率を徹底して向上する
ことである。そして最終的には現在の社会経済構造を合目的的に大改造することである。それ故、地球温暖化防止政策はエネルギー政策、産業経済政策および社会政策そのものであるともいわれている。
一方、最近は地球温暖化問題ばかりに焦点が集まっているが、地球温暖化だけが深刻な地球環境問題ではない。地球温暖化は気候を変動させ、地球の物質循環系や生態系、水の分布や土地の形質を今までと異なる形態にダイナミックに変化させてしまう。その結果、人類が営々と築いてきた社会、生産及び災害防止の基盤の再構築が迫られている。しかし、地球温暖化以外にも深刻な環境問題は多々ある。その中でも地球温暖化問題にも匹敵するものが「生物多様性の劣化及び喪失」問題である。また化学物質も生物多様性に致命的な影響を与える。
生物は有機体であり、その生物の集合体である森林や湿地、草地などの自然は、微生物から植物、哺乳類までに至る生き物の生存及び生活の場であるが、有史以来、特に産業革命以降の人類活動の拡大によってこれらは急速に消滅してきている。喪失または分断された自然は生物種を徐々に減少または絶滅させると同時にその水源涵養や環境浄化などの生態系が有する機能をも劣化及び消滅させ、人類は「自然の恵」を得ることが難しくなる。
他方、地球上に大量に放出・拡散され、堆積や食物連鎖などによって蓄積された化学物質や重金属は生物の遺伝子及び種の変化や劣化をもたらす。そして年々増加するこれら「負の遺産」の歴史的蓄積はやがて地球の活力を低下、さらには地球及び地球上の生物に致命的な危機をもたらす可能性を有している。
本稿では、地球環境問題の歴史的展開から地球温暖化防止対策、生物多様性保全など地球規模環境問題の課題などについて述べることとする。
1.地球温暖化対策の前哨戦
1−1.1987年オゾン層保護条約モントリオール議定書の採択
1−2.オゾン層保護条約モントリオール議定書の意義
2.地球環境問題の特質
2−1.地球環境問題の特質
2−2. 京都議定書の意義
2−3. ポスト京都議定書の課題
2−4. 地球温暖化により発生する紛争、環境難民
2−5. 地球温暖化防止対策の欠陥、副作用
3.地球温暖化に関連する地球環境問題
3−1.地球の劣化とその影響
3−2. アジア太平洋地域における地球温暖化問題
4.地球温暖化対策の先に見えるもの
4−1. 今後の地球環境問題で特筆すべきこと
4−2. 地球温暖化問題と化石燃料枯渇問題との関係
5.おわりに
1−1.1987年オゾン層保護条約モントリオール議定書の採択
2007年はオゾン層保護条約モントリオール議定書が1987年に採択されて20周年に当たり、9月には採択地モントリオールで盛大な記念式典が行われた。
筆者は当時外務省国連局社会協力課に出向しており、モントリオール議定書交渉や国内調整を担当し採択外交会議にも出席してこの歴史的な環境外交の成果を実体験した。
モントリオール議定書も先般の地球温暖化防止条約バリ会議同様、欧州と米国との対立とすざましい駆け引きが会議最終日までもつれ込み、一時は決裂かと各国代表団の間でささやかれたが、土壇場で米国が欧州に妥協して合意に至り議定書が採択されたものであった。採択後の夕方、UNEP事務局長主催のささやかなカクテルパーティーが開かれ殺気立った採択前の交渉とは打って変わって各国出席者は喜びを共有して談笑した。しかし、パーティーの後半になると欧米の出席者の話題は既に地球温暖化防止枠組みをどうするかに移っており、別れ際の挨拶で「じゃあ、次は温暖化防止枠組み検討ワークショップで会いましょう!」といって三々五々帰っていったことを記憶している。そして1年後の1988年のサミットにおいて初めて地球温暖化問題が議題に取り上げられ、地球温暖化問題の交渉が公式に始まった。温暖化防止京都議定書採択9年前である。
モントリオール議定書の評価は様々な論文等で述べられているが、最も重要な意義は次のとおりである。
@ オゾン層破壊物質とオゾン層破壊の科学的因果関係を科学者が証明して政治、
社会を納得させた上で、地球環境保護の予防的措置として対策を講じることを
世界が初めて約束したこと
A規制対象物質がスプレーや冷蔵庫など市民レベルまで人類に汎用的に使用され
ていた物質であったこと
B規制対象物質の生産、貿易及び消費を総合的に規制したこと
C開発途上国での規制対象物質の削減を先進国が全面的に支援したこと
オゾン層を破壊するフロンガスが初めて合成されたのは1928年であり、その後フロンガスは人畜無害の非常に有益な合成化学物質として世界で広く、かつ大量に使用されてきた。しかし、1973年に科学者が大気中にフロンガスの存在を検知し、さらにこの物質が成層圏オゾン層を破壊することを発見してからは、科学者による真実の探求とその成果を政治・社会・経済がどのように認識して世界が効果的な対策を講じるかに長時間の議論が費やされ、その成果として1985年オゾン層保護ウイーン条約及びフロンガスなどを規制する1987年オゾン層保護条約モントリオール議定書の採択に至ったものである。これは多種多様な温暖化ガスを規制する京都議定書の予行演習となっていた。
この手法と経験は、後の地球温暖化防止条約及び京都議定書採択の「予防原則」を形成する際の根幹となり、IPCC(Intergovernmental
Panel on Climate Change)の設立へと引き継がれていった。
地球環境問題への対策は、人為による地球への影響を、地球の大気・水・海流の循環、人間を含めた生物の生命、そして地球生態系における命の連鎖との関係の中で科学的に評価し、人為による影響が地球の自然回復力の範囲内に収まることを将来にわたってどのように保障するかである。
しかしながら、地球環境問題は従来我々が認識してきた自然破壊や水質汚染などの典型7公害と大きく異なり、次のような特質を有している。
@ 原因と被害との因果関係の証明、被害の発現場所と形態の質と量などを科学
的に予測することが難しく、かつそれらに大きな費用と長い時間を要すること
A 原因者(加害者)と被害者が異なること。また、地球温暖化のように濃淡は
あっても人類全員が原因者になっている場合があること
B 被害の発現場所が原因者所在地と異なることがあること
C フロンガスやCO2のように地球環境問題の原因物質が必ずしも生物には直接有害ではないが、長期間にわたって蓄積されると別な形で被害が発生することがあること
D 原因から被害発生まで長時間を有し、世代間での因果応報があること
E 地球温暖化やオゾン層破壊のようにその問題や被害が見えなかったり、実感・認識しにくいこと
F 上述の理由により、原因者に加害者意識が低いこと
G 地球温暖化など長期間を経て原因物質が蓄積され、その影響がある時点(Point of No Return)を超えて発現したときには誘引された現象は回復不能となり、それによる被害が加速されること
H 交渉や政策立案には50年、100年といった超長期の展望が不可欠であること
このような複雑な問題の存在が地球環境問題解決への国際合意を極めて難しいものにしている。
上述の課題があったとしても、全世界5000人以上の科学者の英知を集めたIPCC が科学的データを蓄積しつつ温暖化ガスと気候変動との因果関係を証明するとともに温暖化の被害評価及び回避の道筋などを科学的に検討し、その成果を地球温暖化問題の内容や構造を目に見える形で政治(政府)、社会(市民)及び経済(企業)に提供し、近未来に迫る地球の危機に対して世界が経済的な対価を支払ってでもその危機を回避するという国際合意(京都議定書)を獲得したことは、今までの地球環境問題への人類の取り組みを完成度高く確立したとして極めて高く評価されよう。IPCCがノーベル賞を受賞したことに異論を挟む余地がないと思われる。
京都議定書の主な歴史的成果は次のとおりである。
@科学的に予見される危機に対して、予防原則に基づき危機回避の国際合意がな
されたこと(予防原則の初めての具体化)
A科学、政治、社会が統合された合意を形成したこと(科学成果の政治決定への
反映という革新的方法論)
B「共通だが差異のある責任」の具体的手法の合意(先進国と開発途上国との責
任の明確化による合理的協調)
C環境保全のために初めての大胆な経済的手法の導入(CDM(注1)や排出権取引(注2)という外部不経済の内部化手法の確立)
(注1)Clean Development Mechanism。先進国と開発途上国が共同で地球温暖化ガ
ス削減プロジェクトを途上国において実施し、そこで生じた削減分の一部を
先進国がクレジットとして得て、自国の削減に充当できる仕組み。
(注2)地球温暖化ガス全体排出量を抑制するために、あらかじめ国や自治体、企
業などの排出主体間で排出する権利を決めて割振っておき(排出権制度)、
権利を超過して排出する主体と権利を下回る主体との間でその権利の金銭的
売買をすることで、全体の排出量をコントロールする仕組み。
(EICネット環境用語集より)
2007年12月に開催された地球温暖化防止条約及び京都議定書バリ会議(COP13・MOP3)では、2012年に終了する京都議定書の後継議定書を2009年末までに合意する行程表「バリ・ロードマップ」を採択した。将来の削減目標や具体的対策内容は今後の交渉に委ねられたとしても、過去に大気中に累積された「歴史的」温暖化ガスをまずは京都議定書に従って先進国が率先して削減し、その後開発途上国も参加して世界が一致して削減するという合意が出来たことは、「共通だが差異のある責任」原則に従って世界が協働を約束したという意味で大きな前進であった。
上述の通り、地球温暖化対策の課題は複雑多岐であり、それらを一つづつ解決するための具体的対策をこれから提示していかなければならないが、公平・合理的な温暖化ガス削減の量と方法、先進国の開発途上国への支援方法と額など各国間の意見の相違の根底にある主な問題点を列挙すると次のとおりである。
@先進国、開発途上国を問わず、将来に向けて地球温暖化防止に必要な温暖化ガ
ス削減量と地球温暖化に伴う対策や被害の費用を、歴史的な温暖化ガス排出量蓄積の責
任を含め、誰が、どの程度、どのように責任を持ち負担すべきかの基準が不明
確
A先進国が今まで排出してきた温暖化ガスの蓄積が温暖化の原因なのにこれから
発展しようとする開発途上国が何故制約を受けねばならないのかという開発途
上国の不満の存在(開発途上国からの削減量緩和要求)。
B過去から大量に温暖化ガスを排出・蓄積してきた先進国(原因者)と南太平洋島
嶼国のように温暖化ガスをほとんど排出してきていないにもかかわらず海面上
昇により国土喪失という甚大な被害を受けるというような開発途上国の怒りの存在(開発途
上国からの地理起因被害補償要求)
世界が一致して地球温暖化防止に取り組むためには公平かつ各国が納得できる排出削減基準が必要である。歴史的なCO2蓄積を行ってきた先進国の責任は当然重いが、人口が多い中国、インド、ブラジルなどの国の責任も大きい。特に中国、インドという先進国と一桁人口の多い国は、一人当たりの排出量が少ないことを理由に削減を先進国に押し付けているが、中国で言えば資産を100万元(14万USD)以上所有している国民は人口の3.3%、約4300万人もいる(中国マスコミ報道)。これは北欧諸国やオランダ、スペイン、ベルギーなどの各国人口よりも多い。インドやブラジルも同様に大きな富裕及び中間層を有している。しかし、大多数を占める貧困層は地球温暖化ガスの排出量が極めて少ないにもかかわらず気候変動の影響を強く受けやすく、またそれへの適応能力も最小である。
京都議定書に基づき削減義務を有する先進国が目標年である2012年までに目標を達成しても世界の温暖化ガス排出量は依然として増え続け、それは被害の到来を早め助長する。そしてその被害を最も大きく受けるのは、国土が広くかつ人口が多く、そして貧富の格差が大きい国である。トリッキーな数字の提示は不毛な議論と時間を浪費するだけである。
さて、2008年7月には日本でG8サミットが開催される。現在まで、EUが主導権を握って国際合意を迫っているが、2007年12月のバリCOP13以降2009年末までにポスト京都議定書に合意するためには、2008年半ばまでに主要な対策を決定する必要がある。その意味で、2008年7月の日本でのG8サミットは決定的に重要性を持つ。
G8サミットでは
@長期的な排出削減目標の設定(2020年、2050年の目標)
A排出権取引制度整備(開発途上国の温暖化対策資金確保及び先進国の排出
権確保を目的とする)
ア.企業間の排出権取引制度(産業界の大口排出権取引)
イ.個人、NGOsレベルの排出権取引制度(国民対象の小口排出権取引)
B産業分野別の国際的削減制度
C開発途上国の地球温暖化ガス削減制度
D先進国による開発途上国支援制度
などの議論と基本的合意が期待される。
2007年12月にUNEP等は「Climate
Change as a Security Risk」という非常に興味深い報告書を公表した。地球温暖化が環境上脆弱な地域における紛争の悪化を指摘したものである。
少し話がそれるが、生物の生存の最大目的は「種の保存」であり、その生命体を維持するため食べ、水を飲む。そして高等な動物は、繁殖と食物確保のため「縄張り」を作り、その縄張りを侵そうとするものは敵として徹底的に排除し、場合によっては殺戮もありうる。一方、温暖化への生物の一般的な対応は、より涼しい地域への「移動」と飲食物が不足またはなくなったところからの「脱出」である。
人類の歴史上、戦争や紛争の究極の原因は「水」、「食料」及び「エネルギー(自然資源燃料)」の争奪にあった。地球温暖化は旱魃や自然災害を増加させて自然資源を喪失し、水の地上分布を変化させ、特に熱帯や亜熱帯では気温上昇による作物の不作と従来の耕作適地を北上させる。そのため、環境と自然資源に大きく依存する人々、特に開発途上国の貧困層は災害被害地からの「脱出」と新たな「水」及び「食料」のあるところへの移動を余儀なくされ、その結果移動先の先住者と軋轢を生じるのは必定である。
最近の世界状況を見ると、開発途上国などの貧困層などには、宗教・人種・部族・階級・社会格差などによる理不尽な差別や不平等に加え、石油価格高騰に伴う製品・サービスの高騰、バイオ燃料による食品価格高騰、温暖化による水不足と食糧生産応力の低下、さらには増加する自然災害などにより、自分の能力のみでは打開できない社会・生活上の困窮が増加し、人々の間にストレスや不満が充満し始めている。ケニアなどの社会的混乱はその典型かもしれない。
地球温暖化の対策は、温暖化ガスの削減(緩和)とその被害などの最小限化(適応)の2つに大分される。しかし、地球温暖化によって誘引される紛争は、場合によっては第3番目の「紛争予防措置」対策として位置づけられるべきであろう。
地球温暖化は人類未経験の現象であり、それ故その対策も新たな手法や試行錯誤的な要素を含んだものも散見される。地球温暖化対策として京都議定書では様々な新機軸の対策が採択されたが、その代表的なものが削減目標を達成するための柔軟性措置(京都メカニズム)として、「排出量取引」、「クリーン開発メカニズム」(CDM)である。しかしながらこのような野心的な対策も運用方法によっては様々な副作用をもたらしている。具体的には次のような問題を指摘することができる。
@炭素価格
CO2排出権マーケットで取引される炭素は1トン当たりの価格がつけられているが、開発途上国と先進国との経済格差による炭素価格差や、例えばニューヨーク・セントラルパークの木が持つCO21トンと熱帯原生林の木が持つ1トン、東京高尾の植林された杉の木1トンの炭素価格は同じであろうか?特に熱帯原生林は生物多様性保全や水循環などに重要な役割を有しているが、このようなことが炭素価格に考慮されるのであろうか。今後議論が進むことが期待されている。
ACDM(Clean Development Mechanism)
CDMは、先進国の資金や技術支援により、開発途上国で温室効果ガスの排出削減等につながる事業を実施し、その事業により生じる削減量に相当する量を先進国が排出枠として獲得できる制度である。しかし実体は先進国の削減義務が開発途上国での削減となって移転しているだけである。
この制度の最大の問題点はその「動機」である。即ち、ODAは基本的には開発途上国側の必要性と要請に基づき行われるが、CDMは「先進国の必要性」と先進国からの働きかけによって行われる。問題点は次のとおりである。
−CDMは世界全体のCO2削減に貢献しているか、先進国の削減のみに貢献して
いるのではないか
−先進国から開発途上国に移転される資金と技術が開発途上国が真に主体的に
望む公害防止やCO2排出削減の手段となっているか(単に開発途上国排出権
と先進国資金を交換しているだけではないか)
−資金が動く事により開発途上国の真摯な公害防止などを妨げる結果とならな
いか
CDMの対象となる開発途上国の工場などは、設備が老朽化したりエネルギー効率など生産性が悪く大量の地球温暖化ガスを排出している場合が多い。そこに突然前後の脈絡なく大きな資金と技術が投入され、工場所有者と仲介者などに大きな利益をもたらしているという報告(中国など)もある。
CDMには国連の厳しい審査があるが、筆者がもし開発途上国の目先のきく工場経営者であれば、法律に抵触せずかつ採算があう範囲内で老朽化した施設、旧式な設備で温暖化に大きく貢献するガスを大量に排出しながら製品を製造する。そしてCDM事業となることを何年でも待つ。結果として温暖化ガスの放出量は増加する。
先進国の必要性に基づき先進国の利益を優先させ、かつ開発途上国にあぶく銭的な金銭的な利益をもたらす制度は、開発途上国ではかえって制度の最終目的(地球温暖化防止)を逸脱した悪結果をもたらすことがある。
温暖化ガス削減は今後2050年まで世界中で厳しい削減が求められる。制度を悪用して利益追求に進まないよう、欠陥を常に改善することが必要である。
B排出権取引
排出権取引は現在主にEU域内で行われており、今後は開発途上国を含めた域外に拡大する可能性がある。排出権取引が成立する基本条件は、全体の削減目標を設定し各国に排出権枠を割り当て、義務として削減を実施することである。ポスト京都議定書交渉でEUが世界の削減目標設定を強く主張しているのはEUの排出権取引制度を世界標準としたい意図と言われている。市場での取引は公正で、その取引は合目的的でなければならないが、現在の排出権取引では次の問題点が指摘されている。
−取引価格の基本となる各国の排出枠(上限)が政治的に決まり易いこと
(枠が大きく、実際の排出量との差が大きいと価格は安くなる)
−排出権取引制度は世界の地球温暖化ガス総排出量の減少に真に貢献するか
(排出量の移動だけで、トータルでは削減にはならないのではないか)
−投機的な資金の参入により排出権取引価格が高騰することはないか
(将来的な需要が見込まれる場合、地球温暖化防止という目的とは別に投機
資金が入る可能性がある)
Cバイオ燃料
上述の制度的問題に加え、さらに明らかに問題があると指摘されている地球温暖化防止対策の一つが、バイオ燃料である。
バイオ燃料は理論上は地表上のCO2を吸収した植物から生産され、消費しても地表のCO2収支がゼロとなることから化石燃料の有力な代替・再生可能エネルギーとし期待されている。しかしながら現在指摘されている大きな問題は、製品としてのバイオ燃料が真に期待通りに石油代替エネルギーとなっているか、CO2の純削減に貢献しているか、さらにはバイオ燃料が既存食料を原料とするためその増産が世界の食料需供バランスを崩して価格を高騰させ世界の食糧安全保障を脅かす恐れがある。またその原料植物栽培に当たっては、土地・生物多様性・環境といった様々な分野に多大な影響を及ぼすことが懸念されている。
このようなことから、今後はセルロースや海藻を原料としたバイオ燃料も有望であることから、既存食料を原料とするバイオ燃料をガソリンや軽油の全面的な代替燃料とすべきではないとして、一部マスコミやNGOsからバイオ燃料生産を当面5年間凍結して生産増加に伴う社会経済に与える影響やライフサイクルアセスメントを十分実施してから再開すべきであるとの意見も出されたが、先進国では京都議定書遵守のため既にバイオ燃料による石油とCO2の削減量が計画に組み込まれているためこのような意見は採用されなかった。
〔インドネシア熱帯林〕
(出典:The Last Stand of the Orangutan : State of the Emergency
. Illegal Logging, Fire and Palm Oil in Indonesia’s National
Park (2006 UNEP/UNESCO))
原生林
オイルパームなどのプランテーションのために伐採された熱帯林
バイオ燃料の問題論点は次のとおり。
ア.バイオ燃料は真にCO2の削減になっているか(生産国でのプラント建設、生産、輸送等の段階で石油
を使うため、トータルではエネルギー収支が1以下となり、それによりCO2も
削減にはなっていないのではないか
イ.そのため、バイオ燃料輸入国だけの消費を見てCO2削減というのはトリックではないか
ウ.世界の将来需要に対して十分な耕地は確保できるか(地球上の全耕地面積で
原料を栽培してエタノールを生産しても、現在消費されているガソリンに置き
換えることは不可能)
エ.原料需要の面で既存食物と競合しないか
オ.大豆をトウモロコシに転作するなど 連鎖的に他の穀物等のの需給バランスを壊し価格を上昇させているのではないか
カ.オイルパームやサトウキビ等原料生産のための新規農地開拓で森林や湿地の
破壊をもたらしていないか
キ.森林放火や、泥炭湿地でのパーム栽培では湿地乾燥化で却ってCO2の放出が増加しないか
ク.原料単一栽培地で生物多様性を損ねていないか(化学肥料、農薬使用影響を
含む)。
ケ.バイオ燃料は一般の燃料に比べCO2の約310倍の温室効果を持つ亜酸化窒素
の放出が2倍となり、かえって温暖化を促進するのではないか
この外、バイオディーゼル燃料の候補となっているナンヨウアブラギリは食用にはならず、また痩地でも育つため既存食料生産とは競合しないといわれているが、痩地で育つ植物を農作物とした場合、物質循環の上で持続生産可能か疑問である。
「バイオ燃料は、科学的、経済的、社会的にいずれ立ち行かなくなる」と関連の専門家の間で言われている、それ故、世界の30以上の団体がEUなどの先進国のバイオ燃料政策を批判し、モラトリアムを要請している。これら論争に答えるため、一刻も早いアセスメントの実施が強く望まれる。
(参考:バイオ燃料基礎資料)
バイオ燃料は、その植物の光合成によって生成されるサトウキビなどの糖質及びイモなどのでんぷん質の炭水化物を糖化したうえで発酵させて作ったエタノール(化学式C2H5OH)と、パームオイルなどの油脂を原料にしたバイオディーゼル(CnHmCOOHと表せる)を主に言う。両者とも燃焼するとCO2と水が発生するが、空気中の窒素とも反応してNOxも発生する。
バイオ燃料は、内燃機関を動力とした自動車や船舶、飛行機等の石油燃料の代替物として利用されるが、主たるバイオ燃料は次のとおり。
エタノール:ガソリンの代替燃料として使われ、トウモロコシ、サトウキビ、キ ャッサバ等が原料。米国、ブラジルが主要生産地。
バイオディーゼル(BDF):ディーゼル車のの軽油代替燃料で、菜種油、ひまわり油等が原料で、欧州では菜種、ひまわりが主に栽培され、マレー
シア、インドネシアではオイルパームが主流。
主要国等のバイオ燃料消費目標は次のとおり。
欧州:2015年までに輸送需要燃料の8%
日本:2020年までに200万kl需要
米国:2017年までに輸送需要燃料の30%
欧州ではディーゼル車が自動車全体の約50%を占めていることから、バイオディーゼルの消費が多く、マレーシア、インドネシアからパームオイルを輸入している。他方、米国、ブラジル、日本ではエタノールを中心とした消費となっている。日本はブラジルからエタノールを輸入する予定。
地球温暖化問題は既にG8サミットや国連・国際銀行等の最優先議題にまで昇華して世界の耳目を集める最大関心事となっている。しかしながら、この問題の陰に隠れてはいるが、地球温暖化問題に連動して地球温暖化問題と平行またはポスト地球温暖化問題として早急に対処しなければならない課題が山積している。
別添に世界の状況に関するデータを掲載する。別添のデータを概観する限り、将来の人口増加と経済発展に伴う人類の社会経済活動が有限な地球資源の利用範囲内に収まるのか、また今後の地球温暖化による影響を加味した上である時点での人類の活動が自然の浄化復元作用の範囲内に収まっているのか、更には生物多様性の劣化により水供給や食糧生産に寄与する生態系サービスがどれほど低下しているかなどを真剣に評価・予測する必要がある。
特にアジアでは、今後中国、インド、日本という世界屈指の5本の指に入る経済大国が大量の資源を消費することによる環境への影響は極めて大きく、世界的な対応に加え、地域での上乗せ的な取り決めが必要になるかもしれない。
このような観点から、人類が今後優先的に対処していかなければならない地球環境問題に対応して世界及び国家が目標とする望ましい社会形態は次のとおりである。
@ 低炭素社会(地球温暖化防止、脱化石燃料)
A 資源循環型社会(水・大気などの汚染防止と天然資源の効率的利用と廃棄物対策)
B 低化学物質等社会(化学物質・重金属の減少、生物保全)
C 自然共生社会(生物多様性保全)
@及びAについては、既に様々なところで議論されていることから、B及びCに重点を置いて意見を述べることとする。
@ 低炭素社会
京都議定書の実施の目標として各国では低炭素社会への移行が図られている。地球温暖化の主原因が過去
からの化石燃料の燃焼による温暖化ガスの大気中への蓄積であることから、手法は極めて単純であるがその徹底が重要となる。
(1)直接及び間接の化石燃料・原料の使用量削減の徹底
(2)化石燃料・原料の代替物確保
(3)資源節約とエネルギー効率の徹底した向上
A 資源循環型社会
長年各国で実施されてきた廃棄物対策の延長線上の施策として、既に多くの先進国等で実施されている。対象は有限及び再生可能な資源を問わず、自然資源消費の無駄をなくし、節約するとともに、利用効率を高めることが対策となる。具体的な方法は、生産、流通、消費、廃棄、更には最終処分においても3R(Reduce,
Reuse, Recycle)を徹底することである。
なお、国際的な取り組みとしてはUNEPではEUとの連携の下で「天然資源の持続的可能な利用に関する国際パネル」(IPCCを模したもの)を設置して資源循環型社会のあり方とその目標を検討している。
B 低化学物質・重金属社会
(背景)
現代日本人の生活の周りには約5万種の化学物質が存在するといわれている。飲食料、医薬品、洗剤など人間が体内に取り込んだり接触する化学物質については人体に被害が及ばないよう厳しい審査と利用管理が課されているが、これら化学物質が環境に放出された場合の影響評価基準は人体影響評価のそれより緩やかであると思われる。まして、屋外のみで使用される農薬、化学肥料などの化学物質、重金属についてはより緩やかである。また開発途上国ではその規制と管理はさらに不十分である。
化学物質等による水質汚染は特に水棲生物には致命的である。水中汚染物質の濃度が高い場合は水棲生物は致死し、濃度が低くてもエラや口から汚染水を体内に取り込むことで汚染物質は体内に蓄積され生体維持機能が侵される。水質汚染は水棲生物にとって陸上生物以上に致命的である。
化学物質、特に有機化合物は人間や環境への被害の因果関係を証明するのが非常に難しい。また一定量以上を短期間に摂取すれば被害が発現するが、少量であれば被害がない場合が多い。原因物質と被害との因果関係が明白に証明された場合以外は規制が難しいゆえ、多くの有機化合物質が飲食料、洗剤などで多種多量に使われている。しかし地球温暖化と同様、環境中に拡散された原因物質が一定以上蓄積されて被害が発現する場合もある。そしてその影響は、環境というよりも生物の遺伝子、種、生態系という生物多様性に大きな被害を与える。
(化学物質等の影響と被害)
化学物質の使用量は、一般家庭などでは適正使用量以上に使用されていることが多い。筆者が雇っているタイ人メイドは洗剤やシャンプーなどはたくさん使えばより効果が高いと信じている。農薬や化学肥料も同様である。有機化合物である環境ホルモンは生物をメス化させる傾向が強く、水銀などの重金属は神経系統に影響を及ぼすことが多い。これらの物質は環境中に放出されると食物連鎖により生物に蓄積され、食用魚では蓄積物質は人間に移転される。それゆえ日本の厚生労働省は、妊婦に対してマグロの刺身をたくさん食べないよう勧告している。
化学物質等の影響や被害を科学的に立証するのは非常に難しい。しかし状況証拠は多いので因果関係の追及が望まれる。
(国際的対策)
化学物質は生物と環境に将来致命的な影響を及ぼす恐れが高く、先進国などでは既に可能な対策が着々と実施されている。特にEUでは化学物質対策としては最も先駆的なREACH(Registration,
Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals )という「人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の維持向上」を目的とした制度が2007年6月に施行され、現在では世界で最も厳しい規制となっている。また、UNEPではECの支援の下、SAICM(Strategic
Approach to International Chemicals Management)という2020年までに化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化を目指すことを目標とした行動指針が2006年2月に採択されている。
化学物質は生産者が民間企業に特定されていることから、すべての人間がCO2排出者となっている地球温暖化防止対策と比較すれば対策は容易と思われる。しかしながら、先進国をはじめ開発途上国でもその需要は今後高まってくることから、可及的速やかに規制の方法とスケジュールという道筋を民間企業に明確に示した対策が望まれている。
C 自然共生社会(生物多様性保護)
(背景)
近年、生物多様性の低下及び喪失が地球温暖化と同様国際社会で大きな問題となってきている。生物多様性という用語はあまり馴染みがないが、最も簡単には「ある地域内における遺伝子、種、生態系の多様性」と定義されている。
地球上の生物多様性は何十億年もの間、遺伝子変化を含め進化と適応という自然プロセスを経てつくり上げられたもので、現在までに科学的に同定された生物種の数は175万にものぼる。これら生物種は捕食・被食、共存などで繋がってコミュニティーを形成し、さらに水、土壌、地形などの条件により系をなし、この系が他の系とも繋がって全体として大きな生態系という生命体系を形成している。人類は生物の一部として有史以来この生態系機能から「自然の恵」という様々な形態の恩恵を受けてきたのである。具体的には、
再生自然資源の提供機能
・ 海の幸、山の幸としての食料の提供
・ 木材や燃料、衣類、薬草などの提供
環境浄化等機能
・ 汚染された空気、水の清浄
・ 植物蒸散作用等による気候の緩和
・ 森林や湿地の水源涵養
・ 植物によるCO2固定と酸素供出
などである。
国連が主導して95カ国1300人の専門家が実施した2005年「国連ミレニアム生態系評価」は、世界経済の約4割は生物の作り出すものとその生物学的過程に頼っており、生態系が人類の社会経済果たす貢献は計り知れないほど大きく、また代替がきかないものであることを明らかにした。しかし一方で1950年からの40年間で森林や草地の14%が失われ、サンゴ礁の4分の1が消滅した。淡水域の生態系破壊も激しく、湿地帯はこの100年間で半減。世界中の主要な河川の半分以上が深刻な汚染や水不足に見舞われており、こうした環境劣化によって、過去100年間に分かっているだけで約100種類の鳥や哺乳類、両生類が絶滅した。自然に起こる絶滅の1000倍以上のスピードで生物種の絶滅が進行していることもわかってきた。
ボルネオ島の熱帯雨林減少状況
(出典:The Last Stand of the Orangutan : State of the Emergency .
Illegal Logging, Fire and Palm Oil in Indonesia’s National Park
(2006 UNEP/UNESCO))
そして魚類などの乱獲、森林や湿地などの破壊、大気・水の汚染など長年にわたる人間活動の影響の累積の傾向が今後も続けば、2050年までには人間の生活自体が立ち行かなくなると警告し、現在のような自然資源の利用をいつまでも続けることはできないとして、人間の生態系利用の在り方の抜本的な変革を求めている。
(国際的対応)
このような危機感を踏まえ、2001年EU首脳会議は「生物多様性に対する取り組みの大幅な改善、強化を行い、2010年までに生物多様性の減少を阻止すべき」という「2010年生物多様性目標」と呼ばれる目標設定に合意した。さらに2002年には生物多様性条約締約国会議において190カ国がEUと同様「2010年までに生物多様性損失速度の大幅な低減を達成する」という「生物多様性2010年目標」というグローバルな目標を設定した。
(課題)
生物多様性保全のためには、地球温暖化防止同様、地球の能力とその限界を人類が認知して予防対策を講じることが不可欠である。特に生物多様性の損失の影響を最も被るのは開発途上国などの貧しい人々、または自然資源に生活物資を多く依存するか農業生産力の低い地域に住む人々である。
上述のEU首脳会議が採択した「2010年生物多様性目標」はEUが先導して世界目標になったが、EUの目標はEU域内のみに限定した目標であり、開発途上国まで対象を広げると現状を見る限りその達成はほとんど不可能である。そのため、2010年の生物多様性条約COP10ではこの目標の抜本的見直しが行われることになっており、その重要性を世界が認識して国連総会はこの2010年を「国際生物多様性年」に指定している。そして、日本政府はこのCOP10を名古屋市に誘致することを既に決定している。
地球温暖化防止対策ではCO2に価格を付加し、排出権制度等により外部不経済を内部化し、さらに企業が温暖化防止に積極的に参画する制度として排出権取引が国際合意された。生物多様性の保全においては、生物多様性から生態系サービスとして人類が得られる利益と、生物多様性を失ってでも行われる産業活動から得えられる利益とでどちらが大きいかを証明することが大きなポイントとなる。
そのためには生態系サービスの貨幣価値算定方法を確立することが前提となる。その意味で、森林を伐採して得られる利益と保全することによって得られる利益との比較衡量の検討が地球温暖化防止対策の一環として行われていることから、その結果が一つのが目安となるであろう。その際、地球温暖化防止の排出権取引と同様、生物多様性保全においても企業の参画が得られる制度を構築することが重要なポイントと思われる。
いずれにしても、生物多様性保全は地球温暖化防止対策にも匹敵することから、今後は生態系サービスの科学的な裏づけ、人類が得ているこれらサービスの貨幣価値への換算、そしてそれを世界が認めるか否かが大きな鍵となる。生物多様性版IPCCが設置されることを期待したい。
アジア太平洋地域は現在世界人口の約60%(37億人)、世界経済の約40%を占め、今後中国、インドの目覚しい発展が続けばこの比率は更に高まり地球温暖化問題でもその比重を増す。さらに最近のオーストラリアの旱魃、バングラデッシュの大型サイクロンとそれに伴う洪水被害など地球温暖化現象と思われる自然災害は年々増加しており被害も甚大である。
アジア太平洋地域は地球温暖化の大きな原因地域であるとともに被害や被災者も大規模かつ深刻である。その中でもアジア太平洋地域が抱える特徴ある3大問題、すなわちインドネシア等での熱帯林破壊、海面上昇による太平洋島嶼諸国の国土喪失及びヒマラヤ氷河の融解を報告する。
@ 東南アジアの熱帯雨林破壊
東南アジア赤道上下に分布するスマトラ、ボルネオ、ニューギニア島の原生熱帯雨林は広大な面積と豊かな生物多様性を有し、南米アマゾンと並んで地球上最も自然を保護すべき及び重要なCO2貯蔵庫として世界中から注目されている。しかしながら近年の違法伐採、パーム大規模農園開拓、人口増加にともなう開発等のためその面積は年々減少し、近未来には森林の有する各種生態系サービス機能が著しく劣化または回復不可能にまで破壊されて地球環境及び人類の生存に大きな影響を与えるのではないかと危惧されている。
特にインドネシアでは熱帯林の減少が著しい。同国の森林破壊は商業伐採、違法伐採が主たる原因であったが、さらに急激なバイオ燃料需要の増加によりパーム農園造成が加速され森林減少が進んでいる。そしてこの傾向を放置するならば2020年にはインドネシア・ボルネオ島の熱帯雨林は1950年比の半分面積以下になってしまう恐れがある。
他方、新規パーム農園は更なる問題を引き起こしている。パーム農園開拓に当たって価値の高い樹木は伐採後売られるが、残りは放火されてしまうことから森林火災によるCO2放出は地球温暖化に加担する。さらに、急激なバイオ燃料需要に対応するパーム農園造成は農地確保が容易な泥炭湿地にまで拡大した。しかし湿地で行われた場合、灌漑により乾燥した泥炭の分解によりCO2が発生し、またこの乾燥した泥炭に火が付くと更にCO2が発生する。すなわち、インドネシア泥炭湿地でのパーム農園開拓は、森林破壊のみならず森林火災・泥炭分解・泥炭火災によって大量のCO2が放出され、CO2削減のためのバイオ燃料はかえってその生産過程でCO2放出を増加させてしまっている。
インドネシア・スマトラ及びボルネオ島の
熱帯林火災状況衛星写真(2006)
(出典:The Last Stand of the Orangutan : State of the Emergency .
Illegal Logging, Fire and Palm Oil in Indonesia’s National Park
(2006 UNEP/UNESCO))
Wetlands International (オランダ)の2006年報告書ではインドネシアの泥炭地から排出されるCO2は年間20億トンにのぼり、うち6億トンは乾燥した泥炭の分解、14億トンはその火災から生じるとしている。その結果、インドネシアは21番目のCO2放出国であるが、この泥炭からのCO2放出量を加えると米国、中国についで世界3番目のCO2排出国となるという。
この問題は、京都議定書遵守のためバイオ燃料需要が急激に増大し、それに投資家が対応してパーム農園を安易に泥炭湿地に求めたことが原因である。そして生産されたバイオ燃料は欧州などに輸出され、輸入国ではこのバイオ燃料使用により石油消費が減少し、結果として輸入国ではCO2を削減したことになる。輸入バイオ燃料は功罪両面を持っているが消費者はこのバイオ燃料を使うことによって自らが温暖化防止に貢献していると思っているが、バイオ燃料の副作用を考慮すると現実にはそれは錯覚である。
京都議定書で決められた削減を遵守することは絶対条件であるが、限られた期限内で目的を達成するため無理やりバイオ燃料を生産すればこのような副作用が生じていることを世界は認識すべきであり、また早急にこの事態を改善すべきである。
インドネシアの熱帯林破壊は
http://www.unep-wcmc.org/resources/publications/LastStand.htmでご覧願いたい。
A ヒマラヤ氷河の融解
ヒマラヤ山脈の氷河は北極及び南極に比類する淡水を有し、それ故ヒマラヤは「第3の極」とか「Water Tower」などとも言われている。そしてヒマラヤを水源とする河川はインダス川、ガンジス川、タリム川、メコン川、黄河など9あり、全流域にはインド、中国、パキスタン、バングラデシュ、ネパールなど8カ国、約13億人が生活している。
しかし、地球温暖化の影響により近年氷河の後退は加速し、ヒマラヤを水源とする河川流域では短期的には増水傾向であるが、将来は深刻な河川水量不足となって流域住民の飲料水不足や農業、工業など人間活動に大きな影響を与えることがUNEPやIPCCなどの報告により明らかになっている。
また、一方で融解した水が多くの氷河湖を形成し、氷河融解水の増加により氷河湖はたびたび決壊して洪水を起こしているが、融解量の年々の増加によりネパールでは現在20以上の氷河湖が潜在的な決壊の危険性にさらされている(UNEP報告書)。氷河湖の決壊による洪水は単なる水の流れではなく土石流であり、何時発生するかもわからないことから、海の津波にもじって「山の津波;Mountain
Tsunami」とも呼ばれている。
〔ヒマラヤ氷河湖後退写真〕
(出典:ICIMOD資料)
1956 photograph of Imja glacier in Nepal
(Photo: Fritz Muller: courtesy of Jack Ives)
2006 photograph of Imja glacier in Nepal
(Photo: Giovanni Kappenberger: courtesy of Alton C Byers)
このような地球温暖化の影響と被害は決してヒマラヤ山脈地域の住民が原因で生じているのではなく、地球温暖化の影響が地球上の自然の最も脆弱な場所で顕著に発現し、またその影響と被害はその地域で暮らす人々に集中かつ最大化して起こることを如実に表している。そのため、この地域で発生する温暖化による被害防止と地域住民の生活の保障は国際社会が最大限支援すべきであろう。
ヒマラヤの温暖化対策については、先般日本の別府で開催された第一回水フォーラムサミットでも議論され、ADBなどの国際援助機関やJICAなども支援の検討はじめている。現時点で考えられる対策は次のとおりである。
ア.基礎及び応用的な調査研究(IPCCではヒマラヤ地域での科学的データが不足
していることを指摘)
イ.気象、氷河の動向、生物多様性などに関するモニタリング
ウ.各種リスク管理
エ.氷河湖決壊を察知するモニタリング体制確立
オ.氷河湖決壊に対する早期警戒及び避難体制の確立
カ.氷河湖決壊防止土木対策
キ.不足するであろう河川水の流域における有効利用対策
このような対策がヒマラヤ山脈で行われれば、アンデス山脈などにも応用可能であり、また地球温暖化により不足する河川水の有効利用対策は他の河川流域にも適用可能である。ヒマラヤでのモデル的温暖化適応対策事業の実施に大きく期待している。
ヒマラヤの情報については
http://www.rrcap.unep.org/issues/glof/glof/index.htm を参照願いたい。
B 海面上昇による太平洋島嶼諸国の国土喪失
南太平洋のツバルなど海抜1〜2m前後の土地に立脚している多くの島嶼国家が地球温暖化による海面上昇のため国家存亡の危機に立たされれていることは周知のとおりである。国家の要件たる「明確な国土領域」が高波により徐々に侵食され、透水性の高い土地ゆえ満潮時には土地の下から海水が湧き出してくるという状況は、更なる海面上昇により将来の国土喪失を暗示している。
地球温暖化によるこのような「国家沈没」は、ヒマラヤの氷河融解による被害同様その地域に住む人々に因果があるわけではないが、国土喪失という他に代替できない「絶対的な被害」となって島の国民に致命的な影響を与えている。
海面上昇による国土喪失の危機への対応は2つしかない。すなわち、
ア.国土保全のため堤防を築き、地盤を固める
イ.他に移住する
である。
ア.は費用は莫大にかかるが国家は存続する。しかし、美しい自然景観はコンクリートなどの工作物によって滅失し、観光が大きな経済収入となっている多くの島嶼国家にとっては、持続的な国家経済運営は難しくなるであろう。
イ.は悪く言えば環境難民となって国民全員が他国に移住して国家を消滅させるか、他の国に再建国するか、国家としての最低限機能を島に残しながら多くの国民が他国に移住するか、などの選択肢しかない。しかし、どこの国がどのように島嶼国の人々を受け入れてくれるのか、大きな国際問題となることは必死である。
ヨーロッパの列強は過去にアフリカや中東、イスラエル、パレスチナなどでイ.と同様のことを半ば強制的に実施してきた歴史を持つ。この経験が活かされるか否かは別として、様々な対策選択肢の組み合わせにより解決策を見出さなければならないが、その前提として国際社会は絶対的な倫理観と責任を持ってこれら島嶼国の対策を支援すべきであろう。
地球温暖化防止京都議定書の実施期間は2012年に終了し、ポスト京都議定書は2009年末までに国際合意されることが先般のUNFCCC・COP13で決まっている。このポスト京都議定書により2050年までの長期対策の制度設計がある程度固まることにより地球温暖化問題に関する世界の大論争はひとまず収束し、温暖化の緩和及び適応対策は本格的な実施の段階に入る。しかしながら地球環境及び人類が抱えている課題は依然山積しており、地球温暖化対策の見通しが立った時点で次の課題解決に移行しなければならない。
では地球温暖化防止対策の延長線上に控えている課題は何であろうか?
上述3.で述べたとおり地球温暖化問題以外に既に決まっている大きな地球環境問題とスケジュールは次のとおりである。
2006年 天然資源の持続的可能な利用に関する国際パネル設置
2010年 生物多様性2010年目標の新たな目標設定
2020年 化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化
の実現
上記の「天然資源の持続的可能な利用に関する国際パネル」は、天然資源の効率的かつ持続的循環利用を図るため、EU支援の下、UNEPがIPCCを模して設置したもので、今後将来の国際的な目標が設定される予定である。
このような国際的取組みは、現在世界的に耳目を集めているポスト京都議定書議論に比べるとまだ存在感は薄いが、今までも粛々と進展しておりいずれ国際舞台に現れてくる。上述したとおり、地球温暖化対策におけるIPCCはノーベル賞を受賞するほど地球環境問題を解決する上で最も優れた方法として世界に認知されたことから、上記の課題に対しても同様の手法が採用されることと思われる。
本稿前段にオゾン層保護モントリオール議定書及び京都議定書の特徴・共通点、制度的関連、更には人類がこれら問題に対処してきた過程で蓄積してきた知識や経験などについて述べた。またこれから本格的な取り組みが始まる地球環境問題についても述べたが、これらをじっくり眺めてみると、次のようないくつかの共通点が浮かび上がってくる。
@ 問題解決に当たって長期目標を設定していること
A 環境問題解決に競争原理に基づく市場メカニズムも導入していること
B 無形及び実体の見えないCO2や生態系サービスなどにも貨幣価値を付与
(しようと)していること
C この貨幣価値を有する商品的なものが国際的に取引されること
D 取引には企業のみならず、国家、NGOs、市民なども参加でき、大きな市場を
形成できること
E 取引に当たっての取引国際基準・ルール、取引参加・仲介者等の認定・認証、
検査、監視などという各種制度が不可欠であること
F EUがこれら地球環境問題を常にリードし、解決のための制度設計を最初に提
案していること
これら共通点は今後他の環境政策やその他分野の政策にも波及するものと思われる。特に注意すべき点は、EUの化学品管理政策の標語である「人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の維持向上」で表わされている通り、EUは環境政策と産業政策とを一体化して実施していることである。
地球環境政策は今まで主に各国の環境省が主体となって実施されてきたが、今後は従来の環境政策の方法論や手法をより柔軟にして国家の中心政策と位置付けて実施することが求められているのかもしれない。
これら次なる課題に加え、「人類が近未来に直面する最重大危機」として、化石燃料の枯渇問題がある。石油価格高騰の深層には、既存の石油生産が最大化してきており、その最大値を迎えた以降は世界の石油生産量が減少しはじめ、その結果、自由経済の下では石油価格が高騰し石油に依存してきた人類社会経済、特に開発途上国や低所得者層に大きな混乱をもたらすと言われている。この事態に備えるため、早い段階から世界が免疫をつけるとともに「脱石油」というエネルギー政策の下で石油消費量の削減が不可欠となっている。
一方、地球温暖化は人類だけの危機というよりも地球上の「すべての生物が依存する地球の危機」であることから、その一番の原因者たる人類の「倫理」の問題であるといわれている。そして地球温暖化防止対策の究極は脱化石燃料である。
しかし、脱化石燃料というエネルギー政策は地球温暖化防止政策にとって必要条件であるが、そのエネルギー政策にとっては温暖化防止政策は必ずしも必要条件ではないように思える。むしろ脱化石燃料というエネルギー政策が温暖化防止政策を最大限利用しているようにも思われる。農業政策も同様である。それ故、現在のバイオ燃料のように化石燃料の代替にはなるが必ずしも温暖化ガスの削減にはならなかったり熱帯林を破壊したりという多くの副作用をもたらし、また農作物価格上昇により農家のみならず取引関係者が潤うという便乗も見受けられる。
今後石油の総賦存量が大きく増加することはないといわれているが、中国やインドなどの経済成長により石油の需要はますます増加し、その需要と供給のバランスが崩れたときに石油価格は高騰し、パニック、場合によっては紛争が起こる可能性もある。それを回避するための方法としては、石油消費を削減するとともに石油消費量に上限を設定して、消費国に対して石油の国際的「配給制度」を課することも視野に入っていると思われる。
このような観点で地球温暖化ガス排出権取引を見ると、将来の石油消費国における「配給制度」にこの制度を応用するのは難しくないと思われる。オゾン層保護モントリオール議定書から始まった地球環境対策は、ポスト京都議定書を経て、脱化石燃料という次なる最大の難題に貢献するかもしれない。
人間の肝臓病は発病するまで自覚症状が少ないため病の進行を放置し易いが、ある時点を越えると急激に症状が発現する。それと同じように地球温暖化もある点を越えると現象は不可逆的となり被害は加速的に増加するといわれている。IPCC報告書が如実に表しているように、人類は科学の力によって予見能力を有しているのであるから、自然破壊や温暖化ガス、化学物質の蓄積などを地球の自然治癒能力の範囲内に収めるべく現在から対策を講じるべきである。
地球温暖化は濃淡はあれ人類の一人一人が原因者でその因果は地球上のすべての生物や生態系に応報しているため、それは人類の「原罪」にも近いものがある。それ故、その防止政策は「倫理観」に基づき、すべての人が無条件に大なり小なりの活動で参加できる仕組みが必要である。
地球温暖化対策は、負の価値を持つCO2に貨幣価値を持たせ、それを取引することによってCO2排出を削減する仕組みを採択した。この制度は、外部不経済を内部化するということでは意味深いが、マーケットで取引するという点では、株や国際商品と同じである。つまり、取引で儲ける人もいれば損する人も出てくるし投機の対象ともなる。またトウモロコシや大豆などの穀物がバイオ燃料ブームでその価格が高騰した原因には売り惜しみや投機もあると思われる。とはいえ、
この仕組みを活用して今後はCO2削減直接事業やCO2削減事業の代行、排出権の取りまとめ・取次等の中間事業などCO2削減関連ビジネスが新たに生まれてくると思われる。しかし、本質はビジネスである。温暖化防止の必要経費は「薄く・広く」かもしれないが物、サービスに上乗せされ、最終的には消費者が負担することになる。
京都議定書に基づく削減義務期間が2008年から始まり2012年に終わる。日本ではその義務である1990年比6%の削減は国内だけでは非常に難しいといわれており、そのためCDMなどによる直接的排出権獲得や排出権取引マーケットにより他国から排出権を大量に購入してつじつまを合わせるようである。そして排出権取引マーケットなどからのその購入額は1兆円以上、最終的には5兆円にも上るのではないかとも噂されているが費用の多くは税金で負担される。国際投資家はこれをビジネスチャンスと見ており、巷では排出権取引などで世界中で「Carbon Millionaires」生まれるであろうとまでささやかれている。
環境問題や貧困対策の現場では自費で植林をしたり井戸を掘ったりなど地域に密着して純粋・献身的な活動をしている人やNGOsが非常に多い。また先進国でも地球温暖化防止への責務として日常生活の中でこまめに電気を消したりエレベーターを使わず階段を歩いたり、車から自転車に転換するなど地道に直接的なCO2削減を実践している人が非常に多い。
しかし、CDM、排出権の取りまとめ、排出権取引やバイオ燃料などの地球温暖化防止対策を利用して直接・間接的関与により大きな利益を得たり、または金さえ払えば削減義務が免除されたり温暖化防止に貢献できるという安易な考え方は地球温暖化防止の本質的な意味から大きく逸脱しているし、温暖化対策を地道に実践している人々にとっては決して相容れたくないものであろう。
今後の地球温暖化防止対策などの地球環境対策がビジネスに組み込まれその費用は最終的に消費者が負担するのであれば、我々は「賢い消費者」となる必要がある。それでも地球環境対策に便乗して大きな利益を得た場合には、温暖化などで最も影響を受けている開発途上国などの人々にその利益が配分されるような仕組みも検討されるべきであろう。
(別添)
1.地球環境問題の背景
地球の環境状況を見るときに、世界の社会経済状況がどのようになっているか列記してみるのでざっとご覧いただきたい。
○世界人口
・ 現在67億人(アジア人口は37億人)が2050年には92億人に増加、増加分25
億人のほとんどが開発途上国。
・ 世界の10億人(アジアは6.7億人)が1日1ドル以下の生活
・ 世界の人口67億人の1/2が都市生活者(2007年)、2020年には2/3に増大。? 開発途上国では都市人口の1/2がスラム人口。特にアジアでは2/3。
○世界の水の状況
・ 地球上の97%は海水、2%は氷、利用可能な淡水は1%程度
・ 利用可能な淡水のうち、農業用水は全体の70%(灌漑等による湖沼・湿地の
乾燥化により生物多様性の喪失が深刻化)
・ 現在、世界の26億人が清潔な飲み水入手が困難
・ 地球温暖化の影響もあり2025年には18億人が水不足
○世界の生物多様性の状況(国連ミレニアム生態系評価、国立科学アカデミー会報より)
・ 生物多様性は人類の生存に不可欠な水、食料などの生態系サービスを提供
・ ある森固有の特別種が大幅に減少すると、その森の植物は半減するとのとの
研究成果
・ 種の数が少ない生態系は、健全な生態系と比べて生産する植物バイオマスが
50%少ないとの研究成果
・ 現在では哺乳類、鳥類、両生類の約10−30%が絶滅の危機、地上では3時間
ごとに1種が消滅する速度
・ 2050年にはこれまでの地球史で認められた典型的な絶滅速度の1000倍の速
度に増加、その結果、地上の種の30%が消滅すると予測
○世界の天然資源
・ 主要な鉱物資源の残余年数は30−40年ともいわれている
・ 現在の石油埋蔵量の生産ピークは2004−2010年の間に来るという悲観論と
2010−2030年の間という楽観論の両論あり。
・ IEA予測では2015年までに石油需要は逼迫。
○世界の生産と廃棄
・ 車台数は現在8億台が2050年には18億台に増加予測
・ Windows使用PCが10億台(Microsoft社2008年予想)
・ 廃棄物 127億t(2000年)→270億t(2050年)
・ 2050年廃棄物の内訳は都市廃棄物32億t、産業廃棄物240億t
○アジアの現状
・ 世界人口の約60%(37億人)
・ 世界経済の約40%
・ 世界貧困人口の70%
・ 19億人が非衛生地帯で生活
・ 6億人が安全な水の利用不可能
・ 8億人が非電化地帯で生活
・ 世界の人口1000万人以上のメガシティー21のうち、アジアには半分以上の
12都市存在
○中国及びインドの状況予測(‘07IEA報告書より)
・ 2010年までには中国は世界第一の石油消費国
・ 世界のエネルギー消費量は2030年には現在より55%、CO2は57%増加するが、
増加分の約半分は中国とインドが占有
・ 2030年世界の最大CO2排出国は中国、米国、インド、ロシア、日本の順
(出典:国連機関、IEA、IPCC報告書、WB、ADB等の報告書より)
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2008年2月15日掲載
担当:中村、菅野、宮口、藤澤、迫田、奥村